インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「GSユータロー極楽大作戦六話(GS)」

ミアフ (2006-10-03 21:22/2006-10-04 10:00)
BACK< >NEXT

六話『ばっと・ごっと・ふぁーざー供

ゆっくりと顔を上げる唐巣。
そこには今まで唐巣が纏っていた聖職者然とした雰囲気はまったく無く、今の唐巣の放つどこかやさぐれた雰囲気に周囲は飲まれていた。
「うん。悪魔パイパー、一つ言っておくことがあるのだが」
「な、なにをさぁ!?」
パイパーもまだ動揺からぬけきっていないらしい。
唐巣は動揺するパイパーに言う。
「君に感謝しよう。君のおかげで、私はカミの国へと辿り着けた」
「はぁ?」
突如、訳の分からない感謝の言葉を述べられ、魔族としては少々困るパイパー。
破門されているとはいえ、神父が悪魔に感謝するのは考え物である。
そんなことはさておき、ふさふさした自分の黒髪を弄りながら、唐巣は恍惚な表情で天を仰ぐ。
「ああ、いい気分だ。ありとあらゆる束縛から・・・・・・まるで引力から解放されたかのようだ」
うっとりと唐巣はロザリオを握り締め、自分の信じるカミへと祈りを捧げる。
「おお、カミよ。貴方に感謝を致します。主のお導きにより、私のカミが復活致しました!
我が師の持ってくる様々な無理難題を解決し、愛弟子の引き起こした数々の悪行の伝聞に心を痛め、度重なる貧困と栄養失調を乗り越え・・・・・・ついに、ついに我が髪が復活した!!」
おもわずずっこけそうになるパイパー。
感極まってか、唐巣の目じりには光るものが流れる。
今まで堪えていた何かがぽろりと零れ落ちたのだ。
その様子と悲哀篭もった言葉は男達に強い感動を与えた。
「く、これは心の汗や、汗なんや」
「僕は・・・・・・僕は泣いているのかい!?」
おもわず、もらい泣きする優太郎と横島。
今までどれだけの苦難が唐巣に降りかかってきたのか二人には想像もつかない。
常人には想像を絶する辛苦と惨禍を唐巣は駆け抜けてきたのであろう。
静かに教会に響く唐巣の言葉には、長い間理不尽に耐えてきた者にしか発せない重みがあった。
日曜の礼拝に来た信者への説法の如く、悪魔パイパーに語る唐巣。
「・・・・・・人生の勝利とはカミの国・・・・・・すなわち天国を手に入れたかどうかで決まるのだ。
わかるかい、パイパー。そう、私は天国を手に入れたのだよ・・・・・・長年、心を痛ませたストレスの原因もなく、刺激物を食べても微塵も揺らがない毛根、艶やかに輝く漆黒の毛髪・・・・・・これが私の求め続けたエデンなんだ!!」
あまりにもちっぽけで、あまりにも果てしない唐巣の夢。
後ろで漢泣きする優太郎と横島。
それを聞いたパイパーが呟く。
「・・・・・・なぁ、おいら、今日はもう帰っていいかい?」
これ以上この場いると、なぜか魔族として何か大切な物を失うような気がしたパイパー。
今は金の針を奪う気も失せ、先ほどから感じる気だるい倦怠感から、いったん本体に戻って一眠りしたい気分である。
「あー、おいら、今日の所は撤退するけど。後で必ず、金の針は返してもらうぞ。いいな!」
やる気をなくしたパイパーはステンドグラスから、外へと出ようとする。
だが、それは叶わなかった。

ガシャァァァンンン!!!

何かが教会の天井にあるステンドグラスを割り、飛び込んできたそれはパイパーを貫いた。
「ぐほぉ?」
見れば深々とパイパーの半透明な身体には一本のステッキが刺さっている。
ステッキの石突の先から、槍の穂先のような浄銀の錐が飛び出していた。
「く、伏兵がいたのか・・・・・・?」
力なく呟きながらパイパーの身体は掻き消える様に消滅した。
それを見計らってか、割れたステンドグラスの外から一人の男が飛び降りてくる。
白髪の紳士だ。
周りの視線に気づいた男はその場で優雅に一礼し。
「ふむ、いきなりの訪問で失礼した。パイパーの彼奴が動き出したのに気づくのが遅れてしまってな。幾人か被害者が出ているようだが、幸いなことにまだ金の針は奪われておらんみたいだな」
れーことピートに視線を向ける。
床に落ちたステッキを男は拾った。
なにやら杖の上部を捻ると、石突から飛び出した錐が引っ込む。
仕込み杖のようだ。
「いくらパイパーを倒すためとはいえ、私の教会のステンドグラスを割ってくれて・・・・・・どこの誰だ?アンタは?」
魔族パイパーを一撃で倒した来訪者に唐巣は身構える。
男ははっと気づいたような表情を浮かべ、苦笑した。
「いやいや、私としたことが名乗ることが遅れてしまった。我が名はカオス。
人からは『ヨーロッパの魔王』なんて大仰な渾名で呼ばれることもある、一錬金術師だ。Drとでも呼んでくれたまえ」

N県の某ホテルの中華レストラン。夕刻。
たくさんの料理の乗った円卓を囲んでいるのは優太郎に横島、唐巣にカオス。
れーことピート、おキヌは隣の円卓で少し早めの夕食を摂っている。
パイパーの襲撃の後、カオスが安全な場所で事情を話すと言い、皆でこのホテルまで避難したのだ。
「さて、何から話したらよいのやら・・・・・・」
と、一見深刻そうな話をしながらチャーハンを掻っ込んでいるカオス。
横島は餃子を頬張っているし、唐巣はマグマの如くぐつぐつ煮えた、激辛マーボー豆腐をレンゲで大皿から直接食べている。
どうも一週間前から金がなく、しばらくマヨネーズかけご飯で三食賄っていたらしい。
久しぶりのまともな食事に神への祈りを捧げていたりする。
優太郎は一人静かにお茶を飲みながら、カオスの話を聞いていた。
「私は若い頃・・・・・・といっても800年程前だが、パイパーの退治に一口噛んでいてな」
金の針を見ながら、カオスは懐かしそうに言う。
「当時、錬金術師として活動しだした私は、報奨金目当てで聖堂教会と共同でパイパー退治を行うことになった」
「「800年!?」」
優太郎、横島がカオスの顔をマジマジと眺める。
どう見たってカオスの容貌は30前半そこそこ。
そんな昔から生きているようには見えない。
「芦君、横島君、Drカオスは不老不死を成し遂げた、希代の錬金術師だと言う。
噂では1000年は生きているというからね。外見で判断しないことだ」
ガツガツ、マーボーを食らってた唐巣が説明する。
カオスはどこか楽しげに笑って胸を張る。
「ああ、私はもう10世紀以上生きているよ。
だが唐巣君の言葉には一つ間違いがあるのでね、訂正しよう。
正確に言うなれば、私は不老不死ではないんだ。
歳もとるし、傷つけられれば怪我もする。
300歳の時、老化の遅延の研究を進めていたおかげで、身体の老化スピードを通常の人間の100分の1以下まで下げることに成功したのだ。
まあ、弊害として成長のスピードも100分の1まで下ったため、不便なことも多々あるんだが・・・・・・これは話すと長くなるんでパスしとこう」
バリバリとザーサイを齧り、お茶をすするカオス。
1000年生きた錬金術師にはまったく見えない。
「当時、中級魔族並みに魔力を持っていたパイパーを特殊な魔法陣にまで追い込んでな。
私は彼奴の魔力をそこの金の針に移し変えてやったのだ。
当初の計画では、それで下級魔族並みにパワーダウンしたパイパーを聖堂教会の精鋭騎士達で討伐するはずだったが、残念なことに肝心なところで逃げられてしまったのだ・・・・・・それから数百年、金の針はいろんな人物の手を渡り歩き行方知れずになった。
パイパーも潜伏しながら探しておったようだが見つけられなかったらしいな」
「それを美神さんが見つけた・・・・・・」
優太郎の呟きにカオスは答える。
「どうやらそれは罠だったようだ。パイパーの奴は自身のことを晒してまで、金の針を手に入れようとしたらしい。
金の針が奴の力の源であると同時に有効な武器であると人間に情報を流していたようだ」
「ということは美神君は金の針をおびき寄せるためにハメられたということか」
「そのようだな」
横島が円卓の上に置かれた金の針をつまんで、
「でも、あんたDrカオスだっけか?あんたかなりタイミングよくないか・・・・・・まるでパイパーが行動するのが分かっていたみたいじゃねえか?」
変なところ頭が廻る横島。
「ああ、私はパイパーではなく、金の針目当てでやってきたのだ」
意外と鋭いな、と顔に出さずカオスは言う。
「今、私が進めている研究で金の針が必要になってね。風の噂で日本のGSが手に入れたと聞いて駆けつけたのだ。そこで君達の事務所の所長に交渉しようと思って訊ねたところ、魔力の残滓を感知した。
タイミングからいってパイパーが襲撃したのだろうと見当をつけ、魔力の残滓を辿っていったところ、あの教会に辿り着いただけだ・・・・・・実を言うとパイパーが隙を見せるまで、外からこっそり中を覗っていたのだがね」
悪びれないカオス。

「ところで、なんで唐巣神父は子供にならなかったんすかね?」
「ん!?私のことか」
美味しそうに二皿目のマーボーを食らっていた唐巣を見る横島。
結構前からの疑問であるが、問う機会がなくて聞けなかった。
美形は嫌いだが、その前のさえない中年姿を知っているのでいつもと違い、嫉妬心はない。
逆に憐憫の情さえ湧いている・・・・・・特に頭髪には。
当の唐巣も中途半端に若返った理由が分からないらしく、マーボーを食べる手を止め頭を捻る。
「それは、そこにおるバンパイア・ハーフの小僧の所為だと思うぞ」
と、悩む唐巣に告げるのはカオス。
「ピート君の所為?」
カオスはおキヌのに世話されながら、夕食を摂っているピートに視線を向ける。
推論をカオスは淡々と語る。
「ちょうど、私が教会に辿り着いた時、唐巣神父と小僧がパイパーの笛を喰らった所だった。
パイパーからお主を庇おうとした小僧のおかげで、パイパーの笛の効果が薄れたのだろう。
バンパイア・ハーフは人間に比べて魔力に対するレジスト能力は高いからな。
ところで、お主、記憶はどうだ?」
「私の記憶は一部が欠けているような感じだな」
唐巣はデザートのフルーツポンチと格闘しているれーこを見た。
「どうも、彼女が弟子だったこととかは覚えているんだが、彼女に関することの大半が霞みがかかったように思い出せない・・・・・・というか、思い出してはいけない気がする」
実のところ、パイパーに奪われたのは唐巣の記憶の中で当人が忘れたがっている物ばかりだった。
その内訳は某式神使いの当主から押し付けられた難題や弟子がおこした事件(悪評や不祥事)など、唐巣にストレスを与えていた物ばかりである。
無意識に忘れたがっている記憶をパイパーに奪われたのは不幸中の幸いだった。
案外、心の奥ではそれを望んでいたのかもしれない。
パイパーのおかげで全盛期まで肉体が若返り、おまけにストレスが解消された。
唐巣にとってはいいことずくめである。
そのことに考えが至った唐巣は思わず口に出してしまった。
「しまったな・・・・・・パイパーを倒すと元の年齢に戻るのか?」
思わず自分の頭に手をやる唐巣。
せっかく夢にまでみた在りし日の髪とルックスである。
やろうと思えば第二の青春さえ謳歌できる。
パイパーを倒すのは別にいいのだが、薄い頭髪とストレスが戻ってくるのは勘弁してほしい。
数年振りにハイになっていた唐巣の頭の中で天使と悪魔が喧嘩する。
(こら唐巣!お前は弟子を見捨てて自分の欲望を満たすきか!)
ドリフの聖歌隊コントのような格好の天使唐巣が叱咤する。
(へっ!ピートはともかく、美神は今から真人間に教育し直すのが世のため人のためだぜ)
バイキ○マンのような格好の悪魔唐巣が堕落へと誘う。
唐巣の脳内で天使と悪魔が喧々諤々言い争っていた。
(く!確かに美神君に関してはその方が世のためかもしれないが、他にも子供にされた被害者がいるんだぞ。それはどうする気だ?)
何気に悪魔の意見を認める天使。
それだけ悪魔の意見は真っ当だったようだ。
(ふん、パイパーが強すぎたから封印で済ませたといえば世の中納得するさ。つーか、お前も美神の件に関しては認めるんだな)
(うん。たしかにあのがめつい性格や日頃の生活態度は目に余るからなぁ・・・・・・)
(ああ、美智恵といい令子といい、なんであんなに灰汁が強いんだろうな・・・・・・美神家って)
天使と悪魔の論点がどんどんとずれていっている。
具体的には美神の女性に対する考察に。
(本気でどうしよう・・・・・・)
半ば本気で自分がれーこを引き取って真人間にするプランを練り始めていたことに唐巣は気づく。
そのすぐそばで無邪気に笑うれーこに唐巣はしばし頭を悩ませた。


食事が終わり、食後の一服をするカオス。
「どうだ、君も一つ」
「ええ、すみません」
取り出した煙草を一本手に取り、悩んでいた唐巣に渡す。
考え込んでいた唐巣は思わずそれを受け取り口に運んでから気づいた。
「しまった。20年振りに喫煙したな・・・・・・あの頃からずっと禁煙していたのに」
とある鉄仮面の青年と自分の一番弟子の顔を思い出す。
もう20年もあってない友人と葬儀にすら出なかった一番弟子。
そして、今そばにいるその二人のかけがえのない一人娘。
「・・・・・・絶対にパイパーは倒さなければいけないな」
正義の味方になろうと足掻いていた、誰よりも眩しい笑顔をもった少女を。
もし、パイパーを倒せず、天の国で彼女にあったとき、胸を張って自分は顔を合わせられないだろう。
それ程まで、真っ直ぐだった彼女を思い出す唐巣。
それこそ、昨日のことのように思い出せる。
たった数週間だが、師弟の関係を結んだ少女、美神美智恵の事を。
「やらなきゃならんな。どんなに苦しい戦いでも・・・・・・」
遠い日に想いを馳せた唐巣は今は亡き一番弟子に誓う。
(君の娘は私が絶対に助けてみせる・・・・・・君が憧れた正義は私が引き受けよう)
ただ人を救い続けるために闘い続けてきた一人の神父はしばし、煙草の味を楽しんだ。
その煙草は自分の生き方を決めた20年前とまったく変わらない味がした。


あとがき

カオス合流と説明の回です。
予定では後二話でパイパー編は完結の予定。
しかし、神父のネタが思いつかないなぁ・・・・・・
はじめはJ○JOの六部の神父にしようと思ったけど、読み込んでた三部と四部と違ってあまりしらないし・・・・・・意外と神父のネタは出尽くしてるからなぁ。
意表をつくネタが思いつかない。
一応、若き唐巣が使う武器は考えてはいますが。
今回はちょっと文章が乱れてるなぁ・・・・・・


レス返し


SSさん

精霊石はヴラドー島での事件用に経費で購入したものです。
美神に20億も払ってるし、唐巣さんもそれなりに貰ったはずですから。
ただ、安全第一主義の唐巣さんはもしもに備えて依頼費は使い切ってしまったのです。


なないさん

若返り好評なのでちと迷ってたり・・・・・・
某所の連載はこっちが一段落着くまでお休みです。
プロットは書いてるので更新はする気ですが。
お気遣いありがとうございます。


azumaさん

パイパー編は神父メインに据えます。
某所とは違い、ばりばり武闘派の予定です。
具体的には「お呼びとあらば即参上!」みたいな。


とろもろさん

修正しました。
見落としていたのでありがとうございます。
唐巣は全盛期で、20年のキャリアを積んだ状態です。
ある意味GSで一番強い人になってます。


スケベビッチ・オンナスキーさん

他のGSSSと比べて男率は高いですからね。
実は優太郎がいる所為であの三姉妹は出ないんですよ・・・・・・一人以外。
男女比3:2くらいの予定ですし。


内海一弘さん

神父は若返ってハイになっていただけで、セリフはその場のノリです。
戦闘は次回までおまちください。
若い頃しかできない闘い方をメインにしてますから!

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

PCpylg}Wz O~yz Yahoo yV NTT-X Store

z[y[W NWbgJ[h COiq [ COsI COze