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「雪之丞と少年2(GS)」

紫水晶 (2006-07-12 23:58/2006-07-13 19:09)
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 アシュタロスの事件から一年。その前歴のため、GS試験受験に難色を示されていた雪之丞だったが、美智恵が高校に通い、卒業後はGメンに就職するという条件でGS協会に掛け合ったお陰で無事受験、免許を取る事ができた。現在は横島たちが通う高校に転入し、学業の傍らGメンで除霊のバイト(と言っても、やってることは隊員たちと同じ。)をしている。ちなみに現在の住居はGメンの社宅である。

「やぁ、雪之丞君。除霊は終わったのかい・・・って、その子は?」
 オカルトGメンの事務所。雪之丞に気付いた西条が声をかけた。
「いや、実は・・・。」
西条に事情を話す雪之丞。その間、雪は大人ばかりで不安なのか雪之丞の背に隠れていた。
「なるほど、事情は分かった。・・・まぁ、本来は児童相談所と警察の管轄だけれど、霊能絡みだしね。実際助言を求められる事もあるし、彼の事はこっちで何とかしておくよ。」
「頼みます。」
Gメンで働くようになって、少しずつ敬語を使うようになった雪之丞。
「初めまして、雪君。僕は西条輝彦って言うんだ。」
「西条・・おじさん?」
「・・・うん、そうだよ。雪君のお父さんの名前を教えてくれないかな?」
おじさんと言われた事に傷付きつつ、西条は問いかける。
「お父さんの名前は、日下洋介です。」
「そっか。・・・じゃあ、僕は先生に伝えてから取り掛かるから。報告書は明日でもいいよ。」
そう言って、西条は美智恵の執務室に向かって行った。

 それから暫く。来客用のソファに座って、雪之丞と雪は缶ジュース(雪之丞は缶珈琲)を飲んでいた。数少ないGメンの隊員たちが、差し入れと称して持ってきた菓子の山を片付けながら。
「しかし、何処にこんな沢山仕舞ってあったんだ?」
ある者はデスクの引き出しから、またあるものは自分のロッカーから。小さなお客さんに嬉々として出してきた菓子の量が、如何考えても引き出しやロッカーの容量を越しているような気がして雪之丞は首を傾げていた。ちなみに一番多く持ってきたのは、日頃ダイエットを叫びつつ体形がふくよかなままの女性事務員で、あんなにあれば痩せないよなと納得してしまった。
「食べかすついてるぞ。」
堅焼きせんべいをほお張る雪の頬に付いた食べかすを取ってやる雪之丞。意外と面倒見がいいようだ。
「ありがとう。・・・でも、本当に全部食べちゃってもいいの?」
「全部お前に、って持ってきたんだから構わねぇよ。食べきれないなら別だけどな。」
「そうよ。食べちゃって。」
近くにいた隊員も言う。
「そう、なの?」
「そうなんだよ。ほら、食べちまえよ。勿体ないだろ?」
「・・・うん。」
嬉しそうに笑うと、雪は菓子の山の中から大福を取って食べ始めた。

 一方その頃。美智恵に雪のことを報告した西条は、雪の父を見つけ出し、Gメンに呼び出した。
「ですから、日下さん。あなた方が雪君にしたことは殺人未遂ですよ?ウチの隊員がタイミングよく、保護出来たからよかったものの、そうじゃなければ雪君は殺されたでしょう。これは犯罪ですよ?」
「何を言ってるんです?あのビルに悪霊がいたことを証明できるんですか?」
とぼけようとする日下に、西条は低く嗤った。
「証明なんて簡単ですよ?まずウチにはあのビルに関する霊障の報告書がありますし、現場に除霊しに行った隊員からの報告もあります。それに、残留霊力と言う物がありますからね。・・・ご存知なさそうですから説明しますとですね、強力な霊がいた場所にはですね、霊力が残るんですよ。それを私たち霊能力者は感知できますし、強力な精神感応能力者がいれば霊感のない一般人の方でも分かるんです。そう、警察官や、検事の方にもね。ウチの隊員というわけではないですけれど、強力な精神感応能力を持った協力者がいますから、悪霊がいたことの証明は簡単ですよ。・・・まだ、言い逃れなさいますか?」
「・・・雪は俺の子供だぞ!!子供を如何しようと俺の勝手だろう!!」
「子供はあなたの被保護者だが、あなたの所有物ではない!!」
「何であんな化け物を庇うんだ!!」
「雪君は霊力が高いだけで化け物ではない!彼ぐらいの霊力を持っている者は現役GSにも何人もいる!彼は化け物でもなんでもない!!あなた達のほうがよっぽど化け物だ!!」
身勝手な事を喚く日下に西条は怒鳴り返す。一つため息を吐くと、西条は冷静な態度に戻って、
「あなたたちの事を、警察と合同で殺人未遂事件として立件します。」
と宣告した。

「雪之丞君。」
 雪之丞と雪のところに、美智恵と西条がやってきた。
「立件する事になったわ。」
「そうですか。」
雪の前なので詳しくは言わず、ただ立件とだけ美智恵は言った。
「でね、雪之丞君。あなた、雪君を引き取らない?」
「・・・俺、未成年なんですけど。」
「そうね。だから書類上は私が身元引受人よ、あなたと同じくね。けど、私も、他のGメンの隊員も霊能力者の家に生まれて、霊力を制御する術を持っていたから霊力があるからと疎まれたりした事はないのよ。それじゃあ細かなケアが出来ないわ。その点、雪之丞君なら同じ経験をしているから理解できるでしょうし、何より雪君、あなたに懐いているじゃない。」
「雪之丞君、君も分かってると思うが一般家庭に生まれた霊力の高い子供が疎まれるのは、その力を制御できないからだ。雪君が自分の霊力を上手く制御できない以上、普通の施設に入れるとどうなるか分かるね?霊力が高い子のための施設も今のところないしね。」
二人に言われて、雪之丞は雪を見る。
 今まで、味方のいなかった雪。このまま施設に送られたら自分と同じように、いや、自分はまだ母に愛され、味方になってくれた記憶があるからまだましだったが、そんな記憶がない雪は自分以上に深く暗い、這い上がれないような所に堕ちてしまうかもしれない。
「・・・分かりました。」
「よかったわ、受け入れてくれて。」
「けど、雪の学校は如何するんです?まともに行ってないみたいですし。」
「その事なんだけれど雪之丞君、あなた霊峰学園って知ってる?」
「霊峰学園、ですか?いいえ。」
「まぁ、ほぼ無名だから知らなくても無理ないわね。設立されたのも10年くらい前の新しい学校だから。この霊峰学園は小学校から高校までのエスカレーター式の霊能の専門学校なの。」
そう言って美智恵は近くの棚から一冊のパンフレットを取り出した。
「ここはね、GS協会が設立したところなんだけれど授業カリキュラムもしっかりした物だし、私や令子といった現役のGSが授業しに行く事もあるし、霊能科で有名な六道女学院と比べても遜色ないわ。此処2,3年のGS試験の合格者のうちの2割は此処から出てるのよ。」
「そのわりに無名なんですね。」
「まぁ、霊能教育の分野では六道女学院が有名だし、日本の霊能力者社会の2/3くらいは六道閥だから、中々話題にならないのよ。私も六道閥だしね。・・・そんなことは兎も角、此処なら霊力があるからという理由での苛めは起きないと思うわ。それに、此処はどちらかと言うと突然霊力に目覚めた子や、雪君みたいな子が多いからすぐになじめると思うし。如何かしら?」
「雪は、如何したい?」
「え?」
「雪は、此処の学校に行きたいか?雪が通うんだから、雪が決めろ。」
突然言われて戸惑う雪。その様子に西条は笑って、
「まぁ、今すぐ決めなきゃいけないという訳でもないからね。パンフレットを持っていって、ゆっくり考えればいいよ。」
「はい。」
「じゃあ、雪之丞君、今日は上がっていいわよ。雪君の生活用品揃えないといけないでしょ?」
「あ、はい。分かりました。」
「大丈夫、お金?足りる?」
「此処でのバイト料で、大丈夫です。」
現在の雪之丞の時給は横島の約15倍である。危険手当は勿論別だ。これは雪之丞が貰いすぎているのではなく、横島が貰わなさ過ぎなのだ。大体、命の危険の付き纏うGSという仕事なのだからその給与は高くて然るべきなのだ。最もオカルトGメンは公務員なので、もっと高い給与を貰っている物は幾らでもいる。タイガーが貧乏なのは故郷の家族への仕送りと、彼女とのデート費ですっ飛んでいってしまうからだ。
「そう。ならいいんだけど。じゃあ、明日は日曜日だから9時出勤ね。」
「分かりました。じゃあ、これで。」
そう言って、雪之丞は雪の手を引いてオカルトGメンの事務所を後にした。


二話目です。予定よりも話が進まなくて少し困りました。次の話以降は、原作であまり出番のなかったキャラたちを出したいのですが、そこまで行くのかちょっと不安です。

7/13脱字修正。大仏さん、ご指摘ありがとうございます。

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