「「しょ・・・小竜姫さまああっ!!」」
いきなり門を開けた女性に抗議の声を上げる鬼門×2。
まぁ「お前なんかにこの門は開けさせんもんねー!」的な事を言った直後に内側から開けられては文句の一つも言いたくはなるだろうが・・・。
「不用意に扉を開けられては困りますと何度も申し上げておりましょう!我らにも役目というものがあるのですぞ!」
「固い事ばかり申すな!GS試験の一件以来退屈していたところです。」
小言を言う鬼門をサラリと流して小竜姫は心眼に向き直る。
どーでもいいがこの三人?はいつもこのやり取りをしているのだろうか?美神達が修行に来た時と同じ事を言っている。
「あなた、名は何といいますか?」
「私の名は・・・」
心眼はここである重大な事に気がついた。自分の名前が無いのである。
心眼と名乗ってもいいのだろうが人間の名前っぽくない。
しかし咄嗟に良い名前が思いつかなかったので正直に答えることにした。
「私は心眼です。」
「は?」
「「・・・?」」
「えっと・・・シンガンさんですか?」
心眼の発言の意味を把握しきれなかった小竜姫と鬼門達。
「・・・そうではなくて、私はあなたが横島に与えた心眼なのです。」
「はぁそうなんですか。ってそんなわけないでしょう!?私は横島さんのバンダナに竜気を吹き込んだんですよ?人間の姿をとれるはずがありません!大体心眼は雪ノ丞さんとの試合中に横島さんを庇って死んじゃったじゃないですか!」
心眼の言葉に一瞬納得しかけるがすぐに反論する小竜姫。ふーっ!ふーっ!と猫のように威嚇している。
「私も詳しい事は分かりませぬがどうやら人間に転生してしまった様なのです。」
「・・・説明してもらえますか?」
「・・・私に分かる範囲内でよろしければ。」
そして心眼は此処に至るまでの経緯を説明することになった。
主に世界中のペナントが貼り付けられた廊下の事や「転生るーむ」と書かれた横断幕の事である
「・・・な・・・何なんですかその転生法はっ!」
「え?」
「普通は前世の記憶を持ったままの転生など不可能なんです!それに何ですかっ!ペナントの廊下に横断幕!?そんなヘンテコな施設は神界どころか魔界にもありませんよ!?」
激昂する小竜姫・・・無理もない。「変な廊下の奥にあった扉を潜ったら人間になっちゃいました。テヘ♪」などどんなに柔軟な思考の持ち主でも納得などできないであろう。
「し・・・しかし実際にそうだったのですから・・・」
「大体そんなヘンな趣味の神魔族など居るわけが・・・あ。」
心眼の言い訳にも耳を貸さずに説教を続ける小竜姫だったがある考えに至ってフリーズした。
(居ました・・・神魔界最高の変わり者が・・・)
小竜姫の脳裏に浮かんだのは二人(?)の人物(?)
六枚の翼を広げた魔族と茨の冠を被った神族。
小竜姫の頭にいやに鮮明なイメージが浮かぶ。
〜イメージビジョン上映中〜
「ふぅ、これで八割は完成ですねサっちゃん。って何やってるんですか?」
「んぁ?何ってキーやん、見たら分かるやろ?ペナント貼っとんねん。」
「何でペナントなんですか?」
「ペナントは漢のロマンやで〜。せや、どうせやったら世界中のペナント貼ったろ。その方がオモロイで〜。」
「世界中って・・・、ペナントが無い国のとかはどうするんですか?」
「そんなんこっちで勝手に作ったらええやん、技術部に頼んで作ってもらおか〜。」
「はぁ、また技術部に徹夜作業をさせるんですね・・・。まぁいいでしょう、私は横断幕の作成に取り掛かりますからね。」
「キーやんこそ何で横断幕やねん。」
「横断幕は基本ですよ?」
「何の基本やねん何の・・・。」
「いいじゃないですか、私達の目的は唯一つ。(ニヤリ)」
「せやな。(ニヤリ)」
「「面白ければそれでよし!。」」
〜イメージビジョン終了〜
(あのお二方ならやりかねません・・・)
ガックリと肩を落とす小竜姫。その背中には哀愁が感じられる。
「しょ、小竜姫さま?」
「はぁ・・・もういいです・・・ではあなたは人間としての名前が無いのですか?」
何か悟ったような表情の小竜姫、吹っ切れたのか?
「そうなりますな・・・心眼では人間らしくないでしょうし。」
「そうですね・・・。では「深山景清(みやまかげきよ)」はどうでしょうか?」
「深山・・・景清ですか?」
「はい、名前は生目神社に祀られている目の神[平景清]から。苗字は・・・ちょうどここが山でしたのでそこからとってみました。」
名前の由来を説明する小竜姫だったが苗字の説明の部分で微妙に目を逸らす。
「(絶対苗字はテキトーに考えたな・・・)なるほど・・・ですが流石に神の名をそのまま使うのも何ですし、一文字変えて[影清]とさせていただきます。」
「では深山影清ですね。これからは深山さんと呼ばせていただきます。」
「な!?私にさん付けなど勿体無い!」
いきなりの小竜姫の宣言にパニくる心眼改め深山。
「はぁ〜・・・いいですか?経緯はどうあれあなたはもう私が横島さんに授けた心眼ではなく人間なんですよ?一個人としての扱いになるのは当然じゃないですか。」
「はぁ・・・まぁそう仰るのでしたら・・・。」
そのあまりの慌て様に溜息を吐きながら説教する小竜姫と渋々ながらも納得する深山・・・傍から見ていると兄妹に見えなくも無い。
ここで初めて彼の容姿について説明するが額の眼を除けば顔立ちは小竜姫によく似ている。
違いとしては深山は腰まであるほどの長髪なのと身長が180cmくらいと長身であるという点、他には角の有る無しくらいだろう。
ちなみに「兄妹」に見えるのは単純に身長差のためである。
「まったく・・・それで?妙神山に来た目的は何なのですか?まさか名前を付けて貰いたかった訳ではないでしょう?」
「実はこの額の眼の事で相談したくて・・・。」
額の第三の眼を指差す。
「あら本当、眼が三つありますね。」
今初めて気付いた小竜姫それでいいのか?人間界有数の武神よ!
「・・・もう少し驚かれるかと思っていましたが随分アッサリですな。」
予想よりも騒がれなかったので肩透かしをくらった状態の深山。
「まぁ私にはもっとスゴい友人がいますからね、三つ目くらいではたいして驚きませんよ。人間の三つ目は確かに珍しいですが前例が無かった訳ではありませんし。」
「私以外にも三つ目が居たのですか!?」
「えぇ、と言っても今の人類が繁栄する遥か以前の話らしいので人々の注目は集めてしまうでしょうね。」
「そうなのですか・・・何とか注目されない方法は無いものでしょうか?」
自分以外にも三つ目がいた事に深山は驚くが今は日常生活を送る方法を探す事を優先させる。
「そうですね・・・認識障害の術を使えばそこに眼があったとしても無い様に見せられるでしょう。」
「なるほど・・・その術を私が習得する事は可能でしょうか?」
「修行次第ではかなり効果の高い術の習得も可能ですよ?ですが・・・その修行に耐えられますか?」
鋭い視線が深山を射抜くその際に溢れ出る霊圧に深山は押し潰されそうになる。
(くっ!何という霊圧だ・・・しかしここで諦めるわけにはいかん!)
しかしそれも一瞬で気合を入れると真直ぐに小竜姫の視線を受け止める!
余程の信念があるのだろう、小竜姫もその気配を感じ取り声を漏らす。
「へぇ・・・中々の気迫ですね、それに私の霊圧を受けても立っていられるとは。・・・美神さん達は吹き飛ばされていたんですが・・・。」
その間にも深山の眼光は鋭さを増す。
(GS試験1日目の夜に横島が寝静まった頃に叫んだ「早く人間に成りた〜い」という願いがせっかく叶ったというのに三つ目では食べ歩きも温泉巡りも出来んではないかっ!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
随分と俗っぽかった
というか妖怪○間かオマエは。
「いいでしょう。私があなたに修行をつけて差し上げます。」
霊圧を解除して微笑む小竜姫・・・さっきの深山の心の叫びは聞かれなかったようだ。
聞かれていたら修行させてもらえなかったかもしれない。
「本当ですか!?」
「えぇ、さぁどうぞ中へ「「ちょ〜っと待ったぁ〜!!」」っ!何ですか!?」
いざ修行開始!と思われた矢先に入る邪魔・・・鬼門である。
「「小竜姫様!規則を無視されては困ります!事情はあれどもこの者は人間!人間をただで通したとあっては鬼門の名折れにございます!」」
「しかたないですね〜、できるだけ早くしてくださいね。」
鬼気迫る(と言っても元から鬼だが)表情の鬼門とめんどくさそうな小竜姫。
そのやり取りを黙って見ていた深山だったがあることに気付き質問しする。
「小竜姫さま?もしかして二対一ですか?」
「はい。がんばってください♪」
にこやかに答える小竜姫・・・スッゲェいい笑顔だった。
(悪気が無い分タチが悪いな・・・)
思わず後頭部に大粒の汗をかく深山だった・・・
「「さぁ!我等と手合わせ願おうか!」」
ゴゴゴゴゴ
その声と共に両脇の巨大な首なし石像が動き出す!
「では行くとするか・・・心眼改め深山影清!推して参る!!」
深山は声高らかに名乗ると同時に両手の人差し指と中指を額の眼に添える。そして・・・
「霊視力ビーム!!」
バシュウ!・・・ズガーン!
「ぎゃああああああああっ!」「み、右のぉぉぉぉぉ!」
眼からビームが出た
「もう一丁!」
バシュウ!・・・ドゴーン!
「ぐわぁぁあぁぁ!」
(は〜、ヘンな名前の技ですけどずいぶん高密度な霊波砲ですね・・・人間に転生した事で元々の能力である霊力のコントロールがさらに高まったんでしょうか・・・)
アッサリやられる鬼門達。そしてその様子を冷静に分析する小竜姫。
(何にせよこれは面白くなりそうですね・・・修行次第ではあの事件の調査にも参加してもらえるかもしれませんし。)
こうして心眼の転生後初の戦闘はわずか6秒でケリがついた。・・・ちなみに某大御所GSを抜いて新記録だったらしい。
続きますっ!
〜あとがき〜
と、言う訳で第四話をお送りさせていただきました!
今回でようやく妙神山での修行に入れます。
予想以上に時間がかかったのはやはり私の力不足ですね・・・
うまく行かずに落ち込んだりもしますが、皆様のレスに励まされてます!
これからもがんばりますので宜しくお願いします!