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!警告!壊れキャラ有り

「想い託す可能性へ 〜 ご (前編) 〜(GS)」

月夜 (2006-08-19 12:01)
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 今回はちょっと小竜姫さまが・・・。壊してる気は無いんだけど・・・彼女って弄りやすいんだもんなー。壊れてる彼女が見たくないという人はご遠慮下さい。


 想い託す可能性へ 〜 ご (前編) 〜


 ここは時空間の狭間・・・。そこに令子と結婚した毒蜘蛛の血清を持ったA世界の忠夫が、安堵の表情で自分が元居た世界に向けて飛翔していた。

 「やっと・・・、やっとこれで令子を助けてやれる。これで・・・、これでお預けだった日々を取り返すぞっ! コンチクショー!!!!」

 待っとれよ令子ーってな感じで、忠夫は久々の妄想に耽っていた。彼の妄想の中で美神令子は様々なコスプレをさせられていた。ネコ耳とか、チャイナドレスとか、ボンテージとか・・・。時たまゴスロリ風や体操服(もちろんブルマ着用)とか・・・。30代の彼女にそんなコスプレは・・・かなりマニアックだ(笑)

 そんな妄想に耽っているせいで、いつの間にか彼のすぐ傍を飛ぶ翡翠色の珠に気付く事が出来ないでいた。

 「くふふふ、令子にあ〜んな事やこ〜んな事、はたまたそ〜んな事をやってもらう・・・。そこまで持っていくのは難しいが、持っていければこっちのものだ・・・って、へっ? フゴーッ!!!」

 唐突にA世界の忠夫は、マヌケな声を出して仰け反った。なぜならそれは、目の前で眩しいくらいに激しく明滅する光の珠が彼の額に激しくぶつかってきたからだ。それはもう「俺を無視するんじゃねーっ!」という感じに素敵にぶちかましていた。

 「ぐあー、痛ってー。な、な、何が起きたんだいったい・・・」

 A世界の忠夫は額を押さえながら、辺りをキョロキョロと見渡す。ほどなくして、彼は彼から1メートル離れた所に浮かぶ光る珠を見つけた。

 「な・なんだ、これ? これが俺にぶつかってきたのか?」

 先ほどは激しく明滅していた珠が、今は淡く明滅して忠夫の眼前50センチまで近寄ってきた。

 「な、なんか文珠に似てるな、コレ。でも、光ってるせいか文字が判らん。てか、これホントに文珠か?」

 目の前に浮いた光る珠を彼は手に取ろうとした。すると・・・いきなり激しく光り、その光りは忠夫を包み込んでしまった。

 「う、うわぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!!!!」


 『おい、起きろや。おっさん!』

 (どこからか声がする・・・。なんだ? 俺は何をしてたんだっけか?)

 ぷかぷかと暗闇に浮かぶ忠夫の身体。その近くに淡い燐光を放つ人影が居る。

 『おっさん、起きろや。いい加減目を覚ましやがれ!』

 淡い燐光を放つ人影は、起きない忠夫に業を煮やしたか彼の身体を激しくシェイクしだした。

 「うぅぅぅ、な・なんだ、じ・地震か? ・・・って、やめい! 起きる、起きるから揺するな!」

 最初寝ぼけてた忠夫は、意識がはっきりしてくるにつれて自分の身体を激しく揺り動かす人物に抗議した。

 『やっと起きたか。時間が無いっちゅうに、ぐ〜すか寝やがって』

 淡い燐光を放つ人影は、忠夫が起きたのを確認すると彼から離れた所に浮かんだ。

 「んぁ? あんた誰だ? ど〜も、どっかで感じたような霊気がするんだが・・・」

 じ〜〜〜っと、淡い燐光を放つ人影に見入る忠夫。

 『俺か? 俺の事は、どう説明したら良いんだろうな? ん〜、あんたの直接の過去のあんたでもあるし、そうでもないし・・・。んぁ〜、良い例えがみつかんねぇ〜』

 バリバリと髪を掻き毟る人影。どうでも良いが、時間無かったんと違うのか?

 「お、落ち着け。っと、名前が分からんとどうしようもないな。俺は横島、横島忠夫だ。さっき、あんたは俺の直接の過去の俺と言ったな? それはどういう事だ?」

 『まぁ、いいや。俺はあんただよ。正確には過去のある時点で分岐した横島だよ。良いか、時間が無いから手短に伝えるぞ。あんたが元居た時間軸に、俺の中にいたルシオラが多分飛ばされたはずだ。確証は無いがそう感じる。あんたにとってルシオラは敵かもしれないが、頼むアイツを助けてやってくれ』

 そう言って、A世界の忠夫の眼を見据える、B世界の横島。

 「ちょ、ちょっと待て。ルシオラって、アシュタロスの娘のあのルシオラか? 俺の記憶じゃ、彼女はアシュタロスに殺されたんだが・・・」

 『先に言ったろ? 俺はある時点で分岐した、あんたの過去だって。俺の時の大戦じゃ、ルシオラが俺を生かす為に彼女自身の霊基構造を、瀕死の俺にほとんど与えて消滅しちまったんだ。ベスパやパピリオがアイツの霊破片を眷属使って集めたけど、復活にはあとほんの少しって所で足りなかった。で、コスモプロセッサでアイツを復活させようとしたんだが、あとちょっとって所でアシュタロスに邪魔されて・・・復活させられなかった・・・。魂の結晶は奪い返したんだが、戦いの流れで俺が魂の結晶を握る事になった。だけど、破壊する事はためらったよ。その結晶があれば、ルシオラを復活させる事が出来るんだからな。でも、状況がそれを許しちゃくれなかった。アシュタロスの目の前で結晶を握った俺は、あいつの悪魔の提案に結晶の破壊で答えてやったよ。同時に、自分の手でルシオラに止めを刺しちまった・・・・・・。で、結晶を破壊されたアシュタロスは自棄(ヤケ)になっちまって、究極の魔体使って人類抹殺をしようとしたよ。だけど、魔体には欠陥があったから、ベスパにその欠陥を教えてもらった俺たちは何とか魔体を倒す事が出来た。その後に神・魔の最高指導者の二柱が現れて、アシュタロスは真の望みだった魂の牢獄から解放されたんだよ。だけど、ルシオラは俺の子供としてしか転生できない結果になっちまった。で、なんだかんだで3年経ったある日、得体の知れん化け物に俺は襲われちまった。そいつは堂々と街中で俺に襲い掛かって来たんだが、不思議な事に周りのやつらはその化け物を認識できなかったんだよ。まぁ、化け物だから一般人は認識できないってのなら俺も判るんだが、そいつの攻撃の流れ弾が周りの一般人に当たると、外傷も無いのにその人達はその場で倒れちまって動かなくなった。不思議なのはその後で、周りの人間は逃げるでもなく、その倒れた人達を助ける為に動き出したんだ。どうも自然に倒れたとしか認識されていないようだった。仕方なく俺は被害が広がるのを恐れて、人気の無い所に逃げ込んだよ。だけど、逃げる間中、敵は俺にしか認識できなかった。で、俺は逃げ切れずにやられちまったんだ』

  悔しげに拳(こぶし)を握り締めるB世界の横島。

 「あ〜、お前が平行世界の俺って事と、お前が経験したアシュタロス戦役については、多少疑問はあるが納得した。で、ルシオラを助けてくれっていうのはどういう事だ?お前が死んだんなら、転生したんじゃないのか?」

 『ルシオラは転生できなかったよ。俺も今の状態になって初めて理解したんだが、アイツは厄介な敵に狙われてるんだ。俺が死ぬ間際に、俺の中にあったルシオラの霊基構造と、ベスパ達が集めてた霊破片を纏めた蛍で何とか復活させる事は出来たんだが、どうもまだ俺を襲ってきた敵に狙われ続けてる。で、最初の頼みに戻るんだよ。俺はもう、自力でアイツを助けてやる事は出来ない。こんなナリになっちまってるからな・・・。だから、頼む。ルシオラを助けてくれ!!』

 「事情は大体分かった。助けてやりたいのはヤマヤマだが、どっかの平行世界に行き着いてるんじゃないのか? それだと、俺には手出しが出来ないぞ。無限にある平行世界から、お前が助けたがってるルシオラを見つけるなんて、俺の一生を掛けても無理だ」

 首を力なく振って、不可能だと告げるA世界の忠夫。

 『いや、探す必要は無いよ。最初にも言ったが、アイツはあんたの元居た時間軸に居る。と言うか、可能性の世界樹が俺が居た世界と、あんたが居た世界とを融合させちまって、結構わやくちゃになっちまってるんだな、コレが・・・』

 そっぽを向いて、後頭部にでっかい汗を垂らして言うB世界の横島。

 「な・なんだとーっ!!! じゃ、じゃぁ、令子やおキヌちゃんやシロにタマモはどうなってるんだ?? それに他の皆も!!」 

 驚愕の事実に叫ぶA世界の忠夫。

 『あ〜、なんかすっげー事にはなってるみたいなんだが・・・。俺も詳しくは分かんねー。ただ、俺が居た世界では、俺はおキヌちゃんと結婚してるんだよ。んで、シロとタマモも、おキヌちゃん公認で同じマンションで同棲してる。で、融合した世界では、これが適用されてるらしいんだ。なんだか、あんたの世界に、俺の世界が上書きされたような感じになってるらしい』

 時折、A世界の忠夫から視線を外し、虚空を視るかのように話すB世界の横島。  可能性の世界樹にアクセスしているのか?

 「お・お前、4(ぴ〜)なんてやってるんか!! なんて羨ましい。俺に代われー!!」

 凄い形相でB世界の横島に詰め寄るA世界の忠夫。

 『代わるか、ボケー!! おキヌちゃんは俺んじゃー、シロにタマモも譲るか〜!!!!!』

 なに抜かすか、こんボケ親父はー!! という感じに反発するB世界の横島。  お前ら時間が無かったんと違うのか?

 「ま、まぁ良い。おキヌちゃん達は諦めよう。それより、れ・令子は! 令子はどうなったんだ!! 融合したって事は、まさか令子もお前の毒牙にー!!!」

 B世界の横島を、ガックンガックン揺するA世界の忠夫。

 『ええ〜い、離せっ。落ち着けおっさん! 美神さんは、俺のモノにはなってねー!! てか、俺は美神さんの所から独立したんだよ! 融合した後は、どうなったかは俺も知らん! 自分で確かめてくれ! てか、こんな言い争いしてる時間はねぇんだよ。くそー、毒蜘蛛ん時は結構頼りになるって思ってたんだが・・・。やっぱ俺は俺って事か・・・』

 「お・おぉ、悪かったな。んで、時間が無いってどういうことだよ?」

 『もうすぐ、あんたが覚醒するって事だよ。真の不確定因子にな。たくっ、本来なら覚醒する事無く天寿を全うできたんだがな・・・。狂った“除くモノ”が余計な事しやがって・・・。あ、くそっ、マジで時間が無ぇ。良いか、良く聞けよ。一回しか言わねぇからな』

 「お・おぅ」

 B世界の横島の気迫に押されて、頷くA世界の忠夫。

 『今から、俺はあんたと同化する。記憶・意識はあんたがメインだが、俺の記憶と諸々の感情はルシオラとあんたが再会出来た時にあんたの記憶と感情に追加される形で蘇る。不確定因子という存在の事とかについては、サルの師匠にでも聞いてくれ。で、俺が同化しちまったら、あんたの記憶には今の会話はほとんど残らねぇ。ルシオラと再開したら多分だが、この会話も思い出すと思うが・・・。あと肉体年齢がかなり若返っちまうが、それは儲けたと思って諦めてくれ。(約7年分の肉体の修練結果は無になっちまうが・・・)多分、融合した世界でも、みんな若返ってると思うがな。逆に霊力の最大値については、飛躍的という言葉すら馬鹿馬鹿しく思えるほど、天井知らずに上昇するだろうな。文珠を14個も並列起動できるあんただ、サルの師匠から手解き受ければ使いこなせるかもな』

 「ま・待て。何がナンだか良く分からん。もうちょっと詳しく説明してくれ」

 『・・・・・・もう無理だよ。その時間が無ぇ。あんたにゃ、悪いと思ってる。俺がヘマさえしなければ、美神さんと幸せになれたんだろうから。押し付けてるって事も分かってる。だが、頼む。ルシオラを助けてやってくれ。三姉妹仲良く暮らせるようにしてやって欲しい』

 「三姉妹仲良くって、ベスパやパピリオまで生きてるのか!」

 『ああ、生きてるよ。小竜姫さまやワルキューレもな。・・・・・・後、おキヌちゃんとシロ・タマモをよろしく・・・な・・・』

 そう言ってB世界の横島は、身体の輪郭が崩れると淡い光りの粒子となって、A世界の忠夫の身体に吸い込まれていった。

 「お、おい、ちょっと待て。まだ訊き足りねぇ事あんだぞ! 敵ってなんだよ!!」

 『・・・狂った除く・・・モノ・・・。か・・・のう・・・せい・・・を摘む・・・モノ・・・世界・・・樹の・・・きせい・・・ちゅ・・・』

 その言葉がA世界の忠夫が聞いたB世界の横島の最後の言葉だった。直後、彼の身体は燃え上がるような感覚に襲われた!!

 「う、うおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!!!!」

 忠夫の意識は、燃え上がるような身体の感覚と、目の前で凄まじいフラッシュを焚かれたような光りによって白く塗り潰されていった。


 ここは、妙神山へと至る秘密のルートの入り口。普段は鬱蒼とした木々に囲まれた場所で、特殊な結界が張ってあって、人が入り込む事はほとんど無かった。そこに珍しい事に、薄汚れたワンボックスカーが静かに佇んでいた。
 ワンボックスカーは所々が凹んでいて、かなり激しい運転に曝された様だ。そのワンボックスカーには4人の女性が乗っていて、声をひそめて話し合っていた。

 「ここが妙神山へ繋がっている秘密の入り口よ。いつもは認識妨害の結界が張ってあって、用の無い人間が入り込まない様にされてるの」

 令子が運転席から後ろを振り返って、後部座席に座っているタマモとシロに説明した。

 「かなり高度な結界ね、この私が見破れないなんて。ちょっと悔しいわね。で、なんですぐに行かないの?美神」

 タマモは自ら幻術を得意としている事もあって、令子に説明されるまでここがそうだと、認識できなかったのが悔しいらしい。

 「ああ、それはね。ここの扉が開くのが、もう少し時間が経ってからなのよ。逆に妙神山からこっちに来る時は、そんな制限は無いんだけどね」

 タマモの問いに、令子は丁寧に答えた。敵から逃げる途中に、思い出し笑いを悪い方に誤解されたと思っていた令子は、タマモとの受け答えにかなり慎重になっていた。

 「拙者の里の結界のような物でござろうか? 拙者の里の結界は、通行許可の札があればいつでも開ける事が出来るでござるが」

 シロは令子の説明から、人狼の里の結界を思い浮かべていた。

 「ん〜、似たような物ね。ただ、こっちの結界は更に用心して、通行許可の札ではなくて登録された霊波に反応するんだけどね。札だと盗まれたり失くしたりする事もあるからね。ただ、霊波登録もクローン体を持ってこられると突破されるから、開く時間を決めているのよ。で、その開く時間は妙神山側で勝手に設定していて、登録された霊波の持ち主が予め決められたキーワードを言霊で喋れば、開く時間を結界が教えてくれるのよ」

 「なるほどでござる。では、美神殿はもう開く時間を教えられているのでござるか? でも、先ほどから言霊らしきものは発していないようでござったが?」

 令子の説明にシロは結界については納得したが、令子がいつ自分に気取られずに言霊を発したのかと疑問が思わず口をついて出た。

 「ん・・・、まぁいいじゃないっ! とりあえず開く時間は判ってるんだから!」

 令子はシロの疑問に、ある事で答えられず強い調子で誤魔化した。

 (言霊に使われる霊力は微量だけど、その言霊は聞かれる訳にはいかないのよ。これは私だけの言霊なんだから・・・)

 確かに聞かれるのはセキュリティー上、拙いだろう。だが、令子は別の意味で聞かれたくなかったのだ。なんせその言霊は『忠夫と一緒にごにょごにょ』なのだから(笑)
 聞かれたら令子にとっては悶死だ。(注:ごにょごにょは各自妄想して下さい)

 「うぅ〜、さっきから秘密ばかりでござる。教えてほしいでござるよ」

 どうもシロは、今の令子の雰囲気に、袂を分かつと決めた時の感情を無意識に持てないでいるようだ。

 (はぁ〜、バカ犬は疑うって事に慣れていないから、簡単に丸め込まれてるわ。でも、私は油断しない。必ず正体を暴いてやるわ)

 タマモはシロの言動に呆れたが、令子が何を考えているのか暴くのを自分一人ででもやり遂げて見せると心に誓っていた。

ブブブブ ブブブブ ブブブブ

 「ぅひゃぅ」

 妙にくぐもった音が聞こえた途端に、令子が奇妙な悲鳴を上げた。

 「どうしたでござるか? 美神殿?」

 いきなり妙な声を上げた令子に、シロは怪訝な顔で尋ねた。

 「む・胸のポケットに入れてた携帯が鳴ったのよ。誰よ、こんな時間に電話掛けてきた馬鹿は・・・。エミの馬鹿だったら、ただじゃおかないわ!」

 ベストの胸ポケットから携帯を取り出して、ブツブツ言う令子。ちなみにこのベストは簡単な防御結界が張られているカオス謹製のベストなのだ。あのカオスの事だ。他にも色んな隠し機能が付いていそうだ。

 「あれ? おキヌちゃんの実家からだわ。何かあったのかしら?」

 怪訝な顔で携帯のディスプレイを見る令子。

 「ま、出てみれば判るわね」 ピッ

 『良かった繋がっただ。み、美神さんだべか!? 早苗だべ!! き、緊急事態が起こっただよ! すぐにおキヌちゃんを連れてこっちに来てけろ!!』

 通話ボタンを押した途端、切羽詰ったような声で捲(ま)くし立てる早苗の声が聞こえてきた。

 「ちょ、ちょっと待って、早苗ちゃん。緊急事態って何が起こったの?」

 『うちの祭神様が顕現(けんげん)されて、おキヌちゃんに危機が迫ってるって教えてくれただよ。一刻をあらそうだ。すぐにこっち来て祭神様から説明を受けてけろ。おキヌちゃんの秘密も関わってるだよ』

 もの凄く焦った感じで早苗は、令子に捲くし立てる。

 「祭神様? おキヌちゃんの秘密? ちょ、ちょっと話が見えないわ。だから、早苗ちゃん落ち着いて! それにおキヌちゃんは、今はちょっと居ないのよ」

 早苗の口調にとりあえず落ち着かせようと令子は答えるが、「おキヌちゃんが居ない」の所で余計にパニックにさせてしまった。

 『なんだべ!! おキヌちゃん居ないだか!? まさか、もう連れ去られてしまっただか!!』

 早苗自身が令子達と出会った時に言っていた筈だが、彼女は非常に早とちりをする性格の持ち主である。そういう人物に対して、不用意な言葉は容易(たやす)く誤解を生む結果となる。

 『イワナガヒメさま〜!! おキヌちゃんはもう 「待ちなさい!!!!」 ひぅっ!!耳が〜〜』

 早とちりした早苗が誰かに報告しようとしたのを、寸でのところで令子から奪った携帯に怒鳴った美智恵によって防がれた。

 だが、怒鳴られた早苗は、あまりのプレッシャーと大声で耳やら肝に大ダメージを受けていた。耳を押さえてしゃがみこんでいる。ちなみに至近でその大声とプレッシャーに晒された他3名は、早苗と同じく(こちらは両手を使ってだが)耳を押さえて、目を回していた。

 「怒鳴ってしまってご免なさいね。氷室早苗さんだったかしら? おキヌちゃんは、今は安全な所に居るから大丈夫よ。だから落ち着いて、何があったのか教えてね?」

 娘を睨みながら、美智恵はうって変わって優しい声音で早苗を落ち着くように促して、情報を聞き出そうとした。さすがは国際警察機構の支部長ではある。

 『あぅぅ、耳が痛いだよ・・・。お、おキヌちゃんは無事だべか? な、なら良かっただ。えっと、すまんだがあんたさ〜、誰だべ?』

 多少は落ち着いたのか、令子に代わって電話口に出た新たな人物に名を聞こうとする早苗。でも、痛む耳を押さえ、しゃがむ姿は元から肌蹴ていた浴衣を余計に肌蹴させていて、結構色っぽい。

 「私の名前は美神 美智恵。令子の母親よ。貴女はおキヌちゃんのお義姉さんの早苗ちゃんね? 何が起きたのか、落ち着いて話してくれないかしら?」

 『あ、はずめますて、氷室早苗といいますだ。えっと、わたすも急におキヌちゃんが危ないって言われたもんで、詳細が判っていないだども・・・。うちの祭神様で、ご先祖さまでもあるイワナガヒメ様が急に現れて、ニニギの荒御霊がおキヌちゃんを狙ってるから助けるのに手を貸せと言われただよ』

 「ニニギにイワナガヒメ!! 早苗ちゃん! 本当に早苗ちゃんの所の祭神様がそう言ったのね!?」

 『うん、そう言っただべ。イワナガヒメ様が言うには、今度こそ自分がおキヌちゃんを助ける番だって言ってただべ。何でも、死津喪比女の時に自分が人柱になるはずなのに、代わりに人柱にしてしまったのを悔やんでいただべ。その時は、わたすのご先祖さまの女華姫さまに転生なさっていたらしいだ』

 「え? メガヒメさま?」

 「女華姫ですって!? おキヌちゃんが元々生きてた時代のお姫様じゃない!! どうしてここでその名前が!?」

 美智恵の<メガヒメ>の単語に令子は反応した。他2名も先ほどのダメージから回復して、興味深そうに聴き入っている。

 「どういうこと、令子?」

 ちょっと待ってねと早苗に言って、送話口に手を当てて訊く美智恵。

 「女華姫というのは、本来なら地脈堰の術式に組み込まれる事になる筈の領主のお姫さまだったのよ。でも、おキヌちゃんが自分から立候補しちゃってね。お姫様とは親友みたいだったから、庇ったんだと思う。でも、そのお姫様の名前が、なんで今頃出てくるのよ?」

 美智恵の問いに令子は答えるが、疑問は尽きない。

 「早苗ちゃん、いいこと? よく聞いてね? 今から私たちは妙神山に入るところなの。そこでおキヌちゃんと合流して、真相を探ろうとしてたの。でも、早苗ちゃんの家の祭神様がどうも詳しい事を知っているみたいね。後でそちらに向かうから、待っててくれないかしら?」

 『待ってけろ。そっただこと、わたすだけじゃ決められないだ。イワナガヒメ様に訊いてみるだよ。あ、それにだ。イワナガヒメ様が言うには、おキヌちゃんはコノハナノサクヤヒメノミコト様の分御霊ということらしいだよ』

 そう言って、早苗は保留にして電話口から離れた。子機ではなく親機で話していた為、途中で子機を持って女華姫の所に走っていった。実家だからだと思うけど、一連の行動で浴衣がいろいろ肌蹴ていて、なんだか襲われた直後のようになっているが、本人は慌てている為に全く気付いていない。

 「な!!」

 早苗の言葉に絶句する美智恵。

 「どうしたの? ママ」

 絶句して固まった母親に恐る恐る訊く令子だったが、母親からもたらされた言葉に母親同様絶句することになる。

 「早苗ちゃんの家の祭神さまが言うには、おキヌちゃんは浅間(せんげん)さまの分御霊らしいわよ」

 「えぇ!!」

 「ホントなの!? 美智恵!!」

 「浅間さまとは誰でござる?」

 シロだけは分かっていなかったが、それは無理も無い。人狼達は人間達の神とは無縁の生活を送っていたのだから。まぁ、長老辺りなら知ってはいるかもしれない。タマモが知っている事の方が、この場合は驚きに値するのだろうか?

 「なんでタマモは浅間さまを知ってるの?」

 疑問に思った令子は聞いてみた。

 「私の前世がなんだったのか忘れたの? 私は時の帝の寵愛(ちょうあい)を受けた者よ? 帝の母神(ははかみ)の俗名を知っていても不思議でもなんでもないわ」

 「そう、そうだったわね(これは、かなり前世の力を取り戻しているようね)」

 タマモの答えに納得する令子。同時にその答えで、タマモの力が前世に近づいている事も感じていた。

 「シロちゃん。浅間(せんげん)さま又は浅間(あさま)さまという神さまはね、日本人の祖神(おやかみ)の一柱にして天皇の母神でもあるの。その神名はコノハナノサクヤヒメノミコト様と言うのよ。元々は浅間山の麓(ふもと)に祀(まつ)られていたのだけど、平安時代に天皇家の恒久存続と長寿を祈願して、かぐや姫が月に帰る時に残した不老長寿の薬を富士山の頂上で撒いて、その後に富士山を不死の山として奉(たてまつ)って、その麓にコノハナノサクヤヒメノミコト様を祀ったのよ。天皇の血筋が途絶えない様にする為にね。だから、富士山=不死の山=コノハナノサクヤヒメノミコト様=浅間様となるの。浅間様と呼ばれる様になった理由は様々あるけれど。一番の理由は、神さまの名前が長くて覚え難いので、民間では祀られてる神社の名前で呼ぶようになったのよ」

 丁寧にシロに教える美智恵。しかし、一部分、身もふたも無いことも教えるのは良いのだろうか?(汗

 「なるほど、分かったでござるよ。でも、その女神さまとおキヌ殿がどう繋がるのでござるか?」

 美智恵の答えにシロは納得するも、その女神さまとおキヌちゃんがどう繋がるのか見当もつかなかった。

 「それはね。日本の神さまは神威を日本の全域に広げる為に、分祀といって神様の御霊(みたま)を分ける儀式を行って、別の土地で分けてもらった御霊を祀る事をしたのよ。でね、その分けてもらった御霊の事を分御霊(わけみたま)と言ってね、儀式を行った場合はその神威は衰えずに祀られた土地を包むと言われているの。そんな訳で、ママがいま早苗ちゃんから聞いた話の中で、おキヌちゃんの魂がその分御霊だと言う事に驚いたのよ。普通はありえないハズだから」

 次にシロの疑問に答えたのは令子だった。

 「じゃぁ、儀式も行わずに御霊を分けるとどうなるのよ? あ、まさか!!」

 美神親娘の説明を横で聞いていたタマモが疑問を発するが、何かに思い当たったようだ。

 「多分、タマモの予想通りよ。儀式を行わないで分霊すると、その神様の神威や霊威は多少落ちる。そして分霊された御霊は、輪廻(りんね)の輪に入ってしまうわ。だけど、儀式を行わない分霊は、神代(かみよ)の日本では禁忌(きんき)だった筈(はず)なの。まして、サクヤ様は名前の通りに薄命だったのよ。それなのに分霊したとなると、御自身の相当のご覚悟と周りの猛反発があった筈・・・・・・。そうか!! だからおキヌちゃんは狙われてるのね!!」

 タマモに説明している最中に、この一連の出来事の答えになりそうな事柄に令子は思い至ったようだ。

 「ああ、やっぱりそうなんだ。でも、それにしては、なぜ今になってなの?」

 タマモは令子の答えが自分の予想と同じなのに納得したが、狙われる時期がなぜ今なのかを疑問に感じた。

 「そうね。確かにタマモの疑問も尤(もっと)もだわ。その辺は、早苗ちゃんの家の祭神に訊いてみるしかないわね」

 令子もタマモと同じく感じて、そう結論付けた。

 『美神さん! 聞いてるだか!? イワナガヒメ様の前に来ただよ。どうするべ?』

 令子達のレクチャーの間に、早苗はまた露天風呂に戻ったようだ。

 「ああ、早苗ちゃん。待ってたわ。こっちも実は、かなり急いでいるの。姫様に替わってくれないかしら?あ、その前に実体化されてるの?」

 美智恵は、イワナガヒメ様が実体化しているか心配になって訊いてみた。

 『イワナガヒメ様、これを持つ事が出来るだか?』

 『うん? この棒の様な物を持てば良いのか? どれ・・・これで良いかの? ふしゅるるる〜〜

 『良かった、持てるだな。その棒のような物で、さっき話した様に遠くに離れた人と話す事が出来るだよ。そのままてっぺんに細い棒がある方を上にして耳に当てるだよ。そうすれば話が出来るだ』

 『なるほどのぅ。こうか? 「んだ」  ふしゅるるる〜〜

 「(なに?この奇妙な音は?)初めまして、イワナガヒメ様。私、美神 美智恵と申します」

 『うぉ! 本当にこの棒は喋るのだな。・・・と、すまぬ。取り乱してしもうた。美智恵と言うたな? 妾はイワナガヒメにして早苗の祖先の一人の女華という。見知りおき願う。 ふしゅるるる〜〜

 女華姫さまは早苗から渡された子機から声がするのに驚いたが、今はそれどころではないのを思い出して自己紹介をした。

 「(気にしたら負けな気がする)はい、こちらこそお見知りおき願います。ところで女華姫さま。訊きたい事はかなりあるのですが、今は時間がありません。なので、後ほど合流したいと思います。それまで、そちらで待っていて頂けないでしょうか?」

 美智恵は受話口から聞こえる奇妙な音が気になったが、気にしていたら先に進まない気がしたので流す事にした。

 『ふむ、それは何ゆえか? 今は、おキヌを一刻も早くニニギの荒御霊の魔の手から逃がす事が先決のはず。 ふしゅるるる〜〜

 「おキヌちゃんは、妙神山と呼ばれる神域にて預かっていて貰っています。いくら神族の者でも、許可無しには立ち入れませんわ。ましてや話しを聞くに、ニニギノミコト様の荒御霊ならば、余計に妙神山の結界は突破する事は難しいでしょう。まして、あそこにはハヌマン様もいらっしゃいます。または、闘仙勝仏さまと言えば、お分かりになりますでしょうか?」

 『ほう、妙神山の斉天大聖殿であるか? 妾の親父殿と同じ山の神の御仁ではないか。なるほどのぅ・・・。そなたの言う事が真ならば、安全ではあるのぅ・・・・・・ん? そなた、美神言うたな? おキヌが世話になっておった美神 令子の関係者か? ふしゅるるる〜〜

 女華姫の声音が若干、危険味を帯びた。

 (いけない。融合前の令子の所業がネックになるかも・・・。ここで答えを間違ったら破滅だわ)

 美智恵は女華姫の声音に宿る危険な匂いを敏感に感じ、ある推測に瞬時に至った。

 「確かに令子は私の娘ですわ『なに!!』 女華姫さま!! 今はおキヌちゃんの事を優先して考えて下さい!! 『ぬぅ・・・』 後ほど、お怒りは受けますわ。今は、私を信じていただくしかありません

 美智恵は声に霊力を乗せ、激昂しかけた女華姫を諌めてみせた。

 読者は電話で霊力を乗せた言霊を伝える事が出来るかと疑問に思われるだろうが、これは霊力と言うものの本質を知っていれば、ある領域に達した霊能力者には比較的簡単に出来る事である。まして、美智恵は電気を介して霊力を発現する事に手馴れている。その言霊の霊力は、神であるイワナガヒメたる女華姫に容易に届くほどであった。

 『・・・・・・分かった。そなたを信じよう。して、いつまで待てばよい? ふしゅるるる〜〜

 「半刻(はんとき=1時間)の内にはご連絡致します。それまで、早苗ちゃんとお待ち願います」

 『分かった。だが、そなたの娘には言いたいことがある。努々(ゆめゆめ)忘るるな。 ふしゅるるる〜〜

 怒りを押し殺したような声音で女華姫は答えた。

 「分かりました。娘にも伝えておきますわ。お聞きいただいて、ありがとうございます。では、その棒を早苗ちゃんに渡してあげて下さい」

 美智恵は女華姫と会った時に負うであろう、あらゆる事を受け止める覚悟を決めた。

 『分かった。 早苗、美智恵殿より替われとの事だ。 「わたすにだか?」 そうだ。 ふしゅるるる〜〜

 『電話替わっただ。わたすに、まだ何かあるだべか?』

 「ええ、まずは女華姫さまが電話の扱いを知らないと思うから、貴女に渡してもらったのよ」

 『なるほどだべ』

 「後は、私達が早苗ちゃん達と合流できるまで、女華姫さまの話し相手になってあげて欲しいの。お願いね?」

 『まかしてけろ。わたすも訊きたい事はあるだで、気にしないでけろ』

 「ありがとう。じゃ、今度はこちらから連絡するわね。こちらの情報が整理できたら、直ぐにそっちに向かいます。じゃぁ、またね 『わかっただ』」  ピッ

 美智恵は携帯電話の終了ボタンを押すと、令子に向き直った。

 「令子、女華姫さまと会う時は覚悟なさい。向こうは、貴女がおキヌちゃんに何をしたか、知ってるわよ」

 携帯電話を令子に返しながら美智恵はそう言った。

 令子は携帯電話を受け取り、そう言われて硬直してダラダラと冷や汗を流しだした。 何をしたというのだ、美神令子よ(汗

 (あの時のわたしはホントに短絡的だったわ・・・・・・因果応報なのね・・・・・・でも! もう間違ったりしないわ!! 何をされようと、受けきってみせる!!!!)

 令子が覚悟を決めたその時、妙神山へと続く次元の扉が開きだした。

 「ちょうど妙神山への道が開いたわ。小竜姫と合流して、情報を整理するわよ」

 令子はワンボックスカーのエンジンを掛けると、開いた次元の扉に進入していった。

 その扉を抜けると、そこは妙神山の正門前だった。

 「ん? 美神令子か? 小竜姫様が中でお待ちだ。急(と)く、入られよ」

 珍しく左の鬼門が先に気付き、右のを促して両開きに門を開いていった。

 「珍しいわね。左の鬼門が入るのを促すのなんて、初めて見たわ」

 鬼門に話しかけようと運転席の窓を開けて令子は顔を出したのだが、左の鬼門は彼女に何も言わせずに通るのを促した。

  グココココココココココ・・・・・・・・・・・・

 妙神山の門が観音開きに開いていく。

 車が楽に入れる空間が出来ると、令子はアクセルを軽く踏んで徐行しながら門の中へと進入した。

 車が完全に入るのを確認した左の鬼門は、そのまま門を閉じていった。

  グココココココココココ・・・・・・・・・ズゥン・・・ガシャン!

 扉が閉まり、閂(かんぬき)が下りる音が辺りに響いた。

 なにやら鬼門たちの様子がおかしいが?

 「左の・・・これで本当に良かったのか?」

 「ああ、今のアヤツらを姫様に会わせる訳にはいかん。特に美神親娘はの・・・」

 なにやら苦悩するような響きがある左の鬼門の声。

 「そうだの・・・。覚醒されたキヌ殿を見て、怪しい行動をされ始めた姫さまを見られるのは忍びないからのぅ。ふぅ〜」

 右の鬼門が過去に起こった小竜姫の行動を思い出し、ため息を吐いた。

 「うむ。しかし、姫さまはどうされたのか・・・。覚醒されたキヌ殿を見たとたんにオカシクなられたようだが・・・?」

 「何やらキヌ殿の胸を指して、裏切り者〜だのとおっしゃってたがどういう事なのかのぅ?」

 「「さっぱり分からん」」

 二人して首を捻る鬼門達。

 いや、まぁ、彼女は原作見てると、結構あると思うんだけどな〜と思うのは作者だけなのかな? 原作7巻P130の入浴シーンは包帯に包まれてるけど、谷間も結構あるし・・・、新装ワイド版5巻リポート19の扉でもエミや令子に引けは取ってないと思うんだけど・・・


 時を遡り、令子達が鬼門をくぐる30分前。

 湯浴みを行い、おキヌちゃんの身と自身の身を清めた小竜姫は、彼女の寝室に昏睡しているおキヌちゃんを横たえさせた。結局、ヒャクメは小竜姫達が入浴している間は来なかった。

 不意におキヌちゃんの身体が淡く発光しだした。

 「おキヌさんの身体に変化が! ヒャクメ! すぐに来て!」

 おキヌちゃんの変化に驚いた小竜姫は、ヒャクメを大声で呼んだ。

 ヒュン

 「どうしたのね、小竜姫! って、なるほど。おキヌちゃんに変化があったのね。詳細を調べるから、手伝って欲しいのね〜」

 小竜姫の大声に慌てて転移してきたヒャクメだったが、寝台に寝かせられたおキヌちゃんの様子を見て直ぐに行動に移した。

 おキヌちゃんの額と丹田よりやや下の子宮辺りにセンサーたる吸盤を手早く付けて、ヒャクメはトランクの中のキーボードを物凄い速さでタイプしていく。

 しばらく部屋にはカタカタという音が凄い速さで響いているのと、おキヌちゃんから発せされる光りが徐々に強くなっていく様子だけになり、誰も言葉を発しようとはしなかった。


 (ココ・・・ハ・・・? ここは・・・どこ? ワタシは・・・わたしは・・・私はキヌ。忠夫さんの妻の横島キヌ。じゃぁ、ここはリビング?  けれど何も見えない・・・。ここは何処なんだろう?)

 ゆっくりと意識を取り戻したおキヌちゃんは横たえていた身体を起すと、辺りを見回す為にキョロキョロと首を動かした。

 辺りは真っ暗な空間で、おキヌの身体は宙にたゆたっていた。

 (あうぅ〜、なんだか妙な事に巻き込まれちゃったのかな〜。タマモちゃんと話した後の記憶が朧気で良く思い出せない・・・)

 おキヌちゃんは、その場で楽な姿勢で座り直すと、どういう経緯でこの場に居るのかを推測しだした。

 (確かタマモちゃんと話してて・・・忠夫さんに浮気疑惑が出てきて・・・それで、私が妄想に耽っちゃったんだわ(汗 それで・・・どうなったんだろう・・・(滝汗 あぅぅ、思い出せない〜)

 頭を抱えて悩むおキヌちゃん。 う〜ん、悩む前に自分の身体の無事を確認するのが先だと思うけど・・・

 (とにかく、こうしちゃいられない! 早く戻って忠夫さんを問い詰めなくっちゃ!! 出口、出口はどこ!?)

 急に立ち上がって、キョロキョロと周りを再び見回すおキヌちゃん。だけど、どこを向いても闇・闇・闇。全方位、縦・横・斜め360度全てが闇だった。

 (あぅあぅ・・・。とにかくこの空間から抜け出すのが先よね。何か手掛かりになるような物は・・・・・・真っ暗で判んないよ〜(泣 何か灯りになる物は持ってなかったかな?)

 そう思い至って、服のポケットを探ろうとして・・・・・・裸なのに気付きました。

 (・・・・・・なんで私、ハダカ? きゃーきゃー、どうしよう!! なんかイタズラとかされちゃったのかなー!! 忠夫さんごめんなさい〜、キヌは汚(けが)されてしまいました〜〜)

 手足をジタバタ振り回して取り乱すおキヌちゃん。

  − 落ち着いておキヌちゃん!! −

 (ほへ? 今、何か聞こえたような・・・。ど、どなたか居るんですか〜? 出来れば出てきて欲しくないんですけど〜? 服も着てないし・・・)

  − 貴女が心配するような事は、ここではあまり起こらないわ。夢魔に取り込まれない限りはね −

 (え〜っと・・・。どこかで聞き覚えがあるんですけど・・・。ごめんなさい、どなたか思い出せません)

  − わたしと貴女達が過ごした時間は1ヶ月も無かったし、わたしは貴女の恋敵だもん。思い出せないのも無理ないわ −

 (え・・・? 1ヶ月過ごした? 恋敵? ・・・・・・は! まさか! ルシオラさん!!)

  − あら、割と簡単に思いだしたわね。貴女達にとっては、ヨコシマを横取りした女として忌避されてるものとばかり思ってたんだけど・・・・・・ −

 (最初は・・・そうです。そして・・・今でも怒ってます! 貴女が!! ルシオラさんが居なくなった後の忠夫さんの慟哭を聞いてからは、余計に貴女が許せなかった! 最期の最期で共に生きようとせずに、一方的に忠夫さんに想いを残して逝った貴女が、私には許せなかった・・・。あの時点で貴女が諦めなければ、忠夫さんにとってまだ救いはあったはずなのに・・・)

 どこからか聞こえてくるルシオラの声に、おキヌは今まで心の奥底にしまっていた横島にさえ言っていない想いを吐露した。

  − ・・・・・・謝りはしないわ。私にとって、あの時のあの行為は最善だったと・・・存在を消されるのを防ぐにはあの方法しかなかった事が今は判るもの。でも、ヨコシマにあれほどの心の傷を残す事になる事は、思いつきもしなかった。その事にだけなら・・・謝れるわ。ごめんなさい・・・・・・ −

 (存在を消される? 確かにあの大戦の後に、ルシオラさんは忠夫さんの子供としてだけなら復活できるって話でしたけれど・・・。私はその事も含めて忠夫さんと一緒に生きていくと決めたんです。たかが千年の縁(えにし)に、神代からの縁が負けてなるものですか!!)

 ルシオラの言葉にヒートアップするおキヌちゃん。この空間のせいなのか、無意識に彼女の魂の本質が表に出ていた。  だけど微妙に話が噛み合ってないような・・・

  − 千年の縁は美神さんでしょう? 私は一瞬の蛍火がせいぜいよ。それにしてもおキヌちゃん。天然なのは現世の性格? それとも神代からのモノなのかしら? −

 クスクスと含み笑いをしながらルシオラは答える。

 (ルシオラさん、どこにいるんです! どこかに隠れてあざ笑うなんて卑怯です。ちゃんと姿を見せてください!!)

 キョロキョロと辺りを見回して叫ぶおキヌちゃん。

  − ・・・・・・姿を現したいのはヤマヤマなんだけど、それは無理よ、お母さん。私は貴女の胎内に居るんだもの・・・・・・。それに・・・貴女にとって辛い事を伝えないといけないのよ・・・・・・ −

 そうルシオラが言った直後に、おキヌちゃんの下腹の辺りから翡翠色の淡い光りが漏れ出した。

 (これは・・・文珠の光り! 私に貴女が宿ったというの? ・・・・・・貴女を宿す事に正直複雑な想いはあるけれど、でも良かった。これで忠夫さんに本当の笑顔が戻ってくる・・・・・・)

 おキヌちゃんは自分のお腹を撫でて、複雑な表情で呟いた。

  − おキヌちゃん。貴女がこの世界でヨコシマと結ばれたのは、確かに貴女が言った神代からの縁があったから。その縁の元になった貴女の魂の本質のおかげで私は蘇る事が出来る。だけど・・・・・・ −

 ルシオラは悲痛な声音で自分が復活できる経緯を説明しようとしたが、その後の言葉を続ける事が出来なかった。

 (私の魂の本質? なんです、私の魂の本質って? 私は・・・あれ? なんで私はさっき神代からの縁って言ったんだろう・・・? 私は300年前の娘なのに・・・。あれ? 私は・・・・・・)

  − (おキヌちゃんにヨコシマが死んだ事は今は伝えられないわね。前世と今世の意識が不安定になってきてる。これを何とかしてからじゃないと、人格崩壊しちゃうわ。・・・・・・とりあえず、彼女の意識を安定させる事が先決だわ)おキヌちゃん、イワナガヒメって方を知ってる? −

 おキヌちゃんの様子から、今はまだ伝える時ではない事にルシオラは安堵した。だけど、そう先延ばしに出来る問題でもなかった。なので、まずはおキヌ自身の魂の本質を覚らせる事にし、彼女に関係が深い神名を言霊に載せた。

 (ええ、知ってますよ。私の姉様です。力強くって綺麗で、私の憧れの女性なんです。でも、疑り深いのが珠に瑕かな。おかげでニニギ様がかなり怖がってましたけどね。どうも、姉様が疑っている人や姉様を怖がったり疎(うと)ましく思っている人には、姉様の本当の姿が見えないみたいで・・・。でも、ニニギ様は姉様を遠ざけようとはしなかった。大騒ぎはするけど、それだけだったかな。暫く逗留(とうりゅう)していた間は段々慣れたのか気さくに姉様に話しかけてたし・・・。でも、お付の人達は嫌な感じの人達ばかり。姉様にも辛く当たってたし、武力で敵わないと知るや、陰湿に陥れようとしてたんですよ! それを知ったニニギ様が姉様の身を案じて郷(さと)に一時戻る事を薦めたのに、それを逆手に取られて追い返すような事になってしまって・・・・・・て、あれ? 私・・・、キヌよね? なのに何故コノハナノサクヤヒメ様の事を話してるの? それに神話と微妙に違う・・・姉様はニニギ様が返されたんじゃない。ニニギ様を取り巻く方達が、姉様が居ると自分達に都合が悪いから遠ざけられてしまったんだし・・・。ニニギ様は忠夫さんだし・・・。え? あれ? 私は・・・だれ?)

 ルシオラが発した神名におキヌちゃんは、魂の記憶が混同してしまって混乱した。

  − (頑張っておキヌちゃん。貴女はこの世界における不確定因子の伴侶の一人なのよ。それにヨコシマが戻ってくるまでとその後に続く世界の要の一柱・・・。可能性の世界樹が教えてくれた、狂った除くモノによる大破壊を防ぐ一柱なのよ) −

 無意識に受け取ったのか、現時点で彼女が知るはずの無い事をルシオラは祈るように心で呟く。

 (私は・・・キヌ・・・忠夫さんの妻のキヌ・・・私は・・・サクヤ・・・ニニギ様の妻のサクヤ・・・神代の時よりまた3人で過ごす事を夢見た・・・女華姫さまと過ごす時は家族の様に安らげた・・・美神さんと忠夫さんと過ごす時間は神代の夢を叶えたと思った・・・でも、彼女は姉様じゃない・・・私はキヌでサクヤ・・・神代の頃より姉様とニニギ様と再び一緒に過ごす事を夢見たコノハナノサクヤヒメの分御霊のキヌ・・・私は・・・ニニギ様の転生である忠夫さんの妻のキヌ!!)

 おキヌちゃんが自分の魂の本質を自覚したとたんに、辺りの暗闇はおキヌちゃんを中心に晴れていった。

 そこは生命萌(もゆる)草原と、色とりどりの花々が咲き誇り、数々の樹木が聳え立つ空間だった。

 (わぁ〜、みんな私を迎えてくれるのね! ただいま!!)

 周りに咲き誇る花々に帰還を告げるコノハナノサクヤヒメこと、おキヌちゃん。

  − どうやら安定したみたいね、おキヌちゃん。それともサクヤ様とお呼びした方が良いかしら? −

 おキヌちゃんの様子にホッと胸を撫で下ろし、安堵したルシオラはいたずらっ子のようにそう呼び掛けた。

 (今まで通りおキヌで良いですよ。私はサクヤの分御霊だけど、人格の基本はキヌですもの。それよりルシオラさん? 私にまだ隠している事がありますね? それも忠夫さんに関して・・・)

 ルシオラの呼び掛けに笑顔で答えたおキヌちゃんだが、最期の方は真剣な顔をして尋ねた。

  − ええ・・・・・・言いにくい事なんだけど・・・・・・この私達が属していた枝世界のヨコシマは、私を逃がす為にある存在に殺されたわ・・・・・・ごめんなさい・・・私は貴女達にとって縁を断ち切る鎌のような存在よね・・・・・・ −

 憔悴したような声音で答えるルシオラ。千年の縁を断ち切り、神代からの縁を断ち切ってしまったように彼女は思えてならなかった。

 (・・・・・・な、なにを・・・え? 今はそれどころじゃ・・・え、なに? ふんふん、そ・それは! 本当なのね? はぁ〜・・・あの性格は神代からのモノだったんだな〜。でも、樹(あなた)の言う事が本当なら少しは軽減されるのかな? でもそっかー、ちゃんと私達の旦那様は戻ってくるのね? なら仕方ないかな。そういう行動を取るのは神代から変わりはしなかったし・・・)

  − 何を言って・・・るの、おキヌちゃん? 私達の知るヨコシマはもうこの世には・・・・・・ −

 おキヌちゃんの言葉にやはり耐えれなかったのかと思ったルシオラだったが、その後を続ける事は出来なかった。なぜなら、おキヌちゃんの顔には困ったような表情が浮かんでいて、そこには暗い影は少ししか浮いていなかったのだから。

 (忠夫さんが貴女を庇って殺された状況は、この樹(こ)が教えてくれたんです。それに、現在の世界の在り様と私達の忠夫さんが戻ってくる事も教えてくれました。あの人の想いはちゃんと受け継がれてるって・・・。でも・・・私達だけを見てくれる忠夫さんがもう居ないと思うと、残念といえば残念ですけどね・・・・・・)

  − な・何をい・言ってるのおキヌちゃん! ヨコシマはも・もうこの世界には居ないのよ! わた・私が居るせいで・・・・・・ −

 ルシオラはおキヌちゃんの表情と言葉の意味が判らず、泣きじゃくる様に言葉を詰まらせながら言った。

 (ルシオラさん落ち着いて。忠夫さんは・・・この世界の彼は確かに亡くなったけど、あの人の最期の願いを樹は叶えてくれたんです。いろいろ無茶をしちゃって歪になっちゃったけど、それは私達が癒せば良い事。一緒に癒して生きましょう、ルシオラさん。貴女も不確定因子の伴侶の一人なのだから・・・)

  − !! おキヌちゃん、その事を知って・・・。それに想いは受け継がれたって・・・誰によ? −

 (私達の世界と融合した、美神さんが伴侶だった忠夫さんです。その忠夫さんも不確定因子であり、ニニギ様の転生でもありますよ)

 おキヌちゃんはルシオラの疑問に丁寧に答える。どうも、リアルタイムに可能性の世界樹にアクセスできるらしく、おキヌちゃんの答えに迷いは無かった。

  − でも、この世界に戻ってくるのは、美神さんの旦那である存在なのよ? それでも・・・それでもいいの? おキヌちゃん! −

 ルシオラは無意識に美神を選んだ忠夫を忌避したのか、無自覚におキヌちゃんに転嫁して訊いてしまった。

 (ルシオラさん。確かに私達の世界の忠夫さんは、物質の面で言えば消えてしまいました。だけどね、想いは・・・私達に対する彼の想いは受け継がれたの。融合する前の美神さんの旦那さんの忠夫さんに・・・。それにね、私達が知っている忠夫さんを無くした様に、美神さんの旦那さんである忠夫さんも自分の世界を無くしたのよ・・・。私には解る。死津喪比女を封印する為とはいえ、300年も経ってから生き返り自分だけが取り残されて一人だけになってしまった孤独を知ってるから。自分を知る人が誰一人としていない孤独を、あの人は味わってしまうの。それに、私達と過ごした記憶や感情がちゃんと受け継がれてる分、私達にはまだ救いはあるけれど・・・、想いを受け継いだ彼は、ルシオラさんと再会するまではその孤独を味わい続けるんですよ。だから、その時間を少なくする為にも、ルシオラさんには早く私から生まれて欲しいんですよ。私達が知る忠夫さんに会う為にも・・・ね?)

 おキヌちゃんは、ルシオラが無意識に忌避した事も、無自覚に自分に転嫁した事も解って、それでも彼女を諭した。神格を身につけた彼女は、母たる大きさをも取戻したのかもしれない。

  − ・・・・・・わたしはその時にならないと、そのヨコシマに会ってみないと解らない・・・・・・。そろそろ時間のよう・・・・・・。わたしはまた、おキヌちゃんの中で眠りにつかせて貰うわ。どうも、わたしはヨコシマに返してもらった分の霊基構造が、まだ完全に融合しきれていないみたいだから・・・。それまでは・・・まだ結論は出せないわ・・・・・・ −

 (それで良いですよ。今はゆっくりと身体を癒して下さい。私も身体が起きだしたようです。神格に見合った身体に変わってしまったから、神代の時の身体に戻っていると思いますけど・・・。私から生まれるとなると、ルシオラさんにも恩恵はあるかもしれませんね)

 クスクス笑いながらおキヌちゃんはそう言って、生命の宿る全ての意識集合体として阿頼耶識と呼ばれる空間から現実へと戻っていった。

  − え・・・? なにが・・・? −

 おキヌちゃんの言葉の意味が解らず、ルシオラは戸惑いながら眠りにつかされた。


 小竜姫の部屋で寝かされていたおキヌちゃんは、その身体を強い光りを放つ繭の様な物に包まれてしまった。

 「な、なにが・・・何が起きているというのです? ヒャクメ」

 見た事も無い現象にうろたえる小竜姫。   武神の平常心はどこに逝ったのだろう?

 「どうも身体の構成が書き換わってるようなのね〜。人間でありながら神の特性を持つような・・・。日本でいう現人神かな。仏教でいう解脱をした仏陀様に近いかも。悟りを開いたわけでも無いのに、そのような存在になってきてるのね〜」

 トランクのモニターに表示される数値やグラフに、戸惑いながらそう答えるヒャクメ。

 「では、特に悪い影響が出るというわけでは無いのですね?」

 驚きの面持ちで光りの繭に見入る小竜姫。眼前の繭は桜の蕾の様にも見えた。

 「影響があるとすれば記憶の方かも・・・。私の予測だと、神代の前世記憶を思い出すと思うのね。でも、神の記憶より人間の記憶の方が弱いのは、過去に観測済みなのね。だから、もしかするとおキヌちゃんとしての人格は・・・消える・・・かもなのね・・・」

 沈痛な表情で答えるヒャクメ。現時点では、どうしても今までのデータからの予測しか出来ず、暗い予測しか立たなかった。

 「信じましょう。おキヌさんが横島さんとの事を忘れるなんて、幽霊から甦った時にも起きなかったんですから」

 祈るような面持ちで小竜姫は呟く。

 「そうね。今にして思えば、おキヌちゃんが幽霊時代の事を思い出せたのも、魂に影響された身体があったからだと思うのね〜。300年もの月日の記憶を、普通の人間は耐え切れる物じゃないのね。いくら幽霊の時の記憶が残り難い夢のようであってもね。だから、今回もきっと大丈夫なのね〜」

 不安要素を消すかのように、小竜姫の呟きにヒャクメは答えた。彼女も、周りの人間たちを優しく癒す雰囲気を持つおキヌちゃんを失いたくは無いのだ。

 「あ・・・、徐々に光りが治まってきたのね〜。脈拍・血圧などのバイタルは人間が睡眠している平均値と変わらない。霊波は神気を帯びてる・・・。霊圧は・・・うわっ、と・とんでもないのね〜! 小竜姫を軽く超えちゃってる!! この繭があるから今は影響無いけど、どうにかしないと繭が消えた時にこの部屋壊れるかも・・・・・・」

 モニターの数値を読み上げ、霊圧の部分で冷や汗をかくヒャクメ。

 「えぇ!! ど、どうしましょう!? わ・私より大きい霊圧って・・・。そ・そうだ、老師。老師に結界を頼みましょう! 老師〜〜」   シュン

 部屋を壊されてはかなわないと、小竜姫は老師の部屋へと転移していった。

 「間に合うかな〜。光りの繭の崩壊まで予測時間は5分だけど・・・。繭が消えたら、私なんて軽く吹っ飛ぶのね〜。でも逃げるわけにはいかないし・・・。うぅ、小竜姫早く戻ってきてなのね〜」

 3つの目から泪を流しながらも、ヒャクメはその場に留まってデータを取り続ける。彼女としては、こんな珍しいデータが取れる機会は逃したくは無かった。調査員としてのプロ根性を彼女は発揮していた。

 所変わってこちらは老師のゲーム部屋(笑)

 部屋の中では、大画面のテレビで格闘ゲームに勤しむサルと中学3年生くらいの女の子が居た。

 「ああ、ズルイー! サル、又ハメ技使ったわねー! く〜〜、こうなったら、こうしてやるー!!」

 中学3年くらいの女の子・・・パピリオが叫びながら、相手キャラの攻撃の一瞬の隙をついて反撃した。パピリオが操る女性キャラは、鮮やかに老師が操る男性キャラの突きを身体に巻き込む様にして投げ飛ばした!

 「うぉ! やるのぅ、パピリオ。じゃが、まだまだじゃ。そんなんじゃ、ワシを仕留める事は出来んぞ・・・なに!」

 パピリオのキャラの反撃に驚くもののただ投げ飛ばされただけで、滞空している老師のキャラにダメージが無かったので余裕を取戻した老師だが、その後のパピリオのキャラの動きに更に驚いた。

 「喰らえ! 奥義! 蝶舞旋風落としー!!」

 パピリオがカコココと凄い速さでパッドに入力すると、画面では滞空していた老師のキャラに一瞬で追いつき、女性キャラが纏っているヒラヒラの衣装を回転によって巻き上げながら飛びついてガッチリと固めて、そのまま回転しながら頭から落とした。

 『ぐわぁぁぁぁああああ〜〜〜〜〜   YOU WIN!!』

 老師のキャラのダメージゲージが一気に無くなって、パピリオのキャラの勝利となった。

 「むむぅ〜、やるではないかパピリオ。よしっ、今度は別のキャラでやるぞ」

 老師は悔しがりながら、パピリオに再戦を臨む。

 「望むところ! 返り討ちにしてやるわ!」

 パピリオが応じて、二人して別のキャラを選ぼうとした時。

 「老師〜! おキヌさんが大変なんです! すぐに来て下さい!」

 小竜姫が部屋に飛び込んで、老師の腕を引っ張った。

 「ぬぉ!? お、落ち着け小竜姫! な、何が起こったんじゃ、説明せい!!」

 小竜姫の腕を振り払い、老師は怒声を上げた。

 「は、はい! おキヌさんが正体不明の神族に襲われて、気を失っている原因を突き止める為にヒャクメに見せましたら、彼女がサクヤ様の分御霊の転生体と解ってすぐに彼女の身体に異変が起きまして、光りの繭に包まれてしまい、その繭が消えると私の部屋が壊れてしまうんですよ〜」

 思い切り慌てていて、かなりの部分をはしょった説明をする小竜姫。もう、その表情は半泣きだった。武神としての平常心などは欠片も見当たらない。おかげで老師は、おキヌという娘がコノハナノサクヤヒメの転生体ということしか推測できなかった。

 「ふむ・・・。良くは解らぬが、ただ事ではなさそうじゃな。場所は小竜姫の部屋か?」

 「はい。余りにも霊圧が大きくて、私の部屋が壊れてしまうかもしれないんです。老師、お願いですから結界で助けてください」

 涙目で訴える小竜姫。なんだか彼女にとって、壊れてもらいたくない物がいっぱいありそうだ。

 「落ち着けと言うとるに。詳しい事はヒャクメも交えて聞かせてもらうぞ。では、行くかの」

 ヤレヤレとばかりに老師は小竜姫を促した。

 「私も行く! なんだか私にとっても大切な事がある気がする」

 そう言って、パピリオは老師と小竜姫に続いて部屋を出て行った。


 その頃、小竜姫の部屋ではおキヌちゃんを包んだ光りの繭が、消滅寸前だった。

 「しょうりゅうき〜、ろうし〜、早く来てなのね〜。もう、限界なのね〜」

 光りの繭を見つめながら、ヒャクメは力無く呼びかける。ギリギリまでデータを取るつもりなのか、未だにトランクは仕舞われていなかった。情報オタクの根性の為せる業(わざ)か。

 「ヒャクメ! まだ無事!?」

 小竜姫が慌てて部屋に飛び込んできた。その後に続いて老師とパピリオも入ってくる。

 「むぅ〜、これは尋常ではないな。ムン!!」

 老師は毛を数本抜くと、気合を入れて投げ放った! すると、瞬く間に老師と同じ姿をした分身が3体現れ、光の繭を老師を含めて四方から囲んだ。

 身外身封縛術・四方陣!!

 それぞれの老師が、東西南北に相当する手印を組み結界を張った。その直後、花が綻ぶ様に繭が開き、繭によって抑えられていた霊圧が解放された!

 「ぬぅ〜、これは・・・なんとも凄まじい・・・。ワシの結界が受ける圧力は一瞬だけじゃったが、受け続ければ堪えきれん程のものじゃったぞ。じゃが、それを察知するやすぐさま結界内を対流する様に、力の方向が変わりよったわい。それになんと優しさに満ちた波動か・・・。これほどのモノに出会うたのは久方ぶりじゃのぅ」

 老師は結界に振り向ける力を落とし、感心したように言った。その顔には笑みすら浮かんでいる。

 「え? てことは、私の部屋は老師にご足労願わなくても大丈夫だったのでしょうか?」

 老師の状況説明に、小竜姫は申し訳なさそうに呟いた。

 「それは無理じゃったろうな。ワシの封縛術が無ければ、ここは最初の解放時の威力で吹っ飛んでおったはずじゃ。小竜姫の判断は間違っておらぬ。しかし、なんとも珍しい場に居合わしたものじゃ。女神の再臨に立ち会うとはのぅ」

 老師は結界の中心に居るおキヌちゃんを見ながら、そう感想を漏らした。

 おキヌちゃんは目を閉じたままやや俯いて手を前で組み、長く艶やかな腰まで伸びた髪を対流する霊風に柔かく煽られながら、直立して宙に浮いていた。

 「綺麗・・・。光りの繭の残滓が桜の花びらみたいなのね〜」

 「そ、そうです・・・ね・・・

 ヒャクメの感想に相槌を打つ小竜姫だが、その言葉はぎこちなかった。彼女は、おキヌちゃんの身体のある一部分を凝視していた。

 「どうしたのね、小竜姫? なんだか声がかすれてる様だけど・・・」

 「ナ、ナンデモナイデスヨ? イタッテフツウデス。フツウッタラフツウナンデス!

 ヒャクメの疑問にカタカナ言葉で返す小竜姫。最後の方は、強い口調で返す辺り普通でもなんでもないのだが、それでも凝視したまま答えてしまう。

 「なんか変なのね。ホントどうしたのね、小竜姫? ん、ん〜〜?」

 着々と地雷に近づくヒャクメ。彼女は、小竜姫が凝視している視線の先へと、自分も視線を向けた。

 「あ〜〜、おキヌちゃんの胸が大きくなってる〜!? えぇ〜? なんで、なんでなの〜!?」

 答えてくれたのはパピリオだった。

 未だ桜の花びらの様な光りの繭の残滓がおキヌちゃんの周りを飛び交う結界の中で、彼女は目を閉じたまま静かに直立し浮いている。その様子はまさに女神降臨といった感じで、パピリオも最初はそう見ていた。だけど、その感動が過ぎると何かいつも見るおキヌと違う事に気付いたのだ。纏っている衣装が現代とは違う事だったのも、その認識を妨げる要因だったのかもしれない。
 いつもヨコシマの部屋で会う彼女は、もう少し線が細いように覚えていた。だけど、今の彼女の身体はいつもと違って見える。その事を何とはなしに考えながら、ヒャクメと小竜姫のやり取りを聞いていて、やっと気付いたのだ。

 「ふ〜む・・・? この神気からして、サクヤ殿と見受けるが・・・。はて? これはどういうことじゃろうのう・・・」

 老師は、日本の神道で普通では在り得ぬ事態に首を傾げていた。

 老師の結界の中で、桜吹雪の様に舞っていた繭の残滓が落ち着いてきた。それにつれておキヌちゃんの身体はゆっくりと床に着地した。

 「ふむ、目覚めるようじゃの。結界内の霊圧も安定してきておるようじゃ。これなら解いても構わぬじゃろうて」

 そう言うと、老師は結界を解いた。3方の分身も、老師の手元に体毛に姿を変え戻ってくる。

 結界が解かれると、収束しきれなかった霊力がほんの少しだけ室内を廻(めぐ)ったが、それほど強い圧力とはならずにそよ風程度の微風を起すに留まった。

 着地し、身体の安定が保たれると、おキヌちゃんは目を開けた。その姿は神秘的で、見る者を魅了してやまない。ただ一人を除いては。

 「ここは・・・? あ、ヒャクメ様に小竜姫様、パピリオちゃん。ご無沙汰してました、お元気でしたか? ・・・・・・? もう一方(ひとかた)はどなたでしょうか?」

 覚醒した彼女はほんわかとしていて、覚醒前と変わらぬ口調でヒャクメ達を見つけると名前を呼び挨拶をした。やっぱり天然は変わらないらしい。ヒャクメの名が先に来るのは、心眼の師匠だからだろう。老師とは、これが初対面な為に誰何(すいか)したようだ。

 「ワシはここ妙神山の主である闘仙勝仏じゃ。又の名を斉天大聖と言う、見知りおき願おうか。この部屋は小竜姫の部屋なんじゃよ、コノハナノサクヤヒメ殿。覚醒直後ですまぬが、いかなる理由でここに顕現されたかのぅ。聞かせてもらえぬか?」

 誰何された老師は丁寧に答える。老師としても、どう接するか把握しかねていた。

 「ああ、あの有名な孫悟空さまですか。初めまして、横島キヌと言います。あ、私の事はキヌで良いですよ。サクヤとしても在(あ)りますが、神代より在り続けた訳じゃないですから。この場所で目覚めたのは偶然ですけど、この世界のこの時代での不確定因子に不測の事態が起こった為の覚醒と言えば納得されますか? 私としても、前後の事態がどのようになっているのか、不確かな所があるので知っている事しか申せませんけど・・・」

 おキヌちゃんも丁寧に答えるが、こちらは全くの素である。覚醒前に出会っていたら、斉天大聖の巨大な霊圧に圧倒されていただろう。しかし今は、儀式をされてはおらぬ分御霊とはいえ日本の最高神位の内の一柱である。気圧される者では無かった。

 「ホッ! そなたも事情を知る者じゃったか。なれば、ここでは失礼であろうな。場を変え、話を聞く事にするかの。小竜姫! 何をコソコソしておる! ワシは先に修練場にて待っておるゆえ、茶の用意をヒャクメ・パピリオと一緒にして参れ。この際じゃ、パピリオにも知っておいてもらう。強(あなが)ち、無関係でもないからのぅ」

 そういうと、老師は部屋を出て行った。しかしその心中では・・・

 (ヒャクメが居合わせたのが痛いのぅ・・・。サクヤ殿の御内にあの嬢ちゃんが宿っておる事がバレたじゃろうて・・・。む? その為の覚醒であるのかも知れぬのぅ)

 老師の思考は尽きなかった。

 ところで、老師とおキヌちゃんが会話をしていた間、他の3人が何をしていたかというと・・・。おキヌちゃんの挨拶に頷く事で返したあと、彼女が老師と会話をし始めたのを良い機会と3人で輪になってこそこそ話していた。

 「しかし初めて見ました。高位の神格を有する分御霊が、輪廻の輪に取り込まれた魂の転生先で原始回帰をするなんて・・・。普通は記憶が稀(まれ)に、それもごく一部が甦(よみがえ)る事があるくらいなのに・・・それも危惧していた現世での人格の消滅もしないなんて・・・。でも、それより驚愕なのが、あの胸です! 私とそれほど変わらないハズだったのに〜、裏切り者ぉ〜!!

 小声でコソコソと喋るが、最後の所でホンのちょっと大きくなってしまう小竜姫。 

 「小竜姫、ちょっと声が大きいのね。でもそうね〜、貴女にとって問題なのは・・・あの胸なのね(汗 私には、それよりも気になる事があるのね〜」

 冷や汗混じりに小声で合わせるヒャクメ。胸の話題が小竜姫にとって禁忌なのは、彼女の親友であるヒャクメにとっては承知済みなのだ。障らぬ神に祟り無し、とばかりにはぐらかす。

 「おキヌちゃんの胸が大きくなったのも多少は気になるけど、そんな事よりわたしは、彼女からルシオラちゃんの波動が感じられる事の方が最優先事項よ。どうして? 何があったのよ!? つい3日前に会った時はそんな気配なんて、微塵も無かったわ!」

 ヒャクメ同様、おキヌちゃんの胎内から感じられるルシオラの魔気の方に注意が向き、パピリオは二柱に問い詰めるような感じで訊いた。

 「そんな事とはなんですかっ。私が日々どれだけ努力しているんだと・・・ムグ!」

 「はいはい、今はそれどころじゃないのね〜。パピリオの疑問は老師とおキヌちゃんの会話の中で氷解すると思うのね。だから、老師が言ったとおり、お茶の用意をして急ぐのね〜」

 老師の言葉さえ聞こえぬほどヒートアップした小竜姫の口を押さえ、ヒャクメはパピリオにそう言って促す。

 「分かったわ」

 一言だけで答え、パピリオはすぐに部屋を出て行った。

 「姫さま。裏門(秘密ルートの事)より美神殿から通行する旨の合図が届きました・・・と、姫様はどうなされたのだ、ヒャクメ殿?」

 パピリオと入れ替わるように左の鬼門が開いている扉から顔を出し、管轄である裏門を令子達が通行する事について報告に来たのだが、ヒャクメに抑えられている小竜姫という珍しい構図に疑問を投げかけた。

 「あははは、気にする事無いのね〜。いつもの禁忌にちょっと触れてしまったのね〜。とりあえず、美神さん達にはこちらの話が終わるまで、別の所に誘導しておいてなのね。美神さんと美智恵さんだけなら良かったんだけど・・・。とりあえず、門に着いたら中に入れて、別の所で待機してもらっておいて欲しいのね〜」

 ヒャクメは暴れる小竜姫を必死に抑えながら、鬼門にそう命じた。誰が禁忌に触れたのかは言わない。

 この話題に関する限り、小竜姫はヒャクメには勝てない。なぜなら、過去に禁忌に触れた殿方に大暴れして重傷を負わせてしまって、竜神王より限定的な封印をされてしまっているからだ。その封印の要が当時より親友だったヒャクメなのだ。
 ちなみにその禁忌に触れた殿方は高位な存在で竜神界の高官でもあったのだが、彼女との見合いの場にも関わらず小竜姫の姉に執心していたばかりに己の失言にも気付かずに再起不能にされてしまった。当時の暴れっぷりに、見合い話はその後プッツリと来なくなってしまったのは・・・・・・彼女の名誉の為にも公言はされない秘密である。
 この高官は周りからも不評が多かった為、小竜姫の暴力事件は有耶無耶の内に揉み消されたが、それでも今後同じ事があってはならぬと判断した竜神王が封印するに至っていた。何故に彼女との見合いが組まれたのか甚(はなは)だ疑問だが、彼女の姉を狙う為では無かったかとの噂は500年経った今も絶えてはいない。

 「分かり申した。では、そのように取り計らいましょう。では失礼いたす」

 ヒャクメよりいつもの禁忌と聞かされた左の鬼門は、障らぬ神に祟り無しとばかりにそそくさとその場を去っていった。

 その場に残されたのは、覚醒直後のせいなのかいつもなのかぽけ〜っと成り行きを見ていたおキヌちゃんと、暴れる小竜姫を取り押さえるヒャクメという訳の分からない者達だけだった。

 「あの〜小竜姫様? そろそろ向かいませんと、斉天大聖様よりお叱りを受けられるのでは?」

 おキヌちゃん自身も身をもって経験している事ゆえに小竜姫の事情が良く解るのだが、今は時間が圧しているのでそう進言した。だけどやり方が拙かった。

 「き〜! それは見せ付けているのですねっ!! ご自分が大きくなったのに優越感を持ってらっしゃるんですね〜〜!!!」

 ますますヒートアップする小竜姫。彼女はヒャクメに組み伏せられているので、もちろんおキヌちゃんは見下ろす形となっている。それに加えて前かがみで覗き込むようにされては・・・ゆさりと揺れるその部分に小竜姫にとっては挑発されていると取られてもむべなるかな。

 「お、おキヌちゃん。ここは良いから、早く修行の間へ行くのね〜! 場所は銭湯の様な入り口があるそこだから、すぐ解ると思うのね〜!」

 必死に小竜姫を抑えて叫ぶヒャクメ。早く原因を取り除いて、小竜姫を正気に戻さないといけないのだ。原因たるおキヌちゃんを先に行かせるのは当然だった。

 「あ、あそこですね。解りました。では、先に行ってますね」

 ヒャクメの言外の意思を汲み取り、おキヌちゃんは早足で部屋から出て行った。  やっぱり彼女は天然だった(汗

 「逃げるのですか! 尋常に勝負しなさい!! その胸、削ぎ落としてくれます!!!」

 普段は言わないような事を口走る小竜姫。抑えているヒャクメは大変だ。

 「何を言ってるの小竜姫! 勝負しても勝てる物じゃないのね〜! 特に胸が! とりあえず落ち着くのね、小竜姫!」

 火に油どころから、ガソリンをぶちまけてる気がするヒャクメの言葉。何気に普段の説教の意趣返しをしているようにも思える。

 「ヒャクメ! 貴女はどっちの味方なんですか! ええい、退きなさい! あの胸にっ、あの胸に仏罰を下すんです!!」

 小竜姫が落ち着くのはもう少し先のようだ。

 ちなみに、中々姿を現さない二柱を見に来た老師によって、二柱とも拳骨を貰ったのはここだけの話しにして欲しい。ヒャクメにしてみれば巻き添えの何者でもないが、煽るだけ煽っていたので自業自得かもしれない。

 「それは酷いのね〜」 

 地の文に突っ込みを入れつつヒャクメは、小竜姫と一緒に頭を抑えながら老師の後を付いて修行場へと向かっていった。


 続きますよ〜(byおキヌ@サクヤ)


 皆様お久しぶりです。初めての方は初めまして月夜と申します。
 想い託す可能性へ 〜 ご(前編) 〜をここにお届けします。長くなってしまったので二つに分けました。後編も出来ていますので、明日にはアップ出来ます。
 作中の老師とパピリオが遊んでいるゲームは私の空想なので、実際のゲームにはありませんので突っ込まないで下さい(汗
 それにしても小竜姫さまって・・・いじりやすいですね(くす)

 ではレス返しです。

 〜 読石さま 〜
 感想ありがとうございます。励みになります。
>救いの女神
 おキヌちゃんにとってはそうなんですけど、令子にとっては・・・どうなんでしょうね(汗
>姫が凄い美人としか認識出来ない!?
 女華姫さまの描写を誉めて頂いてありがとうございます。でも、読石さんの直感も凄いと思いますよ? 感想読んだ時に展開、読まれてるって思いましたし。
>墓穴を掘って居る気になる
 確かに墓穴掘ってるみたいに見えますね(汗 私的にはそんな気はさらさら無いんですけど(笑)

 では、すぐに後編でお会いしましょう。

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