「タマえも〜〜〜ん!!」
なにやら愉快な声をあげながらGジャンの少年が部屋に駆け込んできた。
ここは見事なまでに四畳半一間の横島邸。最近同居人(?)が出来た世帯である。
「ん〜?」
と、その同居人であるタマモ(本名?タマえもん)は『マンガ』とデカデカと記載された謎な本をめくりつつ、気だるそうに駆け込んできた少年である横島を見た。
「なによ?」
お茶受けにお揚げを食べているのは、本人曰く「未来からきたキツネ型妖怪のポリシー」らしい。
「美神さんが、美神さんが…………」
泣きながら小声で話す横島。
さすがにその様子にタマモも近づいて話を聞こうとする。
「美神さんが…………
裸を見せてくれんのやぁぁぁっぁぁぁ!!!!!!!!!」
…さてと…タマモは中断していた読書を再開しようと座布団にもどった。
「なんでじゃぁぁ!!お前は未来からきた妖怪だろうが!!」
「だからなによ?」
「このパターンとしてはだな、『しょうがないなぁタダオくん、○○××〜〜』などと言いながら愉快な音楽と共に秘密道具をかますのがセオリーやないか!」
「そんなセオリー知らないわよ」
「この世には神も仏もないんか〜〜!」などと某修行場の管理人である竜神などが聞いたら神罰を下しそうなことを喚きながらジタバタしている横島をうっちゃっておいて、タマモはさらっと別の話をした。
「そろそろ昼御飯の時間でしょ。はやくご飯つくってよ。」
…ピク…ジタバタが止まった。
「…前から聞こうと思っていたんだがタマモ」
「ん?なに?」
座布団に座りなおしたタマモに横島はずいっと近づくとジト目をしながら切り出した。
「お前なんでここにいるんだ?」
「そんなのセオリーにきまってるじゃない?」
「そんなセオリー知るかぁぁぁ!!!!!」
横島の突込みが響き渡る。
「大体だな。昼間っから食っちゃ寝で、やることといえばその得体のしれない本を読むだけ。なんなんだお前は!」
「む〜!私だってこんな本わけわかんないわよ!」
「んじゃなんで読んでるんだ?」
「…セオリー?」
「知るか!!聞き返すな!!」
なんとなく横島が哀れに見えてきた。
「戸に書く!とにかくだ、お前も『未来からきた○○』の端くれでセオリーと言うのなら、もっとこう実利というのかだな、俺のためになるなんかをするべきだろう。否そうするべきだ!」
と、果てしなく情けないことを大威張りで横島は言い切った。
「ふ〜ん。つまり、横島は私に奉仕してほしいってわけね?」
タマモの目が妖艶に微笑む。
「もぅ、そうならそうと言ってくれればいいのに。
い・い・わ・よ横島好きにして♪」
……………………
………………
…………
……
「アホかぁぁぁぁぁっぁぁぁ!!!」
「む!失礼ね!」
ちなみに、このタマモの姿、金色キツネの着ぐるみを着た愛らしい少女である。
…そう『着ぐるみ』だった。
「幾らなんでも着ぐるみに欲情するかぁ!!」
「むむ!脱いだらスゴイのよ!!」
「なに?!脱げるのかそれ??」
……………………
………………
…………
……
「てへ♪脱げなかった」
「どぉぉせ!そんなことだろうと思ったよぉぉぉ!!!!」
今日も魂の雄叫びは絶好調だ。
「っていうか役に立ってるじゃないわたし」
横島の魂の絶叫が一通り終えたところでタマモは言った。
「どこがだ?」
「ご飯」
「…………」
そう、タマモが居ついてからの横島家の食事事情はほぼタマモのポケットから出る食材によって賄われていたのである。とりあえず米が出るのは大きかった。
んで昼食。
なんだかんだで、横島とタマモはタマモが提供(ポケットから出した)食材で『お揚げ丼』を作って食していた。
「しかし、未来からきた妖怪の特技が『ポケットから食材を出す』こととは…しかもお揚げ系限定だし。」
「なによ?文句あるの?」
嫌なら食べるな!とばかりにタマモの視線が横島を射抜く。
「いや、これはこれで全く文句なんてないんだが」
横島の貧乏具合から言えば、このタマモの能力はまさに神の贈り物に近い。ちなみに某神父と吸血鬼のところにいけば神の贈り物そのものにされそうではある。
「つうかなんかもっとこう、未来道具とか期待するってもんだろ?」
「……あるわよ?」
は?
「あるんか??」
「あるわよ?」
……………………
………………
…………
……
「んじゃメイド服のね〜ちゃん出してくれ!!!」
やっぱりそれかい!という別次元世界のSS読みのな人々の突込みを受けながら、横島は前回とほとんど変わらぬ煩悩丸出しな願いをした。
「無理だからそれ♪」
「やっぱ無理なんじゃねえかぁぁ!!!!」
「あんたの要求が偏りすぎてるのよ!」
お約束というか、自ら流した血涙に沈む横島。
「じゃあ、私がメイド服着てあげよっか?」
「着ぐるみが着ても萌えんわぁ!!!!」
…まぁそれは置いておいて…とタマモはゴソゴソとお腹のポッケをあさり始めた。
「はい『揚げコプター』♪」
「…やっぱ揚げからは離れられんのか」
「失礼ね」
タマモは棒の先っぽに2枚のお揚げがくっついたものを取り出した。
「まぁでも秘密道具っちゃ秘密道具だな。『タケコ○ター』のパチもんだから空が飛べるんだろ?」
はぁ?アンタバカァ?…と、どこぞの二号機パイロットのようにタマモは言った。
「これは棒の先端にお揚げをつけることで、回転してお揚げを乾かすことが出来る道具よ♪」
「なんじゃそりゃあぁぁぁっぁぁぁ!!!!!」
その後もタマモによる、まったく使い道のない道具の数々が披露され、それに伴う説明が延々と続いた。
いい加減止めようかと思っていた横島だったが、ふとあるものに目がとまる。
「タマモ。これはなんだ?」
手にとったのは、お揚げなどとは全くかけ離れた望遠鏡のような物体。
「ん?あら、そんなものが入ってたのね」
説明を止められたタマモは、でも気にした風もなく言ってきた。
「それは『スケスケ望遠鏡』といって対象が透き通ってしまう望遠鏡よ」
まったく役にも立ちはしない…とタマモ観点ではそういうことになっているが…
横島は狂喜した。
『これや!!俺の待ち望んでいたものはこれなんや!!!!!』
「…でもそれ壊れていて…って横島??」
タマモの目の前には既に横島の姿はなかった。
美神除霊事務所の向かいに立つビルの屋上。
そこにゴルゴ横島は立っていた。今、彼の背中に立つと危ない。
標的は向かいのビルのバスルーム、この時間ならば美神は間違いなく浴室にいる。
事前の調査は完璧だ。
男はもはや、この世で最も危険なスナイパー。
膝立ちになり、浴室をもう一度確認すると、彼の獲物である『スケスケ望遠鏡』をかまえる。
『視える俺にも標的が見えるぞ!!』
スケスケ望遠鏡はその性能を十全に発揮し、美神の裸体を惜しげもなく横島の眼前に提供することに成功した。
その括れたウェスト、張りのあるヒップ。
ロケットのようなバスト、美しい瞳。
特に瞳は、まるで此方を覗き込むような錯覚を覚えるほど美しく彼を射抜いていた。
……………………
………………
…………
……
そう……射抜いていた。
望遠鏡から見える美神は、バスタオルで肢体を覆うと、何処からともなくライフルを手にとる。
ずだーーーーーーーーーーん!!!!
小気味いい銃声が響き渡り、横島の背後にある給水タンクから勢いよく水が噴出した。
「よ〜こ〜し〜まぁぁぁぁ!!!!」
「なんでじゃあぁぁぁっぁぁぁ!!!!!」
所替わって横島邸
「だからいったじゃない、壊れてるって。此方からも透けるけど、見られてるほうからも透けちゃうんだってば……」
数分後、さらに小気味いい撲殺音が辺りに響き渡り、愉快な悲鳴が木霊したらしい。
おしまい
後書きのようなもの
え〜と、キツネそばです。
勢いで連作です。
(( ̄^ ̄ )ゞ
>Quesさん
くだらないです^^;ごめんなさいw
>ダヌさん
>ポケットからだしって
四次元ですからwなんとななってる??
>あ〜るタマモ一郎
彼は別の作家さんに頑張ってもらいたいですね^^
えぇQ極なアンドロイドさんです。
>黒覆面さん
大いに不覚をとってもらいたいです^^
クスッとしてもらえれば幸せですからw
>SSさん
おしまい………ではありませんでした^^;
気が向いたら書いていくと思いますw