それは、ある日の早朝の風景。
めずらしく登校してきた横島は、久々に見る自分の席に微妙な違和感を感じていた。
「なあ愛子?」
「なあに横島くん?」
尋ねてみたのは学校妖怪である愛子。彼女ならば四六時中学校にいるわけだし、今自分が感じている違和感もスッキリ解決してくれるはずだ。
「なんで俺の机だけ引出がついてるんだ?」
「え?あら、ほんとだ。」
そう、ごく一般的な学校の机というものは、教科書やノートを収納する場所はあるのだが、大体がその為の「荷物棚」のようなものが設けられているが普通である。
間違っても、今目の前にある自分の机のような「コイ○ミ学習机」みたいなちゃんとした引出などついていないのだ。
「……いたずらなのか?だとしても意味がわからん。」
横島は席につくと、とりあえず引出を引っ張ってみた。
……………………
………………
…………
……にょき
!!!!なにかいる!!!!
横島はあわてて引出を閉めようとしたが、中から出てきた手に阻まれた。
ガッシ!!と捕まれる腕。ここに契約は結ばれる…。
「…え〜と。こんにちわ、わたしタマえもん♪」
机の中からキツネの着ぐるみを着た少女が現れた。…世界は停止した…。
「「「「うぉぉぉ!!横島(君)が少女を誘拐して机に囲ってたぁぁぁ〜〜〜!!!」」」」
「横島くん!ロリも監禁も犯罪だと思うの!!」
「アホかぁぁぁっぁぁぁ!!!!」
世界の再起動は級友達の暖かい激励と、それに答える男の咆哮だった。
「はぁはぁ……とりあえず突っ込みどころだらけだが、お前は何ものだ?」
「見て分からない?」
「まったく分からんから聞いているんだが。」
「未来からきたキツネ型妖怪よ♪」
…しかたないわねえ…などと呟きながら着ぐるみ少女は言葉を紡ぐ。
「……さらに突っ込みどころだらけだが、なんで机の中にいたんだ?」
「あら?常識でしょ?」
…バカねぇこの子は…などと呟きながら着ぐるみ少女は言葉を紡ぐ。
「もうええわ、んで何しにきたんだ?」
「なにしにって…………なんとなく?」
「なんでそこだけ違うんじゃあぁ!!ここまで来たら普通『あなたを美神と結婚させるため』とか言うべきだろが!」
「……美神ってダレよ?」
何かを受信していた横島は、ある猫型ロボットとの相違点についてつっこんだ。
「まぁいいじゃない。『あ〜るタマモ一郎』とかじゃないんだから役に立つって。ちゃんとポケットあるわよ?」
なんとなく不条理に対して血涙を流していた横島だったが、その言葉に立ち上がる。
「ほんとか?!んじゃ裸のね〜ちゃん出してくれ!!!」
あんまりにも煩悩丸出しな願いだが、これが横島クォリティー。クラスの男共も固唾を呑んで見守っている。
「あ、無理だからそれ。」
「なんでじゃあぁぁぁっぁぁぁ!!!!!」
またしても血涙に沈んだ。
「タマモちゃんは何だせるの?」
興味深々という感じで愛子がタマモ(何故か?呼び名がタマモ)に尋ねた。
「え〜とね。まず『お揚げ』♪」
愛子は異世界の電波を受信したのか、なんとなくコレは予想の範囲内だったりした。
「それでね、あと『うどん』『ネギ』『ダシ』『醤油』…………」
「ちょっとまて」
延々と続くタマモの道具紹介に横島が横槍を入れた。
「さっきから聞いていれば、『きつねうどん』の材料ばっかやないか。」
「む!失礼ね!ちゃんとご飯も出せるから『稲荷寿司』も可能よ!」
…お引取り願おう…横島は強く思った。
「あ!引出の中に『きつねうどん』が!!」
「え?どこどこ??」
タマモは引出の中に首を突っ込んで中を覗いている。
横島は着ぐるみの足を持つとタマモを引出の中に押し込んだ。
「え?きゃぁぁぁ!!!」
バタン!ビーーーぺたぺた。
引出を閉め、ガムテープで厳重に封印すると何事もなかったかのように席に着いた。
ちょうど先生も着たらしい。
横島の久々の登校は、何事もなく無事はじまったようだ。
「あ〜つかれた〜。」
夜、美神のところのバイトを終えて横島は帰宅した。
今日の除霊は結構ハードだった。疲れてしまっていて、今は一刻も早く眠りたい。
重い体を引きずるようにして、布団の入っている押入れを開けた。
……………………
………………
…………
……「なによ?」
そこには未来から来たキツネ型妖怪が居た。
おしまい
後書きのようなもの
え〜とはじめまして、キツネそばです。
SS初めてなものでお見苦しくてすみません。
なんとなく「タマモ」から「タマモン」「タマえもん」と電波を受信して
書いてしまいました。
(( ̄^ ̄ )ゞ