ぷすぷすぷす・・・
何かがこげるような匂いがする。
その匂いの元はわかっている。
それは頭から煙をあげ、地面に横たわっている物体。
ぴくりとも動かずただ頭から煙をあげている。
その名は・・・・ヒャクメ・・・
「ああ、神よ!どうか彼女に安らかな眠りを・・・」
そしてヒャクメのために祈る小竜姫様・・・あなたも神様ですよね?
「いえ、死んでませんし。たぶん。」
まあ地面が陥没してクレーターみたいになってはいるが死んじゃいないだろう。ヒャクメだし。
「・・・そうですね。それじゃあとどめを・・・」
「いくらなんでもそれはかわいそうな気がしますが。」
「あら?横島さんはそう思いますか?大丈夫ですよ。彼女は死ぬと更なる力を身につけて蘇ってきますから。そう!あたかも不死鳥フェニックスのように!!」
そう言って力強く手を振り上げて力説する小竜姫様。
「・・・本当ですか?」
「大丈夫です!なんせヒャクメですし!!」
ああ!なんか前の説明より説得力がある!?
「それでは「ちょ、そんなに都合よく私は出来てないのね〜!!」・・ちっ!」
小竜姫様がヒャクメにとどめをさそうとさらにハリセンを振り上げようとするとヒャクメが勢いよく復活した。
「『ちっ!』ってなんなのね〜!?それに横島さんも変な納得のしかたしないで欲しいのね〜!!」
「でも・・・」
「ねぇ?」
ヒャクメの叫びに俺と小竜姫様は顔を見合わせて・・・
「「だってヒャクメだし。」」
同じ言葉を発した。
「ひ、酷いのね〜!!」
ヒャクメは叫び声をしばらくあげた後、いじけたように地面にのの字を書き始めた。
「ふ〜んだ。いいのね〜。いいのね〜。どーせわたしなんて・・・」
今もぶつぶついいながら体育すわりでいじけている。
「・・・それで、いい加減私の修行を始めて欲しいワケ。」
今まで黙っていた(呆れていた?)エミさんがそう言った。
すみません。ちょっと忘れてました。マジで。
「さて、気を取り直して小笠原さんの修行に入りたいと思います。まず、小笠原さんはどのような修行をお望みですか?」
「決まってるワケ!令子に負けないように強くなりたいワケ!!」
「令子?ああ、美神さんですね?」
「そう!あのバカが出来たんなら私に出来ない訳ないワケ!!」
エミさんは少し興奮気味に言った。
「なあヒャクメ?なんでエミさんってあんなに美神さんをライバル視するんだ?」
俺は小声でヒャクメに(立ち直った。)問いかけた。
「さぁ?わからないのね〜。わたしはそれより気になることがあるのね〜。」
俺の言葉に返事をしながらヒャクメは続けた。
「横島さん?わたしの格好を見て言うことはないのね〜?」
俺はその言葉に改めてヒャクメを見つめた。
ヒャクメはいつもの笑顔を浮かべている。・・・袴姿で。
合気道の選手のような袴姿で頭には白い鉢巻が巻かれていた。
「いや、別に。」
「な!?いつもみたいに『なんで袴姿なんだーーー!?』って言うツッコミはどうしたのね〜!?」
「いや、たまにはいいかな〜と思って。あ、でも一言言わせてくれ。」
「なんなのね〜?」
「その格好はどっちかっていうときりっとした女性が似合うと思うからお前はあんまり似合ってないと思うぞ?」
「な!?酷いのね〜!!横島さんが好きだからこの格好にしたのに!!あの夜は嘘だったのね〜!?わたしにはなんでも似合うって言ってくれたあの夜は!?」
「だ、誰がそんな事言ったんだーーーー!?」
俺は思わず叫んでしまった。
ヒャクメはそれを聞くと右手を前に出して親指を立てる。
「それでこそ横島さんなのね〜。」
「し、しまった!!」
くそ、まんまとツッコンでしまった。
「まあ、横島さんは骨の髄までツッコミなんだからしょうがないのね〜。あ、それよりエミさんの修行なのね〜。」
そう言って再びエミさん達に視線を向ける。
「それでは小笠原さんは美神さんと同じ修行を望むのですか?」
「出来ればそれより強くなれるのがいいんだけど、取り合えずはそれでいいワケ。」
エミさんがそう言うと小竜姫様はにっこりと笑みを浮かべ、
「無理です。」
と切って捨てた。
「な!?それはどういう訳なワケ!?私が令子より劣っているとでも言いたいワケ!?」
エミさんは小竜姫様の言葉に怒鳴り声を上げた。
「そういうわけではありません。あなたの資質は美神さんと大差ありません。」
「じゃあなんで!?」
「質の違いです。美神さんはどちらかと言うと近接戦闘に向いています。あなたはどちらかと言うと遠距離からの攻撃を得意とするように見受けられますが?」
「確かにそうだけどそれがどうかしたワケ?」
エミさんは更に疑問の声を上げる。
「美神さんがやった修行は全体的な霊力を上げる修行なんだけど、そのためには三体の相手と一対一で戦って勝たなきゃいけないのね〜。正直、エミさんは一対一には向いてないのね〜。」
エミさんの疑問にヒャクメが答えた。
「私だって一対一ができないわけじゃないワケ。」
「でもエミさん?その戦いは影法師を使って戦いますから道具なんかは使えないんですよ?」
今度は俺が答える。俺も正直あの戦いはエミさんには無理があると思う。
エミさんの得意技『霊体撃滅波』を撃つために3分間も相手が待ってくれるわけがない。
「ふん!私は道具なんか使わなくても戦えるワケ。」
エミさんは意地でも美神さんと同じ修行を受けたいらしく一歩も引かない。
「ふぅ。わかりました。しかしその前にテストをさせてもらいます。」
小竜姫様はエミさんの態度に折れたようで、そう言った。
「なんなワケ?」
「そこの横島さんに5分以内に一撃を加えてください。それが出来たなら修行を許可しましょう。」
「へ!?」
俺は小竜姫様の突然の提案にすっとんきょうな声をあげることしか出来なかった。
横島さんとエミさんは修行場で向き合っている。
結局エミさんは余裕綽綽で承諾して、修行用に用意された服装に着替えた。
「あの?小竜姫様?」
「なんですか?」
「棄権しちゃだめですか?」
横島さんが弱気な声を上げる。
「駄目です。」
小竜姫は満面の笑みで横島さんの言葉を切って捨てた。
「エミさん、横島さん、試合を始める前に少し条件をつけさせてもらいます。」
「?なんなワケ?」
「まずエミさん。この試合は打撃、もしくは霊波砲等の攻撃に限らせてもらいます。これは修行を前提にしたものです。ヒャクメに聞きましたがあなたはための必要な技を使うようですが一対一の戦いでそんな暇はありませんから。」
「べつにいいワケ。」
「次に横島さん。あなたは一切の攻撃を禁じます。これはあくまでエミさんの力を見るためのものですから守りに徹して下さい。防御のためのサイキック・ソーサーは許可しますが神装術は禁止とします。」
「はい。」
なるほど。考えたのね〜。横島さんは防御力だけならかなりのもの。それを打ち破れればたしかにあの修行も切り抜けられるかもしれない。逆にそれが出来ないならあの修行は無理だ。
「横島さ〜ん、頑張るのね〜!」
わたしはそう声をかけた。横島さんは少し照れたように軽く手をあげてわたしに答えた。
「それでは始めます。よろしいですね?」
二人は頷いて小竜姫の言葉に答えた。
「始め!!」
小竜姫の掛け声と共にエミさんが手に持った巨大なブーメランを横島さんに投げつけた。
「おたくには悪いけど、とっとと終わらせて修行に入らせてもらうワケ!!」
ブーメランは寸分の狂いもなく横島さんに向かっていく。
ガキィ!!
「くっ!」
横島さんはそれをサイキック・ソーサーで防ぐ。
「ふっ!ちょっとはやるようになったワケ!でもこれはどう?」
そう言ってエミさんは霊波砲を放つ。
しかしそれはエミさんが放ったにしては威力が弱く見える。
「よっ!」
当然のように横島さんはそれを防ぐ。その瞬間・・・
「これで終わりなワケ!!」
エミさんは先ほど地に落ちたブーメランを広い横島さんに殴りかかった。
うまい!あの霊波砲はブーメランを拾うためのおとり。そして霊波砲を防いだ瞬間の横島さんの隙をついた一撃が本命か!!
しかしわたしはそれを冷静に見ていることが出来た。
修行の成果?ううん、たしかにそれもあるだろうがそれ以上に・・・
ガキィィ!!
「なっ!?」
横島さんの力を知っているから。
「あ、危なかった〜。」
「あれを防ぐとは思わなかったワケ。でもまだ終わったわけじゃないワケ!!」
エミさんは更に横島さんに攻撃を加えるべく踊りかかる。
しかしそれはことごとく横島さんに防がれる。
当然だ。横島さんはメドーサの攻撃を命をかけて防ぎきり、今も小竜姫という神剣の使い手の教えを受けている。生半可な攻撃が当たるものか。
まったく。小竜姫も人が悪い。
エミさんの意識を一対一に向けることで打撃にこだわらせれば結果は見えている。
もしエミさんが普段のように道具を使い、黒魔術などを併用すれば横島さんに一撃を加えることはそんなに難しくはないだろう。
そして結局エミさんは横島さんに一撃を加えることが出来ずに5分が過ぎた。
「それまで!!」
小竜姫の掛け声が試合の終了を告げる。
「これで解りましたね?人には向き不向きがあります。あなたは美神さんとは違った方向で力をつけましょう。とりあえずは、ための時間短縮から始めましょうか。」
「ふん!面白くないけどそれでいいワケ。」
エミさんは小竜姫の言葉に不機嫌そうに答えた。
「横島さん、お疲れ様なのね〜。」
「ああ、流石にきつかった。」
わたしは横島さんにねぎらいの言葉をかけながら走り寄った。
「でも、エミさんの攻撃を防ぎきるなんて凄いのね〜。」
「ああ、自分でも信じられないよ。なんか体が勝手に動いたような感じだよ。」
「それはきっと普段の修行のおかげなのね〜。横島さんが日々強くなってる証拠なのね〜。」
「そうなのかな?自分じゃわからないが・・・まあ、流石にこれは疲れたよ。」
そう言って横島さんは腰を地面に下ろした。
「ふふ、本当にお疲れさまなのね〜。今日は夕飯に精のつくものでも作るのね〜。」
「はは、そうだな。よろしく頼む。」
横島さんは笑いながらそう答えた。
横島さんは日々強くなっていく。
わたしも負けてられない。
わたしは決意を新たにした。でも、とりあえずは・・・
横島さんのために精のつく料理をつくりますか!!
あとがき
今回は少しエミさんの修行について書きました。今回は実はわたしの当初の予定にはなく、エミさんの修行は一、二行ですますつもりでした。しかし内海一弘様、への様、うけけ様のご意見を見て思いついた話だったりします。本当に貴重なご意見ありがとうございました。さて、次でとりあえず修行期間の一ヶ月を終わらすつもりです。と言っても以前に言ったメドーサ編の後日談です。次は少しほのぼので行きますよ〜。
レス返し
始めにご意見、ご感想を寄せていただいた皆様に感謝を・・・
甲本昌利様
今回は袴姿のヒャクメでした。しかしこれもあんまり似合わなそうですね。戦い→武道の連鎖から生まれたコスプレなんですが、う〜ん、以前のチャイナの方がよかったな〜。次なににしましょう?
傍観者様
ハリセンについては試行錯誤中です。傍観者様のご意見を受けて少し考えるところがあり、それを如何しようかと。でも確かにしゃれにならない威力がありそうですね。
名称詐称主義様
指弾は正直かなり引かれました。うう、個人的には好きな武器なんですが今回ははずしました。すぐには使えるようになりそうもないので。武器の変化は後二つ考えてあります。まあすこし変化させるだけですが。
零式様
美神さんのネタ・・・ううむ王道ですね。しかしヒャクメ&横島君を美神さんにどうからませるか私の腕の見せ所ですねぇ・・・なにげに難しそうです。今回は少し変化球でいってみました。といってもフォークを投げたつもりが結局はただのストレートだったなんちゃってにちかいですが・・・
スケベビッチ・オンナスキー様
ヒャクメは今回あんまりいいとこ無いですね。いつものように可もなく不可もなくな感じでした。しかしたしかにハリセンはだれが考えたんでしょうね。ちゃんばらトリオあたりですかね?
内海一弘様
今回の話は内海一弘様の『次回はエミの修業ですね』の言葉から考え付きました。あとがきでも書きましたがエミさんの修行は書くつもりがなかったのですが、少し横島君の修行の成果をかけそうなので書いてみました。ご意見ありがとうございました。
への様
今回の話ではへの様のご意見の中の言葉がヒントになりました。貴重なご意見ありがとうございました。エミさんのライバル心を考えてこのような話になりましたが少し強引だったでしょうか?
究極超人あ〜○様
今回はあんまりヒャクメ目立ちませんでした。とりあえず目新しい展開は無しで。ううむしかしそのうち下駄履かせて学生服で自転車こがせたいですな。
寝羊様
かぼちゃブルマはかなり古いですから気にしないでください。ドラゴンボールのブルマさん・・・なつかしいですな〜。わたしはポイポイカプセルが欲しい!!
亀豚様
小竜姫様のブルマ・・・いかん、鼻血が。さすがに無理っぽいですね〜。ヒャクメでご勘弁を。次はいつもと違った小竜姫様を書くつもりです。お楽しみに〜。
kamui08様
横島君は確かに規格外ですね〜。すこしハリセンについては一考の余地があるとかんがえていますんで今後どうなるかわかりません。う〜ん、悩みはつきませんね〜。
うけけ様
今回の話を思いつくご意見ありがとうございます。今回はヒャクメの袴姿をお送りしました。前回よりは普通ですね。ちなみにヒャクメへの仏罰はご意見のとおり宇宙意思で定められている『お約束』ですね。