「横島さん!横島さん!起きるのね〜!!」
わたしはナイトメアの攻撃を受けてしまった横島さんに必死で声をかける。
「失敗したのね〜。完璧に取り付かれてるのね〜。」
「どうしましょ〜、どうしましょ〜。」
冥子ちゃんは相変わらず右往左往している。
「あっ!そうだわ〜。ヒャクメ様〜?」
「なにかいい手でも思いついたのね〜?」
「さっきみたいに私が霊波を送って攻撃すればいいんじゃないかしら〜?」
「・・・たぶん無理なのね〜。さっきは患者が霊能者じゃなかったからできたのね〜。横島さんはプロのGSじゃないけど霊能力はそこそこのレベルなのね〜。それに・・・」
「それに〜?」
「横島さんの能力はどちらかといえば防御力に特化してるのね〜。その中をナイトメアをトレースしていくのは正直難しいのね〜。」
横島さんは防御力だけならプロ並だろう。ただしそれを扱う経験が足りないため実践では護り一辺倒の亀になり、攻撃に回れないでいる。ナイトメアを外部から燻し出す手はほかにもあるがそれも横島さんの防御力でかなり難しいだろう・・・
「後はもう横島さんの精神に直接入ってナイトメアをやっつけるしかないのね〜。」
「それじゃ〜それを・・・」
「でも問題もあるのね〜。悔しいけどわたしは調査官で武神じゃないのね〜。ナイトメアと戦って勝てるかは正直部が悪いのね〜。」
「それは困りましたね〜。精神に入るだけなら私も出来るんですけど〜。」
「確かに困ったのね〜。」
困った。どうしたもん・・・ん?冥子ちゃんも精神に入れる?
「冥子ちゃんは他人の精神にダイブできるのね〜?」
「はい〜。ハイラちゃんの力を使えば出来ますよ〜。」
冥子ちゃん。攻撃力だけみればかなりのもの。それ以外はかなり問題あるが・・・この際贅沢してられないのね〜
「冥子ちゃん?採用なのね〜。」
「へ?」
「あなたがナイトメアを倒すのね〜。」
「えっ?えっ?」
「大丈夫なのね〜。あなたならできるのね〜。さぁ!レッツダイビ〜ングなのね〜!!」
「え〜〜!?」
冥子ちゃんは相変わらずのんびりとした口調だが現状を認識したくないのか普段からは考えられない大きな声をあげた。
その後なんとか冥子ちゃんを説得して二人で横島さんの精神の中に潜った。
「ここが横島さんの精神、つまり心の入り口なのね〜。」
そこは一つの小さな町だった。さまざまな家があり、奥には学校やビル、そして山が見える。
「なんだか安心するところですね〜。」
冥子ちゃんがそんなことを言った。
確かにここは安心する。なんだろう?ここは安心する。それに・・・
「ブ、ブヒヒヒヒッ!!なかなか面白い力を持っているようじゃない?」
わたしが少し考え込もうとしたとき突然ナイトメアが現れた。
「あ〜〜、ナイトメア〜!こら〜〜!横島君の中から出て行きなさ〜い。」
冥子ちゃんが身構えながら言う。
「・・・なんでこんなところにいるのね〜?」
わたしの疑問にナイトメアは、
「ホ、ホホホホ、お、お前らが無駄な努力をしにきたようだから挨拶に、そう!挨拶に来てみたのさ。」
汗をかき、どもりながらもそう言った。
はぁぁぁぁ・・・
わたしはそれにより一つの結論を得た。
「冥子ちゃん?ナイトメアに攻撃してみてほしいのね〜。」
「は〜い。ハイラちゃ〜ん、お願い〜〜。」
冥子ちゃんの声にハイラが毛針攻撃を開始する。
「ちょ!まっっ、ギャーーーーーッ!!」
クリーンヒット。ナイトメアはのた打ち回った。
「?あれ〜?」
その様子に冥子ちゃんは不思議そうな顔をしている。
「やっぱりなのね〜。あんた横島さんの精神にこれ以上は入れなかったのね〜?」
「なっ、なんのことかな〜?」
ナイトメアは冷や汗を浮かべながらとぼける。
「とぼけても無駄なのね〜。横島さんの霊力には神族の、わたしの霊力が混ざってるのね〜。だからここは神界ほどじゃなくてもそれに順ずるぐらいに清められてるのね〜。そんなところで悪魔のあんたが十分に力を使えるわけないのね〜。」
「・・・・」
ナイトメアの冷や汗が倍増。
「それに加えて横島さんは防御力に特化しているし、わたしの霊力も混ざってるもんだからなおさらあんたとは相性悪いのね〜。」
「だっ、だからどうしたんだい?僕がこいつの中にいるのは間違いない!それに一部とはいえ、支配しているんだよ?その証拠に・・・」
ナイトメアはそういいながら横島さんの力を利用してなにかを呼び出す。
「こんなことも出来るんだよ?おまえらにこいつが倒せる?こいつが死ねば宿主も死ぬよ?」
ナイトメアがそう言い終わるとそれは人型を作る。
そしてそれは姿をあらわす。それは妙神山で横島さんが見せた仮面をつけ、道化の格好をした影法師だった。
・・・ただし3頭身だが・・・・
「きゃ〜〜かわいい〜。」
ちび影法師はあっさり冥子ちゃんにつかまりギュッと抱きしめられ、手足をばたつかせている。
「で?どうするのね〜?」
「くっ!まだだ!!この宿主が霊能力者ならその力を使えば!!」
ナイトメアがそう言い放つとちび影法師にさらに力を送る。
それと同時に冥子ちゃんに捕まっているちび影法師の右手に霊力が集まりそれを物体化させる。
サイキック・ソーサー?いや、あれは・・・
ちび影法師の右手に形作ったもの、それは・・・・小さなハリセンだった・・・
横島さん・・・あなたはやっぱり骨の髄までツッコミなのね〜・・・
ちなみにちび影法師は3頭身。もちろん手も短い。なのでいくら手を振ってもハリセンは冥子ちゃんには当たらず空を切るばかり。
それでも一生懸命ハリセンを振るう姿はなかなかかわいらしくていいが・・・
「もういいのね〜?」
「なんで!?どうして!?こいつの奥には確かに闇を!おいしそうな力を感じるのに!」
わたしの問いかけにナイトメアは声を張り上げる。
当たり前だ。横島さんの心の闇はこいつにとっては絶好の餌だろう。相性の問題もあるがそれでもなんとかなると思ったのだろう。
「確かにそうかもしれないけど人間を舐めちゃいけないのね〜。心に闇があっても誰もが悪魔の言いなりにはならないのね〜。」
確かに横島さんの心の闇は強大だ。でも!横島さんの闇を照らすこの光はその闇を照らしている。つまりそれはわずかな光であってもこの闇より強い!!それに・・・
「なんで!?こんなやつらに負ける?この僕が?いままで多くの霊能力者を退けてきた子の僕が!なんでこんなまぬけそうな二人に!!」
ぴき!
わたしはその言葉を聞くとトランクからあるものを取り出す。
きゅっ、きゅっ・・・
「?あ、あの?」
「なんなのね〜?」
「それはいったい・・・・」
「グローブなのね〜。」
わたしはその問いかけに答えながらもボクシンググローブを両手にはめ終わる。
「そ、それをどうするんですか?」
ナイトメアは再び冷や汗を流しながら聞いてくる。
「仏罰を下すために使うのね〜。安心するのね〜。わたしは文官だからたいしたことないのね〜。」
「ブ、ブヒヒヒヒ!!文官の攻撃でどうにかなる僕じゃないよ?」
わたしの文官という言葉に多少安心したらしく、ナイトメアはそう意気込む。
「ふふふふふ、そうなのね〜?それじゃいくのね〜。」
まずは・・・ボディ!!
「ぐっ・・・はぁ・・・・」
わたしのパンチがナイトメアの鳩尾に突き刺さる。
次に・・・顔面に、ジャブ、ジャブ、ジャブの連打。
「ぶべべべべべべべべべべべ・・・・」
「ジャンジャンバリバリジャンジャンバリバリ全台開放中なのね〜。」
わたしのパンチが止むと既にナイトメアの顔面はぼこぼこに腫れ上がっていた。
「な・・・・なんで・・・」
「言い忘れたけど、あんたの力が弱まるこの場所ではわたしたちみたいに魔に属さないものの力は逆に強くなるのね〜。」
それではフィニッシュ。とどめは・・・下から突き上げるアッパー!!
「ぶろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・」
きらーん。
ナイトメアはそのまま星のように輝いて横島さんの中から出て行った。
「だいたい、あんたみたいな奴にわたしと横島さんの思い出を汚されるわけにはいかないのね〜。」
わたしは最後にそう本音を囁いた。
わたしたちが外に戻るとそこには完璧にKOされたナイトメアが泡をふいていた。
それを冥子ちゃんが封じてお仕事終了。
横島さんもほどなく目覚め一件落着。なんだけど・・・
「あ〜、なんでこんなにだるいんだ・・・」
横島さんがそう言った。無理もない。わたしたちは二日も眠っていたらしい。わたしはそのことも踏まえ横島さんにその後のことを説明した。
「そっか。ヒャクメに助けられたのか。ありがとな。」
「ううん、わたしが油断したのが原因なんだからおあいこなのね〜。」
横島さんに素直にお礼を言われて少し赤くなってしまったのは秘密。
「冥子もがんばったのよ〜。」
「冥子ちゃんもありがとうございました。」
「えへへ〜〜。」
冥子ちゃんもお礼を言われて嬉しそうだった。
「さて、それじゃ帰りましょうか?」
「そうするのね〜。」
「それじゃ〜うちに遊びに来て〜〜。手伝ってくれた御礼にご飯をごちそうするわ〜。」
わたしたちは帰ってご飯を作るのも面倒なほどの状態だったのでありがたくそのお誘いに乗ることにした。
わたしたちは仕事の終わった開放感からか穏やかな空気で冥子ちゃんのうちに向かった。
後日談1
冥子ちゃんがナイトメアを封じたことを知った冥華さんがかなり喜んだ。難度Sは伊達ではないらしく、冥子ちゃんの評価はかなり上がるらしい。それは良い事なのだが冥華さんのわたし達の評価も上がったようで再び勧誘された。疲れた体にあのプレッシャーはきつい・・・
後日談2
横島さんは二日間も学校を無断欠席したため本当に生徒指導室によばれたらしい。わたしのせいじゃないのね〜。
あとがき
ナイトメア編終了〜。神族の霊力を吸収している横島君の中で悪魔が活動できるとは思えない。という考えから生まれた話でした。確かに横島君の中に闇はありますが使えなければ意味がない。と言う事と、再びなにかちびキャラを出したかったので。ちなみにちび影法師の大きさは原作の横島君の影法師の大きさだと思ってください。次はおそらく一つ間を挟んで天竜童子です。これはかなりシリアスに行くつもりです。でも最後のバトルシーンにどうもって行くか考え中。どの師匠をだそうかな・・・
レス返し
初めにご意見、ご感想を寄せていただいた皆様に感謝を・・・
甲本昌利様
ちゅーしゃに元ネタはとくにありません。というかおきまりかな〜と思いまして。前々回の反省から今回は元ネタありのギャグはありません。久しぶりの感覚です。
幼心錬金術様
こんな感じで微妙にシリアスではありません。今回はボクサーヒャクメでした。攻撃するヒャクメ・・・自分で書いておいてなんですがあんまり想像できませんね。
霊式様
馬編終了でした。微妙にナイトメアの言葉遣いには悩みました。この作品ではどもりまくってますけどね。
への様
ちなみにどうにかしておキヌちゃんをだせないかな〜と悩んだりしました。おキヌスキーな自分にもこまったものです。生徒指導室は最後にもって来ました。微妙に引っ張ってみたんですがいかがだったでしょうか?
にゃら様
「読者の中には、様々な趣味志向があって、年齢層があり、唯一の共通になる話題が 『GS美神 』」たしかにそうなんですよね。きちんと心に留めて置きたいと思います。
軽い雰囲気については今回はそれを意識して書いていますのでそう感じれるかもしれません。でもいきすぎは確かに問題ありますね。除霊について考えたりしないのは横島君は「GSを目指していない」という位置づけからです。しかしその後の心理風景に関しては何もいえません。反省。
うけけ様
今回はボクサーヒャクメでした。あんまり想像つきませんけど。微妙に乙女してみたりもしたんですけどいかがだったでしょうか?
スケベビッチ・オンナスキー様
レスについてはあんまり気にしないでください。今回は予想に反して痛くありません。痛いのも考えたんですが現時点でそれに冥子ちゃんが耐え切れるとも思えませんし、メドーサ編でシリアスを考えていたので今回はこういった形にしてみました。
亀豚様
小竜姫様お好きなんですね〜。私も人のこと言えませんが。メドーサ編では勿論小竜姫様はでてきますよ〜。お楽しみに〜。その前にひとつはさみますけどね〜。
EVE様
心情に関しては確かに足りないものがあるとは感じています。しかし私の技量が足りず長すぎる文章になってしまいがちで上手くまとめ切れません。今後少しでも成長した文章を書けるよう努力していきたいと思います。EVE様のお言葉本当にありがたく感じています。今後ともよろしく御願いいたします。
内海一弘様
修行とあったのではっと思ったのですが、横島君はレベルアップしていくつもりなんですがヒャクメはどうしようか?というものです。そろそろ横島君にもう一段階上がってもらうつもりなんですが。ヒャクメパワーアップ・・・ギャグしか思いつかない・・・