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▽レス始

「光と影のカプリス 第30話(GS)」

クロト (2006-10-03 18:08)
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 オカルトGメン日本支部長である美神美智恵が率いる霊障調査団は、その構成員の優秀さによって実に手際よく作業を進めていた。
 まずは人骨温泉ホテルで聞いた情報に基づいて、山の中にある古い祠(ほこら)に向かう。車では行けない場所なのだが、冥子の式神と魔鈴の箒を使えばどうという事もない。
 祠は崖の真ん中に穿たれた洞窟の中につくられたもので、そこには驚くべきことに氷漬けにされたおキヌの遺体が安置されていた。

「これは……火山の噴火を鎮めるための人柱っていうだけの単純な事情じゃなさそうね……」

 美智恵が氷の中の遺体を蒼白な顔でみつめながら低い声で呟く。
 何しろこの遺体は生前そのままに保たれており、まったく腐っていないのだ。しかもこの氷自体からも霊気を感じる。
 おそらく当時何らかの特別な霊的儀式がなされたのに違いない。
 その内容まで想像がつくはずもなかったが、この時の美智恵たちは幸運に恵まれてもいた。
 作為的なほどのグッドタイミングで、この祠を管理している神社の娘が現れたのだ。地震で崩れたりしていないか様子を見に来たそうなのだが、これほど当てになる情報源が向こうから現れてくれるとは。
 互いに自己紹介を終えた後、その娘―――氷室早苗―――の案内で神社に移動する一行。

「―――そのおキヌという娘の話、古文書に記されているこの神社の由来と一致します」

 早苗の父で神社の神主である男性が、代々伝わる巻物を読みながら話した。
 古文書によると、300年ほど前この地には「死津喪比女」という名の他に例を見ないほど強力な地霊が住み着き、地震や噴火を引き起こしていたらしい。
 当時の藩主は高名な道士を招いてその退治を依頼したのだが、妖怪はあまりにも強く、普通の方法で倒すことはできなかった。

「そこで道士は、人身御供に1人の巫女を捧げたのです。妖怪を封じる装置を作り、それに彼女の命を吹き込むことで、死津喪が滅びるまで長期にわたって作動するようにしたのです」

 その捧げられた巫女がおキヌなのだが、令子が彼女の霊を装置から引き離してしまったため封じの力が弱まり、死津喪が活動を再開したというわけである。
 冥子は何も分かっておらずぽやーっとしているばかりだったが、美智恵と魔鈴は完璧に理解できたようだ。冷たく乾いた2対の視線がさっくりぐさぐさと令子の顔面と側頭部に突き刺さる。

「だ、だって知らなかったんだもん仕方ないでしょ? それより今は死津喪をどうやって退治するかを考えるべきよ」

 横島やおキヌなら威圧して沈黙させられるのだが、このメンバーにその手は使えない。令子は顔中に脂汗を流しつつ、必死の形相で話をそらそうと試みた。
 まあ美智恵としても説教より対策の方が優先なのは事実である。
 まずは死津喪がどんな姿でどこにいるのかを突き止めたいところだ。古文書を信じるなら、この近辺の地下のどこかに潜んでいるのは間違いない。
 といっても普通なら探しようがないのだが、

「冥子さん、あなたの式神のクビラ、でしたか? 霊視で探すことはできませんか」

 外見は分からなくとも、地震や噴火を起こすからにはよほど強力な妖怪であるはずだ。識別は容易だろう。
 クビラの霊視にも距離制限があるのだが、そこはシンダラに乗っていけば十分にカバーできる。

「分かった〜〜〜、やってみる〜〜〜」

 そうしてトリ型式神に乗って空の散歩、もとい探索を続けること数時間。ついに冥子(と同行した美智恵)は目標の地霊を発見した。

「いたわ〜〜〜。すごくおっきな球根みたいなのがここの真下に埋まってる〜〜〜。あ、いま地下茎が動いた〜〜〜、すごい速さで地面掘ってる〜〜〜」

 冥子がちょっと気味悪そうな表情で実況を解説する。美智恵はまずその手柄を褒めてやってから、

「なるほど、植物の地霊だったのね。とすると儀式のときに護衛の藩士を殺したのはその動く地下茎、だとしたら…………」

 美智恵は腕組みしてしばらく考え込んでいたが、やがて何かを考えついたらしく、冥子に神社への帰還を指図した。


 その日の夜、美智恵たちは神社の裏にある温泉に入れさせてもらっていた。この神社とも関係の深い事件なので、必要なだけ泊まって行けばいいと言われたのでお言葉に甘えたのだ。
 その境内の一角には、何やらでっかい金属の箱のような装置がおいてあった。美智恵がGメンの留守番に連絡してヘリで持って来てもらったものである。

「ふう、生き返りますねえー。今日は資料を読むので疲れちゃいましたから」
「うちの自慢のお風呂だべ! 好きなだけ入って行ってくんろ」

 魔鈴と早苗はずいぶん打ち解けたようだ。4人の中では1番柔和で朗らかだから、早苗も話しやすかったのだろう。

「―――ッ! 令子、気づいた?」

 一方リーダーの美智恵はこんな状況でも気を抜いてはいなかったらしい。何かの気配を察したのか、そばにいた娘に鋭い視線を送る。

「ええ、今そこで何か動いた……」

 と令子が言い終えるのとほぼ同時に、地面がぼこぼこっと盛り上がったかと思うと地中から何匹もの妖怪が生えてきた。オケラを人間大にしたような姿をしている。その最後尾には、ボスとおぼしき知能もありげな女性的なやつも1体いた。

「令子、早苗さんと冥子さんを!」
「ええ!」

 冥子は4人の中で最大の攻撃力を持っているのだが、本体の防御力が非常に弱いので常にかばってやらねばならない。魔鈴が2人を後ろに引き下げるのと同時に、令子がその前にカベとして立ちはだかった。
 女性型妖怪はそんな5人の動きをやや蔑んだような視線でみつめながら、おもむろに口を開いた。

「匂うな、あの巫女と同じ匂いがする……300年わしを封じたあの小娘と……!!」
「あなたが死津喪比女ね、出て来るのを待ってたのよ。会ったばかりだけど、さようなら」

 しかし美智恵は相手にしなかった。脇に置いてあった破魔札マシンガンを手に取り、フルオートで掃射する。あっという間に壊滅する死津喪の「花」と「葉虫」部隊。
 続けて現れた「花」の大軍団も、冥子の12神将が蹴散らした。ある時系列ではずいぶんと苦戦したが、こちらでは楽勝の相手だったようだ。

「さて、始めるわよ。みんな出て着替えてちょうだい」
「了解!」

 まあこんな襲撃を受けてなお入浴を続けられるようなツワモノはそうは居るまい。さっさと温泉からあがって、早苗を除く4人は普段の仕事着に着替えた。
 しかしむろん、こんな夜中に遠くへ出撃するわけではない。
 冥子の式神のビカラが境内に置いてあった箱を押してくる。底面にタイヤがついているので、動かすだけなら簡単なのだ。

「で、これで何をするの〜〜〜?」

 箱にコードを差し込んだりダイヤルを回したりしている美智恵を眺めながら、冥子が相変わらずの間延びした声で話しかけた。この切所にはまことに相応しくない喋り方だが、美智恵は特に不快そうな顔もせず、

「死津喪比女を攻撃するのよ。敵の新手が出て来るかも知れないから、油断はしないでね」
「は〜〜〜い」
「……」

 どこまで分かっているのかいささか不安だが、まあ彼女の世話は令子に任せておけばいいだろう。とやや無責任なことを考えつつ、美智恵は自分の仕事を再開した。
 箱から伸びたコードの先端を死津喪の「花」の死体(?)の1つに差し込むと、「混沌式発電機参号」というプレートが貼られたその機械の起動スイッチを入れる。美智恵の「電気を体内で霊力に変換する」という超能力を生かすために発注された備品なのだが、死津喪の生態を見て使えそうだと思って持って来させたのだ。
 ちなみにこれがこの発電機の初仕事である。美智恵もそうやたらにこの能力を使うわけにはいかないので。
 ガガガガガッ!と落雷のような音がして、超高圧の電流が死津喪の茎に流し込まれた。死津喪も生物だから電気は通るし、その茎はすべて本体の球根につながっている。

「ぎゃああああーーっ!!?」

 生まれて初めての奇怪な衝撃をくらった球根が絶叫をあげた。「枝」を切り離せば電流を遮断することは可能なのだが、地上に出した「花」はすでに全滅しているため、いま自分に何が起きているのか分からないのだ。それでは効果的な対処法など考え出せるはずがない。

 やがて死津喪は万が一に備えて株分けを進めていた分体ともども死亡したことが、クビラの霊視によって確認された。

 その後山の神となったワンダーホーゲル部の協力によって、おキヌは記憶は失ったものの生き返ることに成功した。ただ生身の人間、まして記憶喪失となれば東京でGメンのバイトというわけにもいかないので、協議の結果氷室家の養子として引き取られることになった。
 これからは普通の少女として、普通の人生を歩むことになるだろう。

 …………

 ……

「―――というのがこちらの事件のあらましです。先生には迷惑をかけましたけど、冥子さんのおかげでほとんど苦労もなく解決しましたわ」

 と美智恵が話を結ぶ。今日はGメン事務所に唐巣が来ていて、互いに事件の詳細を報告しあっていたのだ。

「それにしても先生、本当に災難でしたね。何と申し上げていいやら……」

 唐巣は苦労して金をためて、やっとあの教会を建てたのだ。その後10年以上あそこで暮らして、さぞかし愛着もあったことだろう。それが一夜にして妖怪の仕業で全壊してしまったとは……。
 しかし唐巣は意外とさばさばした様子で、

「いや、大丈夫だよ。聞けば東京中の神社仏閣が同じ目に遭ったというし、私だけ落ち込んでいるわけにはいかないからね。さいわい小竜姫さまからの報酬があるから建て直しはできるし」

 もっとも香港から日本に帰って、かって自分の教会だったモノを最初に見たときは真っ白に燃え尽きるほどショックだったわけだが……。
 ピートたちが隠していたのはやむを得ないことだろう。そんなことを聞いてしまったらメドーサとの戦いに集中できなくなるし、せっかくの観光も楽しめなかっただろうから。
 ちなみに今はウイークリーマンションで暮らしている。報酬の振込みを確認しだい、建て直しの発注をするつもりだった。

「そうですか、それはよかったですね」

 思ったより元気そうな師の様子に安堵した美智恵だったが、その髪が香港に行く前と比べて全体的に薄くなっていた事だけはとても口に出せなかった。ただ彼の行く道に幸多かれと祈るばかりである。


 一方横島のアパートでは。家主の煩悩少年が同居人の狐少女に約束の履行を要求していた。
「何でもしてあげる」との内容だったが、この男が女の子に望むことは1つしかない。表情がこわばってちと見苦しいが、なにぶん初めてなのだから大目に見てやるべきだろう。
 タマモもそれは百も承知しているが、態度はごく落ち着いたものだった。ちなみに今はまだ14歳Verのままである。

「いいけど、あんたちゃんと分かってる? 私とやることやっちゃったら、カリンや小竜姫さんとはやれなくなるわよ」
「……ナヌ!?」

 そのひと言で横島がびしりと音を立てて凍てついた。
 カリンはこの件について何も口出しはしてこなかったから今まで考慮していなかったが、確かに彼女の性格からいってタマモとヤってしまえばもう男女のABCはやってくれなくなるだろう。タマモときちんと付き合うようさとしてくるに違いない。
 しかしカリンに隠し事は不可能だ。彼女が外に出る時は横島の記憶を引き継いで来るのだから。
 小竜姫その他の女性陣についてはタマモが黙っていればバレないが、彼女の今までの言動からしてそれは望み薄である。

「ぐ、ぐむむむむ……!」

 頭をかかえてうめき出す横島。
 目の前の据え膳はすばらしく美味しそうだが、そのために他の可能性をすべて捨てるというのはあまりに惜しい。惜しすぎる。これでは欲望に任せて突っ走るわけにはいかない。
 しかしそこで横島の脳裏に1つの恐ろしい想像が浮かんだ。おそるおそる、といった調子でタマモに訊ねる。

「もしかして……初めからそのつもりだったのか?」
「うん。でも悪気はないわよ? だってあんたが私以外の女に手を出さなきゃいいんだもの。私は他の男とどうこうする気はないし、不公平じゃないでしょ?」
「……え」

 タマモのいつも通りのあっさり風味の、しかし内容は超ド級の爆弾発言に横島は絶句した。ちょっと入り組んだ表現だが、これは恋の告白、少なくとも恋人同然の関係になろうという意味だと解釈して間違いあるまい。
 だが横島はイエスともノーとも言えなかった。
 タマモのことは大切に思っているが、これが恋愛感情と言っていいものかどうかは正直自分でも分からなかったから。というか、彼の場合スケベ根性が強すぎるせいで、人格面も含めた女性の全体像と1対1で真正面から向き合う心の準備ができてないのである。特にタマモは普段は14歳Verで、横島にとってロリの範疇だから尚更だ。
 かと言って、彼女の気持ちを簡単に拒絶できるほど横島の中のタマモは小さな存在ではなくて。
 そういうわけで横島が決断を下しかねていると、タマモはふうっと小さく息をついて肩の力を抜いた。

「いいわ、これは借りにしといてあげる。払ってほしくなったら言ってちょうだい」
「え……そんなんでいいのか?」

 横島が顔面の筋肉の緊張を解いて、ほっとしたような口調で聞いてくる。タマモは軽く頷いて、

「うん、あんたってすごく分かりやすいから。とりあえず今はそれで満足しといてあげるわ」

 ―――無理押しして蹴られるよりはずっといいから。

「……???」

 横島の顔にはてなマークがいくつも浮かんでいるが、タマモは説明はしてやらなかった。仮にも九尾の狐の保護者なのだから、そのくらい自分で分かってもらわねば困る。

 そういうわけでタマモからのご褒美は延期となった。彼もこれで少しは成長すればいいのだが。


 それから何日か経ったある日のこと。横島たちが唐巣の臨時住居兼仕事場のウイークリーマンションでお茶を飲んでいると、横島にとっては不意の来客が現れた。
 香港でともにメドーサと戦った伊達雪之丞である。
 都合があって一緒に帰国はしなかったが、彼もすぐ日本に来て唐巣同伴でGS協会といろいろやっていたのである。そのかいあってようやくブラックリストから外され、実力的には試験に合格していたので見習い免許が与えられたのだ。
 ただその経過からいって彼の保証人は唐巣以外にありえないので、これからしばらくは唐巣の元で本免許めざして再修業、というか研修に励むということらしい。
 今日はその挨拶と具体的な研修方針の話をしに来たのである。
 それがひと段落ついて、今は横島とだべっていた。

「……へーえ。で、本免もらったらやっぱり事務所開くのか?」
「まーな。でもチマチマとザコ相手ってのはつまらんから、強えヤツ専門ってのがいいんだがな。それか仕事は助っ人ぐらいにしといて、いつかメドーサに勝てるくらい強くなるまで修業する、っつーのも考えてる」
「またジャンキーなことを……」

 横島には理解しがたい心情である。令子みたいに大金が欲しいわけでもないくせに、何が彼をそこまで駆り立てるのか?

「俺だったらザコばっかの方がいーんだけどな。それで十分食っていけるんだし……ん?」

 そこでまたしてもドアチャイムが鳴る。今日は客の多い日だ。
 唐巣の代わりに横島がドアを開けると、何とそこには彼の憧れの竜女神さまのお姿が。

「おおっ、小竜姫さま!? またお会いできるとは光栄っス! 今日はどんな御用で? もしかして俺へのプロポはうあっ!?」

 小竜姫の肘鉄で横島は顔面を壁に打ちつけた。あまり成長はしていないようである。
 そのあと唐巣に招じ入れられてテーブルについた小竜姫は、出されたお茶を一口飲んでから今日の用件を切り出した。

「また連絡もせずに来てしまってすいません。怪我もどうにか治りましたのでご挨拶をと思いまして。
 それと報酬は3日前に振り込ませていただきましたが、無事入金されたでしょうか?」
「はい、おかげ様で教会の建て直しができます」

 まだ契約もしていないが、ともかく再建ができるのは彼女の依頼のおかげである。危険な仕事ではあったが、唐巣は素直に感謝していた。

「そうですか、早く出来上がるといいですね。それで実は、今日も1つお願いしたいことがあるのですが……」

 これが本当の用事なのだろうが、そこで小竜姫は急に歯切れが悪くなった。唐巣が不安になって、

「もしかしてまたメドーサのような魔物が現れたりしたのですか?」
「いえ、荒事ではありません。唐巣さんたちには全く危険のないことです。ただちょっと……私が少々気恥ずかしいといいますか」
「はあ」

 唐巣が生返事をして次の言葉を待っていると、小竜姫は観念したのか説明を再開した。

「実はあの事件の報告書を上に提出したところ、少しばかりお叱りを受けまして……いえ、唐巣さんたちには何も問題ありません。問題があったのは私だけですから」

 唐巣たちがメドーサを倒せなかったのはまあやむを得ないことだろう。装具の力を借りたとはいえ、撃退できただけでも大したものだ。
 元始風水盤はデタントをぶち壊しかねない危険な道具だから、破壊した事にも文句はない。人間たちはどう考えるか知らないが、それは神界には関係のないことだし。
 しかし人間組が活躍した分、あっさり敗退した小竜姫の不甲斐なさが目立ってしまうわけで。

「それでしばらく修業のやり直しという罰、というか処分が下りまして」

 面目なさそうに俯いてぶつぶつと小声で喋る小竜姫。確かに武神として誇れるようなことではなかろう。

「修業のやり直し、ですか……。それで何故ここへ?」

 ここにいるのはむしろ彼女の弟子である。立場が逆だと思うのだが。

「はい。私がメドーサに敗れたのは武技が未熟だったからではなくて、駆け引きとか判断力とか、そういうものが劣っていたからです。
 でも妙神山ではそういった感覚は磨けませんから、人界に降りて勉強してくるように、というお沙汰なんです」

 メドーサの挑発に乗って屋根の上に誘導されてしまったのは失策だったし、それでもカリンに超加速を教えておけば2対1で倒すことができただろう。メドーサの能力を知らなかったゆえのミスだが、なればこそ打てる手はすべて打ち、より賢い戦い方をすべきだったと言われれば返す言葉はない。

「そ、そうですか……」

 こめかみの辺りに流れた汗を拭いつつ、唐巣は何とか相槌を打った。
 彼もそういう点では似たようなものだから、小竜姫の言うことは分からぬでもない。だがそれなら尚更、ここに来るのは見当違いのような気がする。
 唐巣はそれを言うべきかどうか迷っていたが、小竜姫は敏感に察したようで、ついに最後の言葉を口にした。

「そ、それでですね。できれば横島さんとカリンさんに、その、ご指導を賜りたいと……」

 小竜姫はうつむいて真っ赤になって、体がぶるぶる震えている。
 唐巣ならまだしも横島はあの通りの性格だし、カリンに至っては「修業が足りない」とか「稽古をつけてやろうか?」とか屈辱的な台詞をぶつけてきた相手なのだ。その2人に教えを乞わねばならぬとは、確かにこの上なく恥ずかしいことであろう。
 しかし背に腹は代えられなかった。唐巣やピートでは学べないだろうし、令子やエミに就くのは怖すぎる。
 そして横島は普段なら小竜姫にこんな事を言われたら即座に煩悩爆発して口説き出すところだが、今はさすがに気が引けた。

「あー……お、俺はいいっスよ。俺に教えられることなんてあるかどうか分かりませんけど……」
「私も構わないぞ。駆け引きなんて手取り足取り教えることじゃないが、とりあえずは私たちの普段の除霊を見学したり手伝ったりしていればいいと思う」
「は……はい。ありがとうございます」

 思ったよりも親身で対価も求めない反応に小竜姫は素直に礼を述べた。いや、これこそ彼女が2人に望んでいた事ではあるのだけれど。

「しかしあなたの力だと人界では強すぎて駆け引きの修練にはならないと思うが。あと住む所とかはどうするんだ?」
「あ、それは大丈夫です。普段は100マイト程度に封印してますし、住居や戸籍はヒャクメという者が用意してくれましたから」

 ちなみに報酬の振込み手続きをしたのもヒャクメである。小竜姫の偽名「小山 竜姫(こやま たつき)」という名義でつくった通帳に妙神山保有の小判を売った金を預金し、それを唐巣たちへの報酬やアパートの家賃、小竜姫の当座の生活費に充てたのだ。

「なるほど、分かりました。そういうことなら、納得いくまで滞在して行って下さい」

 と唐巣は了承の旨を告げた。
 そこまでしているのならさし当たっての不都合はないだろうし、断るわけにもいかない。
 ただ従業員がこうも増えるのは彼の本意ではなかった。もともと彼は霊障に苦しむ人々を救うためにGSをやっているのだ。しかし従業員が増えれば増えただけ、金銭を受け取っての仕事を増やさざるを得なくなる。まして今は臨時のウイークリーマンション住まいで、仕事をすること自体に難がある状況なのだ。
 そもそも(実質的な)従業員が6人というのは多すぎる。
 どうしようもないことではあったが、教会を失ったショックからまだ立ち直っていなかったのか唐巣がついグチっぽく口を滑らせると、その数秒後に横島がとんでもないことを言い出した。


「それなら、小竜姫さまが事務所開けばいいんスよ!」


 グレートビッグな問題発言に部屋の空気が固まった。


 ―――つづく。

 またしても冒険的な展開になってしまいました。石投げないで下さいね(^^;
 ではレス返しを。

○幼心錬金術さん
>死津喪編
 あらすじだけ書かせていただきましたです。
>神父
 原作のしづもん編よりはお金があるだけマシ……のはず??
>横島
 この幸せ者がーっ!て感じです○(_ _○)

○2さん
 釘でも杭でもガンガン打ってやって下さい<マテ

○SSさん
>やっぱり、人殺して爽快なENDはあっちゃなんないんだよなぁ
 直接手を下さずに済んだのはある意味幸いだったかも。
>タマモンとカリン、二人との関係はどんな感じになっていくのやら
 優柔不断野郎でした(爆)。

○whiteangelさん
>交代して
 普通の人だと3日くらいで死ねるような気がしますが(^^;

○読石さん
 やー、筆者ごときのオリキャラをそこまで気に入っていただけるとは感激でございますです。

○ミアフさん
>究極の自愛に目覚めるのか!?
 迷ってますw

○零式さん
>横島よかったね(ぼーよみ)
 まったくですね(ぼーよみ)。
>映画編…ピートが主役っすか
 ヒロインが香港No1スターですからねぇ。ラブ要素有りなら横島よりピートの方が適任でしょうw

○遊鬼さん
>今回はすっかり軽いノリに戻ってますね
 元々そういうノリの話ですから(ぉ
>今回は横島君ご褒美もらえただけでも
 十分すぎます、ハイ。

○KOS-MOSさん
>気持ちがぎっちりとつまったらぶらぶ?なちう
 筆者も欲しいです<マテ
>残るご褒美はタマモのやつだけだぁ〜〜
 自分から放棄するとはヘタレにも程があるってもんです。
>映画
 不評でなくて良かった良かった<マテ

○通りすがりのヘタレさん
>おキヌちゃん
 まだ食い込むスキはありそうですが、はてさて。
>しかし個人的には、その直前の会話の内容のほうが来るものがあったり
 この場面はキスシーン以上に頭をひねったところなので、見ていただけて嬉しいです。
>カリンは横島と小竜姫との間にできた娘みたいです
 なるほど、まさにその通りですねぇ。果たして両親そろって負うた子に教えられるハメになるのかどうか<マテ
>唐巣ハザード
 精細な描写は心が痛くて出来なかったので、簡潔にまとめてみました(涙)。

○とろもろさん
>うわ、やはり、タマモちゃんのご褒美はなしですか
 いや、アリです。
 しかし横島君がヘタレなせいで延期になってしまいました。
>映画では、横島君は敵役なのでしょうか、それとも、三枚目役なのでしょうか?
 両方です(酷)。
 ピートが主役でユッキーがかっこいい敵役でした。
>しづもん編
 おキヌちゃんが出るまでもなく片づいたという超展開でした(^^;

○内海一弘さん
>カリンのご褒美…実はタマモちゃっかり起きてたり(笑)
 そう考えると今回の発言も意味深になってきますw
>ユッキー
 でも心の奥では色々考えてると思うのですよ、きっと。
 横島君は自分の幸せっぷりをぜんぜん自覚してない模様です。
>おキヌちゃん
 生き返りはしましたが、再登場はいつになるやら○(_ _○)

○KEIZUさん
>更新
 最近筆のノリがよくて早くなってます。もともと中編くらいの予定だったんですが、気がついたらすっかり長編になってました(^^;
>しかも!横島がその後に襲い掛かってという一連の行動がないというのが
 それやったら以前膝枕してもらった時と同じですしw
>タマモなのかカリンなのかハーレムなのか!?
 当人も悩んでるようです。

○LINUSさん
 この話の設定上、横島自身が1人で活躍してケリをつけるという展開にはなりにくいですからねぇ。
 でもたまにはこんなSSがあってもいいのではないかと。
>アシュ戦
 現在のプロットでは彼の立場は原作とはかなり違っておりますので、どうなるかは全くの未定です。

○TA phoenixさん
>実際は自分自身とのキスという設定ですがそこは意識的に除外しますw
 それが賢明なご判断かと<超マテ
>最後はどたばた
 そこはGSのSSですし、何より横島君ですから(ぇ
>カリンとのキスシーンの時タマモは本当に寝入っていたのかと邪推してしまいますが
 それを追及するのはヤボってもんですよー。
>おキヌちゃん
 すいません、台詞すらありませんでした○(_ _○)
 苦情は美智恵さんの方にお願いします(ぉぃ

   ではまた。

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