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▽レス始

「Obtained from pain Shiens.2(2)(絶対可憐チルドレン)」

カル (2006-08-05 21:16)
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ふぅ、助かった…なんとか諦めてくれたみたいだ。

い、いや、決してやましいことがあるわけじゃなくて…その、本能というか現場の勘というか………

つまり、もの凄く嫌な予感がした訳だ。

大人しくなってくれて本当によかった、本当に…

だだ、腕の中からとてつもなく悪い気配がするのは気のせいだろうか?

まぁ、何の根拠もないただの勘なんだけど。


Shiens.3 右手


彼女を腕に納めてしばらくたった。
はじめは逃れようと暴れていた紫穂も今はもう大人しくしている。

あの布団を彼女に触られると、なにか致命的な墓穴を掘ってしまう気がして本気になって止めてしまったのだ。
今考えると非常に大人気ない。

「皆本さん…ちょっと苦しい」
僕に背中を預ける形で捕まっている彼女が、右手で僕の頬を撫でながらそう呟いた。
今更になって気が付く。
この子の華奢で柔らかな身体を大人の僕が力いっぱい締め上げているんだ、苦しくないはずはない。

「す、すまないっ―――」
とっさに彼女の身体を離そうとしたが、それを紫穂の腕がそっと宥めた。
「ぎゅってされるのもいいんだけどね、今はもう少し優しくしてほしいの」

心臓が早鐘を打つ。
表情は伺えないがきっと、いや間違いなく妖艶な顔をしていると思う。
彼女は全身を脱力させ頭を僕の胸に預けてきた。
左腕で捕まえていたせいで心臓が直接彼女の背中を叩いてしまう。
その事実が僕を余計に赤面させてしまった。

知ってか知らずか、彼女は腕の中で心地よさげに咽喉を鳴らせて目を細めている。
―いや、絶対分かってやってるな…

「そんなことないわよ♪」
ころころと鈴を鳴らしたような声が響く。
―やっぱり分かってるじゃないか
そんな抗議の声もおそらくは彼女に伝わっているだろう。
しかし、定例行事のように言葉を紡ぐ。

「だから、勝手に心を読まないでくれといつも言ってるだろ…」
「善処するわ♪」
狼狽しきった僕と、酷く愉快そうな彼女の声の対比が印象的である。

「僕だって特務機関の人間なんだぞ?君が知っちゃいけない情報も沢山持ってるんだ。そんなにほいほい僕の思考を読んでたらいつか服務規程違反に引っかかるぞ?」
これは正論。いつもここで狼狽して諦めるからいけないのだ。

「それは大丈夫。皆本さんが難しいことを考えてるときはすぐ分かるから」
今日こそはガツンと言おうとして―――いきなり出鼻を挫かれた。
出鼻どころか完全に心をへし折られた感じだ。

「皆本さんが余計なことを考えてるときもすぐ分かるのよ?」
「はは、葵にも同じことを言われたよ…」
「でしょうね♪」
こうなったら乾いた笑しか出てきそうになかった。
自分をこんなにも理解してくれる人物がいるのは嬉しい限りだが、その相手が子供だというのだからまた複雑な気分だ。
正直大人としてはかなり情けない。

「…子供扱いは好きじゃないんだけど?」
「――――――」
もう驚く気も起きそうにない。
絶句している僕の姿がおかしいのだろうくすくすと愉快そうに笑みを零している。

―薫がいないのは幸いだけど、葵と同じ反応しやがって…
今の僕に出来ることは、心の中でこう独りごちることぐらいなのだろう。

「…他の女の子のこと考えてるでしょ?」
唐突に響く言葉に息が詰まりそうになった。
ここで、うろたえてはいけない。僕だって成長しているのだ。

「あのなぁ、他の子っていっても薫や葵のことじゃないか…」
「それでも嫌なものは嫌なの!こんなに可愛い子を抱きしめてる最中なのに皆本さん異常なんじゃない!?」
語気に少し棘があったが、頬を膨らましながら抗議するさまは酷く可愛らしく僕の目に映った。

朝とも昼ともつかない暖かな陽射が窓から零れ僕たちに降り注いでいる。
僕たちは指一つさえ動かさずその日差しを享受していた。
柔らかな彼女の感触と甘い香りをやけに生々しく感じてしまう。
蕩けるような心地良さ、無垢なる日向ぼっこ。
僕の心の臓腑だけが少女の背中をノックし続けていた。


「紫穂、もうページ捲ってもいいか?」
「皆本さんのペースで進めていいわよ?私、ちゃんと読むつもりないし」
「あぁ…」

どうしてこんなことになってしまったのだろうか?
僕たちは二人並んでソファーに腰を据えている状態である。
彼女は僕の右側に座り、僕の腰に腕を回している。
そしてその空いている方の手にはしっかりと本の端が握られているのだ。ちなみに僕の左手もまた本を摘んでいるのだが…
つまり、一冊の本を二人で持っているという極めて不可解な格好をしているわけである。

この状況を説明するにはしばらく時を遡らなければならない。
それは、数時間前の話になる。


僕と紫穂は、あれからしばらく窓際で日向ぼっこを続けていた。
暖かな日差しが、肌をじりじり焼く溶射に変わっていったところをみるとかなりの時間をそうして過ごしていたのだろう。
暑くなってそこに留まっていられなくなるまで粘っていたのだから僕もいい根性をしていたといったところだろう。

ともあれ僕たちは行動を開始したのだ。
ヒリヒリと焼け付いた首元をさすりながら、なんの用事もないのにいつもの癖でか台所回りを徘徊する。
彼女は彼女で、エアコンの設定温度を2,3度下げているようだった。

「なぁ紫穂、何か飲むか」
「何があるの?」
冷房の真下に立って、手の平を団扇にしながら胸元をパタパタさせながら答えた。
―そんなに暑かったのなら、途中で立ちあがればよかったのに
彼女も大概にはいい根性をしていると思うと思わず噴出しそうになってしまった。

ノースリーブから覗く彼女の病的にも見える白い肌が、うなじから肩にかけて少し赤く腫れている様に呼吸が止まる。
逆上せた頭を冷ますように冷蔵庫の扉を開けた。冷たい冷気が火照った頬に心地よい。

彼女好みの甘いジュースはなかったが、麦茶が並々と注がれたボトルがそこにはあった。
僕が作った記憶はない。
おそらく葵が作っていってくれたのだろう。その細かい気配りに感謝した。
…ちょっとおばさんくさいなぁ、なんて思ったのは言わぬが華だろう。

「生憎麦茶しかないんだが」
「ううん、貰うわ」
「そっか」
そう言った彼女の声色は少し気色ばんでいた。
だいぶ汗をかいていたようだし水分なら何でも嬉しいのだろう。
僕はボトルを引っ張り出し、二人分のコップを用意する。

「あっ!私が用意するから皆本さんは向こうで待ってて!」
「いいよ、これくらい出来るさ」
気遣いは嬉しかったが、駆け寄ってくる彼女を意に介さずボトルに手を伸ばす。
「―――――――――――!?」

突如として走る鈍い痛みに腕を引く。
気が緩んでいたのだろう、当たり前のように動かしていた腕はギプスをした右腕だった。
冷や汗を流しながら立ち尽くす僕の隣にはいつの間にか紫穂がいた。
心なしかその表情は暗い。

「…やっぱり痛い?」
今にも消え入りそうな声だった。
鼻にかかった、今にも泣き出しそうなそんな声。
僕のとった行動は、僕自身の意思とは関係なくとも彼女の良心を責め立てていたのだ。
自身の迂闊さに吐き気がした。
守るべきこの子をまた傷つけてしまったのだ。

「あぁ、動かそうとすると少しな…」
しかし僕には器用に嘘をつく甲斐性はない。
そもそもそんな虚勢など彼女にはすぐにばれてしまうだろうから。

「昨日賢木が言っていたんだが、ギプスの構造上多少動かした程度じゃ痛みなんて感じないらしい。鎮痛剤も飲んでるしね。どうやら痛みは精神的なものからくるものだそうだ。どうやら僕はだいぶ臆病らしい」
空笑いを浮かべながら、出来る限りおどけてそう言った。

苦笑を浮かべてくれたが、いつもの笑顔には程遠い。
突然彼女が僕の右腕に手を伸ばしてきた。
とっさに腕を引こうとした衝動を歯を食いしばって我慢した。
意味合いは違ったとしても、それだけはどうしてもしたくなかったから。

意図を察したのか、彼女に柔らかな微笑が戻る。
気恥ずかしさに僕は顔をあらぬ方向に背けた。
ギプス越しにも彼女が触れたことが伝わる。おそらく得意の接触感応能力を使っているのだろう。

「構造的には問題ないみたい。しっかり固定されてるわ。痛みの原因は皆本さんの心の方にあるみたい。『右手はへし折れてて使えない、使うと痛い』ってトラウマになってるみたいね」
淡々と事実を口にする。
超度7の彼女の能力だ、その言葉に間違いはないだろう。

これで彼女の気が少しでも楽になってくれたら嬉しいんだけど。
同時に、僕のチキンが証明された訳で複雑な気分である。

「あんな大怪我をしたんだから当然の反応だと思うけど?」
「はは…、救われるよ」
苦笑を浮かべながら肩を落とす。
その様子がおかしかったのか、彼女から笑みが零れた。
―そう、これが僕が見たかった笑顔だ
そう思うと自然に頬が緩んでゆくのが分かった。

「そうだ、私が皆本さんの右腕になってあげる」
突然の彼女の提案に面食らう。
実際のところ、その言葉の意味するところが分からずに呆然としていただけなのだが。
僕の様子を察したのか彼女が続けて口を開いた。

「う〜んとね…言葉で説明するより実際にやってみたほうが早いと思うの」
そう言うが早いか、紫穂は僕の右側の腰に腕を回した。
「おいっ、ちょっと…」
「ねぇ皆本さん、右腕動かしてみて」
僕の抗議は耳に届いていないのか、覆い被せるように言葉を続ける。
未だに意図は掴めないが大人しく従うことにした。

「―――???」
僕は右手を動かしたつもりだ。そう、自分の右腕をだ!
しかし、自身の腕はまったく反応を示さず、動いているのは紫穂の腕。
腕を回し、拳を握る。グー、チョキ、パーを繰り返すが反応するのは彼女の手の平だけである。

「…紫穂?これはいったい…」
「うん、うまくいったみたい」
恐る恐る尋ねた僕に、彼女は満面の笑みで答えた。

当惑する僕を無視して彼女は言葉を続けた。
「私の接触感応能力で皆本さんの神経に割り込みをかけたの。私が力を使ってる間は私の腕は皆本さんのものなの。触感も伝わってるでしょ?感覚は共有だけど支配権は皆本さんが持ってるから私には動かせないわ」

えらく凄いことは当たり前のことのように彼女は言った。
力の応用に関心もしたが、今はそんなこと考えている場合じゃない。
「そんなことをしてもらわなくても大丈夫だから!」
「いいじゃない、減るものじゃなし」
「君の能力は減るだろ!」
口を尖らせ抗議する彼女の言葉を切って捨てる。

「大丈夫よ?そんなに疲れないし」
「しかし、両腕が塞がったら君が不便だろ?」
「私の意志で切り替え自由だから問題ないけど」
どうにもこの手の口論は彼女に勝てないから悔しい。
どんどん僕の逃げ道がなくなっていく。

「しかしだな…」
「皆本さんの腕が使えなくなったのは私のせいだもの…葵ちゃんみたいに家事が得意ってわけでもないし、私も何かをしてあげたいの!」
痛切な彼女の言葉に息が詰まる。
こんなに真剣な思いを跳ね除ける言葉を僕は持っていない。

「…そこまで言うならよろしく頼むよ」
「ホントにいいの!?」
「ただしっ!疲れたと感じたらすぐに止めていい、いや止めること。約束だ」
これだけは念を押さなければならない。
超能力の多用は彼女にどんな負担をかけるのか分からないからだ。

「うん!じゃ、早速お茶を入れましょ」
「ああ」
右手でコップを持ち、左手で注ぐ。

「む、これはちょっと…難しい…」
注ぐ位置に対して、コップの位置が低すぎる。
ちょっとでも位置がずれれば途端にフローリングは水浸しである。

「皆本さんっ!もっとゆっくり!」
「わかってる」
爆発物処理もかくやと言わんばかりの精密な作業。
二人、文字通り一心同体となっての共同作業、失敗は許されない。―掃除が面倒だから

多大な集中力と神経をすり減らし、なんとか一杯目のコップに麦茶を注ぐことが出来た。
「やったな紫穂」
「えぇ」
大きな仕事をやり終えた僕たちはお互いに見つめあった。
お互いの表情に浮かぶのは満足の笑み………ではなく眉を顰めた不振の顔。
数滴流れる汗が、哀愁に彩を添えていた。

「まだ半分だ!後一回頑張ろう―――とはいかないな…」
「…そうね」
乾いた笑いが室内に響く。
お互い、とちらからともなく身体を離した。

一回目は意地と勢いでなんとか続けたが、さすがにもう一回やる気にはなれなかった。
紫穂も同様の気持ちなのだろう。
一人でもう一杯のコップにお茶を注いでいる。

「はい、皆本さん」
「あぁ、すまない」
渡された麦茶を一気に煽る。冷たい喉越しが心地よい。
特に一仕事した後には…

「なぁ…」
「言わないで!私だって分かってるんだから」
そう言って彼女はむぅ、と頬を膨らませた。
その様子は非常に可愛らしいのだが…

「わかってるなら、いい加減放してくれないかな?」
「イヤよ。さっきはうまくいかなかったけどほかの事では役に立ってみせるんだから」
そう言って彼女は頑なに姿勢を崩そうとしない。
物事に頓着がなさそうで非常に意地っ張りらしい。
こうなってはもう諸手を挙げて彼女に付き合うしかなかった。


そうして僕たちは今二人で読書に励んでいるという訳である。
僕たちはあれから色々やった。
そう、本当に色々やった。

時間も正午ということで昼食をとることにした。
簡単に摘めるものということでサンドウィッチを作ることになったのだが、それについても今度は役に立つと傍らには彼女がいた。
右腕がブラブラしているのは何かと不便な上、邪魔ということで布巾で首に吊るされることと相成っていた。

僕たちの動きがうまくいかないのは、お互いの身長差のせいによることが大きくこれさえ解消されれば僕たちの動きはうまくいくはずだった。
幸い台所には彼女たちがキッチンを使うとき用に踏み台が用意されているのだ。

しかし、ことはそううまくいかなかったらしい。
「こら、紫穂!野菜を避けるな」
「腕を動かしてるのは皆本さんでしょ?私じゃないわ♪」

挟もうとするトマトやレタスを彼女はことごとく避けた。
今しがたまで支配権を僕から奪った場合、僕の右腕に感覚が戻ってきたのだが彼女はそれすら克服してしまったらしい。
今となっては自在に支配権を交代させ、且つ僕の右腕は動かない。
能力もまた成長期なのか劇的な進歩をみせる。…ホントに下らないことばっかり。

「あ〜ん♪」
「食べるくらい自分でしてくれ…」

「食べさせてくれないと卵サンドしか食べないわよ?」
「わかった、まったくこれじゃどっちが看病されてるかわからないよ」

「こんな可愛い女の子に、あ〜んが出来るなんて眼福でしょ♪」
「…まったく、どこでそんな言葉を覚えてくるんだ…」

確かに、雛鳥のような姿に見ほれていたのは確かだった。
って僕は何を考えているんだ!?


洗濯もしたし、掃除もした。迂闊にも布団を取り込んだりもした。
―彼女の表情が険しくなったのは恐らく気のせいだろう…たぶん

そのどれもが一人でやったほうが早いという結論に達した。
身長差だけが問題かと思っていたが、歩幅の違い、力の差、それら全てが作用して最後には二人離れて作業をこなした。
何度失敗しても次の仕事には必ず隣にいたのだけれど。

結局落ち着いたのが読書だったという訳である。
彼女がもう少し大きくなってからだったら、もっとうまくいったかもしれないとも思う。
「…子供扱いは嫌いだって言わなかった?」
「また勝手に――」

そこまで言葉にして、その先を飲み込む。
「――いや、君は頑張ってくれたものな。お礼を言うのが先だった、ありがとう」
「私、全然役に立ててなかったけど?」
おずおずと上目使いで尋ねてくる。

「そうだけど、僕は楽しかったよ」
「…私も楽しかったわ。でも皆本さんもう少し歯に絹着せた方がいいわよ?薫ちゃんがいたらきっと今頃壁の中なんだから」
むぅ、と剥れながら抗議の声を上げる。
目元にはうるうると涙が溜まっていた。どうやらかなり気にしていたらしい。

「す、すまないっ!そういう訳じゃなくてだな―――」
取り繕おうとするが、彼女のジト目はやまない。
こんな時、とっさに言葉が紡げる人間が羨ましい。

「???」
万感の思いを込めて彼女の髪を梳いた――――つもりだった。
咄嗟の行動ゆえ、またも右腕を使ってしまった。
今度はさっきとはわけが違う。彼女は自分の腕で自らの頭を撫でられているのだ。
それもありったけの思いを込めて。

僕は顔から火が出そうだった。
人間の身体機能にそのような仕組みがあればこの町は火も海になっていたに違いないなどと益体もないことを考え出すほど僕の思考は混乱していた。

「ふふっ、この家くらいなら全焼かも♪」
止めだった。


笑われた、本当に目一杯笑われた。
彼女が笑いすぎの涙を拭う頃には、僕の熱はすっかり冷め代わりに酷い疲労感が全身を襲っていた。
きっと今僕はかつて無いほどの仏丁面をしているに違いない。

そんな僕の様子など気にも留めていないのか、ふわぁと可愛らしい欠伸を漏らした。
歯並びのいい小さな歯が覗く。
「眠いのか?あんなに力を使うから…」
「…うん、ちょっと」
少し棘を持たせた言葉を彼女は軽く受け流す。

「…ここで寝ていい?」
腰に回した腕解き、僕の太ももを擦る。
あれだけ騒いで回って能力も長時間使い続けたのだ、瞳は半目となり潤み、充血していた。
その無防備な姿に先ほどまでの憤りは何処かへ行ってしまったようだ。
我ながらその現金さに苦笑してしまう。

「あぁ、いいとも」
「…ん」
嬉しそうに彼女は目を細める。
そして、次第に近づいてくる顔。

「ど、どうした?」
「…ん?おやすみのキス♪」
行動の意図は分かっていた。
それでも確認を求めてしまうのは弱さだろうか、傲慢だろうか。

顔面ギリギリで彼女の進行は止まる。
この一線を越えるのは僕の意思。彼女からの問いかけ。
迷うことなんてない。

蕩けるような感触。
幾度重ねようとも、脳髄に撃鉄を落とされるような衝撃は変わらない。
飽くことなく甘美な唇を貪り酔いしれる。

唾液の糸で繋がったまま、彼女は僕の腿に頭を下ろした。
顎にかかる筋がひんやりと冷たい。

そっと、本当にそっと彼女の髪を梳く。

「…痛くない?」

「あぁ、痛くない」

痛みなど感じるはずがない。こんなにも温かく、そして柔らかいのだから。

「…ん」

会話はそれきり途絶え、室内を支配するのは少女の穏やかな寝息だけ。
日差しはとうに傾き、僕たちを黄昏に染める。
彼女に倣ってか欠伸が漏れた。
いかに幻想的な光景とはいっても生理現象には勝てそうにない。

夕暮れの色はオレンジ。
まもなく血のように濃い朱に変わるだろうがそれまで僕の意識は持ちそうにない。

闇に落ちるその瞬間まで、紅く染まった少女のあどけない寝顔に心を奪われ続けた。


あとがき
お久しぶりです。今頃になってのこのこ更新させていただきました。
覚えてる人がいるか不安です。

実はしっかり物語を組みきれようとしているのにこの速度はまずいだろ?って気分です。
頑張りますんで見捨てないで下さい。

最近思うんです、ボクの書いてる皆本って大丈夫なのか?
社会的にみて超危険分子ですよ!?
今回にいたっては、視点や考えが危なすぎです…気付いても直さない辺り自分もいい根性しています(笑)

次は待望の18〜〜〜〜〜禁!
いや、誰も待ってないって?いえいえ、ボクが待ってました。
お気づきののかたもいると思いますがエロとかアマアマやってる方が元気です。むしろエロ!
レス返します。

>SSさん
はい、実は以前から手を出していたのです。そして食われます。

毘沙門天松茸さん
>ハーレムルート一直線?
三人は確定、他は未定って感じです。
ばれるのかなぁ、どうなんだろ?ドキドキです(笑)

>ジェミナスさん
最後までは…次回真相が!?

>てぽさん
うわっ!恥ずかしい。感謝です。これからもご指摘お願いします。

みょーさん
>紫穂の貞操は!!
貞操の危機は皆本の方だったりします。

それではカルでした。

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