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▽レス始

「がんばれ、横島君!! 6ぺーじ目 (GS)」

灯月 (2006-07-23 17:32/2006-07-23 23:23)
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「待ちなさぁ〜〜〜い!! 私達と一緒に青春しましょ〜〜〜〜〜!!」

「そんな、なんの発展も進歩もない勉強だけの青春はいやぁぁぁぁぁ!!」

「ひぃぃぃぃぃぃぃ!! 横島さん、追いつかれるじゃ〜〜!!」

無限に続く廊下と階段。
愛子を筆頭に、どこか憑かれた目をした『学校』の生徒達が追いかけてくる。
この異常な空間から逃げるため、タイガーとともに当てもなくただ走り続けた。


がんばれ、横島君!!〜横島君とおかしな一日〜


その日は、なんだか朝からついていなかった。
転入生が来ると自称クラス一の情報通が騒いでいたが、俺は女の子じゃないということで全く興味はなくて。
なのに、教室に来るなり逃亡したその転入生を捕獲迎えに行けと言われるし。
教師め、変わり者は変わり者同士が一番とか抜かしやがった。
俺はまともだ!!
転入生タイガー寅吉――なんて名前だよ――は校舎裏、でかい身体を小さく丸めてうじうじしていた。
なんでも女が苦手で、当り前だがクラスメイトの半分が女の子だという事実にパニックになったらしい。
だったら共学入るなよと突っ込んでみれば、この学校に入ることを決めたのは自身ではなく雇い主だと言う。
これでも一応幻を見せる霊能力を持ち。そんなタイガーをスカウトして日本に連れてきたとある霊能力者に、こっちの生活のほとんどを世話になっている。
そんなわけで逆らえもせず。これから先女の子と一緒に過ごすなんて正気でいられる自信がないと、でかい図体で鬱陶しく嘆くタイガーに、一言。

「習うより慣れろ!!」

半ば強制的に教室に戻る最中――視界が暗転し、意識を失いました。
気が付けば見たことも無い、でも極普通の教室で。
隣で同じようにタイガーも伸びていて。
たたき起こし、俺達の様子を見守っていた知らないセーラー服姿の女の子愛子ちゃんとその他数名に事情を聞いた。
なんでもここは机妖怪の腹の中。皆、飲み込まれてここにいる。
脱出を試みるもことごとく失敗し、現在に至ると。
古株は愛子で三十六年…て、凄いな。――ここは時間が止まっているらしい。
教師はおらず、生徒のみ。やることもないのでず〜っと勉強、自習、ホームルームの日々。
俺なら間違い無く三日で暴れだすぞ。発狂するぞ。
始めのうちはそれでも静かに勉強してました。
下手に暴れて妖怪を怒らせるのも、怖かったし。
俺もタイガーもそれほど成績がいいというわけではない。
ここの連中はずっと勉強しているだけあって、頭いいし。
ずっとこんなところにいてやっぱり退屈だったんだろう。愛子が率先して教えてくれた。
それも長くは持たなかったけどな。時間の感覚が無い静かなこの空間で、延々と教科書を広げノートに向かっているとそれだけでおかしくなりそうで。
この空間に溶け込みかかっていたタイガーの頭に肘鉄一発。
保健室に行くという名目で、教室から逃げ出した。
何とかここを脱出する方法はないかと、あちこちうろついて――愛子たちにばれた。
追い掛け回されて、走り回って、逃げ回って。
ああ、もう! バイトが、ルシオラちゃんたちが待ってるのに!!
追い詰められて。それでもぎりぎりで愛子が机妖怪自身だと見破って、助かりました。
おかしいとは思ったんだよ。
どこに行こうと愛子だけは俺達の居場所を完璧に把握してたし、タイガーの幻影も効かなかったから。
特に幻影は事前に知っていた俺でさえ驚いたのに。軽くパニックになったのに。
他の連中が騒ぎまくってる中、愛子だけが平気だったもんな。
で、説得して無事帰還♪
説得内容ですか?
皆と一緒に学生生活を送りたいという愛子のために、俺が先生方に頼んで愛子を受け入れてもらおうと。
俺も愛子みたいな可愛い女の子が増えるのは嬉しいし。
なんか、タイガーも愛子には慣れたようで賛同した。
…女の子は苦手だが、嫌いじゃないだろ? お前。
戻って、校長達に言ったら即受け入れ。
早いな、オイ。
たとえ妖怪でも愛子の外見はかわいい女の子で、性格も典型的な優等生。
教師の求める理想の生徒!
俺が愛子にアドバイスしたしおらしい演技&セリフも役に立ったしな!
愛子もクラスメイトもすぐに打ち解けて、教師達も無駄に愛子に構って。
仲良くなるのはいいんだが。
何でタイガーが俺の後ろで、愛子が隣なんだ?
「丁度いいから、一まとめにしてみた!」とか言うな、いい笑顔で! こら、担任!!
これからも鬱陶しいタイガーとまじめゆえ口うるさい愛子に囲まれて過ごすと考えただけで、脱力する。


そんなこんなで、学校が終わって。
バイトに向かう帰り道。
前方から真っ黒な何かが「キィキィ!」と鳴きながら駆けてきた。

「キキィ〜!!」

「うわ!?」

勢いのまま俺の足にしがみついき、救いを求めるように見上げてくるそいつは真っ黒な体毛に覆われた見たことも無い生き物。
中型犬より少し大きい体。蝙蝠みたいな羽に鋭い爪の生えたの四肢。口からは牙がのぞいている。
犬とも猫といえない顔つきだが幼い印象。
多分まだ子供だ、こいつ。
なんとなくそう思って、そいつの頭を撫でてやる。

「どうした、お前? どこから来たんだ?」

怯えているのか甲高く鳴いたまま離れようとはしない。
仕方ないので俺の足をぎゅうと締め付ける前足を解いて抱き上げようとしたら、

「あ〜、見付けましたぁ!」

女の子の声。
あ、しがみつく力が強くなった。
声の方に目をやると――女の子が浮いてました。
しかも巫女さんですよ? 片手に日本刀持ってますよ?
え? 俺そんなマニアックな趣味してたっけ?
いやいや。目をこすって、頭を振って。
現実です。どこかで見たことないか、この子?
俺が呆然としていると、彼女は申し訳なさそうに俺の足元を指した。

「あの〜、その子返してもらえませんかぁ〜?」

困ったように眉をよせ、浮いているのに上目遣い。
素直にこの黒い生き物を渡してやりたくなるほどだ。その手に持った刀されなければ。
怯えるそいつを抱き上げ、宥め。

「ええ〜と。君は?」

「あ。私はおキヌといいます。幽霊です」

「ゆーれい?」

「はい!」

うわ、笑顔で。
確かに浮いてるし、向こう側が透けてるし。
本物だろうけど。なんか凄く明るいなぁ、この子。
聞けば彼女はとある温泉地で自縛霊になっていたのだが、通りがかった親切な霊能力者に開放してもらいさらに現在はその霊能力者に雇われているという。
暫く前の仕事で捕獲したグレムリンが、しかるべき施設に引き取ってもらう前に逃亡してしまったので探しにきたらしい。
2人と一匹、美神さんの事務所に向かいながらの世間話。

「へー、凄いねぇ」

「はい! お給料ももらってるんですよ。なんと日給さんじゅーえんです!!」

さんじゅーえん? 三十円!?
そんな誇らしげな笑顔で言わないで…。こっちの胸が痛くなる。
おキヌちゃん、わかってないんだろーなぁ。

「で、お金がたまったら成仏させてくれるって。いい人ですよね、美神さん」

「えぇ〜と、そうだねぇ…」

それは単に超低賃金で便利に使えるお手伝いさんとかそんなんじゃ…。
俺の腕にしがみついてるグレムリンもキィ〜とため息。

「あのさ、それでその刀は? なんだか嫌な念が飛んでくるだけど?」

おキヌちゃんの手にした日本刀。ず〜っと変な念波?を飛ばしてきている。
手にしろだの、斬りたいだの。物騒すぎるぞ。

「これはですねぇ、よーとうシメサバ丸です! グレムリンを捕まえるのに私一人じゃ大変だろうからって美神さんがわざわざ貸してくれたんですよ! 本当は除霊の予定があったんですけど、それを延期させて」

違う! それ絶対優しさとか親切心とかじゃない。
オカルト施設に引き取って貰うのもお金かかるみたいだし。グレムリンの悪戯はひどいみたいだし。
だいたい本当に捕まえたいなら、来るよな? 美神さんも本人も。
おキヌちゃんの話しか判断材料ないけど、グレムリンを亡き者にしようと企んでるんじゃ?
あくまで俺の予測でしかないけどさ。
……怖い人だな、美神さん!! グレムリンが逃げた気持ちもわかる。

「ここが事務所です〜」

辿り着いたのはどこからどー見ても極普通の雑居ビル。
窓に「美神除霊事務所」と書かれているだけで、どこも変わった様子もなく。背景に溶け込むような。

「ここ?」

「はい!」

とりあえずビルのロビー。嫌がるグレムリンをおキヌちゃんに渡して帰ることに。
「お礼にお茶でも」と誘ってくれたおキヌちゃんを振り切るのは辛かったし、グレムリンのことも心配だし。美神さんにも会ってみたかったが。
会ったが最後、全てを絞り取られそうな気がしたのでやめた。
そして、外に出てみればそこには一人の美女!
褐色の肌に鋭い瞳。細い腰、形の良い胸。ワイルドな魅力漂うオネーサマ!!
おおう! 今日はいい日だ!!
美女は値踏みするような視線で俺を捕らえて、聞いてきた。

「おたく、この事務所の関係者なわけ?」

この事務所って言うと、美神さんのとこか――

「いいえ、違います」

きっぱりと。考えるより先に否定していた。
俺の答えに美女はつまらなそうに頷くと、

「なら、用はないわけ」

さっさと俺に背を向けてビルの中へと入っていった。
嘘でも肯定していれば、あのオネーサマとお知り合いになれたかもしれんが。そうすると美神さんとも関わり合いになるということで。
そうなったら取り返しがつかない事態に陥るような。
本能的な部分で身の危険を感じ取り、即座に反応していたのだが。
雑居ビルを後にしつつ、もったいなかったかな?と少しばかり後悔中。
今日は妙に人と出会うなーと思いつつ、帰路を急げばいくつ目かの曲がり角でうろうろしている挙動不信なじーさん発見。
真っ黒いマントを羽織った背の高い。明らかに日本人とは違う顔つき。
あっちへ行ったりこっちへ行ったり。道に迷っているようだ。
見て見ぬ振りをしようかと思ったが、うっかり声をかけていた。

「あのー。どうしましたか?」

「む? なんじゃ、小僧?」

その口から漏れた流暢な日本語に軽い驚きを覚えつつ、聞いてみた。

「なんか困ってるみたいだったから。え〜と、道にでも迷ったんスか?」

「ふ、このヨーロッパの魔王ドクター・カオスが道に迷うなど、笑止! そんな間抜けな真似をするわけがなかろう!
ただ少しばかり、進行方向と目的地が一致しとらんだけじゃ!!」

それを道に迷ったというんだ、じーさん。

「あー、この辺のことなら大体わかりますから。目的地の地図か何かありますか?」

「むぅ、普段ならこんなことはないんじゃが。マリアは今充電中だしのぉ。
…おお、これじゃ。ほれ」

ぶつぶつ呟きながらも差し出されたのは精密な手書きの地図。
筆記体のローマ字で随所に細かく建物の名前なんかが記されている。
かろうじて読めるが。達筆だなぁ。
目的地はおそらく赤く塗り潰された箇所。
あれ? ここは――。

「ここ、このアパートっスか?」

「そうじゃ。わかるか? 小僧」

このアパートは知っている。一人暮らし用の住まいとして候補に上がっていた場所だ。
没になったけど。

「このアパートなら、ここから近いっスよ。
あの角を曲がって次の信号を……」

「すまんな、小僧! おかげで助かったわい。何か礼でも――そうじゃ! これをやろう!」

そう言って黒マントの中から取り出したのは、壺。
なにやら怪しげというか、おかしな空気を発する。あんまりセンスの感じられない古めかしいそれを手渡たされ。

「本来ならわしの実験に使おうと思っとったんじゃが。
わしほどの天才になればそんなものなど、いくらでも代わりを見つけられるからのぅ!」

カッカッカと明るく笑うと、じーさんは去って行き。
俺の手には善意により押し付けられた壺一つ。

「……帰ろう」


「おにーちゃあん! おかりなちゃいでちゅ〜」

「おにーちゃん、おかえりー」

「おかえりなさーい」

「ただいまー」

いつものように三姉妹に迎えられ。いつものように笑顔で返す。

「あー、おにーちゃん、それなんでちゅかぁ?」

脇に抱えた壺を見付けたのはパピリオちゃん。
ぐいぐいと服を引っ張り「なぁに、なぁに?」と聞いてくる。

「ちょっと待ってね、パピリオちゃん」

ルシオラちゃんもベスパちゃんも興津々でじぃ〜っと見つめているし。
危険がないかどうか確かめないと、子供たちには渡せない。

「こらこら。駄目だぞ、パピリオ。横島君が困っているではないか」

「あう〜、パパぁ〜」

ひょいと後ろからパピリオちゃんを抱き上げたのは、アシュタロスさん。

「あ、帰ってたんスか?」

「ああ、今日はわりと早く仕事が片付いて。
それより横島君、面白いものを持っているね」

指したのは、俺が脇に抱えた壺で。

「これが何か知ってるんですか?」

「もちろんだとも。私は魔神だよ? それがなんなのか食事の後にでも教えてあげよう」

「あ、はい。さ、先にご飯にしようねー」

「「「はぁ〜い」」」

子供たちの素直な返事。
とりあえず、ハニワ兵たちとご飯の支度だ。

晩ご飯は皆大好きオムライスでした。
パピリオちゃん、だからケチャップはお兄ちゃんがかけるって言ったよね。
かわりに叱ってくれたルシオラちゃん、布巾を取ってきてくれたベスパちゃんありがとう。
写真を撮らんでいい、そこの馬鹿親父。


「で、なんすか? これ」

食事も終わってくつろぎタイム。
リビングのテーブルにはあの壺が鎮座している。

「これは精霊の壺といってね。ランプの精は知っているだろう? あれの類似品だと思ってくれればいい。
どんなものなのかは――開けてからのお楽しみだ」

悪戯っぽく笑うと、そのまま軽く栓を抜き。
とたん、勢いよく壺の中から煙があふれ出す! そして煙の中から大きな人影!!

『ボハーッハハハハハハハ! 我こそはイフリー…げほごほっ!!』

派手に咳き込んだ。
だからどうしたというものでもないらしい。
おとぎ話とかでことあるごとに出てくるあの煙は、むせるようなもんだったんか。
気を取り直して、壺から出てきたそいつはイフリートと名乗った。
一人につき、願いを三つ叶えてくれると言うが。
アシュタロスさん曰く、たいていこういったものは何か悪さをしてその償いのために決められた人数の願いを叶えなければならないらしい。
手っ取り早くノルマをこなすために、願いの内容をわざと曲解する場合が多いと。
姑息やなぁ。だから封印なんてされるんだよ。

『余計なことは言うな! と、とにかく早く願いを言え! 何でも三つだけ叶えてやるぞ!!』

一瞬詰まったってことは、事実だろ。そして胸毛に溢れた胸を張るな。気持ち悪い。

「あ〜、じゃあじゃあ〜パピィオちゃんはぁ〜……」

『む、お前人間ではないな? 人間以外の願いは叶え』

「られない――などと言うことは、もちろんないだろうね?」

意気込んだパピリオちゃんの言葉をさえぎったイフリートの言葉。それをさらにさえぎったのは背後から肩を掴んだアシュタロスさん。
ぎちぎちと、骨と肉からなる不吉な音が俺の耳にも響いてくる。

『はいぃぃぃ! もちろん、喜んで叶えさせていただきますっ!!』

あ、屈した。

「パピィオちゃんはおかしがいっぱい食べたいでちゅ〜!!」

「ルシオラはねぇ、あたらしいこーぐセットがほしーの!」

「…パパといっしょにお出かけしたい」

気を取り直して子供たちの願い事。
微笑ましいそれらにイフリートが反応を返すよりも早く、アシュタロスさんが動いた。

「ああ! お菓子ぐらい好きなだけ買ってあげよう!! 工具は特注のブランド品でいいか、ルシオラ!? お出かけ!? 行こう! どこへでも、どこまでも!! お前たちが望むならなんだって叶えよう、私のかわいい娘たちぃ〜!!」

これでもかというほどきつく子供たちを抱きしめ、ぐりぐり頬擦りしまくる馬鹿親。
それを眺め、イフリートが疲れたように呟いた。

『わし、ここにいる意味――あるのか?』

「ないんじゃないか」

『故郷にはわしの帰りを待つ妻と子が……』

しくしくしくしく泣き出した。うわ、うざ!
願い事、俺もあるにはあるんだが。内容があれだから。
さすがに美人のねーちゃんが欲しいとは、子供の前では言えん。
それ以外は…特にないな。
金にも困ってないし、生活にも不満は特にないしなぁ。
でも、このままこいつに居つかれても困るし。
そんなことを延々考えていると、アシュタロスさんのすりすり攻撃から逃れてきたパピリオちゃんがとてとてとイフリートに駆けてくる。
煙に溶けたひざを抱えて座り込んでいたイフリートの顔を覗き込み。

「おねがい、もーひとちゅきーてくれまちゅかぁ?」

ちょこんと小首を傾げてのそのセリフ。

『ん? いいだろう、何だ?』

「えっとでちゅねぇ。パピィオちゃんねぇ、パピィオちゃんねぇ……」

なぜかもじもじと言いよどみ。恥ずかしそうに、でも嬉しそうに言った。

「ママがほしーでちゅ!」

うわぁ。難しいことを。
どうするのかとイフリートの方を窺えば、案の定固まってしまっている。
助けを求める視線は無視。
イフリートが頭を抱えて唸っているところにアシュタロスさん登場! ルシオラちゃんたちにすりすりしてたんじゃないのか?
ぎゅぎゅ〜とパピリオちゃんを抱き上げて、感極まった様子で天仰ぐ。

「嗚呼! すまないパピリオ、寂しい思いをさせていたのだな!! 気付いてやれなくと本当にすまない!!
そうだな、やはり子には母親も必要だ!! 片親だけでは子供の情操教育にも偏りがでよう!! 心身ともに健全な子供に育つには両親がそろって、そして正しく導いてやらねばならない!!」

熱く熱く語るアシュタロスさんは言うだけ言うと、いきなりぐるりとイフリートに向き直り、

「と、言うわけでそこのランプの精もどき! 今すぐ願いを叶えたまえ!!
子供たちに相応しい母親をゼロから用意するのは骨が折れる。だからそこにいる横島君を女性に変えるんだ! なに、記憶は後で私が操作するから問題はない!!」

『そう言うことなら…その願い叶えよう。
性別を変える程度、朝飯前だ!!』

爽やかに言い切ってくれるアシュタロスさんと、俺の人権無視してあっさり頷くイフリート。

ぷっちりと。

俺の中で何かが切れた。
次の瞬間、俺に向かって手をかざすイフリートが――吹き飛んだ。
描く曲線は芸術的。
そのまま壁にめり込み、ぴくりとも動かないイフリートは放置。
ゆぅらりという擬音がつきそうな動作で、真っ青になっているアシュタロスさんに歩み寄りぽきぽきと指を鳴らす。

「駄目じゃないですか、アシュタロスさん。人権侵害は犯罪ですよ?」

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!? すす、すまない横島君! つい、テンションがあがって…。って、嗚呼!? こら、ハニワ兵! なぜ子供たちを避難させる!? そしてなぜ横島君に硬くて鋭くて人体にとって有害なものが植え付けられた見るからに凶悪そうなバッドを手渡すんだぁぁぁ!!?」

「素手だと手が痛いからです!!」

えええぇぇぇぇぇぇぇ!!?? 私の痛みは!? 人権は!? ちょ、待ってくれ! 暴力反対、ドメスティックバイオレンスは…げぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


その後、いろいろ話し合った結果。
イフリートへの願い事はアシュタロスさんのコレクションである子供たちの写真の整理のお手伝い、となった。
それが終わればアシュタロスさんが封印を解いて、故郷へ帰してくれるらしい。
でもなぁ、写真一枚につき最低三十分は思い出を語るし。それに十冊以上あるはずだし、アルバム。
……終わる前に死ぬなよ、イフリート。
差し入れくらいは持ってってやろう、うん。


世の中、色んな人がいるもんだと実感しました。


続く


後書きと言う名の言い訳

イフリートの登場する原作二巻が見付からなかったりPCがやばくなったり、微妙なテンションで書いたせいで微妙な内容に…。
もっと簡潔かつ的確な表現ができるよう、がんばります。
アシュ様の特技、墓穴堀り。決定。
次回はいよいよ横島君霊能覚醒です!(でも、たいしたもんでは…)
ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございます!!

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