あの後俺はさらに小竜姫様から指導を受けた。
そして、日も暮れたため修行も終了となった。
「さて、ヒャクメ、逝きますよ。」
小竜姫様はそう言うと、わけのわからない顔をしたヒャクメを引きずって別室へ消えた。
逝くの字が違ったのは俺の気のせいじゃないはずだ。
一時間後・・・・別室から戻ってきたヒャクメは・・・黒かった・・・
「ヒャクメ?」
今のヒャクメは黒い服で黒いマント。
「ひみのひっていふひゃふめはひんだのへ〜・・・」
(きみの知っているヒャクメは死んだのね〜・・・)
顔には黒いバイザー。一言で言えば・・・黒ア○ト?
「・・・」
そしてなにより・・・たらこ唇・・・
「はのひょのひきたはかひ・・・ふけほっへほひいのへ〜。」
(彼女の生きたあかし・・・受け取ってほしいのね〜。)
そう言って俺に折りたたんだメモを渡してくる。
「・・・・なんだ?」
俺は疑問を口にするがヒャクメはそれには答えず、
「ほうひみにめたまややひほくっへあはげふことはでひないのへ〜・・・」
(もう君に目玉焼きを作ってあげることはできないのね〜・・・)
遠い目をしてそういった。
「やかましいですよ?」
トスッ
いつのまにか現れた小竜姫様がヒャクメの首に手刀を食らわし、ヒャクメを気絶させる。
俺は見てしまった・・・小竜姫様の手にからし、わさび、タバスコ等々の空になった容器を・・・
「まったく。人がせっかく余計なことをしゃべらないようにしてあげたのに、そんなことをする元気は残ってるんですね。」
「あの、小竜姫様?その手に持っているのは・・・・」
「これですか?仏罰の証ですよ?」
いや、何言ってるんですか?みたいな顔で言われても・・・
「まったくどいつもこいつも胸が小さいだの、微乳だの、小隆起だの、失礼極まりない。大体胸が何ですか!?いいですか!横島さん!!」
「はいっ!!」
「古人曰く!胸なんて飾りです!!偉い人にはそれがわからんのですよ!!です!!覚えておきなさい!!」
「はいっ!!了解しました!!」
そう言って小竜姫様は部屋を後にし、部屋には俺と気を失っているヒャクメが残された。
小竜姫様・・・・古人はそんなこと言ってません・・それを言ったのはジ○ンの人です・・・
翌日、わたしは布団の中で目を覚ました。
昨日のことはよく覚えていない。というか、頭が思い出すのを拒否している。
とりあえずわたしたちは朝食を共にしている。
「横島さんは今日下山するんですか?」
「はい。朝食を食べたら出発するつもりです。」
ここから横島さんの街までは結構離れている。ちなみに来るときは夜行を使った。
「早いですね。もう少し残ることは出来ないのですか?」
「小竜姫無理言っちゃ駄目なのね〜。横島さんは明日学校があるのね〜。」
わたしの言葉に小竜姫はしかたないといった顔をするが、すぐに何かを思いついたようだ。
「ああ、それじゃ帰りは鬼門に送らせましょう。それなら出発は夜でもいいですよね?」
「え?で、ですが・・・」
「いいですよね?」
「はい・・・」
横島さんは小竜姫の迫力に負けて承諾してしまう。かわいそうに・・・
そしてわたしたちが朝食を終えると同時に、
「何をするか無礼者―ッ!!」
鬼門の声が聞こえてきた。
「あら、お客様みたいですね?少しいってきます。」
そう言って小竜姫は立ち上がる。
「はい。それじゃ俺はここをかたしておきますね。」
「いえ、いいですよ。後で私がやっておきますから。」
「お世話になってるんですからこれぐらいはさせてください。」
「そうですか?それじゃお願いしますね。」
そう言って小竜姫は部屋を出て行く。
「さて、やるか。」
「わたしも手伝うのね〜。」
私たちはかたづけを始める。
「なあヒャクメ?お客様ってやっぱり神様なのか?」
「ううん。人間なのね〜。ここは修行場だから、たまに人間が修行にくるのね〜。」
そんな会話をしながら食器を洗っていく。新婚さんみたい、と思ったのは秘密。
かたづけ終了から30分経過。小竜姫は戻ってこない。
「遅いのね〜!!横島さん、様子を見に行くのね〜!」
「いいのか、そんなことして?」
「大丈夫なのね〜。それに、人の修行を見るのもいい勉強なのね〜。」
そう言ってわたしは横島さんを連れて修行場へ行く。
銭湯のような場所を通り、使用されている場所に入ると・・・
長い髪をした大きな女性が石で出来た妖怪の目に槍のようなものを突き刺していた。
ヒャクメに連れられて入った場所には見知った顔がいた。
「美神さん?それにおキヌちゃんも!」
「あ、横島さんこんにちは〜。」
俺の呼びかけにおキヌちゃんはいつもの笑顔で挨拶をしてきた。
「あら?あんたたちも来てたんだ?」
「そうなのね〜。」
「?お知り合いですか?」
会話を始める俺たちを見て小竜姫様は疑問の声を上げる。
「はい。俺がお世話になる予定のGSの一人です。」
「そうだったんですか。」
小竜姫様は納得したようだ。
「彼女は今修行中ですから、あなたはそれを見ていなさい。見るのもまた修行です。」
「はい。」
小竜姫様はそう言うと美神さんに修行の再開を問いかける。
「なあヒャクメ?これはどんな修行なんだ?」
「これは霊力を直接鍛える修行なのね〜。あの大きな女の人は美神さんの『影法師』、まあ分身みたいなものなのね〜。それを使って三つの敵を倒していくのね〜。」
「なるほど。」
「そうらしいですよ〜。それで美神さんはもう最初の敵を倒しちゃったんですよ!」
おキヌちゃんは我がことのように胸を張る。
「禍刀羅守!出ませい!!」
「始まるみたいなのね〜。」
小竜姫様の呼びかけと同時に四本の刃物のような足を持った大きな化け物が現れる。
「なんか痛そうなデザインだな・・・」
「あっ!!」
俺がそんな感想をもらすと、おキヌちゃんが驚きの声を上げた。
俺がその声に反応して目を向けるとそこには美神さんの影法師に不意打ちを仕掛ける禍刀羅守の姿が・・・
美神さんは多少のダメージを食らったようだ。
それを見て小竜姫様が静止の声をかけるが禍刀羅守は、耳を貸さない。
「私の言うことが聞けないってゆーの!?なら、試合はやめです!!私が・・・」
「待って!!あんたがやっつけたら私のパワーアップにはならないんでしょ?」
「・・・それはそうですけど、これでは公平な戦いは・・・」
「いーえ、やるわっ!!行くわよっ!!」
小竜姫様が直接手を下そうとするが、美神さんはそれを拒否する。
美神さんの影法師が禍刀羅守に向かって行き、槍で攻撃を仕掛ける。
しかし禍刀羅守はそれを身を屈めてかわし、美神さんに更なる攻撃を仕掛ける。
やばい!最初のダメージが効いている。
「小竜姫様!最初のダメージがでかいみたいです!止めてください!!」
「・・・横島さん、彼女はあなたの師事するもののひとりなんですよね?」
「?そうですけど、そんなことより美神さんを!」
俺の呼びかけに小竜姫様は疑問で返す。
「いいでしょう。特例として助太刀を認めます。」
そういって俺の額に手をかざす。
「あなたの影法師を抜き出します。」
「え?俺なんかじゃ・・・」
「昨日の教えを覚えていますね?あなたの感じた護る力・・・見せてみなさい。」
そういって俺から影法師を抜き出す。
一瞬の後・・・
パシュン。
そんな音と共に、俺の影法師が姿を現す。
俺と同じくらいの大きさで、和装の道化の格好。
しかしその服は片袖だけが白く、残りはすべて黒。
両手の甲には眼を持ち、その顔には仮面がつけられ大きな眼が描かれていた。
そんな容姿をした影法師が俺の目の前に降り立った・・・
あとがき
うう、今回も前半にギャグ、後半シリアス風味でした。一回で終わらすつもりだったんですが二つに分けました。とりあえず影法師登場でした。
レス返し
初めにご意見、ご感想を寄せていただいた皆様に感謝を・・・
寝羊様
いいんです!いい子はそれだけでいいんです!!(断言)ヒャクメは正直自分で動いてくれるんで書いていて面白いです。今回はコスプレにしましたけど・・・暴走?
ゆん様
お仕置き完了。なんとなく拷問を思い浮かべたらあの人に行き着きました。安直でしたけどね?
亀豚様
基本的にこの横島くんも自分より他人を優先するタイプにするつもりです。それと、今回も小竜姫様の暴走ありでした・・・
への様
う〜ん、横島君を正統派にするかどうかは少し悩んでたりしますが、実践で戦いを覚えていけばそうなるかな?とか思ったりもします。すこしこれでは弱いと思うのでなにかしら考え中です。
内海一弘様
神装術は次回使う予定です。まあ影法師の容姿を考えればばれますけどね。今回ヒャクメが受けたのはわかりやすいお仕置きにしてみました。