「い、い、いたんだな、アニキ・・・!」
「へっへっへ・・・!!つかまえるぞ・・・!!」
二人組みの男はにやつきながらそう言うとこちらに向かってきた。
「逃げるのね〜!!」
ヒャクメの掛け声のもと俺たちは反転して表へと逃げ出す。
「ヒャクメ様、あのような者達我らが!!」
「バカ言っちゃ駄目なのね〜!あいつらは竜族なのね〜!」
走りながらそう言う鬼門にヒャクメがそう怒鳴る。
「それにここで戦えばどうやっても回りの人間を巻き込んじゃうのね〜。」
「「うっ・・・」」
「そんなわけでここは三十六計逃げるが勝ちなのね〜!戦術的撤退なのね〜!」
「それは良いんだが俺たちはどこに向かってるんだ?」
「えっ?」
熱弁を振るっていたヒャクメが俺の言葉に一瞬固まった。
結構走ったらしくいつの間にか俺たちは町外れのほうまで来てしまった。
「しまった!!考えてなかったのね〜!!」
「・・・のう横島?ヒャクメは相変わらずなのか?」
「見てのとおりだ。」
「ははは・・・」
俺と天龍の会話におキヌちゃんは苦笑いを浮かべた。
「とっ、とりあえず小竜姫達の居場所を確認「その必要はねえぜ?」えっ!?」
俺たちはすぐにその言葉を発した主のほうに視線を送る。
「も、も、もう逃げられないんだな。」
「くそ!もう追いついてきやがったか!!」
俺たちの視線の先には案の定先ほどの凸凹コンビがいた。
「「ヒャクメ様!ここは我らが!!」」
「ちょ!待つのね〜!!」
そう言うが早いか鬼門の二人はいつもの鬼の姿に戻ると(と言ってもいつもと違って顔は門にではなくきちんと体にくっついているが)凸凹コンビに踊りかかる。
「がははははっ!!聞いたかイーム!こいつらたかが鬼の分際で竜族と渡り合えると思ってやがる!」
「え?あ?よく聞いてなかったんだな。でもがははははっ!!」
そういいながら凸凹コンビは声を上げて笑う。
「「我らをなめるな!!」」
「なめさせてもらうぜ!!キシャーッ!!」
凸凹コンビはいまだ余裕の表情でそういった次の瞬間雄叫びを上げながら本来の姿に戻る。小さいほうの男はモヒカンが無くなりそのかわりに角が二本頭に生え、蛇のような長い舌をだしている。大きいほうの男、先ほどイームと呼ばれていた男は竜のような顔になり、同じく頭から二本の角が生えている。
「くらいな!!」
小さいほうの男が角から霊波の攻撃を放つ。
ドッ!!
「うおぉ!?」
「ひ、左の!!」
その攻撃を直にくらい鬼門の一人が倒れる。
「よ、よ、よそ見しちゃいけないんだな。」
「なに!?」
その隙にイームがもう一人に鬼門の後ろを取る。そして、
「ぐはぁ!!」
ボディに強烈な一撃をくらい残った鬼門も倒れる。
「しゅ、瞬殺かよ。」
「だから言ったのね〜。鬼がそう簡単に竜族に勝てるわけないのね〜。」
「さて、お前たちはおとなしくついて来てもらおうか?」
そういいながら小さいほうの男がそう言う。
「くそ!こうなったら・・・」
俺は覚悟を決め、右手にサイキック・ソーサーを出す。
「横島さん、駄目なのね〜!!」
ヒャクメがそう言いながら俺の右手に抱きついて止める。
「なんでだ!?誰かが時間を稼がないと!!」
「ここで横島さんまでやられるわけにはいかないのね〜!ここはわたしを信じてほしいのね〜!!」
そう言ってヒャクメは俺に真剣な視線を向ける。
俺は真っ向からその視線を受け止める。・・・なにか考えがあるんだな。
「わかった。」
「ありがとうなのね〜。」
「もう話はすんだか?」
律儀に俺たちの会話が終わるのを待ってくれていたらしい小さいほうの男がそう言う。
「・・・命の保障はして欲しいのね〜。」
「ここで大人しくしててもらうぜ。」
わたしたちが連れてこられたのは海沿いの倉庫街のはずれにある一つの倉庫だった。
「それで?いいかげん目的ぐらい教えて欲しいのね〜。」
この男たちには不振な点が多い。わたし達を捕まえはしたが行動を制限するようなロープや手錠もなく、ただわたし達をここに連れてきただけ。
「そ、そうじゃ!よ・・・余を殺すのかっ!?」
殿下がそう横島さんの後ろから怯えながら声を上げた。
「こっ・・・こここ!?」
「ご冗談を!いくら俺たちでもそんな大それたことしやせんよ。竜神王陛下の竜宮での会談が終わるまで閉じ込めるだけでさ。」
どうやら殺意はないらしい。一安心だがまだ気を抜くわけにはいかない。
「ヒャクメ、何か考えがあるんじゃないのか?」
横島さんが小声でわたしにそう問いかける。
「さっきの鬼門たちの戦闘に小竜姫たちも気がついたはずなのね〜。唐巣神父たちも一緒だからわたし達がここに捕まってることも気がついてくれるはずなのね〜。」
「それじゃここで大人しくまってるのがベスト。か。」
「なにごともなければ。そうなのね〜。」
わたしたちがそう結論づけると、
「!だんな・・・!?」
突然、フード付きのローブで全身を包み、ご丁寧に顔も口まで布で覆って目以外は見えないように隠している人物が現れた。
「ご苦労!イーム、ヤーム!」
やばい!!こいつは小竜姫と同クラスの霊格!!本格的にやばい!!
「へっへっへっそれじゃ約束の礼の方は・・・」
ヤームと呼ばれた小さい男がもみ手をしながらその人物に近寄っていく。
「うむ!受け取れ・・・!!」
そう答えるとその人物の右手が光り・・・
バシュ!バシュ!バシュ!
わたし達を囲むように三つの黒い板が床から突き出した。
「火角結界!?やばいのね〜!!」
「だんな!!これはいったい!?」
ヤームがその人物に問いかける。やっぱりこいつらもはめられたのね〜。
「知る必要はない!おとなしく死ね!」
そういい残すと現れたときと同じように姿を消す。
「ヒャクメ!これはいったいなんだ?」
「これは中に閉じ込めた物を吹き飛ばす超強力な結界なのね〜!」
「なっ!?どうする!?」
そう言う間に火角結界はカウントダウンを始める。
手はある。が、・・・これは賭けだ!!
「横島さん!イーム!ヤーム!手伝って欲しいのね〜。」
「わかった。」
「な、何か考えがあるのか?」
「た、助かるんならなんでもするんだな。」
横島さんは即答してくれた。ふふ、信じてくれてるのね〜。
「ありったけの霊波をこいつにぶつけて欲しいのね〜!!それでカウントダウンが少しは遅くなるからその間にわたしが解除方法を分析するのね〜!!」
「「「おう(なんだな)!」」」
正直専門分野じゃないからあんまり自信はないんだけど、これしか手が思いつかない。
三人が霊力をぶつけ始めてから少しはカウントダウンが遅くなった。が・・・
「おい!姉ちゃんまだか!?」
「もうちょっとなのね〜!!」
言葉ではそう言うがかなりやばい。せめてもう少し時間が・・・
無常にもカウントダウンは進んでいく。わたしは必死に解析を進めるが既にカウントはのこり五。
わたしはどうしようもない不安に刈られ、無意識のうちに横島さんのほうに視線を向ける。
横島さんは必死に霊波を送っている。・・・わたしも負けてられない!!
「もうちょっとがんばって欲しいのね〜!!もう少し!もう少しなのね〜!!」
「これでいっぱいいっぱいだ!!」
「こっ、こっちもなんだな!」
くそ!ほんとうにもう少し、もう少しなのに時間が・・・
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
その瞬間、横島さんの霊波が上がった!
「えっ!?」
あれは・・・神装術!!たしかにこれなら一時的に霊波の威力も上がる。
これなら・・・間に合う!!
「・・・・わかったのね〜!!イーム!!その結界に全力で攻撃!!その中の黒いコードを急いで切るのね〜!!」
「あいよっ!!」
わたしの指示に従いイームが動く。そして・・・
「た、助かったのね〜。」
火角結界には『停止』の文字が現れている。のこりカウント一。やばかったのね〜。
わたしが回りに視線を向けると皆一様に安堵を表している。
ドサッ
そんな中何かが倒れるような音がした。わたしがその音のほうに視線を向けると・・・
「よ、横島さん!どうしたですか!?」
「横島!!」
「兄ちゃん、どうした!?」
「ど、どうしたんだな?」
「よ、横島さん!?」
横島さんが倒れていた。
あとがき
うう、結局鬼門瞬殺でした。南無〜。まあそれは置いといて。今回は火角結界まででした。ヒャクメがいれば解析は不可能じゃないんじゃないか?と考えてみたんですが・・・いかがだったでしょうか?次はいよいよラスト・・・になればいいなと考えてます。どうなるかわかりませんが・・・
レス返し
初めにご意見、ご感想を寄せていただいた皆様に感謝を・・・
うけけ様
ヒャクメの天界の仕事・・・一応ヒャクメも妙神山に住んでるんで小竜姫様の手伝いが主な仕事なんですが・・・あそこ暇なんで問題無しです!!そう思ってください。でもあらためて読み返してみてもヒャクメが横島君のところに住んでるって考えてもおかしくないように思えてきました・・・
零式様
今回も軽くヒャクメはボケました。あくまで軽く、ですけどね。でも後半大活躍です。でも今回はヒャクメより鬼門の方があんまり役に立たなかった感じがします。
寝羊様
私的なお金は私もそれぐらいです。大きなお金って怖いですよね。私も宝くじとか当たったらどうなるんだろう?今回はあんまり横島君目立ちませんでした。後半がんばりましたけどね。でも私はおキヌちゃんの台詞があんまりないのが心残りだったりします。
甚六様
私も原作の横島君のほうが普通に思えてきました。まあおキヌちゃんぐらい可愛ければ問題無しです!次で天龍編ラスト。の予定です。うう、自分でもどうなるか分かりません。
内海一弘様
小竜姫様は今回はミニスカじゃありません。唐巣神父に服を買うお金なんてなさそうなんで。でもそのへんはちょっと考えてますんで、天龍編終了後をお楽しみに。
耶麻様
初めまして。銀行のフォローありがとうございます。しかし便利な世の中になったものです。うう、自分が年寄りに思えてきました。今回は横島君のツッコミはありませんでした。しばらくシリアスなんでギャグは少し控えめです。でも実は今回の天龍編もギャグで行こうか悩んでボツにしたネタが結構あります。うう、どっかで使いたい。