インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「妖との仲介人 2件目(GS)」

ラッフィン (2006-07-13 22:00/2006-07-14 10:22)
BACK< >NEXT


――くそ、人間め――

――なんで私は追われているの?――

――なんで殺されなきゃいけないの?――

――私は何もしていないのに――

――人間なんて嫌いだ――


横島兄妹が事務所に到着したとき、美神とおキヌは朝食を食べ終わったとこらしい。美神が低血圧なので、休みの日は大抵遅い朝食となる。
事務所の前にきたときから雪蛍は横島の腕をぎゅっと両手で抱きかかえぴったりとくっついている。まだ、事務所の人間には心を開けないでいた。

何故なら、雪蛍は事務所にいる間はずっと横島の腕を抱きしめているからだ。
美神にはイチャつくなと怒鳴られ、おキヌには嫉妬で睨まれる。こんな状態では対人恐怖症の彼女に慣れろと言うほうが無茶である。まぁ、言った奴は横島にブチのめされるのは確実だろう。

雪蛍が来てから、美神が機嫌の良い日なんて見たことが無かったのだが、今日はさらにキツかった。横島は億単位の仕事が入ってるから機嫌がいいだろうと考えていたが、甘かったようだ。何故美神の機嫌が悪いのか、それは雪蛍が先日、横島にとってもらったバンダナをしているからだ。
他から見たらペアルック(死語)である。
これでは、兄妹ではなく恋人同士ではないか。と言うのが美神の想いなのだ。現実には小鳩と愛子もおそろいのバンダナをしているのを彼女は知らない。知っていたらさらにすごいことになっていることは間違いない。

「横島君、わかってると思うけど今日は久々に大きな依頼よ。いつもより強力な札を用意して」
「わかりました。」
「横島さん、これ見ておいてください」
「は、はい(おキヌちゃんも機嫌が悪いみたいだ・・・どうしたんだろう?)」

おキヌも美神と同じ理由でイライラしていた。そんなことは解らない横島は困惑しておキヌの持っていた書類を受け取るしかなかった。
車で現場に移動中のこと、運転席に美神、助手席におキヌ、後ろの横島兄妹と座っている。そこで、本日の依頼について書類を見た限りの感想をもらす。

「なんか、今回の除霊って罰則事項がやけに多くないっスか?」
「あ、横島さんもそう思います?それに今回はオカルトGメンが関わってないんですよ」
「え?依頼は政府からなのにか?そりゃ、なんかありそうだな・・・」
「うっさいわね〜、依頼料がこんなんだからきっと相当な実力の妖怪だわ。オカルトGメンじゃ頼りないから私にきただけのことでしょ。さすが私よね〜」

小竜姫に修行を頼みにいったのと同時期に、美神にはGSの知識を教えてもらっている横島は、この依頼の書類を注意深く見て意見を述べた。おキヌも同意したのだが、いつも冷静な美神は久々の大仕事、しかも高依頼料に目がくらみ冷静さを欠いているようだった。たぶん、今の彼女はどうやって妖怪を倒すか、その後のお金のことで頭がいっぱいだろう。

横島、おキヌ、雪蛍でさえ悪い予感を感じているのだった。

――依頼現場――

現場につくとそこは深い森が広がっていた。そこに乗馬の格好をして馬に乗った美神が大掛かりな装備の自衛隊の大軍がいた。作戦は美神と自衛隊がターゲットを追い詰める。そこに結界を敷き、ターゲットがその結界に触れ身動きが取れなくなったところを横島、おキヌ、雪蛍の3人でしとめるというもの。

早速、追い詰め班は森の中に入っていった。3人の脳裏にはまだ嫌な予感が残っていたが、始まってしまったのでとめることが出来なくなってしまった。しばらくすると数発の拳銃を撃つ音と、美神の神通棍が木や地面を叩く音が聞こえてきた。

ガサガサ・・・

「(来たみたいですよ)」
「(そうみたいだ。でもそんな強力な妖気は感じないんだけど・・・)」
「(じゃ、違う妖怪なの?)」
「(でも、美神さん達はこっちに向かってきてますよ)」
「(こりゃ、どうゆうことだ?)」

3人は気配を殺しながらアイコンタクトで会話をしている。ずっと一緒にいるおキヌとお兄ちゃんのことだもん♪と言うブラコン娘だから出来る芸当だ。当然、美神も出来るのだが、今は目が金になってるから無理だろう・・・。

バチィイイ「キュゥウウン!!」

「かかった!って子狐?!」
「でも、尻尾が九本ありますよ?」
「どうするの?お兄ちゃん?」
「(この依頼は何かきな臭いからな。少し様子を見てみないと)雪蛍、そいつをバックの中に入れろ。おキヌちゃんは吸引札を用意して!」
「「はい(うん)」」

この依頼に何か裏があると感じた横島は狐をバックの中に入れ、吸引札を出すように指示し、自分は文殊を1つ作り出した。込めた文字は<写>。文殊が発動し、そこにはバックの中の狐そっくりの射影体を写し出した。
そこに美神と自衛隊の皆様がご到着してくれたので、おキヌはその人達の目の前で狐(射影体)を吸引し、横島は持っていたライターで札を燃やした。それを確認した自衛隊隊員は満足そうにし、美神と報酬について話すと帰って行った。

そこに、全速力でここに駆けつけたのだろう。玲子の母親の美智恵とその弟子の西条が息を切らせて現われた。

「隊長、西条も!どうしたんスか?」
「ハァハァ・・・よ、横島君。狐の妖怪は・・・どうしたのかね?」
「それなら、たった今吸引して燃やしちまった」

「「遅かった!!」

「一体どうしたんですか?」

狐の妖怪が退治されてしまった後だと聞いてがっくりと肩をおとすオカルトGメンの二人。そんな様子に困惑して質問をするおキヌ。美智恵は状況がわかってない様子の横島達3人に今回の事件について説明を始める。

今回の依頼は傾国の美女と言われた九尾の狐、その転生体の退治が目的だった。
白面金毛九尾の狐と呼ばれ恐れられて来た大妖怪で幾多の国を滅ぼして来たと言われている。しかし、最近では国が滅びる兆しは九尾が出現する前からあり、逆に九尾の狐は国を滅びるのを阻止していたのだと言う説も出て来た。争いを好まず、安全を求めて権力者の寵妃となっただけで、妖怪という身から無実の罪を着せられたと言うのが実状らしい。なので、オカルトGメンは保護を訴えたのだが政府は聞き入れずに強引な手段に出たのだ。

それが、民間のGSに依頼することだった。政府の認識では美神は大金さえ払えばなんでもすると思われているそうだ。だから、今回の依頼にオカルトGメンが関わっていなかったのである。
一通り説明を聞いた横島はあることを聞かずにはいられなかった。

「ってことは今回は退治する必要はなかったってことですか?」
「その通りよ」
「「「そんな!」」」

退治しなくて良かったとわかりショックを受ける横キヌ雪。特に同じ妖怪の雪蛍は大きなショックを受けていた。もし、自分が復活するときにいたのがお兄ちゃんじゃなかったらと思うと恐怖に震えてしまう。思わず横島にしがみついてしまった。

「全く、あなたときたら。あなただって白面金毛九尾の狐のことは知ってたでしょ!」
「だって、仕方ないじゃない。お金に目がくらんじゃったんだもん」
「なおさら性質が悪いわ!」
「そ、それにもう遅いわよ。退治しちゃったんだし」
「がぁあああああああああ」
「ギャーギャー」

美智恵が令子と母娘喧嘩をしている間に横島は西条に耳打ちする。それに西条は軽く頷いて見せた。
横島はおキヌと雪蛍に向かって微笑みかけるのだった。

――横島の家――

あの後、横島兄妹とおキヌは東京に戻ってくると早々に横島の部屋に向かった。
実を言うとおキヌが横島が引っ越してきた家にくるのは今回が初めてだったりする。雪蛍が現われてから嫉妬で怒っているので来辛くなっていたのだ。なので、小鳩と一緒に夕飯を食べているなどの状況も知らない。知ったら面白いことになりそうだ。
本当ならここで台所のチェックやら横島の部屋の状態など見たいのだが今はそんな場合じゃないので涙を呑んで無視している。
早速、リビングでバックから子狐を出してあげる。すると、部屋の隅っこのほうに逃げるように移動し、こちらを警戒するように見ていた。

生まれて間もないときから多くの武装した人間に追われていたのだから、警戒されてもおかしくない。むしろ、襲われないのが不思議なくらいだ。まぁ、今回は子狐だったからそれほどの力は持ってないと解っているから警戒だけなのだろうが。

「困りましたね・・・手当てしないとあの子死んじゃいますよ」
「でも、あれだけの目にあったんだし、人間を信じろってほうが難しいよ」
「狐さん、可哀想・・・」

あの手、この手で九尾の狐の手当てをしようとしたのだが、悉く失敗して途方にくれる3人。九尾の狐は銃などにより重症で危ない状態なので一刻も早く治療したいのだが、なかなか近づけないのでどうしようもなかった。

「お兄ちゃん。そろそろ・・・」
「あ、もうこんな時間か・・・おキヌちゃん。夕飯食べてく?」
「いいんですか?」
「ああ、大勢で食べたほうが楽しいだろ」
「じゃ、お言葉に甘えます」

時計を見るとそろそろ9時を回るころになっていた。昼から何も食べていない3人は空腹を感じていたので夕飯を食べることにした。雪蛍は夕飯の準備を予めしていたので、食べ物を温めに。おキヌは美神に横島の家で夕飯をとると電話しにいった。
その間も横島は狐相手になんとか治療しようと試みるも失敗していた。

「お兄ちゃん。準備できたよ〜」
「わかった。ちょっと待ってな。」

夕飯の準備が出来たので狐を結界で逃げないように壁をつくろうとストックしていた文殊を取り出したときに、狐が何かに反応をしたことに気付いた。横島はその狐の視線を追ってみる。と、それは雪蛍が持っている味噌汁に向いていた。

「もしや・・・おキヌちゃん。箸で味噌汁の中の具を持ち上げてくれないかな?」
「は、はい。」

何かを確信した横島はおキヌに具を持ち上げることを指示する。具は油揚げだった。作者は味噌汁が大好きだし、得意料理だwんなことはどうでもいいが。狐は明らかにその油揚げに反応していた。

「そうか、雪蛍。残っている味噌汁から油揚げだけを全部持ってきてくれ」
「うん、待ってて。」

しばらくして、雪蛍は味噌汁に入っていた油揚げを小皿にあげて持ってきた。
それを受け取り、狐の前に差し出してやる。狐は油揚げと横島達を交互に見たと思ったら、油揚げにかぶりついた。

「やりましたね。横島さん」
「ああ、それにしても凄い食いっぷりだな〜・・・」
「相当おなかがすいてたんだね〜」

しばらくは狐の食いっぷりを鑑賞していたが、狐が油揚げを食べ終えたので再び治療を行おうと話しかけてみた。
が、次の瞬間に狐は中学生くらいの少女に変化したのだ。

「妖力を補給するために仕方なく食べたんだ。私は人間なんか大っ嫌いだ!!」
「「変化した・・・」」
「人間嫌いはわかってるが、治療くらいさせてくれ。このままじゃ、お前が危ない」
「うるさい!今更、いい面するな!」

雪蛍とおキヌは変化した狐の少女の姿に呆然とし、横島は説得しようとしたがダメだった。次の瞬間、横島の言葉に反論した少女の目がカッと光る。
それを見たおキヌと雪蛍の目が虚ろになった。

――おキヌ――

私は横島さんとレストランで食事をしている最中だった。そこはいかにも高級そうな雰囲気で周りはセレブな人や紳士ばかりだ。私は少々、いや。かなり居心地が悪かった。横島さんの服装は黒を基調としたスーツでなかなかに似合っていた。かっこいいな〜。対して、私のほうも赤を基調としたドレスで底の高いハイヒール姿。普段なら絶対に恥ずかしくて着ないだろう色合いだ。

「おキヌちゃん・・・」
「な、なんですか?っていうかこんな高そうなレストランで食事をおごりって横島さん平気なんですか?」

目の前で横島さんに真剣な目で見られ少し顔が赤くなってしまう。横島さんは大事な話をしようとしているのか、いつものお笑いの雰囲気がない。
すると、横島さんはテーブルの上に小さい箱を置き、私の前に持ってくる。

「これを受け取って欲しい」

私が箱をあけると中にあったのは、ダイヤが散りばめられた指輪だった。
私は情けないことに緊張して出した声が震えていた。

「こ、これは・・・?」
「俺と結婚してくれないか?」

私は幸せでいっぱいになった。


――雪蛍――

「雪蛍〜」
「な〜に?お兄ちゃん?」

台所で料理をしていると、後ろから大好きなお兄ちゃんから声をかけられた。振り返ろうとしたのだけど、突然後ろから抱きしめられて無理だった。お兄ちゃんの匂いだ。この匂いはいつも私を安心させてくれる。でも、今はそれどころじゃない。私、お兄ちゃんに抱きしめられてる!私の心臓はバクバクと激しく音をたてている。聞かれてないよね?

「ど、どどど、どうしたの?お兄ちゃん」

私は動揺して舌が回らなかった。他人から聞いたらなんとも間抜けに聞こえただろう。その私の問いにお兄ちゃんは耳元で囁くように言う。

「雪蛍が可愛いからだよ」
ボン!!

私が可愛いからって?!?!?!お兄ちゃんの言葉を聞いた私は顔だけじゃなく全身真っ赤になっているだろう。恥ずかしいけど、嬉しい。
そんな私の様子なんかおかまいなしにお兄ちゃんは言葉を続ける。

「なあ、雪蛍」
「なななな、何かな?」
「これからも俺に毎日、ご飯を作ってくれないかな?」
「へ?それなら毎日作ってるじゃない。今更、何を言ってるの?」

お兄ちゃんの言葉に私はすぐに冷静になってしまった。毎日ちゃんと作ってるじゃない。何が不満なんだろう?でも、その冷静さも次のお兄ちゃんの言葉で宇宙の彼方までふっとんじゃったけど・・・。

「違うよ。そういう意味じゃないよ」

「雪蛍。俺と結婚しよう」

今なら確実に、この世で私は一番の幸せ者だと自信を持って言える。


おキヌと雪蛍は虚ろな目をしながら、体をクネクネさせていた。
どうやら幻術をかけてきたらしい。横島は咄嗟に霊視を行ったおかげでなんとか免れていた。

しかし、普通は霊視をしただけでは幻術は防げない。では、何故横島は平気なのか?それは、狐の少女が復活したばかりで妖力はギリギリ、しかも重症だ。なので、横島は霊力にものをいわせて幻術を強引にヒャクメ直伝の霊視で見破ったのだ。この少女が復活してしばらくたっていて、健康だったらたちまちに幻術にかかっていただろう。

横島はヒャクメに言われた霊視の訓練を行っていてよかったと思うと共に、最近あいつ、大活躍だな。明日は槍か?と失礼なことを考えていた。

「ひどいのね〜(泣)」

それはともかく、狐の少女は幻術が効かないとわかるとガックリと肩をおとして抵抗をやめた。それと同時におキヌと雪蛍にかかっていた幻術も解ける。二人はいきなり現実に帰って来たことで目をパチパチさせていた。
どうやら、あの幻術は残りの妖力を振り絞った限界の力だったらしい。

「とりあえず、治療させてくれないか?」
「もう、私に反撃する力なんてないわ。好きにするがいいわ」
「わかった。好きにするさ」

狐の少女は諦めたらしい。横島は早速、文殊を取り出し念を込めた。

<治><療>

文殊が発動し、狐の少女の傷が全て消えた。それを見た狐の少女は驚いて呆然としていた。それもそのはず、目の前で希少な文殊を2つも使われたのだ。しかも、妖怪である自分の治療のために。この人間は他の奴らとは違う?狐の少女はそう思い始めていた。

「傷はどうだ?」
「うん、完全に塞がってる」
「そうか、でもまだ激しい運動はするなよ?少なくとも今日明日は安静にしておけ」
「わかった」

傷の具合を聞く横島に狐の少女は素直に答えた。そこで横島はあっ!と何かに気がついたようだ。

「そういや、お前の名前はなんていうんだ?」
「タマモ」
「タマモ・・・か。なんか、お前にぴったりな名前だな」
「そういうお前はなんていうんだ?」
「お、わりぃな。俺は横島忠夫だ。それで、こっちが妹の雪蛍で、こっちが同僚の氷室キヌ」
「「よろしくね」」
「ふん・・・一応、礼だけはいっとくわ」

互いに自己紹介をした後、狐の少女『タマモ』はそっぽを向いてしまった。まだ、信用はされていないらしい。

「で、なんでお前達は貴重な文殊を使ってまで私を助けてくれたんだ?」
「それは、助けたかったから。文殊は確かに貴重かもしれないが、なくなったら作ればいいし」
「は?作る?」
「おう、俺は文殊使いだからな」
「はあ!!」

今度こそタマモはびっくり仰天だ。まさか、単なる伝説で実在はしないんじゃないかと言われた程の稀な能力者が今、目の前にいる男だと言うことにだ。戯言と否定してもいいが、目の前で文殊を使うところを見ているのでそれも出来ない。あいた口が塞がらないとはこのことだ。
これで、完全に自分はなすすべを失くしたと悟ってしまった。この男が本気になったら文殊で自分を滅することなぞ簡単に出来てしまうからだ。

「ハァ・・・なんかどうでもよくなったわ。さぁ、好きにしなさい」
「と言われても俺らはもうどうにもする気はないが?」
「私の首を政府に持っていって金をとってきたら?」
「だから、なんもする気はねぇって・・・」
「ふん、口ではなんとでも言えるわ。人間なんて信じられないわよ」
「やれやれ。どうやって、納得してもらおうか・・・そうだ!」

完全に諦めきったタマモは好きにしろと言うが横島達はタマモに何もするつもりはないのでそっちこそ好きにしろと言いたかったが、タマモは信じない。そう簡単に人間不信は拭えないようだ。そこで横島は新たに文殊を4つほど生成した。それに念を込め、おキヌ、雪蛍、タマモに一つずつ渡す。
込めた文字は<伝>。ただし、タマモに渡した文殊だけは<心>の文字が入っていた。

「いまから、お前に俺らが何を思っているのか送るからな。これなら信じて貰えるよな?」
コクリ。

タマモが頷くのを確認すると、文殊が発動した。3人の心がタマモの持っている文殊を通してタマモに伝わっていく。

おキヌの――
幽霊時代に優しくしてくれたみんなのこと。
記憶が戻ったときに自分のために祝ってくれたみんなのこと。
それからちょっぴり、横島への想いも・・・

雪蛍の――
暖かいクラスメイトのこと。
自分が復活したときに前にいたのが横島じゃなかったときを思ったときに感じた恐怖。
それとやっぱり、横島への想いも・・・

横島の――
妖怪も、神族、魔族、もちろん人にもいい人はいること。
ルシオラのことも・・・

しかし、3人の共通な想いは、タマモと仲良くなりたいのであって傷つけようとは考えてなかった。その純粋な想いが文殊を通してタマモの心に染み込んでくるようだった。
タマモは涙を流した。
この人達なら信じられるかもしれない。特に、同じ妖怪である雪女が兄と慕ってやまないこの文殊使いなら。
するとタマモの持っていた文殊の文字が変わった。

<伝>

すれに気付いた横島達も文殊の文字を<心>に変える。
今度はタマモの心が伝わって来た。

タマモの――
生まれたばかりなのに、突然大勢の人間に囲まれ殺されそうになった恐怖と憎しみ。
自分は生まれてはいけなかったのか?と言う悲しみ。
ただ自分は安全に暮らしたかったと言う願い。
誰も助けてくれない。自分一人だと言う孤独感。

その全てが横島に、おキヌに、雪蛍に伝わる。おキヌと雪蛍は思わず涙を流し、横島はこの薄幸の少女を救いたいと思った。

横島は泣いているタマモを抱きしめて言う。

「タマモ・・・お前は生まれてよかったんだ。他の誰が認めなくても俺は認める。」

「お前は安全だ。お前を傷つけるやつから俺が全力で護ってやる」

「お前は一人じゃない。俺がいる。俺が助けてやる」

「孤独はツラかったろう。だが、今度からは俺がいる」

「俺が孤独からお前を救ってみせる」

「だから、もう悲しむことなんてない。泣きたいなら泣け。俺がついてるから・・・な」
「う・・・うわぁああああああああああああああああああああああああああああ」

横島の言葉でタマモの押さえていた想いが一気に火山の如く噴き出す。

「私は認めて欲しかった・・・ただ、安全に生きたかっただけなの!寂しかったの!苦しかったの!でも、助けなんてなかった。一人で生きるしかなかったの」
「ああ」
「信じていいの?頼っていいの?私、妖怪だよ?迷惑いっぱいかけるよ?それでもいいの?」
「たりめぇだ。信じろよ。頼れよ。妖怪がどうした?迷惑がどうした?そんなことで俺はお前を捨てたりはしない」

「俺はお前の味方だ」

泣きじゃくるタマモを優しく包み込むように抱きしめる横島。そんな温もりが嬉しくて待ち望んでいて余計に泣けてしまうタマモ。普段は嫉妬するところだが、文殊を通してタマモの想いを知り、優しく見守っているおキヌと雪蛍だった。

横島は自分の部屋に戻ると、普段なら自己鍛錬をするのだが、今日はなにやら考え込んでいる。今回のタマモの事件で横島にはある考えが浮かんで来たのだ。一通り頭の中でその考えを整理する。その夜はそれで頭がいっぱいになり横島は初めて自己鍛錬を怠ったのだった。

――翌日――

あの後、泣き疲れて寝てしまったタマモは雪蛍が自分の部屋に連れて行き一緒に抱き合うように眠った。まるで、同じ不安を抱えていた者同士が互いを支えあうように。遅かったのでおキヌも泊まることになり、空いている部屋を使わせてもらった。
ここで、おキヌは小鳩でさえ泊まったことがない横島の家に泊まったことになる。そんな話は今は関係ないので置いておく。
朝、起きて昨夜の夕飯がそのままだったのを思い出し食べずに片付けるというトラブルがあったりしたが。

横島達は軽く朝食をとった後、事務所に行くことにした。朝食のときに雪蛍の料理スキルを目の当たりにしたおキヌは密かにライバルに認定するのだった。
事務所に着くとそこには・・・

笑顔を見せる美智恵と――

なにやら顔が青くなっている西条――そして。

夜叉・・・のような顔をした美神令子が迎えてくれたのだった。


あとがき

妄想爆発!!ラッフィンです(笑)

まず、みなさんに謝らねばならぬことが・・・
タマモは横島と同居する方向になりそうです。というかなります。
この話を書いていく内に、この話になってこの流れでタマモ美神のとこに居候とか山に帰るとかいう流れにもってけなくなってしまったと・・・

つうか私自身がタマモ同居の方向にもってきたいと(爆)

いえ、なんでもありません。でも、タマモゲストキャラにっていう意見が多かったことに驚きでした。
みなさんに意見を出して頂いたのに申し訳ないですが、そういうことになりましたので・・・ごめんなさい。

次回は横島が西条に耳打ちした内容が明らかになります。
これからも、見捨てられないように頑張ります。

レス返しです


ヒガンバナ様

雪蛍を気に入っていただけたようでなによりです。小鳩VS愛子ですが、そこにキヌも参戦するかもしれませんwこれは・・・黒くなりそうです。ガクガクブルブル

弁当ですか〜・・・『最』『終』『地』『獄』では厳し過ぎるでしょう!!
『完』『全』『消』『滅』ですよwww


SS様

私も思わず妄想が爆発してにやけてしまいます。
麗奈と瑞希が気になりますか?近いうちにまた出しますのでお待ちください。


通行人S様

すいません、英断できませんでした・・・あの話の流れで3にはもってけなかったもので・・・これも私の文才並びに想像力が乏しかったことが原因です。
申し訳ありませんでした・・・


whiteangel様

ご希望通りになります。
>あ、横島の理性が持たないかも・・・・・?
大丈夫ですよ。部屋が別々だし・・・たぶん。
あ、でも私の妄想が爆発したら・・・


knt様

雪蛍へのフォローはしておきます。
せっかく意見を出していただいたのに申し訳ないです。


帝様

除霊委員はしばらくお待ちください。ちゃんと活躍する話も書きたいと思ってますので。その前にこの事件の仕上げを書かないとどうしようもないので。

>あと眼鏡ッ娘みたいですが表記ないですねえ
すいません、修正しておきました。
GS自体に眼鏡っ子って少ないですし・・・かけてるのって神父とか男だし。
>私は眼鏡属性はないのでどーでもいいですけどw
そんなこといわずになってみません?(笑)


LINUS様

すいません、愛子が関わってないので難しいかと・・・
発想はありなんですが・・・


meo様

>冥子の所に
この人も事件に関わってないので無理かと・・・
>そういえば実際の仕事でもUFOキャッチャーしてましたね
そこからヒントを得ましたw
>あの時っていくらかかって誰が料金出したんだろう?
やっぱり横島では?


ハワイアンデブ様

>タイトル変わっていたので見逃しそうになってみたりしましたw
すいません、事前にタイトル変更しますと告知していればよかったですね・・・
ただ、タイトルは掲載直前に決まったので告知は出来なかったと思いますが・・・

意見をありがとうございます。結局1になりました。


シシン様

これからおキヌ参戦で嫉妬も黒くなりそうですw
怖いですね〜・・・可愛いといってられるか不安です。

>自分もLINUS様の意見に一票
すいません、事件に関わってないんでタマモが心を開くのは難しいので出来ません。
学園編もちゃんと考えてあります。ちょくちょく出てくるでしょう。学園メインの話はしばらく先になりますが・・・


流れ者様

愛子は横島にチョコを送っていたので好意はあるかと思いこういう話にしました。
オリキャラの二人は横島に好意はありますが、友達としてです。恋愛のではありません。今のところは・・・この先どうなるかは決めてません!
>今後の愛子の活躍にも期待してます!
頑張ります!!


意見を出してくれた皆様。ありがとうございました。意見とは違う方向になってしまった方が多いと思いますが、これからも私の作品を読んでもらえたら幸いです。

では、次話でお会いしましょう。

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

PCpylg}Wz O~yz Yahoo yV NTT-X Store

z[y[W NWbgJ[h COiq [ COsI COze