「さぁーーーーーて!! 今日も一日よろしくお願いしまっす! 小竜姫様!」
小竜姫が朝の身支度を終えて鍛錬場へと出ると、そこには既に横島とパピリオの姿があった。
横島は彼女の姿を見つけるや否や、毎度の如く「今日もまた一段とお美しいです小竜姫様ぁぁぁーー!」と叫んで飛び掛ってきたが、パピリオが余所見しながら放った霊波砲に呑み込まれ、光の中に消えて逝きました。
当然のように復活した横島は、冒頭のような元気な挨拶をしてきたのである。
「今朝は気分も優れているようですね、横島さん」
「そりゃもう! うじうじすんのは美神流じゃないっすから! スランプなんざぺぺぺのぺいっと放り出して、悪霊退治で小銭稼ぎの毎日を復活させるんすよ!」
うりゃあー、っと拳を天に突き上げているのを、横でパピリオも真似してみたり。なんだか精神年齢が下がったような気がするが、微笑ましいので小竜姫は無言。
「では、朝食の前に軽く昨日の復習をしましょうか。中途半端に終わってしまいましたからね」
「お願いします!」
「はい。こちらこそよろしくお願いしますね」
そんな横島とパピリオの様子に。
小竜姫は、昨夜の判断が間違っていなかったことを笑みと共に確信していた。
スランプ・スランプ!3 「無形の極」(後編)
「必殺技、ですか?」
朝食前の軽い運動と、一汁三菜の簡素な朝食を終えて。
再び鍛錬場で相対した横島と小竜姫は、最近、横島がずっと考えていた話題について話していた。横島の背中にはパピリオもぶら下がってます。
「小竜姫様の剣術には無いんですか? こう、かっこいい決め技みたいな…」
「決め技ですか…? はぁ…うーん…ありませんねぇ」
「こう、相手を超霊力竜巻で拘束して、そこに回転しながら突っ込むとか」
「それのどこに剣術の要素が…? というか超霊力って何ですか?」
「じゃあ、神剣で相手をVの字に切り裂いたり…」
「Vの意味を教えてください」
「多分ビクトリーですが、敢えて地雷を踏むならヴァージ「仏罰覿面!!」ぐふぁっ!」
「せくはら発言はともかく。横島さんの考える必殺技というのは、読んで字の如くのもののようですね」
ふむ、と小竜姫は考える。
「決まれば勝敗を決するほどに、強力な一撃ですか…私の場合、超加速はそれに近いかも知れませんね」
停止寸前にまで減速した時間の流れの中で、自身のみが普通に動ける状況。それは確かに必殺の機会を無限に持てるということだ。
「しかし、外せば霊力の枯渇は免れませんし。諸刃の剣ですよ? そういったリスクも含んでいてよろしいのですか?」
「俺的には、あんまりリスクの無いほうが…痛いのヤですし」
だくだくと流血しながら、横島。説得力があるんだかないんだか分かりません。
「…つまり、1の力で10の結果を生むような、そんな技ですか」
「あ、分かりやすいっすねそれ」
「そうですね。しかし、そんなもの、勝敗を決するような場面で都合よく出せると思いますか?」
あちゃあ、と横島は舌を出す。
「やっぱ、都合良過ぎですよねぇ…」
「そもそもですね。10の力で10の結果を生むことすら、通常は難しいのですよ? そのための武術であり、剣術なのですから」
無駄なく全身に力を伝える難しさは、多少武道やスポーツを齧った者なら容易に理解できるだろう。
「昨日も言いましたが」
そう言って神剣を構える小竜姫。スッと伸びた背筋に、些かも揺れない神剣の切っ先。横島も試しに霊波刀を出して構えてみるが、鼻で笑えるほど無様である。
「剣術の極意とは、心剣体の一致にあります。三種のどれが欠けても極みとは言えず、一つを極めても高みには程遠い。技とは三種一致のための助けに過ぎず、術とは更に足らぬ部分を補うものでしかありません」
「分かりまちゅか、ヨコチマ……」
「ふ、パピリオ、日本語は世界で一番難しい言語と言われてんだ。分からなくても気に病むことはない!」
「さすがヨコチマでちゅ!」
「日本人が言う台詞ですかっ!!!」
げいんげいん、とお姉さんの拳骨が2発振舞われたところで。
正座した横島の右手がシタ、と挙げられる。
「質問です、小竜姫せんせー」
「先生? …そこはかとなく、憧れる響きですね…何でしょうか」
「なんとなく、ですけど…その、三種の一致ってのは、今の俺には聞き捨てならん感じがするんですが」
あら、と小竜姫は微笑む。
「流石ですね、自ら気付くとは。そうです、これは、剣に限ったことではありません。全ての武術に通じる教えでもあります。特に、人間であるあなたには関係が深いですね」
剣、という要素は所謂『武器』である。得物、という表現が示す通り通常は外から『得る物』だ。その点、神・魔族は得る必要のない場合が多い。生まれつき身体に武器を得ていることが多いからだ。曰く強靭な爪、牙。曰く翼、剛力など。単純な霊力量の差も、人から見れば十分な脅威であり暴力なのだから。
しかし、人間だけは武器を持って生まれて来ない。神魔に比べ、誕生した瞬間の脆弱さといったら比べ物にならないものだ。
「人間は生まれてきても、その身に明確な方向性を抱えてはいません。逆に言えば、可能性の塊として生まれてくるのです。神魔族との決定的な差異ですよ、それは」
小竜姫はぽかんとしている横島を見る。この人は分かっているのだろうか?
自分が、人間であることの素晴らしさを。
その身に抱く可能性が、ここまで育ってなお殻を破っていない奇跡を。
弱い、と自覚してなお強くなりたい、と思う心の尊さを。
「横島さんは、おそらく…心・剣・体を全て等しく育ててきたのだと思います。どれかに突出することなく、何かに溺れることもなく」
「いや、そりゃあ買い被りすぎってもんですよ…んな上等なはずありませんよ、俺なんかが…俺がそんなんだったら、あの時だって…守れたはずなんスよ」
横島は当然のように…自嘲する。当然のように、己を卑下する。
…その台詞は、彼女にとっては最大の禁句。
認められ、祝福された筈の事実を、自ら捻じ曲げるような発言を。
パピリオは許せなかった。
「ヨコチマぁ!!」
甲高い怒声と共に、横島の頬を凄まじい衝撃が襲い、彼は宙に舞った。
「おおおおお!? 世界が回転しているぅぅぅ!?」
激しく横回転しながらも、横島は滅多に拝めない視界を堪能。石畳を削りながら着地するまでそれは続いた。
しゅうしゅうと土煙の上がる向こうには、ビンタした右腕に霊気の残滓を纏わせたままの、パピリオの姿がある。
「な、何すんだパピリオ!? 遠心力でいろいろ飛び出すかと…!」
「馬鹿ヨコチマ! どーしてそんなに自分を卑しめるんでちゅか!!」
パピリオは今にももう一撃繰り出しそうだ。
「実際そうなんだからしょうがなかろうっ!? お前も見ただろうが! 『あの』事件のときの、俺の情けない姿をよ!?」
「黙るでちゅ! 今のヨコチマを侮辱するってことは、ルシオラちゃんを侮辱するのと同じことでちゅ!! それがヨコチマ自身の言葉だとしても、わたちは許ちまちぇん!!」
絶句する横島目がけ、パピリオは渾身の霊波砲を放とうと構える。両目に涙を溢れさせ、奥歯を噛み締めて。
「ヨコチマを選んだルシオラちゃんの気持ちを、ヨコチマは否定ちた!! 弱いとか守れないとかを言い訳に、ルシオラちゃんに選ばれたことすら、お前は否定しようとしてるんでちゅ!!」
霊波砲が、あさっての方向に放たれて消えた。
「んだと!? 俺が、俺が…!? あいつを、あいつの意志を駄目にしてるって言うのかパピリオッ!!!!」
サイキックソーサーが数枚、鍛錬場の石床に突き刺さった。
「ふざけんじゃないでちゅよ!! ヨコチマは強いし優しいしあったかいじゃないでちゅか!! ルシオラちゃんが惚れた理由はヨコチマの霊能力が凄かったからじゃないでちゅよ!? どんなときでもヨコチマがヨコチマらしくいたからこそ、ルシオラちゃんは好きになったんでちゅ!!」
空中で霊波砲とソーサーが衝突し、爆音を上げる。パピリオの両掌には絶え間なく霊波が集束され、横島はとうとう文珠を数個取り出して構えた。
「勝手なこと言ってんじゃねぇ!! 結局弱かったからこそ俺はあいつを救えなかったんだよ! いつまで経ってもあん時の俺のままじゃ、またあいつみたいな娘を生むかもしれねぇんだ!!」
「あー…あの」
おずおずと、蚊帳の外の小竜姫は声をかけるが。
「勝手なのはどいつでちゅか!! ヨコチマが思ってるような方向に変わっちゃったら、ルシオラちゃんは悲しみまちゅよ! 馬鹿ヨコチマって言って、他の男のところに行っちゃうでちゅよっ!!」
「んだとぉーーーー!!?? アレは俺んだ!! 誰にも渡さねぇぞこらぁぁぁ!!」
「ヨコチマよりかっこ良くてお金持ちで甲斐性あって、ついでにアッチの性能も段違いな『ザ・漢!』みたいな野郎に惚れて、心身とろとろにされちゃうんでちゅよきっと!!」
「俺というものがありながら『ザ・漢!』!? ルシオラぁぁぁーーーーっ!! かんばーーーーーーーーーーーーーーっく!!!!」
どんどん方向がずれていく喧嘩。
小竜姫は神剣に手をかけそうになって、止めた。
「…兄妹げんか、ですか…滅多に会えないのですから、存分にやるのも一興ですよね…」
休憩にお茶でも入れてきましょうか、と思ったところに。
「騒々しいと思うたら…小僧、お前か」
「あ、老師様…」
人民服に身を包み、首の後ろのほうをコリコリと掻きながら現れたのは、斉天大聖その人…その猿であった。
「パピリオも一緒になって何をやっとる。…おうおう、霊波砲の集束率が高いの。小僧相手だからかのー」
「嬉しいんですよ、パピリオも。お兄ちゃんが来てくれて」
「お主だってお姉ちゃんではないか」
「え!?」
「ほれ、いいからさっさと仲裁してこんか。長女の仕事じゃろうが、こういうのは」
どしんと背中を押されて、小竜姫はたたらを踏んだ。
「お姉ちゃん、か…」
霊波渦巻く(主にパピリオの)鍛錬場に向かいながら、その響きに胸を暖かくする。
「きょうだい…なんだか照れますね…」
家族の暖かさというもの。小竜姫も知らないわけではなかったが…もう何百年も昔の遠い記憶にしかない事柄だ。兄弟姉妹もいないので、神族の『カタチ』が命ずるまま、実直に、盲目的に今まで生きてきた。
「お姉ちゃん、って呼ばれてみたいなぁ…なんて、贅沢でしょうか…」
「きっと年収なんてヨコチマの軽く数十倍でちゅよ! IT企業の若社長でちゅよ!」
「ぬぁぁああああああ!! ヒルズ族か!? ヒルズ族なんやなぁあああ!!」
「お姉ちゃん、一緒にお風呂入ろう? とか…これは…!」
「身長だって頭一つ分は高いんでちゅよ! ルシオラちゃんは爪先立ちでそいつの唇にちゅっと…」
「やめろぉおおおおおおおおお!! どうせ俺はヒール履いたあいつより背ぇ低いんじゃああああああああああ!!」
「姉妹で町に買い物に出かけて…可愛い系より綺麗系がいい、とか言い合って…」
「外車でちゅよ外車! 全世界で400台限定生産のフェラーリとか!」
「外資企業は敵じゃあああああああああ!!! ト〇タブランドは世界一ィィィィィッ!!!!」
と。
「あれ?」
小竜姫が不意に頭を上げると。
左から、あり得ない数の霊波砲の雨。
右からは、『爆』の文珠が三つほど。
「あれぇーーーーーーーーーー????」
妄想に耽っているうちに、戦場に足を踏み入れてしまったようです。小竜姫。
「しょ、小竜姫様が緩衝地帯に!!??」
「ちょ、ヨコチマなんとかするでちゅよーーっ!?」
クラスター爆弾による爆撃のような轟音が、妙神山修行場を襲うのであった。
「…全く。小僧が来て二日目でこれか。早々に追い返すのがよかろうな」
いち早く避難し、縁側で煎餅を齧っていた猿は、きのこ雲を吹き上げる鍛錬場を見て呟いていた。
「というわけで、小僧。もう帰れ」
「酷くね!?」
腐っても武神、小竜姫。自身を襲う致死的状況からも、超加速という必殺技でもって脱出に成功しました。
が、斉天大聖にキセルで頭をはたかれ、今は横島パピリオと並んで正座中。
「俺、まだなんも修行してへんぞ!? おいコラ猿!?」
「何を言っとる。今の貴様に中途半端な修行をつけたところで、却っておかしなクセが残るだけじゃ。心剣体の一致を忘れたのか」
「だから、それが…」
「小僧。貴様はな、人という可能性の原形を保った、稀有な存在じゃ。そして今は非常に繊細な時期でもある。今、この時点で神魔の介入を受けたらお前はその魅力を失ってしまう。自重するがよい」
斉天大聖の言葉は、意外なところを突いてきた。
「小僧のその、神も魔も人も妖怪も平等に見る視点。文珠という汎用性に優れた霊能の発現。栄光の手と名づけられた、変幻自在の霊力…ヒトの力の可能性をまざまざと見せ付けられているようで、少々面映いんじゃがな。ともかく、これ以上…いや、これ以外の力など小僧には必要ない!」
猿は断言した。横島は、何を言われているのかいまいち理解できていないようだが。
「老師。それはもしや…」
いまだじんじんと鈍痛を訴える頭頂部を抑えながら、小竜姫は何かに気づいた。斉天大聖の言わんとする内容の奇跡を。
「へ…? 俺、結局登り損…?」
修行らしい修行を受ける前に、お猿の老師に最後通告を突きつけられた横島。おキヌに大見得を切って出てきただけに、成果ゼロは余りに…
「美神さんに殺されるかもー…あっはっはっはっは…」
「アレから守る自信は…正直ないでちゅね…」
「横島さん。聞いてください」
乾いた笑顔に滝のような涙を流し続ける青年に、小竜姫は真面目な声をかける。
「あなたは、必殺技に拘っていたようですが…本来、技とは術と共にあるもの。横島さんの場合、基となる『かたち』がないだけに、『技という術』を得ることは難しいと思います」
「くあ、やっぱり無駄骨…?」
「お聞きなさい、ならどうすればいいか。簡単です。技なんて、今の横島さんには必要ないってことです。技に頼らず、術を使わず」
「ならどうすりゃ…」
小竜姫は、そこで過去最高の笑顔を浮かべて言い切った。
「運と偶然と奇跡を使うのです」
「……………………………………………………………………はい?」
「あなたの強さとは、想像不能であり奇妙奇天烈、千変万化。技も術も、この際捨ててしまいなさい。横島さんが今より強くなるには、それしか方法はありません」
「霊波刀でも栄光の手でも文珠でも敵わんというなら、鉄パイプでも他人のもんでも何でも使えばええ。金でも権力でも数の暴力でもな。ただし、小僧が敵と認めた相手にのみ行使せいよ。それで十分じゃ」
「あー…………つまり、あれでしょーか。俺ってこれ以上の霊的成長は見込めないってことでは…………?」
「「………………………………………」」
沈黙は、金。
耐え切れなくなった横島は。
「ちくしょぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!! 何も変わらんのやないかぁぁぁーーーーーーーーーーっ!! 俺の決意とか俺の悲壮感とか強くなりてぇと思った二枚目的な気持ちとか全部返せぇぇーーーーーーーーーーーーーっ!! やり直しを要求するぅぅぅーーーーーーーーーーーーっ!!」
「あ、ヨコチマ! 今度はいつ来てくれるんでちゅか!?」
神速でリュックを背負い、下山準備を整えて駆け出そうとした横島をパピリオはあわてて呼び止める。だばだばだばと涙を流したまま横島はパピリオの頭を撫で、
「美神さんに殺されてなかったら、またすぐに会いにきてやるよ…」
死地に赴く戦士の表情で、そう言った。なんだか劇画調。
「お世話になりましたこんちくしょおぉぉぉーっ!!」と叫びながら、今度こそ横島は去っていった。涙の跡が門へと続いている。
「行ってしまいましたね…」
「うん…」
寂しげに門のほうを見つめるパピリオの肩に両手を置き、小竜姫はしみじみと呟いた。全く、彼がいると退屈しない。
「またすぐに来てくれますよ。それまで、きちんと待っていられますか? パピリオ」
「もちろんでちゅ! 今度こそ子供扱いはさせまちぇんよ!」
仲の良い姉妹のような二人は、顔を見合わせて笑みを浮かべるのだった。
「くっくっく。全く、あの小僧は面白いのう。ワシらの言ったことの意味をきちんと理解できたのか知らんが…あ奴、このまま成長すれば化けるぞ。『無形の極』へと。森羅万象悉く彼の僕、か。全く全く、これだから人間は面白い…!」
一人、ゲーム部屋へと向かう斉天大聖の言葉の意味を知るものは、この場にはいなかった。
と、妙神山登山道をぶっちぎりで駆け下りていた横島。
あることに気づいて、立ち止まっていた。
「…運と偶然と奇跡に恵まれてて…技とか術なんかもぶっとんでて…使えるもの全部使って敵と決めたものに挑んでいく…」
なんだか、そうやって纏めると。
「それって……………………………………………美神さんやないか」
丁稚の青年は改めて、雇い主に強烈な戦慄を覚えるのであった。
おまけ。
「…………………」
「ん、どうしたのです? パピリオ」
「あ、えとでちゅね…えっと……………」
「言いづらいことですか? おねしょでもしました?」
「違いまちゅよ! えっと…ね」
「………?」
「…………………ちゃん」
「え?」
「お姉ちゃん、って呼んでもいいでちゅか? 小竜姫のこと………」
「!……………………私を、お姉ちゃんと呼んでくれるのですか…?」
「小竜姫がよければ、でちゅけど…なんとなく、今日の小竜姫を見てたら、そう思ったんでちゅ」
「パピリオ………嬉しいです。ルシオラさんや、ベスパさんに恥じないお姉さんになれるよう、精進しますね…」
「うん! …小竜お姉ちゃん」
「なんだかくすぐったいですね。嬉しいのに」
「パピの姉として、まっすぐ生きるのでちゅよ! ヨコチマともこれで兄妹でちゅから!」
「え、私、妹? あら、そうですか。…今度会うときが楽しみですね」
「うん!」
「それじゃあ、鍛錬場の片付けが終わったら一緒にお風呂に入りましょうか」
「うん!」
「その後は一緒にお勉強して、ご飯を食べて、この際ですから今晩は一緒に寝ましょうね」
「そういえば初めてでちゅね。一緒に寝るのは」
「それから、パピリオの謹慎処分が解けたら下界に一緒に買い物に行って、今の流行の服なんかを物色して、ああ、それから念願のぱじゃまぱーてぃですね! 美神さんやおキヌさん達と皆さんで一つ屋根の下、俗世の話題で盛り上がるのです!」
「小竜お姉ちゃん……?」
「ああ…夢は膨らみます。姉妹で写真も撮りましょう。でじゃぶーらんどにも行きましょう。ああこの際ですから天龍童子様も弟にしてしまいましょうか。ああ、ベスパさんも妹になるのですね! あのヒトは意外とごすろり系の洋服が似合うと思うのですけれど、パピリオはどう思いますか? ふわふわの服を着せたベスパさんとパピリオを両手に抱えて…ああ…!」
「さ、猿じいちゃん!! 小竜姫が壊れちゃったでちゅよ!? 遠くに何か見えてるっぽいでちゅよ!? ある意味逆鱗に触れた!?」
妙神山修行場は、国内最高峰の霊能修行場である。
…修行に訪れた人は、鬼門に負けたほうがある意味、幸せかもしれない。
………見なくていいものが、中にはありますから。
おわり
後書き
吶喊はとっかんと読むのですね。竜の庵です。
横島修行しませんでした編、となりました。単純にパワーアップ手段が方々で出尽くしているような気がしたのもありますが。思いつかなかったとも。
副題にあります無形の極とは、まぁなんでしょう。万能型進化の終着地点のようなイメージでつけました。横島の霊能はとかくインチキなほど汎用性が高いので、下手に特性を持たせずに強くしたいなー、なんて。横島自体、当分は出ませんが!
では、レス返しを。
MAKO様 > 貴方もほんわかほのぼの系がお好きと見たっ! 好きと言ってもらえるものがこれからも書けるよう、精進します。次回以降もほんわかな部分があったりなかったりしますが。ががが。頑張ります。
ジェミナス様 > あったかい横島を書くのは楽しいです。やはり普段とのギャップがあるからなのでしょうが。もう廃れた感がありますが、『癒し系』の物語で横島やその他面々を安らげるようにしたい…という展望はあったり。
内海一弘様 > パピリオと横島の関係も難しいですよね。敵同士であったとか、ルシオラ消滅の原因が横島であったりベスパであったり…でも、そんな感情は『置いといて』。パピリオが優しい兄貴である横島に懐くのは、子供である特権ではないかと思います。真っ直ぐ真剣、一意専心。
やぷ~様 > 女の子が集まる夜はぱじゃまぱーてぃ。作者の脳にはそう刷り込まれていまして。小竜姫にも刷り込んでみました。楽しんで頂けたなら幸いです。つまり腐っているのは作者か! 悔いは無いな!
スケベビッチ・オンナスキー様 > 北原白秋で来るとは…! そのセンスに脱帽しつつ、対抗して横島に捧げる詩を探してみました。中原中也「在りし日の歌」より春日狂想なんてどうでしょう。ルシオラを失った直後の心境に近いのではと思われます。つうかほんとうに横島は恵まれてるなぁ…人徳なのでしょうが。想い想われ、という絆がとても太いですよね。スケ様の次作も期待しております。わくわくと。
柳野雫様 > 妙神山の姉。これはとてもいい響きですね。なんで思いつかないかなー…。寿命との兼ね合いでペットを飼っている~というくだりが原作にはありましたが、パピリオ自身の性格が優しくて素直じゃないと、こうはいきませんよね。小竜姫や恐らくは斉天大聖にも可愛がられ、彼女は彼女らしく育つのでしょう。あったかい夢も見るでしょうなぁ。ええ話や…(自己陶酔)
亀豚様 > こちらこそ始めまして。いろんな人に心配される横島は果報者です。美神の力についてはー…考えてはあります。彼女も遠からず妙神山を訪れるでしょう、とか予告風。作者が好きなキャラは小笠原エミと六道冥子かな。冥子をメインにしたお話も書きたいところです。
以上、レス返しでした。手裏剣を受けるのは畳返し。もう言いません。多数のレスは作者冥利に尽きますね。有難うございます。
次回はー…
うーん。全面改稿中のおキヌ編がカタチになれば、お届けしたいと思っています。だって長くて…プロボクサーの減量のような作業は苦痛です。
また番外を書くかも知れません。
書くことは確定。予定は未定。悩み所です。悩み処と書くと休憩処みたいですね。峠の悩み処で悩み中に白装束の母娘が「夫の仇!」と言いつつ懐刀を…
自分でもくどい後書きだと思いつつ。
ではこの辺で。お読みいただき、本当に有難うございました!
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