「……ヌちゃん……おキヌちゃん!」
「ん……」
自分を呼ぶ声に、おキヌは小さく身じろぎして覚醒する。
ゆっくりと目を開けると――最初に視界に入ったのは、心配そうに自分を覗き込む魔理の顔だった。
「あ……一文字さん?」
つぶやき――そして、直前の記憶を取り戻した。がばっと跳ね起き、周囲の様子を確かめる。
「ここは……!」
ほとんど備品のない、がらんとした教室。使われなくなって久しいのか、だいぶ古い印象だ。
そして、そんな教室の中にいるのは三人。おキヌと一文字魔理、そしてつまらなさそうに腕を組んでおキヌを見下ろす、弓かおりだった。
「状況から察するに、ここは妖怪の腹の中ってところでしょうね。まったく……なんでこの私が」
かおりは窓の外をちらりと見やり、吐き捨てた。おキヌと魔理もそれに倣って窓の外を見ると、不自然なほどにいびつな形をした岩がごろごろと転がる、無限の荒野が広がっていた。空の色も、この世のものとは思えないほど毒々しい色をしている。
「な、なんだよこれ!」
「異界空間……!」
魔理とおキヌが、口々に驚きの言葉を発する。
そこに――
「その通りよ」
教室に響く、第三者の声が割って入った。
「!」
かおりと魔理が、それぞれ警戒して戦闘態勢を取りつつ振り返った。おキヌも警戒はしたが、戦闘態勢は取らずに声のした方に視線を向けた。
そこには、一人の女学生がいた。制服は、六女のものとは違う。だが彼女は、警戒しなくていいわよとばかりに柔らかな微笑みをたたえ、こちらを見ていた。
「あの机は妖怪が変化したものだったのよ。ここは化け物の腹の中……もう外へは出られないわ」
「ちっ……!」
だが、三人は警戒を解かない。魔理の舌打ちが、何もない教室に響いた。
「みなさん、逃げますわよ! 何か、脱出の手立てがあるはず……!」
「は、はい!」
「くそったれ!」
かおりの言葉に、おキヌと魔理が頷き、三人一緒に走り出す。いきなりの行動に面食らった女学生を置いてけぼりにして廊下へと躍り出て――
「あっ! 待ちなさい!」
女学生は呼び止めると同時、スライディングキックでおキヌの足を払った。おキヌはたまらず、つんのめってリノリウム張りの廊下とキスすることになってしまった。
「氷室さん!」
「おキヌちゃん! てめえ、何「廊下は走らない! 学校生活の基本ルールも守れないの!?」しやが……る?」
非常時というのに、場にそぐわない一般常識を持ち出す女学生に、二人は気勢を削がれてきょとんとした。
と――そこに。
「まーまー委員長。彼女らはまだここへ来たばかりなんだ。大目に見てやりたまえ」
「高松くん……」
さらに男子学生が現れた。足を止めたかおりは、訝しげに二人を見る。
「……なんですの、あなたたち?」
「警戒する必要はない。君たちと同じように、ここに閉じ込められた生徒だよ。来たまえ、仲間を紹介しよう」
「仲間……?」
その言葉に、三人は顔を見合わせた。
『二人三脚でやり直そう』 〜第十五話 バッド・ガールズ!!【その2】〜
「まったく……初日からさっそく厄介事に巻き込まれてるわね、あの子」
しょうがないなーとばかりに苦笑するのは、妖怪に飲み込まれてしまったおキヌが働くことになっていたという除霊事務所のオーナー、美神令子である。
「そうなのよ〜〜〜。だから彼女と縁のあるあなたに〜〜〜、除霊を頼みたいのよ〜〜〜」
彼女と並んで歩き、独特の間延びした口調で話すのは、この六道女学院の理事長を務める六道夫人である。
「教師の中にも、GS資格保有者はいるでしょう?」
「彼らは教え方が上手いだけで〜〜〜、そんなに頼りになるほど実力あるわけじゃないわ〜〜〜。腕のいい資格保有者ほど〜〜〜、独立したがるからね〜〜〜」
つまり、GS資格を持っていて、かつ実力があり、教員免許も持っている――そういう人材は探しても見つからないということだった。
この六道女学院が、たびたび現役GSに外部講師を頼んでいるのは、そういった事情があってのことである。そのことに思い至り、美神ははぁと諦観のため息をついた。
「もちろん、タダじゃないわよね?」
「あたりまえでしょ〜〜〜。妖怪の除霊だけならせいぜい2000万ぐらいだけど〜〜〜、生徒の救出もやってもらうから〜〜〜、5億ぐらいでどう〜〜〜?」
「OK。大丈夫、私は口が堅い方ですから」
いきなり出された破格過ぎる報酬額に、しかし美神は驚くことなく裏の意味を理解した。
要するに口止め料である。霊能者を育てる名門校が、こともあろうに妖怪の侵入を許したのだ。こんな不祥事、世に出すわけにはいかない。
「あと、助手も呼んでおきました。もうすぐ来ると思います」
「助手〜〜〜? あ、冥子の言ってた横島クンって子〜〜〜?」
「そ。まあ、性格にかなりの難があるんで、正直言えば女子校なんて場所に呼びつけたくなかったんですが……飲み込まれたおキヌちゃんとは一番親しい間柄だし、あいつも結構霊能力持ってるんで、役に立たないことはないと思いまして。
本当はもう一人連れて来たかったんですが……そっちは昼間は使えないし。まあ、あいつがいなくても、私と横島クンでどうにかなるとは思うけど」
「それは楽しみね〜〜〜。おばさん、期待しちゃうわ〜〜〜。あ、この教室よ〜〜〜」
話している間に、1年B組の教室に着いた。入ってみると、教室の一角に結界が張ってあり、その中央にやたら古びた机がある。
二人が入ると、途端に教室がざわめいた。感動と憧憬のまなざしが、美神に集中する。
その視線を受け――美神はぽりぽりと、こめかみを引っ掻いた。
「……これだから、この学校来るのは気が進まないのよね〜……」
彼女も外部講師として、月に1〜2回ほどこの学校にやってくる。そのたびに、ミーハー気分の学生たちからこの視線を向けられるのだが、彼女はそれを苦手としていた。
それはとりあえず無視して、除霊対象である机へと視線を移す。机は結界で動けないらしく、脚を生物的に変化させたままではあるが、じっとしていた。
「ふーん……小賢しくも、逃げる隙をうかがってるわね」
そんな隙を与えるつもりはない。彼女は机から注意を逸らさないまま、隣に立つ六道夫人に尋ねる。
「おばさま。気になってたんですが、なぜ妖怪の侵入を許してしまったの?」
「それが、私にもわからないのよ〜〜〜。結界は正常に作動してるから〜〜〜、害意ある学校外の存在は、入って来れないはずなのよ〜〜〜。結界が破られた形跡さえないし〜〜〜、不思議だわ〜〜〜」
「害意ある学校外の存在……? なるほど、それで」
その部分を聞いた美神が、合点がいったとばかりに頷いた。
「あら〜〜〜? わかったの〜〜〜?」
「ええ、簡単なことよ、おばさま。あの机を見てください。古いし、どこのものかはわからないけど、あれは確かに学校にあるべきものでしょう?」
「あ、なるほど〜〜〜。おばさんもわかったわ〜〜〜」
すなわち、学校外の存在を排除する結界ならば、逆に言えば学校内にあって当然の存在は入って来れるということだ。学校の机が学校に入れない道理はない。
「それに、その結界をすり抜けられるというなら、少なくとも害意ある存在じゃない……生徒を飲み込んだ理由がわからないから、なんとも言えないけどね」
とはいえ、その理由がわからない以上、下手な刺激は与えられない。無論、力任せに退治など、もってのほかだ。下手すれば、飲み込まれた生徒が二度と戻って来れないことさえ有り得るのだ。
(さて、どーするか……)
妖怪の腹の中がどうなっているかがわからない。だが、たとえば捕食するために生徒を飲み込んだとするならば――害意を通さない結界が通したならばその確率は低いのだが――その中身は十中八九、消化器官だ。だとすれば、事は一刻を争う。
と――
……ざわ……ざわ……
教室の外がにわかに騒がしくなった。
自分が来たのを聞きつけた他クラスの生徒が集まってきたのか――そう思った美神だったが、直後に霊感がその考えを否定した。そしてその霊感は、「あるもの」を構えろと告げている。
そして美神は霊感が告げる通り、すちゃ、とその「あるもの」を構えた。額には井桁が浮かび上がっている。
すぅっ、と耳を澄ます――
「うおおお〜っ! 姉ちゃんや〜っ! ぴちぴちの女子高生や〜っ!」
「きゃーっ! 何この人ーっ!」
「不審者よ! 不審者がいるわっ!」
「ボク横島忠夫っ! 妖怪退治に来ました! というわけでお嬢さんがた、あとでボクと一緒に……」
「死ね変態っ!」
「ぎゃわんっ!?」
井桁が増えた。
やがて廊下から、血まみれの横島が床を這いずりながら入ってきた。
「み……美神さ〜ん……横島忠夫、ただ今到着――おおっ!? ここにもキレーなねーちゃんがいっぱい!? 忠夫感激ーっ!」
一瞬で血も止まって元気になり、教室の隅で怯えている生徒たちの方へと、相変わらずの超速度で距離を詰める。
「こんにちは綺麗なお嬢さんがた! ボクが来たからには妖怪なんて大丈夫! どうでしょう? 妖怪退治が終わったら、一緒に食事……な……ど……」
台詞の最後が、尻すぼみになる。背中の方から、氷結地獄(コキュートス)も春の日和と思えるほどに、空恐ろしい寒気が吹き付けてきたからだ。
ぎぎぎ、という擬音を出しながら、その方向に首を向ける。
そこには――
「…………よ〜こ〜し〜ま〜」
般若がいた。
「みっ! みみみみ美神さんっ!?」
吹雪を背負って、不届き者の丁稚一号こと横島を睨みつける美神。
美神は狼狽する横島には構わず、無言で手に持ったそれ――いつだったか、金成木財閥のボンボンとの見合いの時に使った、神通ハリセンを。
ゆっくりと。
振り上げた。
「み、美神……さん……?」
「場をわきまえろと言っといたでしょーが、こんボケナスーッ!」
すぱーんっ!
「みぎゃあああああああっ!?」
霊波の乗った一撃で、思いっきり後頭部をはたかれた横島は、綺麗な放物線を描いて空中を舞った。
そして、その放物線の終着点は――机妖怪。
「――へ?」
横島がそれに気付き、間抜けな声を上げたその時。
ぱっくんちょ♪
机妖怪に飲み込まれた。
「……あ゛」
美神の頭に、でっかい漫画汗が浮かんだ。
おキヌ、魔理、かおりの三人は、ほとほと困り果てていた。
「では今週の目標! 『廊下を走らない』!」
まちまちの制服――それこそ夏服冬服ごっちゃになってる被害者たちの中に混じって、なし崩し的にホームルームに参加することになってしまった。
とりわけ、「第11018回ホームルーム」などとゆーたわけた一語を聞いた時、かおりが「そんな暇あったら外に出ようと思わないのですか!?」と激昂したのだが、その後に続く高松の説明に言葉を失うこととなった。
なんでも、彼らの言い分では、そんな方法があればとっくにやってるということだ。最古参の愛子――委員長と呼ばれた、最初に出会った女学生――が32年の長きに渡ってこの異界学校に居続けていることが、その証明であるという。
――しかし。
(何か引っ掛かるわね……)
かおりは彼らの言い分に、どこかしら違和感を感じていた。どこがと聞かれれば答えることはできないが、霊能力を修める者としての第六感と言うべきか、何かが引っ掛かる感覚があった。
一方、愛子こそが机妖怪であるという事実を知っているおキヌの方はと言えば。
(ど、どうしよう……? なんで愛子さんがこっちに来てるの? ともかく、ここはどうにかして弓さんや一文字さんに愛子さんの正体を教えるべき? それとも、愛子さんを説得するべき?
わ、わかんないですーっ! ひーん、横島さーんっ!)
予想外の事態に、なかばパニクってた。
そして、一文字の方といえば――愛子の口上に、ふんふんと頷いている。どうも、早くも精神汚染に嵌りかけているっぽい。
そして、愛子の「以降、各自自習とします」の声で、ホームルームが終わった。途端、三人に他の生徒たちが群がる。
「な……っ!?」
突然のことに目を白黒させるかおりと魔理。しかしおキヌは、今朝方も味わったことなので、この後の展開がなんとなく読めた。
すなわち――
「改めてようこそ! 愛子クンが呼んでるのを聞いたと思うが、僕は高松。君たちはどこの学校から来たんだい?」
「俺は北海道の高校から来たんだ。この学校では、得意のスキーを披露する機会がなくて困ってるけどね」
「俺は長野からだよ。なあ、俺の地元で冬季五輪が開催されたって本当? いつの話になる?」
「もー! 男子ども、可愛い女の子が来たからってがっつくんじゃないよ!」
わいのわいのと、質問攻め&自己紹介の嵐。三人は勢いに気圧され、しどろもどろになりながらも、律儀に相手をしてしまう。
「ああ……転校生という新しい仲間を受け入れるため、話し話されることで親睦を深める……青春だわっ!」
彼らの後ろでは、愛子がなにやら恍惚とした表情で悦に入っている。
数十分が経つ頃には話は弾み――
「へー、300年も幽霊を。おもしろーい♪」
「ええ。でも私、この時代に生き返れて嬉しいです」
「霊能者の学校!? 俺がここに来た頃は、そんなの聞いたことなかったなー。時代は変わるってことか……」
「霊能科なんて学科ができるほど、GSという職業がメジャーになったということですわ。驚くほどのことでもないでしょう?」
「だめよ一文字さん。学校にはちゃんと出席しないと」
「うっせー!」
などなど。だいぶ打ち解けてきたようである。
やがて、一時間目が終了したことを知らせるチャイムが鳴る。その後、二時間目が始まることを知らせるチャイムが鳴ると、生徒たちはそれぞれの席へと帰り、三人はやっと解放された。
ちなみに二時間目も自習である。この学校には教師がいないので、このまま一日が終わるまで自習だった。
「ちっ。自習って言っても、何すりゃいーんだよ」
「……確かに不毛な学園生活ですわね。教師が欲しいところですわ」
「弓さん、ここの問題がわかんないんですけど……」
「氷室さん、自分の置かれた状況がわかってます?」
先ほどの質問攻めで、すっかり意識が緩んでしまったのか――どうも三人とも、かなり汚染されてしまったようである。かおりが最も正気を保てているようだが、この様子では精神汚染が完了するまで遠くなさそうだ。
と――その時。
「うわわっ!?」
どさっ!
廊下の方から、男の声が聞こえた。
「何?」
愛子が立ち上がり、廊下へと出る。おキヌたち三人も、それに倣って一緒に廊下に顔を出した。
そこには――
「よ、横島さん!?」
横島がいた。おキヌは思わず、声を上げてしまう。
「あれ? おキヌちゃん? ここは……? 確か俺、美神さんにシバかれて……?」
「知り合い?」
愛子がおキヌに尋ねる。おキヌは「え? あ、はい」と、素直に頷いた。
が、横島はおキヌに質問した愛子を見て、ぎょっとしていた。
「……横島さん?」
「って……え? なんで? どういうこと? それじゃ、ここは……まさか?」
何かうろたえた様子で、窓の外に目を向ける。そこに広がる景色を見て、彼は今度こそ驚愕した。
「な……っ!? 電話で美神さんに話を聞いた時から、あの時と状況が似てると思ってたけど……まさか、本当にこんなことになってるなんて聞いてねーぞ!?」
「あ、あの、横島さん! しっかりしてください!」
おキヌがうろたえる横島の肩を掴み、ゆさぶった。
「あ、そ、そうだ……うろたえてる場合じゃねーな。とりあえず脱出を――」
言いかけた横島の視線が、ある一点で止まる。そこには、おキヌと一緒に出てきたかおりの姿――
「初めましてボク横島っ! お嬢さんお名前はっ?」
「え?」
「違うでしょう横島さんっ!」
一瞬でかおりの前に移動して手を取った横島を、なんだかもー慣れたものやら呆れたものやら、ともかく即座におキヌが突っ込む。当のかおりは、何がなんだかわからない様子で目をぱちくりさせていた。
と、そこに。
「え、ええと……いいかしら?」
どことなく遠慮がちに、愛子が話しかけてきた。
「横島くん……だっけ? 落ち着いて聞いてくれる? ここは――」
「おおうっ! よく見ると教室の中にも美少女が何人も! さっすが、いいチョイスしてるぜっ!」
しかし横島は、愛子の言葉も無視して一人盛り上がっている。
と――
ぷちっ。
何かが切れる音がした。
同時、ぞわり、と横島の背筋に寒いものが走った。それこそ、雪女の起こす吹雪さえ砂漠の日差しに思えるほどの寒気が。
「……よ〜こ〜し〜ま〜さ〜ん〜」
ヒュ〜ドロドロドロ、と擬音が聞こえてきそうな声に振り向くと、そこには――
「……ひっ!?」
人魂を両脇に浮かび上がらせた夜叉がいた。生身であるにもかかわらず。
命の危険を感じた横島は、とっさに夜叉の前に平伏した。
「かんにんやー! 仕方なかったんやー! 二度目になったら余裕も出てきて、クラスのメンバーが美人揃いだって気付けたもんやから条件反射でーっ!」
「言い訳になってません! しっかりしてください! まったくもうっ! そんな横島さん、嫌いです!」
それだけ言うと、夜叉――もといおキヌは、頬を膨らませてぷいっとそっぽを向いた。
「ああん! おキヌちゃん、嫌わんといてー! 俺が悪かったってー!」
「いいんですっ! 横島さんなんて知りませんっ!」
などと、はたから見れば痴話喧嘩以外の何物でもないやり取りをする二人。
そこに――
「……あのさー、おキヌちゃんと……横島、だっけ? 痴話喧嘩はその辺にしとけよ」
「「ち、痴話喧嘩なんかじゃ……!」」
魔理が遠慮がちに話しかけてきた。その言葉に、二人は真っ赤になって反論しようとする。
しかし魔理は、もう相手にするのも馬鹿らしいと言いたげな表情で、クイッと親指で背後を指差した。
そこには。
「いいの……いいのよ……想い合う男女が自分たちだけの世界を作り出して、周りの生徒は完全に無視される……それも青春の一ページなんだから……いいのよ……」
などと、床に指で「の」の字を書き続ける愛子の姿。
「「あ……」」
それを見てさすがに悪いと思ったのか、二人の頭にはでっかい汗一つ。
「あ、愛子さん、私たち無視しようと思ってたわけじゃ……」
「そ、そうだぞ愛子。なんだ? 何が言いたかったんだ? 聞いてやるから話せ。な?」
「……本当?」
ぐすっ、と目に涙を溜めて聞いてくる愛子。二人は「本当、本当」って揃って頷いた。
「うん……それじゃ、話すわね。
落ち着いて聞いてね、横島クン。私たちはもう、ここから出られないの。ここは、妖怪の――」
「ああ……それなら知ってる。妖怪の腹の中、だろ?」
こともなげに言い当てる横島に、愛子は驚いたように目を丸くした。
「なんで知ってるの? あなたは何者?」
「いや、何者ってほど大層なもんじゃないけど……一応、GS助手だよ。ここには……まあ成り行きってのもあるけど、とりあえず妖怪に飲み込まれた生徒を助けに来たんだ」
「それは……無理よ。脱出なんてできないわ」
「どうだろうな? でもまあ、とりあえず他の被害者とは話しておきたいな。新しいクラスの一員として、教室に入って自己紹介しとけばいいのか?」
「え? あ、うん。そうして」
「オッケー」
横島は頷くと、教室の中へ向かって一歩踏み出し――
「あ、そーだおキヌちゃん」
「はい?」
と、突然足を止め、おキヌの耳元に口を寄せた。
(……休み時間になったら、とりあえず誰も居ない教室に行こう。今後のこと、相談しなきゃだし)
(え……?)
横島の言葉に、おキヌは顔を真っ赤に染めた。そして、彼はおキヌを置いて教室に入って行った。
無論のこと、彼は愛子に関することでの相談、という意味で言ったのだが――
(え? 誰もいない教室で今後のことって……もしかして、将来のこと!? だめです横島さん! 私たち、まだ学生じゃないですか! でもでも、学校の中での恋愛っていうのも、学園生活の醍醐味の一つだし……)
きゃーきゃーと騒ぎながら身悶えるおキヌ。そんな勘違いも、愛子の精神汚染のせい……だと思いたい。
そんなおキヌの様子を見るのは、三対の目。
「……氷室さんって……変な子ですわね……」
「そう言うなよ、弓……。悪い子じゃねーんだから……」
「青春だわ……っ!」
まあそんなこんなで。
行動を起こすのは、次のチャイムが鳴ってからということである。
――あとがき――
思った以上に長くなりそうなんで、バッド・ガールズ&教室漂流編は次回まで続きます。本当はブラドーも教師役(例の世界地図付き)で介入させようかとも思ったんだけど、昼間なんで無理あるかなーと思ってやめました^^; これ以上介入キャラ増やすと、文章量も多くなりますし。
あと、当初は横島くんが愛子にナンパするシーン書いてたんですが、なんか違和感を感じてコミックスを確認してみたら、あらびっくり。横島くん、意外なことに愛子にセクハラは一回もやってないんですw というわけで、愛子ナンパシーンは削除しました。
ともあれ、次回こそ解決。愛子が六女の1年B組に編入します♪
ではレス返しー。
○内海一弘さん
横島の学校の除霊委員は、むさい男衆で構成されます。二次創作ではたまに野菜なネタを担当するピートにとって、両手に花?(マテ
○秋桜さん
百合の世界はちょっと……^^; おキヌちゃんの同盟脱退は、とりあえず未知数でw 残念ながら、解決は次回に持ち越しです;;
○山の影さん
たぶん、愛子は知らずに六女に来たかと^^; そこに学校があるのなら!って感じでw 愛子は結局、六女入りする予定ですー。
○わーくんさん
バレンタイン事件はどうしましょうかなー? やっぱドタバタで片付けた方が面白いんでしょうけど、愛子が絡ませられるかどうかは……微妙? でも絡ませたいですねw
陰念? 失恋するために存在する人ですが何か?(酷
○零式さん
今回、魔理とかおりは愛子の精神汚染のせいか、あまり衝突させられませんでした……次回こそ衝突させて、しかるのち和解って形を取りたいですねー。
○TA phoenixさん
シリアス横島は、学校のクラスメイトにとって有り得ない存在です。人は有り得ないものが目の前にあると恐怖するものですよーw しかしお笑い漫画道場……すごい懐かしいんですが^^;
○スケベビッチ・オンナスキーさん
そこで神聖モテモテ王国ですかっ!? 月での事件が終わった時のカオスを思い出しますねーw
魔理とかおりは、和解は次回持ち越しってのも一つの手ですかね。まあどう転ぶにしても、二人の距離は縮めたいですねw
○SSさん
そんな陰念に『哀・戦士』の称号を(ぇー
○イスピンさん
さてどうでしょう? 愛子は、結局横島くんとは出会ってしまったわけですしw でも同じ学校じゃない分、フラグはあまり立たないかも?
○亀豚さん
陰念には今後、どんどん空回りしてもらうつもりですw GS試験でもめっさ空回りしてもらいますw 報われる陰念なんて陰念じゃないですよ(酷
○虚空さん
バッド・ガールズに愛子が加わるパターンは見たことないので、思わずやっちゃいました。愛子が六女にいる理由は120%それです(マテ
○kamui08さん
そういえばそうですねー。横島の学園生活に彩が出るのは、小鳩登場までお預けかな^^; おキヌちゃん救出には、ちゃんと美神さんが登場しました。横島くんもマッハで来ましたが、やっぱ女子校という魔力空間(?)には逆らえなかったようですw
○とろもろさん
小竜姫さまは、将来があったとしても何百年も先の話でしょうね^^; 天龍があれで700歳だったことを考えると、歳の取り方は人間の百倍かな? ともあれ、確かに数年後には裏切り者扱いされる可能性もありますねーw
愛子のことは、祓われないよう話を進めるつもりです。
以上ー。では次回第十六話でお会いしましょう♪
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