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「GS横島!!極楽トンボ大作戦!! 第十六話(GS)TS有り注意」

球道 (2006-09-18 21:12)
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夢を、懐かしい夢を、とても、とても、懐かしい夢を、見た。

それは、朧気で在りながら、鮮明で。
明るかったり、暗かったり、明滅している様で。
上は下で、下は上で、右は左で、左は右で。
浮いているようで沈む思考、身体はボロボロと崩れていく。
ぐちゃぐちゃに書き殴られた様な、落書きのような視界の中で。
誰かの顔だけ、ただ、それだけ。
ただ、それだけ。

綺麗だなぁ。

そう感じた。


その瞬間、目が覚めた。

跳ね上がるように身体を起こし、
ぐるり、辺りを見渡す。

ああ、夢かぁ。

月灯りが窓から射し込んでいた。
枕元のデジタル時計を、ちら、と見る、2時34分。
真夜中だった、昨夜、布団に寝転がったのが10時前だったので、それなりに寝ていたようだ。

うわ、汗すげぇなぁ。

不快感に顔を顰める。
身体は水浴びでもしたかのように、濡れていた。
原因は、もちろん、あの夢。

此処最近は見なかったのになぁ。

誰に言うでもなく、そんな言葉が口を吐いて出た。

自分が自分で無くなる、指先から何もかも流れていくように、身体の輪郭が崩れていくような。
それは、嘗て体験した、死のイメージだった。
ただ、死ぬだけなら、ただ単に、死んでいくだけなら、それだけで終わる筈の夢。
しかし、俺の場合、それだけでは、終わらない。

上も下も解らない、浮かぶのか沈むのか解らない、ゆらゆらと浮かんでいる。
ドロドロと融ける様な感覚の中で、ソレは唐突に現れる。
零に近くなった筈の生命力のメーター、ソレはメーターを容易く振り切る。
じわじわと温かいナニカが、消えた筈の身体を再構築する。
身体の中心から放射状に、パズルをはめて行く様な、失くした物を埋めるように。
時には無理矢理に、時にはピースの形を削って変えて。
すべてが、カチッとはまった時。

これは、再生のイメージ。
あの日、東京タワーの上で、あの時感じた、そのままのイメージ。

思い起こしているうちに、気が付けば横島は、

ああ、大丈夫だよ、ルシオラ。
俺は、いつだって幸せだから。

眠りに落ちていた。


  GS横島!!
極楽トンボ大作戦!!
  十六話


「ん〜〜〜っ!!」
カーテンを開けて、窓を開けると、日の光を体いっぱいに浴びる。
隣の山田家の味噌汁の匂いと共に、雨の匂いがした。
「ふぁ〜、昨日の夜、雨降ったんだぁ」
伸びをして体から眠気を追い出すと、今日もまた、新しい一日が始まるのだ。


日曜と言えども、伊達雪乃の朝は早い。
それはそうだ、この家で家事をまともにする人間は彼女だけなのだから。
勿論、春奈だって料理をすれば一流であるし、掃除、洗濯についても何等問題は無い。
そもそも、雪乃の家事の師は母であるからして、雪乃と同等、否、雪乃以上の物があるといって良い。
が、しかし、彼女が家事をやらなくなって久しい。
何故か?
彼女に聞いたらこう言うだろう、
「だって、めんどいじゃない」
勿論、一秒と掛かる事無く。
そう、彼女は極度の面倒臭がりだったのだ。
ものぐさ、とも言う。
英語で書くとMONO☆GUSA!

雪乃が家事を覚えるまでの間、彼女は堪えに堪え、ものぐさを封印し、雪乃を育てたのであった。
春の日も、夏の日も、秋も、冬も。
晴れの日も、雨の日も、雪でも、槍でも。
そりゃあ勿論、内心では「ちっ!めんどくせー」等と思ってはいただろうが、
雪乃を立派に、若干一部分栄養過多な素晴らしい体、もとい、立派な淑女に育て上げたのだった。
だからまあ、その反動で家事を雪乃にまかせっきりだとしても、朝起きるなりビールのプルトップを抉じ開けたとしても、時々飲み過ぎて幼児退行を起こしたとしても、許されるのである。

そんなわけで、伊達家の家事担当、雪乃の朝は早い。
朝食の準備をして、洗濯物を干して、掃除して、朝食作って、母親と妹を起こして、母親を着替えさせて、朝食のおさんどんをして、食器を洗って、抱きついてくる母親を片手で抑えながら家計簿をつけて。
頭の中で今日の予定を簡単に組み立てながら、階段を下りる。

さー、今日も一日頑張りますかねー。
心の中でガッツポーズをすると、リビングのドアを開けた。

ガチャ、
「あら、お早う、雪乃」
ガチャ。

?????
リビングのドアを咄嗟に閉めた雪乃は、突然の目の異常に困惑した。
あれ、おかしいなぁ、わたし、め、わるくなった?
ゴシゴシと目を擦る。
うん、へーき、いじょうなし、おーるぐりーん。

ドアを開け、閉める。
愕然とした。
お、お母さんが起きてる!?
そ、そんな、ま、まさか、またパラレルワールドに移動したの?
わ、私が、
「お母さん、もうちょっとしっかりしてくれないかなぁ」
なんて言ったから??
そんな、でも。
…………。
………。
……。
…。

それは、それで、いいか。
うん、良い事じゃない。
良かった良かった。

そうだ!よ、横島はどうなったのかな!?
こ、この世界でもクラスメイト、なのかな?
お、幼馴染とか!先輩とか!こ!後輩だったらどうしよぅ!!
きゃーきゃーきゃー!!

「ゆ、雪乃ー?」

幼馴染とかだったら、朝、起こしに行ったり、ご飯作ってあげるのは、普通だよね!
「ううーん、如何だろうね、今日行ってみたら?」
せ、先輩なら、やっぱり、ら、ら、ら、ラブレターとかで。
「伝説の木の下に呼び出してみるとか?」
こ、後輩なら、ご、ごくり……!
「夕焼けで赤く染まる教室……、せ、先輩!ぼ、僕!先輩の事がっ!
掴まれた肩から、熱が伝わってくる、私の頬は、きっと夕日より赤いだろう。
よ、横島君……、そ、その……。
僕の事、嫌いですか?嫌なら、嫌って言ってください……、そ、その、せ、先輩の事好きすぎて、止められそうも……!
!?
突然奪われた唇……!挿し込まれる舌に、雪乃の舌は蹂躙され、思考、理性、何もかもが根こそぎ奪われていく。
んっ!ん〜〜!ぷはぁっ!
銀色の糸が橋を掛ける、キラキラと光るその橋は、とろり、と、そして、ぷつん、と、切れた。
はっ!
横島は我に返る、掴んだままだった肩をパッと放し、顔を伏せた。
せ、先輩……、ご、ごめん、お、俺!
雪乃は、泣いていた、頬を伝う涙、ソレは横島の心を砕くには、十分だった。
横島は、もう、雪乃に己の気持ちが届く事は無いと、思った。
涙を拭おうと、差し出した手は、宙を彷徨い、雪乃に触れる事は無かった。
横島が、雪乃の前から去ろうとした瞬間。
雪乃の唇は、横島の唇を強引にぃ!」

「きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!」
顔を真っ赤にした雪乃が、身体を抱くようにしながら、いやんいやん、と首を振る。

「二人の身体は、絡み合い、互いのすべてを貪りあう。
夢の様な一時は一瞬にも永遠のように感じる……、二人はこの時、完全に融け合っていた。
そして横島の指が雪乃の……」
「きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!」

「……何、やってんの?」
ジト目で訝しげに二人を見るタマモ。
気が付けば、既に八時を廻っていた。


トントントントン……。
まな板を叩く音がする、小刻みに、リズムよく。
何かの焼ける音と、焼ける匂い、そして、食欲をそそる味噌汁の匂い。

枕元のデジタル時計によると、10時3分。
ちょっと寝すぎただろうか?身体を起こすと、匂いの元を探す。
台所には、見知った後姿。
「ふぁぁっ〜!おふぁよぅ」

「あ、横島、起きた?おはよう」
振り返らずに、鍋の様子を見ながら、返事を返す雪乃。

「ん〜、小竜姫様は?」
「ああ、シャオなら今日は忙しいって、工事の打ち合わせがあるからって」

「あー、そっか、昨日……、そうだったなー」
「老師にこってり絞られたみたいだったよ、可愛そうなくらい沈んでた」

「んー、着替えは?」
「ひーだーり」
横島が左を向くと、布団の横には綺麗にたたまれた着替えがあった。
のそのそと、着替えを手に取り着替えていく横島。
ズボンを履いて、気が付く。
「靴下、靴下」
箪笥をごそごそと漁る、靴下は見つからない。
「雪ー」
「真ん中の段の右端ー」
「ん、さんきゅ」
言われたとおりに開ける、靴下発見。

「はい、ご飯できたよ」
靴下を履き終わると同時に、ちゃぶ台にご飯がならび始める。
漸く睡魔を退治した横島も、並べるのを手伝う。

「今日は、ちょっと食べはぐれちゃってさ」
そう言いながら、横島の茶碗一杯にご飯をよそう。
「へー、寝坊か?それともどっか調子でも悪いのか?」
「ううん、起きた事は起きたんだけどさ……」
雪乃の脳裏には食べはぐれた理由が、映画のように……。
ぶんぶんぶん!
頭を振って、妄想を振り切る、雪乃。
「いや、何でも、無いの、何でも!」
「そ、そうか?それなら良いんだ」
「うん!さ、ご飯食べよ!」
「ん、それじゃ」

「「いただきまーす」」


さて、ここで今の状況を説明しよう。

昨日、妙神山に美神さん御一行が修行に来た。
美神さんと、おキヌちゃん、荷物持ちのピートに、そのストー……、美神さんをライバル視して追って来たエミさん。

それで……、まあ、あれだ。
結論から言うと。

妙神山は半壊した。

世界の修正力という奴なのだろうか、小竜姫様は竜化し、暴走。
逃げ惑う、美神除霊事務所御一行。
颯爽と現れる、俺と雪乃とタマモ。
如何にか沈めることに成功したが流石に無事とは言えず、妙神山は半壊……、否、もうアレは全壊かもしれない。

言い直そう。
妙神山は俺の知っている歴史通りに、全壊した。

と、まあ、そんなこんなで、美神さん達にも顔見せは出来たし、それなりに、好印象だったと思う。
で、これから如何しようか?
と、言うことである。

「まあ、あまり動く必要はないかなぁ」
なんて気楽に考えてみる。
構えても、あまり良い事無いしなー。


「そ、そうだ、よ、横島?」
「ん?」

台所で食器を洗っていた雪乃が、声をあげる。

「そ、その!い、一週間は、妙神山も休みなわけじゃない?」
「おう」
「そ、それで、きょ、今日は、日曜日で、が、学校も休み……」
「ふむふむ」
「いつもは、その、学校が休みでも修行してるわけで……、でも今日は修行しない、って言っても軽いメニューはするか……」
「うんうん」
「それでも、ひ、暇な時間が一杯あるんだなー、なんて……」
「…………」
「……それで……その」

いくら常に鈍感鈍感と、野暮天野暮天と罵られている横島でも、どうやら雪乃の言おうとしていることは理解したようだ。
視線を宙に彷徨わせ、右手で頭を掻く、横島。

横島だとて、今日は久しぶりの休みだー!なんて思っていたし、それに、横島も、雪乃を遊びに誘う、とか考えていない訳ではなかった。
しかし、昨夜考えていた、雪乃と遊ぶ、と言うことは、親友同士のソレであり、今、現在目の前にいる雪乃を見てしまうと、親友同士とは確実に違ったプランの遊びになることは請け合いで。
それでも、雪乃である雪之丞とそう言った、遊びに行く、と言うことをするのは、最早、心の摩擦も抵抗も何も無く。
何処に行こうかな、何て頭の片隅でプランを練っている横島なのであって。

「ゆ、雪」
「ひゃ、ひゃい!」
「その、今日、俺、暇なんだ、だからさ、その」
「よ、横島……」
目をうるうると某CMの犬の様に輝かせ、横島の言葉を待つように、横島を見上げる雪乃。

「お、俺と、あ、遊びに、行かな、い、か?」

つまり、そういう流れになるのである。


「……うん!」

雪乃は元気に返事をすると、向日葵のような、笑顔を見せた。


あとがき


覚えておいででしょうか?球道です。
かなり遅れてごめんなさい、本当に、ごめんなさい。
美神さんとか、おキヌちゃんを期待していた皆様、ごめんなさい。
試行錯誤の結果、こんな感じになりました。
難産でした、十数回書き直しました。
横島対美神(シャドウ)とか、色々、考えては見たものの、どーにも、ねぇ?

あ、そうそう、話はがらりと変わりますが、就職活動が終わったんですよ、内定を貰いまして。
PCに向かう時間が増えることでしょう、十七話も近いかもしれません。

ピリエ様、kamui08様、とんちゃん様、ヒロヒロ様、ミアフ様、ゆん様、kj様、LINUS様、リィ様、孔明様、焔片様、十五話のレス、有り難うございました、十六話です。
やっとこさ、お届け出来て嬉しく思います。
GS本編と絡むかなぁ、と思って居たのにこの有様です。
期待していた皆様には、本当に申し訳ないと思って居ます。
次は出来れば今月中に書ければ良いなぁと思っている次第であります。

ではでは、ばっちこ〜い!!

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