「わぁー!お花畑だ〜!」
「おキヌちゃ〜ん、まって〜。」
子供になったおキヌちゃんは六道家の庭で冥子ちゃんと元気いっぱいに走り?回っている。
「なぁ、ヒャクメ?」
「なんなのね〜?」
それを少し離れた所から見ていた俺はヒャクメに声をかける。
「そのパイパーとか言う悪魔がこっちに来ると思うか?」
「う〜ん。完璧にないとは言い切れないけど、ほぼ無いと考えていいと思うのね〜。」
「そうか。神父の話じゃここなら守りも万全らしいからそんなに心配することないか・・・」
「そうよ〜、ここにいる限りそんなに心配することないわよ〜。」
俺たちの会話に冥華さんが横から入ってくる。
「ここには結界も張ってあるし〜、わたしたち以外にも戦える人たちもいるわ〜。それにヒャクメ様もいるのよ〜。警戒もばっちり〜。」
「そうなのね〜。わたしがいる限りこの屋敷の敷地内に悪魔が入ってきたら気がつかないわけないのね〜。」
そう自信満々に言う二人・・・微妙に不安なのは気のせいですか?
「う〜〜ん、結界のほうはとりあえずとして、ヒャクメはそんな四六時中警戒していて大丈夫なのか?」
「どぅわいじょ〜ぶ!まーかして!!なのね〜!」
・・・どこの先輩だお前は・・・
「このヒャクメ!情報というものにかけては伝説の木のある某高校のオレンジ頭の男より上だという自信があるのね〜!!」
また微妙なネタを・・・
「はぁ・・まあまかした。」
「チェックだ、チェック〜なのね〜!」
「やかましい!」
多少暴走しかけているヒャクメに頭を痛めていると、
くい、くい・・・
俺の上着が引っ張られていることに気がついた。
「おにいちゃん、おにいちゃん。」
俺の上着を引っ張っていたのはおキヌちゃんだった。
「ん?どうしたんだい?」
「えへへ、しゃがんでください〜。」
「?こうかい?」
俺はとりあえず言われたとおりしゃがむ。
「はい!じっとしててくださいね。・・・はい!これ、あげます!」
そう言っておキヌちゃんは俺の頭になにかを乗っける。
「これはなにかな?」
「おはなのおーかんです。さっきめいこおねえちゃんにおそわってつくったんですよ。」
「そっか。ありがとうおキヌちゃん。とっても嬉しいよ。」
そう言いながら俺はおキヌちゃんの頭を撫でる。
「えへへ。」
おキヌちゃんは少しくすぐったそうにしているが嫌がってはいないようだ。
「おキヌちゃ〜ん。きれいなお花があるわよ〜。」
「は〜い。おにいちゃんもいっしょにあそびましょう?」
そう言って俺の手を取って冥子ちゃんの待つ花畑に駆け(?)出す。
「おいおい、そんなに引っ張らなくてもちゃんと行くよ。」
俺の言葉を聞くとおキヌちゃんはいったん振り返るが・・・
「いいんです!おにいちゃんはわたしといっしょにいくんです!」
そう楽しそうな笑顔で言った。
俺はその笑顔に何も言えなくなったので、おとなしくおキヌちゃんに従うことにした。
「よ〜し!ヒャクメお姉ちゃんもいくのね〜!」
「あらあら、それじゃ〜オバサンもひさしぶりにあそぼうかしら〜。」
後ろからはそんな声が聞こえてきた。ははは、それじゃみんなで遊びますか!
その後わたしたちは色んな事をして遊んだ。
お花を摘んだり、庭を駆け回ったり、絵本を読んだり、色々だ。
そして時は過ぎ、夕暮れ。
横島さんは帰宅する時間になったがおキヌちゃんをほっとくことが出来ず、どうしたものかと悩んでいた。
冥華さんは「泊まっていきなさい〜。」と言ってくれたがそれも悪いと考えていると・・・
「おにいちゃん、かえっちゃうんですか・・・・」
そう寂しそうに言うおキヌちゃんに負ける形で結局泊まっていくことになった。
今日はいままで見たことのない横島さんを色々と見ることが出来た。
それは夕飯のとき。
流石に食事を取ることのできないおキヌちゃんが、
「はい、あ〜んです。」
そういいながら横島さんに食べさせようとした時に、テレながらもそれを拒否しなかった。
わたしがやったら絶対に拒否するくせに・・・まあおキヌちゃんが大人だったら流石に拒否するだろうけど・・・
その後も横島さんがお風呂に入っているときにおキヌちゃんが背中を流しに行くと、
「うわぁぁ!お、おキヌちゃん!?」
流石に慌てていたが結局おキヌちゃんのお願い攻撃に負けた。
そして今はおキヌちゃんをひざに乗せて絵本を読んで聞かせている。
ちなみになぜか冥子ちゃんまで参加しているがとりあえず気にしない方向で・・・
わたしはその光景を微笑ましく見ている。まるで親子のようだと思いながら・・・
(って、横島さんが父親なら、母親は!?今は冥子ちゃんが隣にいるけどどう見ても大きなお姉ちゃんにしか見えないのね〜。それじゃ、もしかしてわたし?きゃーきゃー!まだ早いのね〜!!)
そんなことを考えたりもしたのは乙女の秘密だ。
そうこうしているとおキヌちゃんが横島さんの膝の上でうつらうつらと頭を振り出した。
「おキヌちゃん?眠いの?」
「うみゅ〜、はい、少し眠いです〜。」
嘘だ。それは少しじゃない。
「あらあら、それじゃ横島君〜お布団に連れて行ってあげて〜。冥子〜、案内してあげなさい〜。」
「は〜い。」
横島さんはおキヌちゃんを抱え上げると寝室へと連れて行く。
それからしばらくして、おキヌちゃんを寝かしつけて横島さんは戻ってきた。
さらに時は過ぎ、わたしたちも寝室へと向かう時間になった。
わたしたちの部屋はおキヌちゃんの部屋を間に挟んでいた。何かあったときのための配慮だ。
わたしたちはおキヌちゃんの部屋の前で就寝の挨拶を交わしていた。
「それじゃ、おやすみなさいなのね〜。」
「ああ、おやすみって、おキヌちゃん?」
「えっ?」
驚く横島さんの視線をたどるとそこには確かにおキヌちゃんがいた。
おキヌちゃんはうつむいて何かを我慢しているようだ。
「どうしたのおキヌちゃん?眠れないの?」
ぶんぶん。
おキヌちゃんは首を振りそれを否定する。
そして・・・横島さんに向かっていき抱きついた。
「おっと!どうしたの?」
「う〜〜。」
おキヌちゃんはうなるように言うと横島さんにきゅっ!とさらに力を入れて抱きつく。
「?どうしたのね〜?怖い夢でもみたのね〜?」
「ひとり・・・いや。」
「!そっか・・・」
確かにこれぐらいの子供に始めてきたところで一人で寝ろってのは酷な話だ。
「それじゃお姉ちゃんと寝るのね〜。」
ぶんぶん。
おキヌちゃんはわたしの提案に首を横に振る。
「おにいちゃんとがいいです。」
こりゃまた・・・なつかれたものなのね〜。でもいくらなんでもそれは・・・
「しょうがない。いっしょに寝ようか?」
コク。
あっさり承諾する横島さんにおキヌちゃんは頷く。
「ちょ、ちょっと待つのね〜!!いくらなんでもそれはまずいのね〜!!」
「?どうしてだ?おキヌちゃんは子供だから問題ないだろう?」
横島さんのもっともな意見に何も言えなくなるが、こればっかりは、はいそうですか。というわけにいかない。
「う〜〜、あ、そうなのね〜!ねぇおキヌちゃん?お姉ちゃんもいっしょに寝ていいのね〜?」
「な!ばっ!」
横島さんは慌てて声を上げようとするが・・・
コク。
「おねえちゃんもいっしょ・・・」
おキヌちゃんが了承してしまい何も言えなくなる。ふっふっふ、恋する乙女をなめちゃ駄目なのね〜。
そして今現在、わたしたちはおキヌちゃんを挟んで一つの布団で寝ていた。
おキヌちゃんは横島さんに抱きついたまま眠ってしまった。
「なんであんなこと言ったんだよ?」
横島さんはおキヌちゃんを起こさない様に小声で問いかけてくる。
「おキヌちゃんのためなのね〜。一人より二人。二人より三人なのね〜。」
わたしも同じように小声で返す。
「あのなぁ?俺は男なんだから何かあったらどうするんだよ?」
「大丈夫なのね〜。横島さんのこと信じてるし、流石に子供に抱きつかれたまま何か出来るとも思えないのね〜。」
「そりゃそうだが・・・バカだよ、おまえは・・・」
「ふふふ、ごめんなのね〜。」
そこで会話が途切れる。
おキヌちゃんのかわいらしい寝息が聞こえてくる。
「ねぇ、横島さん?まだ起きてるのね〜?」
「起きてるよ。」
「横島さんって子供に優しいのね〜。」
「そうか?」
「そうなのね〜。なんでそんなに優しくなれるのね〜?」
「なんでって・・・そうだな、子供は嘘をつかないしな。それに・・・」
「それに?」
「やっぱり子供には笑っていて欲しいからかな。子供はそのときを精一杯楽しんで欲しいから・・・」
「そっか・・・」
そこでまた会話が途切れる。
横島さんは自分が子供のとき楽しくなかったのかもしれない。
それはおそらくわたしの力のせい。
だから自分に出来なかった分まで子供に楽しんで欲しい、笑っていて欲しい。そんな風に考える。
でも横島さん?わたしの歳から考えればあなたもまだまだ子供なのね〜。
だからわたしも願うのね〜。あなたに笑っていて欲しいって・・・
わたしがそんなことを考えていると横島さんからも寝息が聞こえてきた。
ふふふ、かわいい寝顔しちゃって・・・
わたしはおキヌちゃんが苦しくない程度に横島さんに抱きついた。
おキヌちゃんばっかりずるいのね〜。
そんなことを考えながら夜は更けていく。
わたしの心に今までいない何か暖かいものを感じながら。
翌朝、おキヌちゃんは相変わらず子供のままだった。
起きた時に横島さんになんでお前まで抱きついてるんだと問いただされたが寝ぼけていたとごまかした。ほんとのことなんて言えないのね〜。
そして朝食を済ますと昨日と同じように庭で遊ぶ。
太陽がてっぺんに来る頃、おキヌちゃんの体が突然元に戻った。
そのすぐ後に美神さんからパイパーの退治に成功したと報告が入った。
おキヌちゃんはしばらく何が起こったのかわからず呆然としていたが、正気に戻るとわたしたちに丁寧にお礼をすると美神さんの事務所に戻っていった。
しかしわたしは見逃さなかった。おキヌちゃんが顔を赤く染めながらなにかを決意した顔をしていたことを・・・
その後わたしたちは修行を再開&冥子ちゃんの除霊の手伝いをした。
幸運なことに冥子ちゃんを暴走させずに仕事を終えると、昨夜の宿泊のお礼をして家路についた。
「しかしなかなか面白い経験だったな〜。」
「そうなのね〜。でも見てると横島さんは結構子煩悩なお父さんになりそうなのね〜。」
「よせやい。」
「ふふふ、照れることないのね〜。」
帰り道にこんなたわいないことを話す。
「今日は夕飯作っていくのね〜。」
「そっか?わりいな。それじゃ買い物してくか?」
「う〜ん、冷蔵庫の中にあるもので十分だと思うのね〜。」
「それじゃまっすぐ帰るか。」
「そうするのね〜。」
そしてしばらく歩くと横島さんの部屋に着いた。部屋には明かりがついて私たちを迎えてくれる。
「ん?なんで明かりがついてるのね〜?」
「おかしいな?消し忘れたか?」
そう言いながら急いで部屋へと向かう。そして鍵を確認し、掛かっていることに安堵した。
「やっぱり消し忘れか。」
「そんなこともあるのね〜。」
安心して部屋へと入る。
「あ!おかえりなさいです。」
扉を開けるとそこは不思議な世界でした・・・
「って違うのね〜!なんでおキヌちゃんがいるのね〜!?」
「えっ?それは・・・」
おキヌちゃんはそう言いながら顔を赤くしてもじもじし始めた。
「あれ?おキヌちゃんご飯作ってくれたの?」
「あ、はい。お口にあえばいいんですけど・・・」
「大丈夫だって。おいしそうな匂いがするし。」
「あっ、ほんとなのね〜ってそうじゃなくておキヌちゃんがなんでここにいるか聞いてるのね〜!?」
「そういえばそうだな。どうしたのおキヌちゃん?」
わたしたちの問いかけにおキヌちゃんはまた顔を赤くしてうつむくが次の瞬間、意を決したように顔を上げる。
そして、床に正座して三つ指をつく。
「横島さんと一つの布団で一夜を共にしてしまったので・・・これはお嫁に貰ってもらうしかないと思いまして・・・ふつつかものではありますがよろしくお願いします。」
そう言っておキヌちゃんは頭を下げる。
横島さんは・・・完璧に固まって白くなってる・・・今風が吹けば確実にさらさらと砂になりそうだ。
「それならわたしも権利があるのね〜。わたしもお嫁に貰ってもらうしかないのね〜。」
わたしはそう言いながら横島さんを見る。
「ちょ!?」
「駄目です!わたしを貰ってもらうんです!」
「わたしも状況はイーブンなのね〜。」
わたしたちはそんな言葉を交わし始めると、
「勘弁してくれ〜〜!!!」
横島さんの魂の叫びがあたりにこだました。
あとがき
暴走終了!!初○機、完全に沈黙!!というわけでした。パイパー編終了です。如何だったでしょうか?おキヌちゃんのかわいさが少しでも出でいればよかったんですが・・・終盤のおキヌちゃんの行動は以前自分が書いた短編の応用です。まあそれは黒キヌでしたが・・・さてさて、次なんですがお盆に入ってしまうためおそらく更新のペースが遅れます。維持できるかもしれませんが五分五分ぐらいと考えてください。できるだけがんばります。
追伸 kamui08様のご指摘のより誤字を訂正いたしました。kamui08様ありがとうございました。
レス返し
初めにご意見、ご感想を寄せていただいた皆様に感謝を・・・
SS様
元に戻っちゃいました。とりあえず今回は前半おキヌちゃん、後半ヒャクメにしました。あんまりおキヌちゃん優勢にしないようにしたんですが、如何だったでしょうか?
kamui08様
おキヌフラグ成立です。冥子ちゃんは悩んだんですが一気に三人は無理だったので今回はなしで。冥子ちゃんにフラグがたつ時はいつの間にか自然にたっていたってな感じを考えましたが使うかは考え中です。
万魔殿様
すいません。大きくなっちゃいました。これをきっかけにおキヌちゃんに簡単な変化の能力をおぼえさせることも考えたんですが、性格を考えるとどうしようかなと。
うけけ様
おお!よかった!わかっていただけましたか。今回はもう少し分かりやすいネタにしてみました。ある意味こっちのほうがマニアック?
亀豚様
いいものはいいんです!今回は私の暴走なんで私も人のこといえませんが。とりあえずチビキヌ終了です。でももしかしたら再登場も?
スケベビッチ・オンナスキー様
風船は出そうかとも思ったんですが、完璧にパイパーを出さないことにしたんでなしにしました。ちなみに私はスイ○ヤーズはかなり読みました。アニメの歌が好きでしたね〜。
零式様
すいません。風船でませんでした。一応補足します。おキヌちゃんの風船は幽霊時代も含めたもので人より大きなものを考えています。これはピートが大きかったことを踏まえて霊力の大きさではなく、積み重ねた月日が大きさを決めていると考えてからです。おキヌちゃんは昔のことは良く思い出せないようですが、確実に月日は過ぎ去っていますのでこのように設定していました。
内海一弘様
私が考えたのもそれでした。最初は着ているものもそのまま巫女装束にしようかとも考えたんですがチビ美神(れーこちゃん)の服装が変わっていたので着物にしました。うう、でも巫女装束も捨てがたかった・・・
寝羊様
原作でピートのことを鬼といったのは私も思い出せません。まあおキヌちゃんの時代の人が外人さんをみたらそう思うでしょうね。あれ?それなら美神さん見てもそう思うかな?髪黒くないし、服装も・・・
究極超人あ〜○様
わーい!分かる人がいた〜!うれしかったので今回も・・・おもしろいんですけどね、あの漫画。またネタにします。
神那仁様
タマモはいつだそうか悩んでます。アシュタロス編の前には出したいんですが、色々難しいです。シロも・・・獣っ子ばんざい!なのでいつか出します。