『ミカミマン真剣白羽取り!』
振り下ろされた妖刀シメサバ丸を、彼女は見事な見切りで受け止めた。
『とどめだ! ミカミマン外道焼身霊波光線!』
ずどむっ!
動きを止められたシメサバ丸は、超至近距離から放たれた光線を受け、半ばからぽっきりと折れた。
『む……無念……』
シメサバ丸はそれっきり、何も言わなくなった。
「や、助かりましたよミカミマン!」
妖刀の強烈な念波から解放された横島が、感謝の言葉を送る。修行して霊能力を得た横島でも防ぎきれないほど、シメサバ丸の念波は強かったらしい。
『礼には及ばない。君が抵抗し続けていたおかげで、奴は本来の動きができなくなり、簡単に済んだのだ。もっとも、たかが妖刀の分際で、この正義の韋駄天・八兵衛に……』
「韋駄天?」
『はっ! ち、違う! 私は美神さんに憑いている韋駄天などではない! ただのスーパーヒーロー、いちミカミマンに過ぎないのだ! さらばだ横島君とやら!』
言うが早いか、美神……いやミカミマンは、目にも止まらぬスピードで去って行った。
――んで。
「ちょっと横島クン! 何かあったの?」
と、すぐさま反対方向から美神がやってきた。あまりの変わり身の早さに、横島は思わずずっこける。
「……どうしたのよ、いきなり?」
「いや……やっぱなんも覚えてないんスね」
「何よ? 変な横島クン。……あ、それシメサバ丸? 私が除霊しようと思ってたけど……横島クンがやってくれたの?」
「え? えーと……まあそんなとこっス」
「へぇ……やるじゃない。見直したわよ」
本当は違うので、それで見直されても微妙な気分だった。
と――横島は折れたシメサバ丸を見て、ふと思い出したことがあった。
「美神さん、このシメサバ丸、もらっていいっスか?」
「いいけど……なんに使う気?」
「ん〜……リサイクルで平和利用……ってとこっスかね?」
曖昧に答え、横島は折れたシメサバ丸の切っ先を拾い、「んじゃ」とその場を後にした。
『二人三脚でやり直そう』 〜第九話 超神合体!!【その2】〜
横島は考えていた。
コンビニで夕食となる弁当を買い終え、今はその帰路だ。前回実力を見せたので時給は1000円と跳ね上がったが、給料日はまだ先なので、コンビニ袋の中身はいまだインスタントラーメンである。
あの美神が横島に時給1000円も出すのはかなり異常な気もするが、そもそも命の危険がつきまとうGS業界において、バイトとはいえ時給1000円はそれでも安すぎる。
まあ、横島当人は「もらいすぎだ」と思ってるのだが。相手が美神なだけに。
もっとも美神からしてみれば、霊能の師匠である唐巣からの言いつけと、金はなるべく放出したくないという自分の欲――まあ要するに義理と人情の板挟みという状況の中での、最大限の譲歩だったわけだが。
それはともかく。
考えているのは、ミカミマンのことだ。あれは間違いなく美神その人でしかないが、いかに未来の記憶を持っている横島でも、彼女があんな痴態を晒していた記憶はどこにもない。
何より問題なのが、ミカミマンになっている間の記憶が美神にないということだった。明らかに何かに取り憑かれているとしか思えない。
そういえば今日、韋駄天とか何とか言ってたが……
「あ」
思い出した。韋駄天。しかも、八兵衛と言っていた。それならば覚えがある。
始まりは首都高荒らしの事件だ。その犯人――後にはぐれ韋駄天の九兵衛と判明――を追跡中、同じくそれを追ってきていた八兵衛が現れ、横島はコブラから放り出され八兵衛と衝突した。それ以降、記憶が途切れ途切れになっていて、最後に新幹線で九兵衛と対決した時に、いつの間にか自分に取り憑いていた八兵衛に真相を聞かされたのだ。
八兵衛に聞かされた真相はこうである。
首都高で致命傷を負った横島を助けるため、八兵衛が取り憑いて治療を行い、その間はちょくちょくと体を借りて正義のヒーロー・ヨコシマンとして美神を助けていたとのこと。ヨコシマン=横島という事実は、隠し通していたそうだ。
だが――
「あれで隠してるつもりだったのか?」
逆行して美神が取り憑かれているのを見て、改めて疑問に思った。八兵衛のあの大根っぷりでは、きっと以前の美神にはバレバレだっただろう。
しかし、そうすると――美神が言っていた「失敗した除霊」というのは、おそらく九兵衛の首都高荒らし事件だ。あの事件に自分がいなかったからこそ、八兵衛に投げ付けられたのは横島ではなく美神となり、八兵衛がその治療のために取り憑いたということだろう。
が――そうなると、さらに疑問が湧き上がる。
「……事件の順番が狂ってる?」
今日のシメサバ丸の除霊なんかは、もう少し後だったはず。まあ、このあたりの小さな事件なら多少順番が違ってても気にするほどでもないかもしれないが、韋駄天の事件はそうもいかない。
あれは言ってみるならば神界の不祥事であり、その出来事は天龍童子暗殺騒動の後である。つまり、本来ならもっと後に起こるべき事件なはずだ。
もしかしたら、自分とおキヌの逆行が原因で、歴史が狂い始めたのかもしれない。――言うなれば、直線の起点で角度をたった1度ずらすだけで、3キロ先の位置が50メートル以上も狂うかのように。
横島は、しばらく難しい表情で考えていたが――
「ま、いーか」
やがて、空気が抜けたかのように唐突に表情を緩める。
「逆行は事故みたいなもんだったし、過ぎたことをあーだこーだ考えててもしゃーない。起きたことに対処するっきゃねーか」
ということで、現在起きている厄介事に思考を戻す。差し当たってどうにかしないといけないのは、ミカミマン――八兵衛のことだ。
やっぱり美神に真相を話した方がいいのだろうか? あの人のことだから、とっくに「おかしい」とは思っていることだろう。もう既に数回の除霊を行っていることだし、疑問に思っていないわけがない。
ならば、言うべきか? 知っていながら黙ってたと思われては、後が怖い。そもそも、あんな恥ずかしいコスプレで除霊していたと知れば、あの美神がどう暴れだすか知れたものではない。
しかし八兵衛が取り憑いたままということは、まだ美神の治療が終わっていないということ。真相を知ったところで、その状態で美神が八兵衛を放り出せるとも思えないし、できたところで押さえを失った傷口が開いて病院送りになることは明白だ。
まあ、もっとも……どちらに転んだところで、八兵衛が美神にシバかれることは確定だろうが。
言うべきか言わざるべきか。悩んでいるうち――横島は、ふと道の脇の電柱に、誰かが寄りかかっているのに気付いた。
街頭の明かりに照らされたその人物は、はっとするような美少女だったが――
「……げ」
横島は青ざめた。その美少女に見覚えがありすぎる。足を止め、警戒して一歩下がる。
「マ、マリア……?」
そう。不死の錬金術師ドクター・カオスの最高傑作、アンドロイドのマリアだった。
彼女は横島のつぶやきを耳にして、小首を傾げた。
「……? なぜ・マリアの名前・知ってますか?」
「え? えーと……その……」
横島は自分の失言に気付き、言葉に詰まった。彼女は一歩一歩近付き――
「ドクター・カオスの命令で・あなたを拘束します」
言うが早いか、ロケット・アームで両腕を飛ばして、横島をがっしりと掴んだ。そのまま横島ごと自分の腕を引き寄せる。
「げ! ちょ! 離せマリア!」
「ノー・ドクター・カオスの命令です」
「ぐっ……ふんっ! だぁっ、外れねー! なんて力だ……はっ!?」
マリアの拘束をどうにか外そうと懸命になるが、びくともしない。そうこうしているうちに背後から近付いてきた気配を感じ、横島は首だけ動かして後ろを見た。
にやっ。
そこにいた老人は不敵に笑い、横島に向かって着ていたコートを開いて見せた。
その裸の胸に描かれた魔方陣が輝いたのを見て――それを最後に、横島の意識は闇に沈んだ。
んで。
気付いた横島は、マリアに拘束されたまま、なにやら怪しげな実験室に入れられるところだった。それほど長く気絶していたわけでもないらしい。
(……なーんか見覚えありまくりだな、この状況)
知っていたはずだから、マリアを見た瞬間に事前に対応できていたとは思うが……八兵衛のことに思考がいっていたせいか、咄嗟に対応できずに以前と同じ轍を踏んでしまった。
「気付いたか、小僧」
と話しかけてきたのは、さっきの老人――言うまでもなく、ドクター・カオスだった。
「もう日本に来てたのか、カオスの爺……」
言いかけ、口をつぐんだ。起き抜けで頭がはっきりしていなかったのか、またやってしまった。
しかしカオスの方といえば。
「ほう。わしの名前を知っているか。まあこのヨーロッパの魔王ドクター・カオスともなれば、顔が知れ渡っておるのも当然じゃがな」
言って、かっかっかっと豪快に笑った。
(あーそーだ、こういう爺さんだった。なら、以前から知ってたふうに会話しても違和感ないか)
と、開き直ることを決める。
「で、爺さん。俺に何の用?」
「うむ……それはな」
かくかくしかじか。
「というわけでだ。小僧、貴様は光栄にも、このドクター・カオスの道具に選ばれたのだ! この日本で最高のGSと名高い美神令子とやらの霊能力をいただく為ににな!
わしの秘術と霊能力が合体すれば、わしは神に一歩近付くのだ!」
(あー、そういえばそんなこと言ってたっけ。前はろくに聞いてなかったけど)
とはいえ、この状況は横島的にちょっとマズい。このままならこの爺さんと人格交換されて、その美神にヒドい目に遭わされるはずだ。それだけは避けたい。何としても。
逃げる、という選択肢は真っ先に却下。マリアの拘束は、どうやっても外れない。たとえ何らかの手段で外したところで、さて逃げ切れるかどうか。
とすれば、使えるのは口車ぐらいしかない。しかし、どうやれば言いくるめられるか……
(あ、そーだ。どうせなら、利用しちゃえばいーんじゃん)
横島は何事か脳裏に閃いた。
「なあ、じーさん」
「なんじゃ小僧」
「今美神さんと人格交換したところで、意味ないぞ? 変なのが憑いてる真っ最中だから」
「なんじゃと?」
「それよりも……面白い話があるんだけど、乗ってみないか?」
「ふむ? ……良かろう。話してみろ」
ふっふっふっと悪役面で持ちかける横島に、案の定カオスは乗ってきた。
――同時刻、JL東海――
トップスピードで走る新幹線。その車内で、小さな女の子が窓に張り付いていた。
「ママー、ママー! お外を誰か走ってるよー!」
「そう。よかったわね」
母親の方は、興味がないとばかりだ。
しかしその車外では、本当に『誰か』が走っていた。トップスピードで走る新幹線と並行して。
『なーんーぴーとーたりともーっ! 俺より速くは走れんのだああーっ!』
そいつ――はぐれ韋駄天・九兵衛は叫び、やがて新幹線を追い抜いた。
『わははは! 勝ったぞ! 遅い者には死あるのみっ!』
勝ち誇った九兵衛は霊波砲を撃つべく、振り向きざまに手に霊気を集中させた。
が――その横顔が、正面から何かに照らされた。
『はっ!?』
対向車線から、今しがた追い抜いたものよりも新型の新幹線が走ってきた。九兵衛を照らしたのは、そのライトである。九兵衛はとっさに避けて正面衝突を避ける。
『は……速い!? そーか! あっちの方が速いのかっ……!』
言って、顔中に井桁を浮かび上がらせる。
『ちょっ……ちょっとばかり速いと思っていい気になるなよっ! 勝つ! 俺は地上最速の韋駄天・九兵衛だ! 見てろ! 貴様を追い抜き――やがて『奴』よりも速くなってみせる!』
無機物に向かって「いい気になるな」とか「貴様」とか言うのもどうかと思うが――ともかく九兵衛は吼え、もはや影も見えない新型に向かって誓いを新たにした。
――明けて翌日――
「ありがと〜〜〜、ミカミマン〜〜〜。マコラ〜〜〜、もう迷子になっちゃだめよ〜〜〜」
無事、逃げ出したマコラを保護してもらった冥子が、目の前の怪しげなコスプレ女性――ミカミマンに、何度も頭を下げた。
『礼には及ばない。この正義の韋駄……もとい、ミカミマンにかかれば、迷子の式神を保護することなど軽い軽い。今後はこのようなことのないよう、気をつけなさい』
「はい〜〜〜。お世話になりました〜〜〜。それにしてもミカミマンって〜〜〜、ほんとに令子ちゃんにそっくり〜〜〜」
『ぎくっ』
「……? どうしたんですか〜〜〜?」
『い、いやなんでもない。私はミカミマン。令子ちゃんとやらではないからな』
「変なの〜〜〜。それじゃ、私はこれで〜〜〜。今日はありがとうね〜〜〜」
ぶんぶかと手を振って、去っていく冥子。その二人の様子を後ろから見ていた横島はというと、呆れて物が言えなかった。
(……だ、大根すぎる……! それに冥子ちゃん、ちょっとは疑おうよ……!)
八兵衛の間抜けさ加減に、もはや言葉もない。その横島の背後から、「横島クンー!」と声がかけられた。
見ると、もう既にミカミマンは消えていて、遠くから美神が走ってくるところだった。
「はぁっ、はぁ……マコラは?」
「保護して冥子ちゃんに引き渡しましたよ」
「そ、そう……また横島クンに解決してもらっちゃったみたいね……ったく」
どこかイラついた様子で、頭を掻く美神。
「まあいいわ。帰りましょ」
「ういっす」
そうして、彼らは事務所への帰路へついた。
「……おかしい」
一仕事終えた美神は、事務机に座ってぽつりとこぼした。
「まただわ」
「何がっスか?」
聞くが、横島は美神の考えていることは全部わかっていた。あれからさらに一件の除霊をこなしたのだが、その除霊でも、ミカミマン……もとい、八兵衛が出張ってきたので、また記憶が飛んでいるのだ。
「私の知らないところで、私の身に絶対何かが進行している。横島クン、何か知らない?」
「さ、さあ……?」
とりあえず、出来る限りは隠しておいた方がいいと、横島は判断した。それが八兵衛にとっても美神にとっても最善の結果になると思って。
まあ……最後に自分が折檻を受けるのは確定だろうが。
「そもそも、最初におかしかったのは首都高荒らしの事件よ。あの時250キロ超のスピードを出していた車から転落して、ほとんど怪我がなかったってのが……自分のことながら、気に入らないわ。私自身一流のGSだし、無意識に受身でも取っていたんだろうって無理矢理納得してたけど」
やっぱりあの事件か。横島は自分の推測が間違っていなかったことを確信した。ついでに、予想以上に美神が異変に確信を持っているということも。
「あれからだわ。何かにつけて記憶が飛ぶのって。それも、ほぼ全部が仕事の最中。さらに言えば、記憶が飛んだ後は必ず仕事が終わってる。最初は転落の後遺症かと思ったけど、偶然にしては出来すぎてるわ」
(あかん……もうとっくに、隠すのは限界になってたのかもしれん……)
「横島クン」
ぎろり、と美神が横島を睨む。その形相に、横島は思わず一歩引いた。
「ひぃっ!? な、なんでしょう!?」
「……何か知ってるわね?」
それは、もはや「隠しても無駄よ」と言わんばかりだった。隠し通すのも限界などとゆー甘い状況は、とっくにぶっちぎりで過ぎ去っていたらしい。
(そ、そこまで鋭いんかあんたーっ!)
と心中で絶叫してみたが、考えてみれば当然かもしれない。
これはもはや正直に言うしかない。許せ八兵衛。骨は拾ってやる。
横島が覚悟を決めたその時――不意に、事務所の電話が鳴り出した。
「あ、俺が出ます!」
「あ! ちょっ……!」
あからさまな誤魔化しだが、美神が止める間もなく受話器を取る。
「はい。美神令子除霊事務所です」
『おう。小僧か。わしじゃ』
「あ……じーさん?」
電話の主は、ドクター・カオスだった。美神の視線が怖いが、どうにか無視して会話を続ける。
『九兵衛とやらの次の狙いがわかったぞ。JL東海の新幹線じゃ』
「お。さすがじゃねーか」
『当然じゃ。わしを誰じゃと思っておる。ヨーロッパの魔王ドクター・カオスじゃぞ? わしはマリアと共に、一足先に準備にかかる。小僧はJL東海から依頼が来るのを待っておれ』
「わかった。頼むぜじーさん」
『任せろ。このドクター・カオスの実力、とくと見せてやるわい。かっかっかっ!』
豪快に笑い、電話を切った。横島も、ツー、ツーと音が鳴るだけになった受話器を置く。
「……話は終わったかしら?」
すぐ傍から、冷たい霊気が吹き付けてきた。
「え……? あ……その……はい」
「私に隠れて、何か色々と手を回しているみたいねぇ……丁稚の分際で」
「えー、あのーそのー……そうでもないデスヨ? ハイ」
「この期に及んで、まだ隠し通すつもり? まあいいわ……どの道、洗いざらい吐いてもらうことだし」
「え? あの……美神さん? なんで神通棍を伸ばして……え? ちょっと、いつもより強く光ってるみたいなんですが……? あの……暴力反対! 平和的に解決しましょ!? ね? ね!?」
「あんたに拒否権はないのよ。さ、おとなしく吐きなさい♪」
「なんでそんなに楽しそうに笑うんスかーっ!?」
横島の抗議の声もむなしく、美神の神通棍が振り下ろされる――その時。
Trrrrrrr……Trrrrrrr……
再び電話が鳴り出した。美神は出鼻をくじかれ、「ちっ」と舌打ちする。
「今度は私が出るわよ。……はい、美神令子除霊事務所です」
電話を取り、途端に事務的な口調になる。
「は? JL東海……!? ……え? 首都高荒らしが!?」
美神がそうつぶやいた瞬間――その姿が、カッと光った。
一瞬で、美神は例の怪しげなマントを羽織った、ミカミマンの姿になった。
『その依頼、引き受けましょう! それで、いつ出るのだ!? どこで出るのだ!?
……ふむ、……ふむ。
では、明日の夜で! 承知しました! ではっ!』
それだけ言って電話を切る美神……もとい、ミカミマン。その表情は、普段以上に気合が入りまくっている。
『横島君……』
いつになく真剣な表情になり、彼女――いや、『彼』と言うべきか?――が振り返る。
『今まで黙っていたが……』
九兵衛の登場でもう別れが近くなったと感じたミカミマンは、自分の正体を明かすべく語りだした。
――が。
『あれ……?』
既にそこには、誰もいなかった。
事務机の上に、「詳しいことはあんたに取り憑いている韋駄天の八兵衛に聞いてください」と書かれたメモが置かれていたが……ミカミマンはその存在に気付かなかった。
横島、見事な逃げっぷりであった。
――おまけ――
「あれ? なんだべこの小包? おキヌちゃん宛てで、差出人は……げ。横島の馬鹿だか」
「どうしたのお姉ちゃん?」
郵便受けに入っていた小包を見た早苗が苦虫を噛み潰したような顔をして、その後ろからおキヌが何事かと顔を出した。
「あれ? それって……横島さんから?」
「んだ。おキヌちゃん宛てだ」
「へー。なんだろ?」
おキヌは小包を受け取った。開けて中身を確認してみるべく、そのまま自室に向かう。早苗も興味があったのか、その後に続いた。
途中、養父が電話をしているところを通りかかった。「戸籍」だの「手続き」だのという単語を耳にしたので、おそらく相手は横島夫妻で、おキヌの戸籍について話しているところなのだろう。
少し気にもなったが、それよりも小包の中身が気になる。二人はおキヌの自室に辿り着くと、がさごそと小包を開封した。
その中に入っていたのは、日本刀のような刀身をした包丁だった。
「なんだべ? 包丁?」
「これってもしかして……シメサバ丸?」
「シメサバ丸?」
「うん。とってもよく切れる包丁なの」
(そっかぁ……横島さん、ちゃんと私の愛用品、見ててくれたんだぁ……)
シメサバ丸は以前も包丁となり、最初の方こそ横島も美神も気にしていたが、すぐに日常に溶け込んで目立たなくなった。シメサバ丸が元妖刀という特殊なものであることは、おキヌ自身も忘れていたぐらいだ。
そして今回もシメサバ丸の除霊が終わり、包丁に改造して自分に贈ってくれた。なんでもないように見えるが、その小さな心遣いが、おキヌにとっては何よりも温かい。
「よしっ。お姉ちゃん、今日は私が、このシメサバ丸でお料理しますね」
せっかく贈ってもらったのだ。早速使いたいという気持ちになるのは、人情というものだろう。
「わたすも手伝っていいだか? そのシメサバ丸ってのがどれぐらい切れる包丁か、見てみたいだ」
「はい。それじゃ、お願いします♪」
そして、二人は台所に向かう。
その途中、まだ電話中だった養父の後ろを通りがかった。
通りすがりに聞こえた声に、「初孫は男の子がいい」だの「女の子がいい」だのと聞こえ、おキヌが耳まで真っ赤になったのは……ここだけの話。
――あとがき――
とゆーわけで、次回は九兵衛と決戦です。カオスとゆーゲストがどういう風に事態を引っ掻き回すかは、見てのお楽しみw さて横島は、どうやってカオスを言いくるめたんでしょうね?
ちなみに、九兵衛の動機は原作とは少し違ってますので、そこが意表を突けたらなぁと思いますw
ではレス返しー。
○ダヌさん
さすがにこのままってわけには……^^; 美神が黙っていないでしょうw
○naoさん
あのコブラはきっと二代目なんです。
○長岐栄さん
やっぱりおキヌちゃんを出したいのは私も一緒なんで……出番が少ないながらも、出しちゃいましたw ミカミマンで意表を突けたようで、悪戯が成功した悪ガキの気分です(ぇー
○kamui08さん
横島不在という時間を作ったんだから、どうせならそれを利用したいと思いました。んで、「横島がいなかったら致命的な失敗してた除霊ってあったかなー」と考えてたら、この話になったわけでw
ちなみにマガジンZは、仮面ライダーSPIRITSをコミックスで読んでるだけです……
○山の影さん
はい。九兵衛はまだ暴れてます。陰念は……まあ、絶対に報われない恋に頑張ってもらうということでw
○内海一弘さん
早乙女さんとは後で絡める予定ですよー。もちろん、お友達としてw 美神は真相を知ったら、耐えられないでしょうね^^;
○スケベビッチ・オンナスキーさん
誤字報告ありがとうございます。
陰念と雪之丞は、GSサイドに寝返るのは確定かな……? 勘九郎は……難しいかも。でも、白竜チームは全員寝返ってもらいたいですねー作者的にもw ミカミマンの行く末は、次回にご期待w
○万尾塚さん
八兵衛はどこまで行っても八兵衛でしたw 個人的には、「帰ってきたサイジョウマン」ってネーミングに惹かれるものがあったり……(マテ
○いりあすさん
おキヌマンって……その格好はもしや新○組!? 貞○ばりのロンゲカツラなカラスマン……ああ、原作のGS試験編で美神が咄嗟にかぶせたやつですか(ぇー
○亀豚さん
さて、今回で事実を話さないわけにはいかなくなった八兵衛。さあ一緒に彼の冥福を祈りましょう!(マテ
○かなりあさん
早乙女さんをどういうタイプのファイターにするかは、一応決まってます。その辺は見てのお楽しみ……になるのかな?
○秋桜さん
格好は『8』の文字が入ったマントですw 口元まで覆ってますよー。ちなみにマントの下はいつものボディコンです。
○彦さん
やはりインパクト絶大でしたかw 狙ってた甲斐があったものですw
○寝羊さん
そこまで笑っていただけるとは、光栄ですな〜w 八兵衛も、美神に憑いたのが運の尽き!?
○読石さん
さあ読石さんも一緒に八兵衛の冥福を(ry
○零式さん
勘九郎は雪之丞一筋です(マテ
小竜姫さまも美神も、ギャグ空間に引きずり込んでこそ輝くキャラだと思ってますので^^; ……ファンの人に刺されないか心配でもありますが。
○ローメンさん
八兵衛にもはや未来はないっぽいですねぇ……
○とろもろさん
ミカミレディの裏の意味……ちょっと私にはわかりかねます。すいません;; 『ミカミマンレディー』って案はありましたけどねーw まあ、さすがにデ○ルマンネタはコア過ぎかと思ったわけで。
○TAさん
実在したら……横島君は永住したがるんでしょうかね? 美神は一人でも大変だというのに、大勢となるとw 次回は壊れ表記……付くかな? その辺は、出来上がったもの次第ですね^^;
○食用人外さん
そこまで笑い転げてもらえると、仕掛けた方としては嬉しいですねw
突っ込み所が多すぎて、どこから突っ込んでいいのか判らないお方って誰のことでしょうか?
○EONさん
ミカミ星に税金はありません。あっても誰も納めないからw でもでっかい国営カジノはあるんじゃないかなー?
これにて九話終了〜。では、十話でまた会いましょう。
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