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▽レス始

「栄光に導く光の剣 第四話(GS)」

グローリー (2006-07-17 23:55)
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《横島が眠り続けて十四日目》


休校だった学校も再開し、夏子や銀一が来なくなった。
夏子は行きたくないと言っていたが、百合子がなんとか説得した。
彼女もしぶしぶ承諾し、銀一に連れられて学校へと登校していった。
すやすやと眠る横島の病室には今は誰もいない。

「………………ぅぅん?…………ん?ふあああぁぁぁ、ガッ!」

寝起きなので思考が回っていなかったのか、背伸びをしようとしたら体中に痛みが走った。

「あ、あれ? 俺はなんでこんなとこに──「た、忠夫!?」──あ、おかん。おはよう。」

何時ものようにあいさつを交わす横島。
だが、百合子は手に持っていた洗面器を取り落とし、横島に抱きついた。

「うわっ! おかん、いきなりどないしたんや?」

「あほ………………親にこんな心配かけよって…………」

「………………おかん。俺…………?」

しばらくの間、百合子は横島を抱きしめたまま離さない。
あの鬼のように厳しかった百合子が……ただ嬉しくて涙を流していた。


「奇跡だ…………あれほどの怪我でどこも後遺症がないなんて…………」

百合子から連絡を受けた医者がそういった。
横島の体にはどこにも異常はない。
医学的にはありえないらしい…………

「でも、体痛いっすよ?」

「当たり前だ。これで怪我がなければ、私は君を人とは認めん。」

診察を終え、病室へ戻る横島と百合子。
横島がふと、疑問に思った…………

「なぁ、おかん。」

「なんや?」

「俺なんでこんなに傷減ってるんや? 意識失う前はもっと怪我してたんやけど…………」

「ああ、そのことかいな。それは──」

百合子の話によると、横島が意識を失っている間、何度もGSの方が来ていたらしい。
なんでも横島に話があったらしく、目覚めたとき教えてほしいと言っていたようだ。
その代わりに横島にヒーリングを定期的にしてくれていたらしい。

「GS?…………だれ?」

「唐巣さんと美神さんて人よ。」

「………………………誰や? けど、なんか聞いたことあるような………………」

思い起こせば不思議なことばかり。
何故自分が霊能力が使えるのかわからない。
どうして、今まで関わったこともない霊能力を使えたのだろう………………

「まあ、ええか。 そのおかげで皆無事やったんやしな。」

霊団と戦ったことは覚えている。
自分の行動も覚えている。
今でもあの感覚は覚えている…………
だが、何故ああすれば倒せると思ったのか思い出せない………………

首を傾げながら考えていると病室の扉がすごい勢いで開いた。


「ん?夏子と銀ちゃんやんか!! 元気やったか?」

にへらと微笑みながら二人に話しかける横島。
百合子が連絡を入れたのだろう。
銀一は呆気を取られた様な表情をしており………………
夏子は………………


「横島のあほっ!! あんた遅れて来るって約束したのに破りよってからに!!」


夏子がものすごい形相でズカズカと横島に近づいてくる。

「ひぃぃ〜〜!! 堪忍やぁ〜〜! 破るつもりはなかったんや〜!!」

ほぼ反射的に謝る横島。
長年の悲しき条件反射である。

夏子は横島のベッドの横まで来て、ワナワナと震えている。
これはいつもの経験上、間違いなく世界を狙えるレバーブローが………………
いや、もしかすると新たに発展し、未知数のコンボが来るかもしれない………………

横島は覚悟を決め、歯を食いしばっていた。


「………………ぁほ、………バカバカバカバカァ!!」


予想とは違い、顔を涙で濡らしながら横島の胸を叩く夏子の姿。
込められている力は微弱なもの………………


「…………夏子?」


「………死ん…じゃったと………思った………………怖かった………………」


「すまん、お前を守りきれ「違うっ!!」─えっ?」

横島は自分が倒れ行く最中、守れずに動けないことを悔いている。
夏子に迫る悪霊をコマ送りで見ているような感覚。
あの時、自分は動けなかった………
守れる力はもっていたはずなのに………………
横島は夏子がそのことを言っていると思ったのだろう。


「自分が霊に襲われるのが怖いのよりも………アンタがいなくなる事が怖かった………………」


横島の瞳を見て、涙ながらに語り続ける夏子。

「とっても高いとこから落ちるお前を見て、助からないと思った………………赤く染まる地面を見て、怖かった。 動かない………………返事をしない横島を見ているのが怖かった!!」

百合子、銀一も何も言わない。
それは二人とも同じ気持ちだった。
動かない親友を………動かない息子を………………
失うことが何より怖かった。


「もう、目覚めないんじゃないかと………思っ………た………」


段々と語尾が小さくなる。
叩く力も弱くなり、あたりは静寂に包まれていた。


「横島の笑顔が………………消えていく。 記憶から薄れていく…………思い出せない自分が怖かった………………」


手に力も入らなくなり、だらりと下がっていた。
横島も今回ばかりは真剣に聞いていたが───


「ていっ!!」

「あいたっ!!」


───5分と持たなかった………………

夏子の額に横島がデコピンを食らわせたのだ。

「な、なっ………!!」

「あほか、お前は。俺はこうやって目覚め取るし、こうやって笑っとるやないか。」

何時もの馬鹿げた笑みを浮かべながら、夏子の両頬を摘まんで左右に広げる。

「ほら、こうやって笑うんだよ。ニィ〜〜ってな!!」

「いふぁいいふぁい、ふぇなしゃんかい(痛い痛い、離さんかい)」

夏子の頬を自分の遊び道具のように上下左右に引っ張る横島。
横島は楽しそうに引っ張っていたが………………


「痛いから離せ言うとるやろ!! このあほ!!」

「ぷげらっ!!」


夏子の平手の一撃が横島の頬を一閃した。
横島も夢中になっていたらしく、回避できなかった……

「何しよんねん! お前が俺のステキスマイル忘れた言うからやったったのに!!」

「だからってやり方ってものがあるやろ!? なぁ銀ちゃん。」

「……ん、んん。ああ、せやな。今のは横っちが悪いわ。」

「なんでや〜〜〜〜!!」

銀一と横島の会話が続く中、夏子はうんざりしていた。


なんで、こんなやつ好きになってもうたんやろ?
デリカシーもなんもないわ。
はぁ…………悩んでた私って何なんやろ?

「夏子ちゃん。」

「はい?」

百合子が耳打ちするように小声で話す。

「元気でたみたいね。」


「え?」


夏子は今になって気づいた………………
自分がいつの間にか笑っていたことに…………
横島のことに呆れながらも微笑んでいたことに。
この二週間の気持ちが嘘のように晴れていた。
夏子はただ黙って横島の方へと視線を向けていた。


「横っち、もう大丈夫みたいやな〜!」

「おぉ〜、ごめんな銀ちゃん。 もう元気ビンビンや!」

銀一と横島はいつもの他愛無い会話をしている。

銀一は考えていた。
横島が目覚めてくれたことは嬉しい。
だけど…………


なんや?
確かに俺は横っちに願った……
夏子を元気にしてやってほしいと…………
けど、なんか落ちつかへんわ。

もやもや感があるというか…………
だぁぁぁぁぁ!! なんやすっきりせんわ!!


「銀ちゃん、どうかしたんか?」

「ん、あ、いや、なんでもないで。」

横島の顔を見ると自然と気持ちが落ち着いてくる。

まあ、なんや。
夏子が元気になったからええか!

銀一にはその時分からなかった…………
自分の抱いている感情に……


《次の日》

「失礼するよ。」

「失礼します。」

横島の病室に二人の来客がやって来た。
唐巣と美知恵だ。

「ん?誰や??」

「忠夫、この前言ってたGSの方よ。」

「初めまして、私は唐巣和宏。こちらは美神美知恵といって、私の教え子になる。」

「よろしくね。」

「あ! 夏子を助けてくれた人か!! ほんまにありがとうな!!」

意識を失う直前のことを思い出したのだろう。
横島は唐巣の手を握り、頭を下げている。
それを見て、二人は少し苦い顔をしている。

「こらっ! ありがとうございました、やろ?」

「いたっ…………ありがとうございました……」

百合子に頭を小突かれる横島。

「いや、まあ……そんなに大したことはしてないよ。」

やはり、自責の念があるのだろう。
あの時、自分たちが対策を打っていれば…………
彼は今ここにいることはなかったのだから……


「どうかしたんすか?」

「そうだ。今日は君に話があってきたんだよ。」

「話……?」

横島は色々と思考するが何の話か検討もつかない。
自分はまた何かやってしまったんだろうか?

「君の友人にも色々聞いて回ったんだが、君があの霊団を倒したのかい?」

「霊団ってあの学校に来たやつ? それなら俺が倒したけど…………まあ、俺もボコボコやから相打ちやけど。」

唐巣の問いを肯定する横島。
それがさも当然のように笑っている。
彼はわかっているのだろうか?
霊団を一人で倒したという意味を………………
そんなものTOPクラスのGSでさえ難しい。
相性もあるが、できるのはおそらくネクロマンサーだけだろう。

「君は……ネクロマンサーなのかい?」

「ねくろまんさぁ〜? 何やそれ??」

「ネクロマンサーの笛という道具を使い、霊達を説得する人たちのことをそう呼んでいるのよ。」

「俺、そんなんできひんで?」

唐巣と美知恵はますます頭を捻る。
ならば、どうやって霊団を倒したのだろうか?
ネクロマンサーでなければ、直のことひとりでの除霊は不可能だ……
それもこんな小さな少年に…………

「君のお母さんからは君は霊能力などもっていないと聞いたんだけど何かできるのかい?」

最も重要なこと。
ネクロマンサーではないといった。
ならば、我々が知りえない能力を少年が有している可能性があるのだ。

「ふっふっふ、これが俺の能力、栄光に導く光の剣や!!(ハンズ・オブ・グローリー)」

待ってましたと言わんばかりに横島は手に霊波を集中する。
すると…………

「あ、あれ??」

横島の手に展開されていたのは旧式の栄光の手(ハンズ・オブ・グローリー)だった。
霊的なチャクラはヒーリングによって治療済みのようで霊力を使用することはできた。

横島は栄光に導く光の剣がでないことを疑問に思いながら色々試している。
手甲タイプに形を変えたり、霊波刀に変えたりしている。
首を傾げているが、唐巣と美知恵は驚いていた。

「れ、霊波刀…………しかも自在に変形している。」

「ええ、霊的な道具を使わずにここまでの出力を出すなんて…………それも君みたいな少年が!?」

本来、霊波刀とは人狼族が主に使用している技。
人が使わないのは何故か?
答えは簡単だ。

々盻侘呂芭酣箸鯤出しなければならないため効率が悪い。
▲ぅ瓠璽犬悪ければ、すぐに崩れてしまう。

,亡悗靴討聾世Δ泙任發覆ぁ
神通棍といった霊力を増幅する霊能アイテムを媒体とし、霊力を増幅したほうが安定力、攻撃力ともに効率がよいのだ。
加えて、霊力を無駄に放出するのをできるだけ抑えることができる。

△亡悗靴討録佑離ぅ瓠璽犬話召咾大きい。
剣をイメージしても鉄の硬度や刃の切れ味、実際の剣などにはとてもじゃないが勝てない。
人狼族が扱えるのはこういったところが理由にあるのだろう。
彼らは武士の志があるがゆえに刀と一心同体。
では、なぜ横島が使えるのか?
答えは簡単だ。ひとえに彼の妄想力の賜物だろう。
加えて子供であるがゆえにヒーローなどに憧れ、今だ子供心を残していることが原因の一つかもしれない。
人は大人になれば理想を捨て、現実を受け入れる。
ゆえに常識というものに縛られるのだ。
だが、今の横島に常識というものは少ない。
日々スカートめくりや覗き行為を行っている彼には…………


「忠夫、あんたいつの間にこんなことできるようになったんや?」

「おかん……それが俺にもわからん。いつの間にかできとったんや。」

「「えっ!?」」

唐巣と美知恵はその言葉にさらに驚かされた。
これほどの霊能力がいつの間にかできるようになった?
世の中のGSが聞けば怒り狂うこと間違いないだろう。
辛く厳しい修行を重ね、蓄積されていくもの…………
それが霊能力なのだ。

もちろん、突然霊能力に目覚めるものも少ないがいるにはいる。
だが、大抵は小さな力か大きすぎる力を制御できない人ばかり…………
目の前の少年のように自在に操っているなど…………ありえないのだ。


美知恵は思った。

逸材だ………………
これ以上の逸材はそうそういない。
確か彼は10歳くらいのはず……
令子がちょうどいいくらいかしら。
ちょうど私も、行動しなきゃいけないしね…………


一方、唐巣は…………

まだ霊的な成長期が始まったであろう少年がこれほどの力を…………?
あの霊団との戦闘は間違いなく、GS協会上層部へといっているだろう。
ならば、この少年の情報も集めているはず…………
危険だ…………危険すぎる。
彼ほどの力、GS上層部が知れば見逃すとは思えない。
親御さんとしっかりと相談しなければならない……か。
こんな能力に目覚めさえしなければ……平凡で幸せな生活を送れただろうに。
主よ、彼に安らかな時を与えたまえ、アーメン。


「忠夫君といったかな? それに百合子さん。大切な話があります。」

「なんでしょうか?」


「忠夫君は我々が想像していたよりも大きな力を有しています。私たちどちらかの弟子になってもらい、東京へ来た方がいいかもしれません。」


その言葉を聞いた横島は呆然としていた。
百合子はというと横島が眠っている間にいろいろと聞かされていたため動じていない。

事故当時、唐巣と美知恵は自分たちのせいだと謝罪し続けていた。
大樹と百合子もその時は頭に血が上っており、気づかなかった。
だが、しばらくして冷静に考えてみるとおかしい。
二人が調べたところ一流といわれているGSである唐巣と美知恵が簡単にミスを犯すだろうか?
それもこれほど大きな仕事で…………
再び問い詰めると唐巣は真実を語りだす。
GS上層部の怠慢が招いた事態であると…………

許せない…………心は広いほうだがこれだけは見逃すことはできない。
大切な息子が死の危機に陥り、何かしらの障害が残るかもしれないといわれたのだ。
それがGS上層部の怠慢?
これを聞いた二人の怒りの矛先は決まった。
だが、仮にも相手は世界に轟くGS協会。
簡単に手を出すわけにもいかない。
いつか必ず尻尾を掴んでやると二人は意気込んで今は静かに情報だけを集めていた。


「そんなんいわれても俺大阪に住んでるんやし─「忠夫」─おかん?」

「実はな、父さんの仕事が東京でやることになってな、東京に転校する予定なんや。」

「えええぇぇぇぇぇ〜〜〜!! 俺そんなん聞いてへんで!!」

「そら、そうや。今まで黙っとったんやから……『ガタッ!!』ん?」

皆が音をしたほうを振り向くとそこには…………


「な、夏子?」


「嘘や、横島が東京行ってしまうやなんて…………うそやーーー!!」


「お、おい! 夏子、ちょいま──痛った!!」

夏子が病室の入り口から飛び出し、どこかへ走っていく。
それを追いかけようとした横島だったが、怪我のせいで体が痛く、動けなかった。


「いたたた……くそっ! しゃあない!こんなもん!!」

横島の手が光り輝き、霊力が収束していく。
集められた霊力は一点に収束していき次第に形が浮かび上がってくる。
小さな球体をしたものが横島の手に出来上がった。

「なっ! それは!?」

【治】

唐巣が驚いていたが、そんなことも気に留めず横島が文字を刻み、体に押し当てていた。
光が収まり、横島が体を動かしたりしてチェックした後すぐさま病室を抜け出し走り出していった。


「そ、そんな……あれは…………」

病室に残された者たちは誰もしゃべらなかった。
その静寂を打ち破ったのは美知恵だった。
驚愕………いや、見たものが信じられなかった。

「あの……霊能力というものはああいったことも可能になるんですか?」

百合子が二人に恐る恐る聞いてみた。
百合子は霊能力には疎いが目の前の奇跡のような光景に目を奪われていた。
徐々に直っていた傷が一瞬で治療され治ってしまった。
奇跡……その言葉が相応しかった。

「い、いえ! あんなこと普通はできません!!」

「あれは文珠、神族の神器。彼は……文珠使いなのか……?」

「忠夫が……? そんなにすごいことなんですか?」

「伝承によれば過去に菅原道真が作ることができたといわれていますが…………」

「現代では誰一人としていないでしょう…………」


≪文珠≫
霊力を凝縮し、一定のキーワードを持たせ解凍する技。
神族の神器とされ、今まで人類で作ることができたのは一人だけ…………
彼のものは文珠使いとよばれ、いくつもの奇跡を呼び起こしたと伝承されている。


「なおさら、彼をほって置く事はできなくなったね…………」

「そうですね、先生……百合子さん。事態は急変しました。話をしなければ──」

「わかってます。それほど、重要なことなんでしょう。」

横島のこれからについて、大人だけの話し合いが始まった。


一方、病室をでた横島は………………

「ぬおおおおおぉぉぉぉぉ!! あいつ一体どこにいったんや〜〜〜!!」

ひたすら病院を走り回っていた。
時には看護婦に止められたが伝家宝刀のスカートめくりが炸裂し、その間に逃げ出した。
病院のほとんどを探し回ったが、夏子はいなかった…………

「はぁはぁ、ここでおらんかったらあいつもう帰っとるんやろうな…………」

ここで最後。
横島はゆっくりと扉を開いた。


「ここにおったんか、夏子。」

「横島………………」

屋上だった。
今は夕暮れ。
綺麗な夕焼けが印象的だ。

「横島、本当にいっちゃうんだ?」

「まだ、わからんけど……おとんの仕事やからその可能性が高いな…………」

横島も夏子が自分に好意を寄せていることはわかっている。
告白されたから…………
さすがの横島も気が重いようだ。

「…………綺麗ね、オレンジ色に染まる空……見てると少し心が落ち着く。」

「うん、せやな…………」

「ねぇ、横島。たしか『昼と夜の一瞬の隙間、儚いからこそ綺麗』だっけ?」

「ん?ああ、そういったな……」

あれ?なんや??
俺なんであんなこといったんやろ?
思い出されへんわ。

「儚い……か。私たちもそうなのかな?」

「え?」

「横島や銀ちゃんとの出会いは一瞬のようやった…………だから綺麗なのかな?」

「まさか……銀ちゃんも?」

「うん、横島が起きた次の日くらいに言われた。」

「そっか…………銀ちゃんも転校してまうんか……」

「私たちまるで夕焼けみたいだね。」

夕焼けの赤い光を受けて微笑む夏子。
その笑みはどこか悲しげ。
無理に作っているように誰が見てもわかった。


「なあ、夏子。勝負しよか。」

「勝負??」

「ああ、今度あったとき、どっちがいい男もしくはいい女になってるか。」

「はぁ? そんなんしてどないなるんや?」

「もし、その時に俺がお前のことに見惚れたら…………」

「見惚れたら?」

「土下座して、付き合ってくれって拝みたおしたるわ。」


「それはつまり今は駄目ってことなの…………?」

間接的だが断る。
夏子にはそう感じた。

「ああ、そうや。でも勘違いすんなよ。俺はお前のこと好きやぞ?」

「じゃあ、なんで??」

「くやしかったんや…………」

「くやしい??」

そう告げた横島は真剣な表情だった。
夏子には横島がわからなくなっていた。
自分も好きで相手も自分が好きやったらそれでいいんじゃないのか?
どうして好きなのに断るんだろう…………と?

「ああ、あの時お前を守りきれんかった…………唐巣さんがきてくれんかったらお前はここにおらんかもしれん。」

「あれはっ!? 横島のせいじゃ─「わかってる、俺だけのせいじゃないってことは」─なら、どうして?」

「守りたいんや、自分の力で。 大切なものは…………」

「横島…………」

夕日に照らされた横島の横顔を眺める夏子。
風に揺れている黒髪は滑らかで……
瞳にはある決意が宿っていた。

過去の記憶を失ってもなお、大切なことは宿っている。
彼女を失った記憶はなくとも想いだけはしっかりと横島の胸に残っていた。

「俺は強くなる…………だから、その時に答えを返してもいいか?」

「………………ふんっ!その時になったら私の彼氏紹介したるからな!! 泣きついてきてもしらんから!!」

横島の真剣な表情に目を合わす事ができない夏子。
照れ隠しから答えは考えていたことと逆のことがでてしまう。


「まあ、今日あげようと思ってたもんやから最後にあげるわ。ちょっと目瞑って!!」

「ん?これでいいんか?」

横島は目を瞑り、静かに待った。
夏子の気配が眼前へと近づき、布が擦れるような音が聞こえた。
横島の額に何かが張り付き、夏子の腕が後ろへと回される。

「よっしゃ、もう目開けてもええで!!」

「ん? これは…………?」

「横島も少しはおしゃれしたほうがいいで。 そのバンダナは……その……守ってくれた御礼や!!」

額にあるバンダナを触る横島。
赤いバンダナ。
横島は嬉しそうにそのバンダナを触っていた。
そして、ただ一言。


「おおきに、夏子。」


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あぁぁぁ!!
原作で横島がつけていたバンダナのエピソード勝手に作ってしまった〜〜w
何か思い入れのある方ごめんなさいw

遂に横島がGSメンバーと絡み始めてきました。
次回お楽しみに!!

PS.数々の感想ありがとうございます。
いつも全て拝見さしてもらって書く気が沸いてきます。
楽しみに待っておりますので感想またお願いします^−^

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