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「スランプ・スランプ!番外編2 「しろとたまもの 私たちのひみつきち」(GS)」

竜の庵 (2006-09-11 19:25)
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 「おいキヌ! 荷物が届いておるぞ」

 「あらショウ様。受け取ってくれたんですか?」

 「いや、玄関にホレ、だんぼーるばこが」

 「え? 受け取りのサインとかは…」

 「オレが玄関に出たら、置いてあったのじゃ。宅急便とは便利だのう」

 「なんだろ…? 箱にはなんにも書いてませんねー…あら、中身はDVDですね。美神さんが通販でもしたのかな…」

 「でぃーぶいでぃーとは何だ、キヌ!」

 「…美神さんと横島さん、厄珍堂にお買い物だしなぁ……ちょっと見てみましょうか」


 スランプ・スランプ!番外編2 「しろとたまもの 私たちのひみつきち」


 DVDセット後、画面に現れたのは砂嵐。
 しばしして、どこかの山の中が映し出される。

 『…えー、あー…おい女狐! これで録画は出来ているのでござるか?…おーけー? 赤いらんぷが? うむ、点いておる。…なるほどでござる』


 不安定に揺れる画面の中、特徴的な語尾の声だけが、微妙に緊張した様子で聞こえてくる。


 『ではこうして切り株に置いて…ほれタマモも来るでござる。美神殿達に宛てたびでおれたーという奴でござるのだから』

 『……あんた、中途半端に中途半端な事知ってるわよね…』


 ようやくブレの収まった画面の中、おずおずと現れる少女二人。


 「…シロちゃんにタマモちゃん!?」


 妙に行儀良く二人並ぶと、銀髪の少女がこほん、と咳払いをしてお辞儀。そっぽを向いている金髪ナインテールの少女の頭も掴み、ぐいと下げさせる。


 『痛いわね馬鹿犬!』

 『愚か者! 手紙の冒頭は時候の挨拶と決まっているのでござる! 礼を尽くさんか女狐!』


 二人、やいやいと言い争いを始める。


 「何やってるのこの子達……?」


 『あー、ともかく! えー、あー…暑さ寒さも彼岸までと申しますでござるが、事務所の皆様におかれましてはー…元気いっぱいで過ごしておられるでござろうか』

 『季節が分かんないわよそれじゃ…せめてお揚げのおいしい季節になりました、とか言いなさいよ』

 『そっちのほうが分からんでござる!』

 『うっさいわね、挨拶はもういいじゃない。やっほ、見てるー?』


 ナインテールの少女タマモ、こちらに手を振る。慌てて、銀髪の少女シロも追従。


 『せんせぇーーーーっ!! 拙者は元気でござるよーーーーーっ!!』

 『ミカミ、おキヌちゃんも元気? なんか照れるわね、こういうの』


 シロはそれはもう威勢よく、タマモは視線をそわそわさせつつ、ご挨拶。


 「どこでビデオカメラなんて手に入れたのかしら…」


 『黙って出て行ってごめんなさいでござる。当初の予定では、妙神山に先回りし、現れた先生や美神殿をさぷらいずさせる筈でござったのだがー…どっかの女狐のせいで』

 『ちょ、シロ!? それ言わない約束だったじゃないの!!』

 『ああん? 大豆料理の品評会に飛び入り参加、ゲスト審査員として日本各地のお揚げ料理を食べまくったことは、喋らないでござるよ?』

 『あーあーあーーっ!?』


 「タマモちゃん……おっきなリアクション…」


 『そういうシロだって、フリスビードッグ大会の優勝商品がトップブリーダー愛用、犬どころかイヌ科根こそぎまっしぐらのドッグフード『犬狼なまごろし』一年分で、『今日だけ拙者の飼い主になるでござる!』って言って首輪とリードを私に着けさせ…』

 『だああああああああああ!? それは秘密でござるぅぅぅ!!』

 『おあいこね』

 『おあいこでござるな』


 「仲良しねぇ…」


 『話が逸れたでござるな。で! 拙者たちは妙神山行きを断腸の思いで断念し…それならばと一念発起して、修行の旅に出ることにしたのでござる!!』

 『私は帰ろーって言ったんだけど、馬鹿犬が聞かなくて…こいつ、ヨコシマが修行するなら自分もやるって…全くいい迷惑よ』


 タマモ、肩をすくめる。シロは何故か胸を張る。


 『ふっふっふ! で、武者修行の旅の最中、拙者がふらんくふると早食い大会に出場し、優勝商品のこれを手に入れたのでござるよ! 熱い戦いでござった!』

 『フリスビードッグ大会は僅差で負けちゃってねー。当面の食糧確保のために、その手の大会荒らして回ってるのよ。ビデオカメラもその戦利品ってわけ』


 「シロちゃん…武者修行の方向、間違ってきてますよ? というか荒らしって」


 『せっかくなので、こうしてびでおれたーを送ることにしたのでござる! 必ず強くなって帰るでござるからして、ご心配召されるなでござる!』

 『馬鹿犬一人じゃ不安だから、私もついてく事にしたの。…各地で収集したお揚げ料理レシピ、おキヌちゃんにあげるから待っててね!』


 タマモ、分厚い辞書のような手帳を取り出して表紙をこちらに見せる。題名『御揚百珍』。


 『これで終わるのもアレでござるな…タマモ、かめらを持つでござるよ。修行場の案内をするでござる』

 『えー、重いじゃんこれ。あんたが持ちなさいよ』

 『やでござる。落として壊したらどうするでござるか!』

 『……それもそうね。シロおっちょこちょいだし落ち着きないし…私が管理しないとだめよね、高価なものは』


 「タマモちゃん、子供のお年玉を貯金してるお母さんみたい…」


 タマモ、画面の外へ出る。しばしして、掛け声と共に画面が空を映し、タマモの足元を映しと揺れ動く。


 『うわ、あっと、あ、そうか肩に担ぐのね。ふんふん。電池残量も十分、と。オッケーよシロ』

 『それではここしばらくのねぐらへご案内するでござる! なかなかはーどな修練をこなせるいいところでござるよ!』


 「肩に担ぐって、どう考えても業務用のビデオな気が…」


 『ここが入り口でござる。廃棄された建物のようなのでござるが、悪霊がはびこっていたり、得体の知れぬ何かが徘徊していたりと相手に困らないのでござる』


 タマモカメラ、その入り口をアップに。レンガの壁の一部分が崩れて、中が覗いている。


 『けっこう大きな塔のような建物でござる。火事でもあったのか、壁の一部が焦げてるでござる。向こうには、崩れた屋敷のような廃墟もあるでござるよ』

 『なんちゃらリゾート…って、看板が落ちてたわね』


 「…? なんだろう、なーんか引っかかるなぁ」


 『さて、内部へご案内でござるー。瓦礫がたくさん落ちていて、実戦形式の訓練には丁度いいでござるよ』

 『ここ、外見は古びてるんだけど…匂いは新し目なのよね。わざと外観だけ古くしてみせたような感じ』


 瓦礫のアップから、よく分からない機械の破片へとカメラは移動。タマモ、随分手馴れてきた様子。


 『む! タマモ、いつもの奴が来たでござるよ。その辺にかめらを置いて訓練の様子を撮るでござる』

 『おっけー』


 霊波刀を展開したシロを中心に据えてカメラは固定される。タマモ、画面の上からシロの背中側へと舞い降りる。


 『ぬあ! 女狐! 一人だけかっこいいふれーむいんを!』

 『いいじゃない。カメラマン役の特権よ』

 『次は拙者がかめらまんをやるでござるーーっ!』

 『はいはい、壊すんじゃないわよ』


 「デ、デジャヴって奴だよねきっと…あはははははは…」


 『ここにいっつも現れるのは、変な人形の集団でござる。なかなか統制が取れた動きをするので、遮蔽物の多いここではいい感じでござるよ』

 『来るわよ! 散開…したら映らないじゃない。ここで迎撃!』

 『それもまた訓練でござる! 先生、見ててでござるーーーーーっ!!』


 フレームの中でシロとタマモ、足元や瓦礫の影から攻撃を仕掛けてくる相手を、霊波刀の峰打ちや、弱い狐火で迎撃していく。
 と、突然無機質な人形の顔がフレームインしてくる。


 『ぬ、これは戦場記録用のビデオカメラ!? 我ら劣勢なれど意気軒昂! 必ずや侵入者を排し最終防衛ラインを死守するものであります!』

 『ぬあ!? オイコラ人形! かめら前に立つんじゃないでござるよ! びでおれたーでござるから』

 『何!? く、家族に宛てた戦場からの手紙とは…! 無粋なことをした。部隊の責任者として、謝罪する』

 『いいってことでござる。さあ部下共は殲滅したでござるよ! 残るは部隊司令のお主のみ!』

 『ぬあああああ!? いつの間に…! こうなれば、私も一兵卒としてここを死地と定めるまで! いざ参る!』


 カメラ前から、やああー、っと迷彩服に迷彩ヘルメットを被った人形が、銃剣を構えてシロとタマモに突進していく。


 『えい』


 一瞬で狐火に包まれ、地面を転げまわる人形。白旗を掲げ降伏。


 『えー、こんな風に毎日やりあっているでござる。実は結構気さくな連中なので、訓練が終わればのーさいどでござる』

 『ノーサイドって何よシロ』

 『昨日の敵は今日の友、みたいな言葉でござるよ』

 『また中途半端に覚えてるわね…』


 「………あはははははははは。私はなーんにも見てませーん」


 『さて、こいつらとの訓練は前座でござる! …なんでござるか、部隊司令殿。だってお主達弱いし。もっと精進するでござるよ。群れでの狩りは一に修行二に修行、三・四がなくて五にご飯でござる!』

 『シロ……何知識よそれ』

 『気にするなでござる。ほれタマモ、今度は拙者がかめらまんでござるから、続いて案内するでござるよ』

 『はいはい。次は地下に行くわ。ヘンテコ人形より数段手強い修行相手がいるからね』


 シロ、とうっとジャンプすると画面から消える。と、カメラが持ち上げられ、えらい勢いで左右に振られる。

 『ちょ、ちょっと馬鹿犬!! 乱暴に扱わない! あと変なボタン触らない!』

 『分かってるでござる。ほれ、さっさと進むでござる』


 全く、ときびすを返すタマモ。足元、体育座りですすり泣いている人形の群れを踏まないようにして、建物の奥へ進んでいく。


 『はい、ここが地下への入り口。瓦礫が降ってきた衝撃で出来た穴みたいね。じゃあ入るわよー』


 「あれ…? そんなのあったかな以前…ってああああ私暗に認めちゃってるぅぅぅぅぅぅ」


 地面に開いた亀裂から階下へ身を躍らせるタマモ。ちょいちょいと手先だけ出てシロを呼ぶ。


 『先にカメラ降ろしちゃうわよ。寄越しなさい』

 『分かったでござる』


 カメラ、シロの手からタマモへ。穴の中は狐火で照らしてある。がさこそとマイクにいろんな雑音を拾いながら、カメラは穴の中へ。


 『えーと、説明書に確か…あ、あったあった。暗視画像モードオン、と。こういう技術ってほんと進歩が早いわねー』


 タマモ、ぱちんとどこかのスイッチを入れる。途端に、映像が変化する。狐火の小さな光源を増幅し、昼間と同等の明るい画像を得た。


 『はいシロ。他のところは触るんじゃないわよ! …えーっと、地下は広いわ。なんか格納庫みたいな造りで、すっごい頑丈』


 こんこん、とタマモは壁を叩いてみせる。


 『タマモ、んなのはいいからアレを見せるでござるよ。きっと皆驚くでござるからして』

 『そうね。はいこっちよ。これはきっと、ミカミでも驚くわね』


 タマモ、どんどん奥へ。カメラはブレにブレながら続く。シロが飛んだり跳ねたりしているせいらしい。


 『到着っと。開けるわよシロ』

 『ばっちり撮っているでござるよ!』


 カメラが上下に大きく振られる。映っているのは巨大な鉄の扉。タマモがその脇で壁に埋め込まれているスイッチを押す。


 『ご開帳―。ふふ、こういうの結構面白いわねー』

 『すぺくたくるでござるな!』


 ごうんごうんと、重たい扉が開いていく。その向こう側はまだ暗くて見えない。タマモ、扉が開ききったのを見てまたスイッチ、オン。じりじりと白銀灯に光が入り…明るく照らされた中に並ぶのは、10数体の石像達。


 「あああああああああああああ!? こんなのあったんだ!?」


 『どうでござるか! この石の巨像! 拙者が数えた限りでは、15体はあるでござるよ! しかもでござる…タマモ!』

 『オッケー! 我、汝に命じる! 起きろー!』


 「ああああああああ………そんな適当な命令でぇぇぇぇ」


 『ま“っ!』

 『ホラ見て! こいつ、私の霊波で操れるのよー。こういうの、ヨコシマみたいなガキは憧れるんでしょ? 行け! ろぼ! みたいな』

 『毎日、タマモや拙者が操るこの石像で訓練してるでござるよ』

 『結構頭いいのよ、こいつ。学習してるみたいで、日に日に強くなってるし』

 『退屈な時は、お互いの操る石像同士で戦わせて遊んでるでござる』

 『ま、9割がた私が勝つけどね。これはまぁ、普段の戦い方にも関係あるわね。シロは自分が動いてなんぼだし』

 『悔しいので毎日挑んでいるでござる! というかそっちがめいんになりかけるくらい!』


 タマモ、石像に飛び乗って広間のほうへ出るよう命じる。地響きがカメラを揺らす。


 『じゃあ、馬鹿犬と遊んであげましょうかね。カメラこっちに置いて。大丈夫よ、広間全体を捉えてるから、存分にやりなさい』

 『拙者の勇姿、堪能してくだされ先生ーーーーーーーーっ!!』


 カメラ、やや乱暴に地面に置かれる。タマモが駆け寄って、適当な高さの瓦礫にセット。レンズを石像のほうへ向ける。


 『じゃあ…ろぼ! 馬鹿犬をぎったんぎったんに叩きのめしておしまい!』

 『ま“ぁーーっ!!』

 『往くでござるーーーーーーーーーーーーーっ!!!』


 シロ、画面右下から弾丸のように石像へ飛び出す。途端に激しい連撃が石像を襲うも、大した傷にはならず。石像の反撃は拳のみ。動きが鈍重なため、軽快なシロには当たらず。


 『私が思うにねー…』


 そんな背後の様子は全く気にせず、タマモ。ひょいと画面の横合いから顔を出して画面の大半を制する。顎に人差し指を当て、うーん、と子悪魔的スマイルを浮かべる。


 『きっとここは…デジャブーランドの二匹目のドジョウを狙って造られたテーマパークに違いないわね! 表に落ちてた看板にも、リゾートがどうとか書いてあったし!』

 『せいやぁーーーーーーーーーーーーっ!!』

 『ま“っ!?』

 『デジャブーランドにも、GSをモチーフにしたアトラクションがあったでしょ? ここでも似たようなの考えたのよきっと。こーんなオモチャ造ってさ。でも、造形美がいまいちだし…一階にいたヘンテコ人形もその名残ね。きっと発案者にセンスが無かったのね』

 『喰らえーーーっ!! 人狼剣術奥義、霊波刀Vの字斬りーーーーっ!!』

 『ま“あー!?』

 『…っと、あっちに集中しないとね。ろぼ! ロケットパンチとガトリングランチャー同時発射!!』

 『ま“ま”ま“っ!!』

 『ぬああああ!!?? 女狐! 飛び道具とは卑怯なりーーーっ!!』


 カメラ、きゃーきゃーわーわーと騒ぎ続ける二人の少女を捉え続け…


 『あ! 流れ弾がかめらの方に!?』

 『しまったぁぁぁぁ!!??』


 そんな叫び声を最後に、ぶつんと途絶える。そして砂嵐。


 「……あ、あははははははは。私は何も見てませーんー。お人形の兵士とかゴーレムなんて見てませーんー。南部グループの2人組なんて知―りまーせんーー…」

 「キヌ! 気をしっかり持て!? なんだか分からぬが、とにかくしっかりせいー!?」

 「…あ、キヌ姉様。砂嵐が終わりましたよ。また先ほどのお二人が…」

 「ふえ?」


 『…大丈夫でござるか本当に。映ってるでござるか? 赤いらんぷが割れてて…うう、これで録画失敗してたら切ないでござるよぅ…』

 『んー……ちょっと落っこちただけじゃない。たぶん平気よ。ほら、説明書にも防爆仕様だって書いてあるし。耐水・耐圧・耐塵…やけにごついカメラだと思ったら、これって軍事記録用なのね。さっきの人形も似たようなこと言ってたっけ』


 再び映った画面には、こちらを覗き込んでいるシロとタマモの姿。場所は最初に映った山中。


 『米軍基地主催の大会でござったしなぁ…確かに頑丈な作りでござるし、大丈夫そうでござるな。では気を取り直して』


 「米軍主催のフランクフルト早食い大会って…シロちゃん、白人さんによく勝てたね…」

 「問題はそこじゃろうか」

 「黙っててあげましょう、兄様」


 『もうしばらく、拙者たちは修行を続けるでござるよ。美神殿や先生が強くなって帰ってくる今、拙者だけが以前のままとはいきませぬ故。必ずや強くなって、先生のぱーとなーとして背中を守ってみせるでござる!!』

 『私はどうでもいいんだけどー…御揚百珍の完成のためには、もっと全国を回らないとだめっぽいし。馬鹿犬の保護者ってことで見届けてくるわ…私も、ちょっとは力付けないと………う、家に帰りづらいしね』


 カメラより遥か遠くを見据えて叫ぶシロと、『家』のくだりを少し恥ずかしげに言うタマモ。


 「シロちゃん…ふふ、タマモちゃん、ここがお家だって言ってくれるんだね。嬉しいな」

 「キヌが元に戻った…チリよ、兄は少し怖かったぞ」

 「私もです…」 


 『それではこれにて失礼するでござる! 先生、美神殿、おキヌ殿、人工幽霊一号殿も…健やかにお過ごしくだされ!』

 『じゃあね、みんな。お土産話楽しみにしててね』


 シロとタマモ、手を振る。タマモが画面に近寄り、手を伸ばしてくる。


 『あ、ねぇシロ。ビデオレターって…事務所にどうやって送るわけ?』

 『へ? …そういえば考えてなかったでござるな』

 『たしか、宅急便、っていうのよね。んー? どういう仕組みなのかしら』

 『複雑な手続きが要りそうでござる…多分、お金もいるでござるよ』

 『現金がもらえる大会なんて出てなかったし。そんなの無いわよ』

 『たっきゅうびん、とはどんな字を書くのでござる?』

 『宅に急ぐ便………あ、分かった!』

 『おお?!』

 『飛脚よ飛脚! 走って届けるのよ、文とか。あれの荷物版なのよきっと!』

 『おお! 確かに自宅に急ぐならば走るのが最速!! 拙者、ひとっ走り宅急便してくるでござるよ!』

 『確か、部隊司令が箱を持ってたわね。アレに入れて置いてきたらいいわ』

 『ではもらってくるでござる! タマモはでぃすくを取り出しておくでござるーーっ!』


 シロ、ぱひゅーんと画面奥へ駆け抜けていく。


 『…馬鹿犬。んな訳ないじゃない。でもまあ、しばらく一人で羽を伸ばせるってもんねー…あいつの修行に付き合ってたら体中痛くてしょうがないわ…』


 タマモ、苦笑を浮かべてシロの後姿を見送る。そして、はっ、と気づいてカメラに向き直る。


 『止めるの忘れてたわ…まぁいいか、どうせシロは見ないし。今の、オフレコでお願いね♪』


 タマモのウィンクを最後に、ビデオは終了した。


 「はー…うわぁ、ほんとにこの箱…『自衛ジョーDXフィギュアセット』って…」

 「のうキヌ。今のもここの住民なのか?」

 「はい。二人とも、大切な仲間で…家族です」

 「そうか。女所帯でちょっと怖いが、オレの紹介を忘れるでないぞ、キヌ!」


 「この馬鹿! ほいほい厄珍の口車に乗って、毎度毎度ヤバげな薬飲んでんじゃないわよ!!」

 「堪忍やーっ!! 出来心やったんやぁぁーーーーー!!」


 「あ、美神さんと横島さん…これどうしよう。…どうしようもないか」


 おかえりなさーい! とおキヌは元気良く返し、DVDデッキの電源を切った。

 鞭のしなる快音。聞きなれた断末魔。

 玄関へ出迎えに駆ける、3つの足音。

 美神除霊事務所の完全復活までは、もう少しのようだった。


 おまけ。


 「だからさー、私は思うんだけどー」

 「ま“」

 「あいつ、手加減とか知ったほうがいいよねー」

 「ま“ま”」

 「ほら、馬鹿だから。私が幻覚なんか使ったら、一発で決まっちゃうわけよ。分かる?」

 「ま“ー」

 「こっちは手加減してやってんのに。狐火だけでさー」

 「ま“あー」

 「…今度、あんたにここの奥で見つけた追加装備、付けてあげる。一度あの馬鹿犬、足腰立たなくなるまで伸してやらないと、付け上がる一方だわ」

 「! ま“!」

 「何よ、嬉しいの? なんて名前だったかな…翼みたいで…赤と黒に塗り分けられてて…バーニアみたいのが2つあって…背中に装着出来るのよ。高機動用って感じ」

 「ま“ま”! ま“ま”ま“ま”!?」

 「? 他にもでっかい剣の青いタイプと、砲戦仕様の緑色のが…って、何、こっち?」


 「たぁぁぁまぁぁぁぁぁもぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………」


 「……えーっと」

 「よくも謀ってくれたなぁぁぁぁぁ……人工幽霊一号殿に教えてもらったでござるよぅ」

 「あ、ほんとに走って持ってったんだ。凄いわねぇ」

 「あれくらいどうってことないでござる…だが、女狐。命乞いの準備は整ったな?」

 「うーん……ねぇ、ろぼ」

 「ま“、ま”ま“!?」

 「実は、さっきの3種類を統合したやつもあってね。私の命があるうちにそれ付けてきてね早くさっさと行ってこいうすのろーーーーーーーっ!!」

 「逃げるな獲物ぉぉぉっ!!!!」

 「ま“―、ま”ま”ま”ーー!!??」

 「今宵の夕食はリアル狐うどんでござるぅぅぅーーーーーーっ!!」

 「リアルって何がぁーーーーーーーーっ!?」


 ゴーレム達が眠る格納庫の奥に、あぶない動力のゴーレムフ〇ーダムやジャ〇ティスゴーレムは……ありません。

 「ま“」


 おわり


 後書き

 竜の庵です。
 シロ&タマモはどこいった? 的エピソードでした。タイトルの通り、ひみつきちでのひとコマ。秘密基地ではなくて、『ひみつきち』。裏山の洞窟みたいな。

 ではレス返しを。


 スケベビッチ・オンナスキー様 > 有難うございます。ん、元々レス数の多くないシリーズなので、なんも気にしてませんが。スケ様のレスは勉強になりますよ。美神編は戦闘描写と内面描写が煩雑で、分量もオーバー気味。絆、描けていましたでしょうか。汲み取ってもらえたなら有難いのですー。小竜姫にとある願望を抱かせてみましたよ。あの一言はその表れです。なんて意味深!(浅!) 普通怒ると思うのですよ、おキヌちゃん。2ヶ月は長いですしね。黒化なんてしたら、あんなもんじゃ済まないでしょう。


 SS様 > 美神って人は自分の弱さを認め、でも乗り越えてやるぞウラァ!って時が最高に格好いいのではと思います。もうちょい上手く纏める力量があれば、その辺の描写も綺麗に出来たのに…要・精進修練努力勉強! オチはまぁ、GS世界ですからあんなもので。お約束。


 内海一弘様 > 有難うございます。時系列で言っても今回が最後ですしね。王道ならやはり、妙神山の最後は崩壊でしょう。といっても軽めの崩壊ですが。おキヌは、まだまだ余力があります。最凶状態に比べれば…おママゴトのようなものです。番外編はこんな感じでした。シロタマ書きやすいなぁ。次シリーズも近いうちに。


 柳野雫様 > 有難うございます。人の情けが身に沁みる…っ! 美神と横島の絆の再確認が、美神編の肝でした。描写が足りていたのかいないのか。悩ましいですね、心中の描写は。作者の考える『おキヌ最凶ぷんぷんモード』はもっともっと暗く重く恐ろしいものです。今回なんて軽い軽いっ。次もさくさくと書き上げたいところです。


 以上レス返しでした。皆様、有難うございました。


 次シリーズはタイトルを変更、スタイルも弄って書こうかと。一話辺りの分量も抑えられる方式に。
 現在、鋭意プロット練り練り中であります。煮詰まっていい具合になるまで、少々お待ち下さい。

 ではこの辺で。最後までお読み頂き、有難うございました! はふー。

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