エミさんの所での弟子入りを終えた俺たちは最後の弟子入り先へと向かっている。
「いよいよ最後なのね〜。」
「ああ。次の弟子入り先で唐巣神父に紹介されたのは最後だよ。」
俺たちはたわいもないことを話しながら目的地に向かっている。
「それで最後はどんなところなのね〜?」
「ああ、書類によるとなんでも『弓式除霊術』っていうのを使う所で、えっと名前は・・・」
俺は名前を確認するためにいったん資料に視線を向ける。
「『闘龍寺』!!」
俺たちは闘龍寺に着くとさっそく道場のような所に通された。
「きみが横島君だね?唐巣君から話は聞いているよ。」
そう言ったのはいかにも威厳のありそうな顔をした中年の男性だった。
「はい。横島忠夫です。今回はご迷惑をおかけします。」
俺が頭を下げると男性は満足そうに頷く。
「私はヒャクメなのね〜。」
「これは恐れ入ります。私は当家の主、弓正元と申します。」
ヒャクメのいつもの軽い挨拶に正元さんは恭しく頭を下げる。
「私は今回は単なる付き添いだから気にしないでほしいのね〜。」
「はい、かしこまりました。」
正元さんはそれでもヒャクメに頭を下げる。う〜ん、六道家の時もそうだけどヒャクメって神様なんだよな〜。・・・ヒャクメなのに・・・
正元さんはようやく頭を上げると俺に話しかける。
「さて、横島君。修行の事なんだが・・・」
「はい。」
「きみはヒャクメ様から授かった力の制御のために修行がしたい。と考えていいのかね?」
「はい。そうです。」
授かったわけではないんだがな。落ちてるの見つけただけだし。
「そしてそのために霊力の基礎を学びたい、と・・・」
「はい。」
俺はそれに返事を返す。
「ふむ。実は今回のきみの修行は私の娘にまかせようと考えているんだが・・・」
「娘さんですか?」
「うむ。今年で15になるんだが。ああ、実力のほうは心配しなくてもいい。幼い頃から当家に伝わる『弓式除霊術』の跡継ぎとして鍛えてきたからな。」
「はぁ。それはかまいませんが。」
俺はそれを承知する。こちらからお願いして修行させて貰うのだからそれくらいはなんでもない。
「そうか。それではさっそく娘を紹介しよう。誰か!かおりを呼んできてくれ!」
正元さんが声をかけてしばらくすると、道場に長髪で気の強そうな女の子が入ってきた。
「失礼いたします。正元が娘、かおりでございます。」
と言って、頭を下げた。
「ふむ。かおり、こちらが昨日話した横島君だ。」
「はい。」
かおりさんは正元さんに紹介される俺に睨むような視線を向ける。
「ヒャクメ様、申し訳ありませんが私は所用のため少し席を外させて頂きます。かおり、後を頼む。」
「はい。かしこまりました。」
そう言って正元さんは出て行った。
「弓さん、よろしくお願いします。」
俺は弓さんに頭を下げる。
「いえ、父からの命ですのでお気になさらず。」
そう言う弓さんの目は今だ俺を睨んでいる。なんなんだ?俺はなにもしてないぞ。
「さて、横島さん?でよろしかったかしら?」
「はい。」
「今回は当家の『弓式除霊術』を学びたいということですが、私は正直あなたがなぜそれを許可されたか納得できません。」
「へ?」
「ちょっと待つのね〜。」
「ヒャクメ様、申し訳ありませんが口出し無用でお願いいたします。」
弓さんはヒャクメの言葉にも耳を貸さない。
「そこで修行に入る前にあなたの実力、試させていただきます!」
そう言って弓さんは立ち上がり道場に置いてあった薙刀を手に取る。
「ちょっ、まって!」
俺は慌てて立ち上がり弓さんに声をかける。
「問答無用!行きますわよ!!」
俺の言葉にも耳を貸さず、弓さんは薙刀を振りかぶり襲い掛かってくる。
「あぶね!!」
俺は打ち下ろされた薙刀を横に移動して避ける。
「やりますわね!でもまだまだ!!」
そう言って弓さんはさらに襲い掛かってくる。
「頼むから人の話を聞いてくれーー!!」
正元さんの娘さんのかおりさんはこちらの話をまったく聞かず、横島さんに襲い掛かっている。
「少しは人の話を聞くのね〜。」
私の声も彼女に届かない。うう、私一応神様なのに・・・
その間にもかおりさんは横島さんに薙刀を振り下ろす。
上から薙刀を振り下ろし横島さんが避けると刃を返して上に切り上げる。
それも避けられるといったん距離を取り今度は連続で突きを放つ。
横島さんはサイキック・ソーサーでそれを防ぐ。
しかし横島さんも避けるのが上手くなったのね〜。まあ冥子さんの式神の暴走を避けてれば上手くもなるか。命がけだったし・・・・
そうこうしてる間に5分が経過。流石に両者共に多少息が上がってきた。
「ゆ、弓さん。落ち着いて俺の話を聞いてくれ!」
「くどいですわ!!大体なんのつもりですか!?あなたは避けるばかりで少しも攻撃してこない!!私が本気で戦うまでも無いとでも言いたいんですの!?」
相変わらず人の話を聞かない。それどころかさらに頭に血が上っている。
「いいですわ!これをくらってもまだ余裕でいられるかしら!?」
そう言ってかおりさんは首にかけていた宝珠を手に取る。
「弓式除霊術奥義!!水晶観音!!」
そしてかおりさんは背中に二組の腕がはえた透明な鎧を身にまとう。
「な!?」
「あれは魔装術?いや、違うのね〜!さっきの宝珠を媒介にした強化服!横島さん!あれはやばいのね〜!!」
あれは術者の能力を強化する。あれで強化されたら横島さんに防げるかどうか。
「遅いですわ!!これでもくらいなさい!!」
かおりさんは全ての腕に霊力をため、それをひとつに貯めた霊波砲を放つ。
「横島さん!!」
私は叫ぶ。あれは流石に横島さんには避けられない!!
ドガーーーーーーーン!!!!!
そして私の叫びも虚しく霊波砲は横島さんを飲み込む。
「・・・手加減はしておきました。やはりあなたには当家の力を学ぶ資格は・・・」
かおりさんはそこで言葉を切る。なぜなら・・・
「ぜー、ぜー、流石に今のはやばかった。」
サイキック・ソーサーを構えた横島さんが立っていたから。
「横島さん、よく無事だったのね〜!」
「ああ、なんとか防ぎきれたよ。」
そう言って横島さんはソーサーを見せる。
そうか!横島さんは避けられないと判断して全身の霊気をソーサーに込めて防御したのか!確かにそうすればなんとか耐えられる。
「弓さん、もういいでしょう?俺達の話を聞いてください!」
「そうなのね〜!神様の話を聞いてもバチは当たらないのね〜!」
「・・・」
かおりさんからの返事はない。かおりさんは俯きながらなにか呟いている。
「認めない・・・」
かおりさんがなにか一言呟いた。
「?なんなのね〜?」
私が話しかけるとかおりさんは突然顔を上げ、
「認めない!!あなたが!あなたなんかが私の婚約者だなんて絶対認めない!!」
「「は!?」」
とんでもない事を叫んだ。
あとがき
今回の闘龍寺編も二話構成になります。うう、オリジナルは難しい。私はオリキャラは絶対に使わない人間なんですが、弓の父親みたいに半オリキャラは話の都合上出さざるを得ません。今後出る半オリキャラはたぶん夏子。後は誰だろう?
追伸。私は話の数をひとつ、ふたつ、・・・として来ましたがさすがにとおから先は無理なんでどうしようか悩んでます。まあ、たいした悩みじゃありませんが・・・
レス返し
初めにご意見、ご感想を寄せてくださった皆様に感謝を・・・
kamui08様
あの!ヒャクメですのでおそらく・・・次は新技なんでお楽しみに。
EVE様
オリジナルの難しさを痛感しております。更新ペースですがおそらくそろそろこのペースではなくなると思いますのでご容赦下さい。
ういっす様
かおりルート樹立になるかどうかは今後のお楽しみに〜。
ゆん様
さすがにそれは・・・横島君の水晶観音・・あんまり予想できませんね〜。
SS様
笛はエミさん使えませんしね。給料ないんでその代わり見たいなもんと考えてください。
内海一弘様
笛のネタは完全にその場の思いつきだったりします。こういった小ネタが私は大好きです!!
への様
ご期待に応えられるようがんばります。新しい力・・・悩みますね〜。
スケベビッチ・オンナスキー様
良いとこのお嬢様のかおりさんが初登場です。この後どう絡めるか悩みどころです。
展開予想とありましたが、ご自身の判断にお任せしたいと思います。私はご批判でもより良い作品を読みたいという善意の想いからのご意見でしたら構いません。でも皆さんルールは守りましょうね?(新参者の私が言うことじゃありませんね。申し訳ありません。)