力の意味を知るとき
己の全てが変化する
戦う意思に応じるように
ヒーローが生まれる
エピソード三 竜を纏う者
「くっくっく、いい気味だなワルキューレ。ボロボロでありながら、まだ立ち上がるとはね」
地面に膝をついたワルキューレを見下ろす悪魔【デミアン】が不敵に笑う中、突如鬼門が開かれた。そして、そこから横島・雪之丞・ピート・タイガー・ジークの五人が出てきた。
「じ、ジーク!それにお前たちは」
「大丈夫ですか、姉上!?」
「ジーク。お前はソイツの手当てをしろ!その間に・・・」
雪之丞はそう言うと、魔装術【陰】を発動させた。
「俺があのクソ野郎の相手をする!!」
そう言うと、雪之丞は霊波を拳に収束させると、デミアンの身体へと叩き込んだ。それにより肉片が飛び散るが、雪之丞は疑問を感じていた。
(おかしい・・・・・思いっきり殴ったのに感触がねえ・・・・・・一体?)
雪之丞は一度下がると、ピート達と合流した。
「あの野郎ちょっと変だぜ。殴ったはいいが、まるで手ごたえがねえ」
「手ごたえがない?・・・・・・雪之丞、次は僕が仕掛ける。霊波砲で援護してくれ」
「分かった」
そう言うと、ピートは魔力と神力を融合させた。それにより、超絶的なエネルギーが生み出され、辺りを震わせる。
「食らえ!!光華崩拳【瞬動バージョン】!!」
すると、まるでロケットの如きスピードでピートが拳を突き出しながら己を射出した。それにより、デミアンの身体に大きな穴が開いた。しかし、それだけがピートの能力ではない。
「ぐああ!!身体が腐食し始めた!!」
そう、ピートは光と闇を両立した属性。つまり、闇に触れる事で、己が持つ光の力を侵食させる事が可能なのである。
「更にオマケだ!!連続霊波砲!!」
更に、雪之丞の霊波砲は次々とその傷口に叩き込まれた。しかし、デミアンの身体はその傷口を放棄し、新たに再生し始めた。
「ふはははは!!痛くも痒くもないわ!!」
「さっき神力で悶えてたじゃねーか」
「やかましいわ!!」
雪之丞のツッコミにキレながら、デミアンもまた霊波砲を放つ。
「やばいですジャ!!幻影投射フルバースト!!」
後方で援護にまわっていたタイガーが、獣化すると同時に前へ出た。そして、タイガーの能力が発動される。
「四聖の一角を幻想せん!!白虎!!」
すると、タイガーの幻影投射により一匹の聖獣【白虎】が出現し、放たれた霊波砲を切り裂いた。そして、そのまま加速してデミアンの身体に噛み付く。
「くそ、離せケダモノが!!」
「グルァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
デミアンが身体を振るって離そうとするが、白虎は一向に放そうとしない。すると、白虎は牙に霊力を込め、デミアンの身体を食い千切って消えた。
「時間切れですジャ!!」
「く・・・・・今のは危なかった・・・・だが、これで終わりだ!!」
デミアンがそのまま皆に霊波砲を放とうとした。しかし次の瞬間、彼の顔面に六角形の物体が投げつけられた。
「くそ、誰だ!!」
デミアンの視線の先には、サイキック・ソーサーを展開した横島の姿があった。
「今だジーク!!」
「はい!!」
横島がソーサーを宙に投げると、落ちてきたタイミングでジークがバルムンクで叩き込んだ。それにより、凄い勢いでソーサーがデミアンへと向かい、そのまま身体を貫通した。
「ぬぅぅ・・・・・舐めるなーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
激怒したデミアンは、その身体を恐竜のような外見へと変化させた。そして、そのまま皆に襲い掛かる。
「ち、ならもういっちょ!!」
「くどい!!」
もう一発ソーサーをかまそうとした横島めがけて、霊波砲が放たれた。横島はソーサーでなんとか防ぐが勢いは殺せず、そのまま吹っ飛ばされてしまった。そして鬼門にぶつかって止まった。
「「「「横島(さん)(サン)!!」」」」
「迂闊だ!!」
吹っ飛んだ横島の方を見た皆目掛けて、更なる霊波砲が襲う。それにより、皆も窮地に追いやられてしまった。
「く・・・・・そ・・・・・」
意識が朦朧とする中、横島はボロボロにされる皆を霞んだ眼で見ていた。
「俺に・・・・力が・・・・・・あれば・・・・・」
すると、横島の想いが通じたのか、彼の右手に文殊が出現した。しかし、それは文殊より一回り大きく、何も文字が描かれていなかった。
「これ・・・・・・・前にも・・・」
横島はふと、おキヌにこの玉を向けた時の事を思い出した。
「この玉・・・・どう使えば・・・「横島さん!!」」
すると、鬼門を開いて小竜姫が出てきた。そして、そのまま横島に駆け寄る。
「しっかりしてください!!」
「小竜姫様・・・・・・俺、いかなきゃ」
「ダメです!!あの霊波砲を受けて、貴方の身体はかなり酷いんですよ!!」
「でも・・・」
「今は回復に徹しないと負けます。さぁ、こっちに「小竜姫様」・・・へ?」
小竜姫が顔を向けると、そこには本気な顔の横島がいた。
「俺・・・・・・あいつ等を失いたくないんです。大事な仲間を見捨ててまで、逃げたくない・・・・それに」
横島はそう言うと、真っ直ぐな想いを込めてこう言った。
「小竜姫様や、皆が傷つくのを見たいないんスよ」
すると、突如横島が持っていた玉が浮かび上がったのだ。そして、小竜姫の前で浮かび、輝き出す。
「横島さん・・・・・・分かりました。貴方を、信じます」
小竜姫が、自分の込められる限りの横島への想いをその玉へと放つのだった・・・。
「さぁ、これで終わりだ!!」
デミアンが、ボロボロの皆へ向けて高出力の霊波砲を向ける。
「くそ・・・・ここまでか」
「く・・・」
「悔しい・・・ですジャ」
「姉上・・・」
そして、そのまま霊波砲が放たれる。しかし、突如それを弾く者がいた。雪之丞たちの前には、白い身体・・・・・【空】の空牙が全身に霊波を纏い、その場に立っていた。
「貴様・・・」
「俺の力・・・・いや、俺や皆。そして・・・・・・小竜姫様との絆を見せてやる!!」
空牙はそう言うと、【竜】と込められた宝珠をベルトへと叩き込んだ。すると、彼の体を水で出来た龍が巻きつき、激しく回転し始めた。そして龍が水となって弾け飛んだ瞬間、蒼き身体に銀縁の戦士・・・・・【竜装】の空牙が現れたのだ。
「なっ!?」
「行くぞ・・・・・・・超“神”速!!」
ゆっくりと、空牙は動いた。しかし、その瞬間に雪之丞たちは勿論、デミアンにも姿が見えなくなった。
「な!?どこ《ドスン》ぐは!!」
デミアンが辺りを見回そうとすると、突如何かが彼を殴りつけた。しかも一回ではない。デミアンの身体を数十・・・いや数百もの傷が出来ていく。そして、空牙の動きが止まった瞬間、デミアンは地面にひれ伏した。
「な、何が起こったんだ!?」
「超神速・・・・・超加速の更に上をいく加速状態。時が刻まれる度に速度は増し、その動きは攻撃せずとも、相手を切り刻む」
「なっ!?」
その言葉にデミアンが驚愕の表情を浮かべる。そんな中、空牙は右手に霊力を込め始めた。すると、収束していくと共に、一本の棍が作成された。しかし、その棍には四つの何かを埋め込める穴が開いていた。そして、空牙は文殊を作り出すと、その穴に埋め込んだ。そこに込められた意味は・・・。
【転】【生】【批】【判】
そう、振るうべき邪悪な相手の転生すら許さぬ一撃。それこそ、転生批判。
「行くぜーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
空牙は再び超神速に入った。そしてそのまま空へと高く跳躍し、文殊の力を解放する。
「喰らいやがれ!!竜牙一閃!!」
空牙の絶対なる一撃が、デミアンを打ち抜く。すると、本体のカプセルが飛び出し、ビシビシとヒビが割れて砕け散った。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!この・・・・・この私がああああああああああああああああああああああああ!!」
「転生すら許さねえ・・・・・・・・お前が傷つけた者たちの悲しみに飲まれて・・・・・・・・沈め!!」
その言葉を最後に、デミアンはこの世から完全に消滅した。
あとがき
あ~久々のヒーロー真正。目が痛い腰が痛いと、体中が痛いでございますよw
さて、次回は妙神山編のエピローグ。そして、物語の中核ともとれる過去・・・そこに着目しようと思いますw
では、次回までw