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▽レス始

「Obtained from pain Shiens.2(1)(絶対可憐チルドレン)」

カル (2006-07-25 04:32)
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ふぅ、なんとか脱出成功かな。

なんだかんだで監視の目を掻い潜るのに丸々一日かかっちゃった、これは痛手ね。

こんな時、自分の能力が少し疎ましい。葵ちゃんなら瞬間移動であっという間だし、薫ちゃんでもひとっ飛びだもん。

まぁ、私は私なりに官房術中巡らせてもらったんだけど♪…監視官の人ごめんなさい。これも私と皆本さんの愛のためなの♪

…とわ言ってみたけどホントのところは結構不安だったりする。

病院で皆本さんすごく怒ってたし、お風呂場でボキっていった感触は生々しすぎて鳥肌が立っちゃう…ちょっとトラウマかも…

ううん、皆本さんは優しいからきっと許してくれるわよね!

昨日も一昨日も会えなかった分、しっかり看病して目一杯甘えるんだから♪

私は二人よりちょっとだけリードしてるんだから。薫ちゃん達には悪いけどまた引き離させてもらうわね♪


Shiens.3 悪戯


「ほなな、皆本はん」
「もう、帰るのか?」
遅めの朝食を済ませた僕達は、二人並んで玄関の前にいる。
別にそれほど強く引き止めるつもりはなかったが、なし崩し的にずるずると居座り続けた彼女達にしてはあっさりとした引き際に少しばかり疑問を覚えたのだ。
それに仲違いしたことも過去のことになりつつある僕にしてみれば、このまま薫や紫穂がやってくるまで今まで通り一緒に生活するものだと思っていたからである。

「ウチももうちょいゆっくりしたかってんけどな…実はウチら局長はんからしばらくここに来ること禁止されとるねん。お母はんにも今日帰るって言うて来てるしな」
寂しげに苦笑いをする彼女の頭をひと撫でする。
心地よさげに目を細める仕草が可愛らしい。

「気をつけてな」
それだけ伝えて手を離した。
彼女は眼鏡の縁を指で正すと不適な笑みを浮かべ、
「ウチを誰やと思とるんや?」
鈍い閃光に包まれると虚空の彼方へ姿を消していった。

―やれやれ、やっといつもの調子が出てきたな
そう思うと僅かに溜息が漏れた。

「あ、そうそう、言い忘れとったけどなウチがおらん間に浮気したらあかんで♪」
人か感慨に耽っているというのに、突然帰ってきたと思ったこれである。
口元がついついにやけてしまう。

「いいから寄り道しないでさっさと帰れ!」
「あはは、ほな♪」
今度こそ彼女の姿が完全に消える。いや、さっきの完全に消えてはいたが…
今回は帰ってくる気配がない。

彼女達がふざけて、僕がそれを叱責する。
普段通りの僕らの関係が戻ってきたことに苦笑しつつ玄関を潜り部屋へと入っていった。


「それにしても、あの局長がね…」
チルドレンに対して超が付くほどベタ甘な局長がそのような配慮をしていたとは驚きであった。
僕の体のことを多少は労わってくれていたのだろう…今回は正直余計なお世話だった気もするが。
まぁ、彼女達が全員そろったら養生どころじゃないかぁ、などと考え苦笑してしまう。

そんなことを考えながらドリッパーからコーヒーをカップへ注ぐ。
左手一本でもそのくらいはお手の物である。
並々と注がれたカップを片手に、僕はリビングにあるソファーに腰を埋めた。
条件反射でテレビへと目を向ける。スイッチは今朝オンにしたままだった。

『昨日、内務省の記者会見の最中、その場にいた内務省に職員並びに記者全員が急死するという事件がおこり警察では有毒ガスの危険性が示唆され、一方でテロ――――――』

――ピーンポーン
突如として鳴り響いたチャイムにテレビに向けられていた意識が中断される。
―はて、誰だろうか?
葵が帰ってきた?在りうる。
賢木が往診に来た?あいつがそんな気の利いたことする訳ないか。

かといってこの部屋を訪ねてくるものはそう多くない。
―見に行けば分かるか
結局はその答えに行き着くのだった。

玄関に向かって一歩踏み出す。
何かざわざわと胸騒ぎがする。僕に予知能力はないのだが、前線で働く身としては研ぎ澄まされた勘というものがある。
しかしそれが良いものなのか悪いものなのか判別に苦しむ。
期待半分、不安半分といったところか…

いや、実際のところある程度目星はついているのだ。
ただ少し心の準備が出来ていないだけで…
確立は二分の一、まぁどちらにしても僕の予想に相違はないだろうけど。
苦笑を漏らしつつ、扉を開く。
目の前にいたのは予想に違わず、大人びた表情と色素の薄いふわふわした髪質が印象的な少女。
特務エスパー『ザ・チルドレン』の接触感応脳能力者、三宮紫穂であった。


「紫穂か」
「あら?驚かないのね」
ちぇ、と唇を尖らせ詰まらなそうに言う。
僕は葵の前例があったので取り乱さずに対処が出来た。

「どうしたんだ?突然」
「皆本さん利き手が使えなくて不便でしょ?だから色々お手伝いに。それと、皆本さんにちゃんと謝りたくて…ごめんなさい」
可愛らしくぺこりと頭を下げた。
―この子達はみんな考えることが同じなんだなぁ
なんて思ってしまったが、早く返事を返してやらなければいけないことに気付き未だお辞儀をしたままの少女の肩に手を置いた。

「いいよ、もう気にしてない。あの時はショックで取り乱してたんだ、僕の方こそ悪かった」
素直にそう口にすることが出来た。
昨日の葵とのやり取りのおかげだと思うと彼女に感謝しないといけない。

「…ホントに?もう怒ってない?」
「ああ、怒ってないよ」
頭を上げ、おずおずと上目使いで尋ねてくる。
あの時の僕はそれほどまでに取り乱していたのかと反省した。
だから勤めて優しい声で彼女に返答したのだ。

「私を助けようとして皆本さんは怪我をしちゃったから…」
「…ああ、そうだったな」
僕は彼女に出来うる限り怪我をさせないように努めて、その結果がこの腕だったのだ。
しかし、それも今となっては誇らしい。
彼女に傷一つ負わすことがなかったのだから。

「私の掴んでいた腕が浴槽の縁に当たってゴキゴキッ、て…」
「ああ…」
なんだか話しに聞くだけでも腕が痛くなってくる。

「その時の骨が軋んでへし折れる感触がまだこの手に…」
「ああ!もう止めてくれ!なんだか忘れてたことまで思い出しそうだ」
ここまできてやっと気が付いた。俯いているが彼女の瞳は笑っている。
要するに僕はからかわれていた訳だ。
当然起こる気にはなれない。
これは普段通りの彼女が帰ってきた証なのだから。
ただ、こんな思いをあと最低一回は味合わなければならないことに嘆息が漏れたが。

「こんなところで立ち話もなんだし家に入ったらどうだ?」
そう言って僕は左手を差し出す。
彼女は少し驚いた顔をしたが、満面の笑みで僕の手を掴んだ。

彼女を引きつれ玄関を潜る。
「…ただいま」

「ああ、おかえり」

そうして、僕たちの一日は始まった。


廊下を歩く彼女は上機嫌だった。
別にそれらしい素振りがあるわけじゃないが、それくらい雰囲気で分かる。
なぜだか僕は彼女に意地悪な問いかけをしてみたくなった。

「そういえば君達は謹慎中じゃなかったのか?」
「そうだけど、皆本さんに合いたくてこっそり抜け出してきちゃった」
あっけらかんと答える彼女に頬が火照る。
ここで言葉に詰まるから、僕はこの子に勝てないのだろう。

突如として彼女の視線が妖艶なそれに変わり、繋いでいるのとは逆の手で僕の胸元を掴み引き寄せた。
そう、これは彼女のおねだりの仕草だ。
大きな瞳を閉じて、顎を擡げる。

その行為に顔の温度がまた一段と上がっていくのを感じた。
このようなことを、当たり前のように日常としていた自分に頭を抱える。
一度意識してしまうと以前のようにすることは出来ず、ただおたおたするばかりだった。
そして、苦し紛れの台詞が漏れる。

「馬鹿、こんなところで…」
「薫ちゃんも葵ちゃんもいないわよ?」
そう言って、唇を下ろすことはしない。

「それにしたってなぁ…」
「昨日も一昨日も寂しくて眠れなかったのに…皆本さんがシてくれなかったから…」
正直それを言われると弱い。
その言葉が決して本当かどうかは分からない。嘘とも思ってないが半々といったところか。

そのおどけた声色とは裏腹に、彼女の表情は不安と悲しみに侵食されていった。
よく見てみれば、繋いでいた手は僕の手が白くなるほど固く握られ小刻みに震えていた。

―僕は愚かだったのだろうか?

その答えが出る前に僕は彼女の小さな蕾に唇を重ねた。
柔らかい、そして懐かしいような刺激に目の内側で火花が散った。
暖かな気持ちが胸に広がる。ほんの僅かに湧き上がった劣情を飲み込み蓋をする。
―彼女を拒絶してはいけない
譬え僕にそのような意図がなかったとても。

それは浅く、触れるだけの口付け。
僅かに粘液が糸を引いた。
「…これだけ?」

「そ、これだけ」
不満そうな彼女の声を打ち切って、明後日の方向を向いた。
爆発するような心臓の音も、火の出る程火照った顔も今は見られたくなかった。


私はすっごく幸せだった。
それはもう私の柄じゃないけど喜びのままに飛び上がって、自分がどれだけ幸せなのかをみんなに吹聴して回りたいくらい♪
その理由は簡単。皆本さんが私のことを許してくれて、それで…いつもみたいに私を受け入れてくれたから♪

そして何より、皆本さんのあの反応。
前までのキスに篭っていたのは家族の親愛の情(ちょっと行き過ぎてた気はしないでもないけど)だった。
だからお互い機械的で、形式張っててあんまり照れとか羞恥心とかはなかったの。
でも、今あの人の唇からはほんの僅かだけど男女の…そういう気持ちが混じってた。
私はそれが嬉しくてしょうがないの♪

キス自体は触れ合うだけのそれで、ちょっと物足りなかったけどね。
…ウソ、今さっきいつものようにシてたら私はきっとオーバーヒートで倒れてたと思う。
今だって顔から火が出るほど頬が熱い。
皆本さんはそっぽを向いてるから気付いてないみたいだけど。

彼が私と同じ気持ちでいてくれることが、また余計に嬉しさに拍車を掛けてくる。
私が皆本さんのことを彼って呼ぶのは変かしら?
だって私の中で彼はもう大事な人なんだもの♪


私は信じていないけど、神様っていう人がいたらそいつはすっごく意地悪なヤツだと思う。
あんなに幸せだった気持ちはものの数秒で跡形もなく吹き飛んでしまったのだから…

皆本さんと二人手を繋いで部屋に入った。
そう、ここまでは私は幸せな気分でいられたのだ。
そしてその平穏は室内の違和感で一気にぶち破られたのだった…

「…女の子に匂いがする」
自分でもびっくりするぐらい底冷えした声が口から漏れた。
「―――!?」
何かやましいことがあったのか、私の声自体の驚いたのか皆本さんの肩がびっくと震える。

この匂いには嗅ぎ覚えがあった。
ううん、覚えが在るなんて物ではない。ここ何年も寝食を伴にした親友の匂いなんだから。
そして、皆本さんを掛けた恋敵でもあるんだけどね。

私の頭の中はある一言で支配されていた。
―先を越された…
そのこと自体は考えていないではなかった。
一日出遅れたことを悔やみのしたし、恨み言を呟いたりもした。
それでも一日の遅れを重大な失態だとは思っていなかったのだ。
薫ちゃんは男勝りだけどとってもナイーブだし、葵ちゃんは恥ずかしがり屋だから謹慎中の間にここに来るとは思っていなかった。

昨日一日何があったのか気になって、あやうく接触感応能力で皆本さんの記憶を読み取ろうとしてしまったがそれはあんまりにも彼に失礼だし不貞な気がしたので止めることにした。その代わり…
私は皆本さんの手を離す。
「…紫穂?」
私の行動の意図が掴めないのか気弱な声が聞こえてくる。

私はその声を聞こえない振りをして、すたすたと台所へ向かった。
手始めにテーブルに腕をかざして、私の能力を発動させる。
直接はダメだけど…
―これだったらいいわよね♪
「紫穂!?っちょとお前――」
私のやろうとしていることを理解したのか静止の声が室内に響き渡る。
ふふ、もう遅いわよ皆本さん♪

「ふむふむ…、手作りご飯をあ〜ん…」
「なっ――――!?」
ぼそりと呟いた言葉に、彼の顔が驚愕に歪む。
その一瞬の硬直を見逃さず私はリビングに駆けた。

彼の目の前を通り過ぎた瞬間、皆本さんは正気に戻ったけどそれでは私を止めることは出来ない。
ソファーに手をかざして情報を読み取る。
「ふ〜ん、腕を組んで二人でイチャイチャ…」
「―――――!!」
私を捉え損ない、虚空に手を伸ばした体勢の彼の顔から血の気が引いてゆく。

不意に目に止まったベランダに干してある布団に言い知れぬ威圧感を感じる。
こういう時私の勘は外れたことがない。
ベランダまで一気に突破しようと体勢を低くし、地を蹴った。
しかし、ベランダに続く窓はしっかりと施錠されており本気で捕まえにきた皆本さんにあえなく捕まることとなってしまった。

その腕から逃れようと、じたばたしてみたけど捕まえてる腕に少し本気で力が入っていたので断念することにした。
そもそも私の目的はもう既に達成されていたんだもの。

私だって、超度7の力を本気で使って接触感応したわけじゃないのだ。
私が見たのは部屋に残されたおぼろげなイメージだけ(本気でやればどんな会話をしてたかまで筒抜けだけどね)。
親友のプライバシーを覗くもの気が引けたし、それをしたら私は彼女達の信用を裏切ったことになるもの。
私にだってそれくらいの分別はあるのよ?

だから、ちょっぴり傷ついた乙女心のお返しの皆本さんをからかって追いかけっこ演じてみたかったのだ。
それに、考えようによっては私は心臓の音が聞こえるくらいきつく彼に抱きしめられているわけで…とりあえず満足かな♪でも…

「…なにかやましいことでもあるの?」
彼の反応があんまりにも露骨だったからさすがにちょっと危惧してしまう。

「………いや、その………ははっ」
目を泳がせ、汗を流しながら乾いた笑を浮かべる。
―む、これはちょっとまずいかも…
まぁ、皆本さんの位置づけは私達の共有財産ってあたりで落ち着いてるから文句なんてないんだけどね。
…それ以上のことをしちゃえばいいわけだし。

―だから覚悟しといてね、皆本さん♪


あとがき
取り合えず前編終了〜。
う〜ん、疲れました。
一気に終わらせようかとも思いましたがちょっと長くなりそうなので今回も前
後編仕様です。もちろん、後編のあとは18禁ですw
今回初めて実装した女の子側からの視点。前々からやろうかどうか迷っていたのですが今回実施。
あんまり視点が飛び回るのは好きではないので人数が増えると三人称から皆本一人称になってしまいますが。
感想いただけると嬉しいです。

お気づきかもしれませんが紫穂の設定は前に書いた『偽らない嘘』を引き継いでいます。せっかく書いてのだからもったいないなぁなんて考えたりして…。
実のところ深く考えてはいませんw
読んでいない方はこれを気にそちらも読んでいただけると物語中に感じた違和感が解消されるはずです。

次もほのぼのというか、必要以上にラブラブというかそんな感じの内容となります。皆本さん鬼畜!なんて叩かないでくださいね。

>SSさん
はい、やってしまいました…皆本くんはどこに向かっていくのでしょう(笑)

みょーさん
>女の子の方の視点で書いてみても面白いかな?
はい、おかげで踏ん切りをつけて書かせていたたきました。
いかがなものでしょう?

毘沙門天松茸さん
>紫穂からの追求…或いは紫穂が絡めてで来る事への対処は
あんな感じにまとまりました。
彼女は彼女なりのポリシーを持って能力を使っているのです。
ギャグパートやお仕置きの時意外は必要以上に心を読んだりしないのです。
ただ、自分にとっての味方に対してだけですが…

それではカルでした。

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