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「雪之丞と少年3(GS)」

紫水晶 (2006-07-17 23:43/2006-07-18 14:27)
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 デパートで必要な物を買い揃え、雪之丞は雪と共に社宅に戻った。社宅に戻る頃にはすっかり辺りは暗くなっていて、夕食の準備をする雪之丞の邪魔にならないように雪は大人しくダイニングテーブルの椅子に座っていた。
 持ってきた霊峰学園のパンフレットも読み終わり、手持ち無沙汰になった雪がきょろきょろと辺りを見回していると、棚の上に置かれた写真たてが目に入った。線の細い、それでいて強い意思を感じさせる女性と、幼い雪之丞が写っていた。
「俺のママだ。綺麗だろ?」
夕食を運んできた雪之丞が言った。
「うん。」
「俺も、お前と同じで化け物扱いされたんだ。でも、ママは家を出て俺を育ててくれた。・・もう、死んじまったけどな。」
「死んじゃったの?」
「ああ。」
「淋しい?」
「そうだな・・、昔は淋しかった。今はそれ程でもないけどな。」
「如何して?」
「仲間がいるからな。あいつらといると淋しいと思う暇がねぇ。」
「僕にも、できるかな?」
「俺にだってできたんだから、雪にもできるだろ。大丈夫だ。」
ぽん、と。雪の頭を軽く叩いて、雪之丞は笑った。
「ほら、飯にするぞ。」
そう言って雪之丞は持ってきた夕食をテーブルの上に並べ始めた。ちなみに夕食は全て雪之丞の手作りである。一人で生きてきた時間が長いので、家事全般は得意だ。横島にたかりに行っていた時、いつもカップラーメンを食べていたのは、材料を買う金がなかったという事と、横島の家にまともな食材がなかったからである。
 夕食(献立はパンバーグとオニオンスープ。)を食べながら、雪之丞と雪は学校のことを話していた。
「お兄ちゃん。」
「ん、何だ?」
「この学校に行ったら、友達できるかな?」
「そうだな、できるかもな。」
「そっか。」
「ああ。」
「・・・お兄ちゃんは、学校楽しい?」
「昔は楽しくなかったけどな。・・・今は、楽しいぜ。」
「僕も、楽しいって思えるかな。」
「友達ができれば楽しいって思えるんじゃないか?」
「そうなの?」
「ああ。俺は、そうだ。」
「そっか。」
雪之丞の答えに考える雪。
「お兄ちゃん。」
「何だ?」
「僕、学校行ってみるよ。」
「・・・そうか。」
頑張ってみる、と。何かを決意したように言う雪に、雪之丞は笑った。

 翌日。Gメンの仕事が終わり、雪之丞は雪の転入手続きのため霊峰学園に来ていた。書類を理事長に提出し、認印を貰えばいいのだが、理事長室が何処にあるか案内図を見てもよく分からない。校内のことなら関係者に聞けばいいと判断し、近くを通りかかった生徒に声をかけた。
「あの、理事長室って・・お前、 陰念!」
「ん?お前、雪之丞!」
通りかかった生徒は陰念だった。
「オイ、そう身構えるなよ。一応更生したんだ、俺は。」
「更生だと?」
身構えている雪之丞に苦笑しつつ、陰念は言った。
「おう。」
「如何いうことだよ?」
「俺、GS試験の後、妙神山で会長たちと一緒に治療してもらってたんだよ。・・で、まぁ、そん時俺の治療してくれた女神に一目惚れしてよ、それでつり合う男になろうって思ってな。」
照れたように頭を掻きながら言う陰念に、毒気を抜かれたような表情をして雪之丞は笑った。
「で、お前こそ如何したんだよ。ここに入るのか?」
「いや、ここに入るのは俺じゃねぇんだ。」
「?」
雪之丞は陰念に今までのことを話した。
「成る程なぁ。・・・けど、お前変わったよな。」
「そうか?」
「前は他人の事なんて全然気にしてなかったじゃねぇかよ。興味が在るのは強い奴だけで、雪だっけか?前ならお前、助けたりしなかったんじゃないのか?」
 陰念に言われて雪之丞は考える。確かに、そうかもしれない。あの頃はただ力だけを求めていた。母の望んだ強さの意味を考える事もなく。力こそが、強さだと誤解したまま力だけを求め続けていたあの頃なら。雪を見捨てていたかもしれない。けれど、雪を見捨てたりしなかったのはきっと、横島たちに出会ったからだ。雪之丞はそう思った。横島たちが、真の強さを教えてくれた。力だけが、全てではないと。
「・・・そうだな。」
「今の方がいいと思うぜ、俺は。今の方がずっといい顔してるしよ。」
「お前もな。」
そう言って二人で笑いあった。暫く笑い合っていると、陰念は真剣な顔になって、
「勘九郎は、結局魔族になっちまったんだよな。」
「ああ。・・・妙神山で聞いたのか?」
「おう。・・・まぁ、最後に止めを刺したのがお前でよかったと思うぜ?」
「そう、か?」
「見ず知らずのGSだとか神族とかに殺されるよりはマシだったんじゃねぇか?・・・なんだかんだ言ってお前ら仲良かったしよ。魔族として悪行を重ねたわけでもねぇんだし、ちゃんと人間に転生できるだろうって言ってたしな。」
「そうなのか?」
「ああ。だから、気に病むなよ。」
陰念はそう言うと、軽く頭を振って、
「そういや、お前理事長室に行くんだったよな。付いて来いよ。」
「ああ、頼む。」
くるりと背を向け歩き始めた。雪之丞は陰念の後を早くも遅くもないスピードで追いかけていった。

 書類に認印を貰った雪之丞は一度社宅に戻り、雪を連れて霊峰学園の制服を買いに洋品店に向かった。
「雪之丞じゃねぇか。」
「おう。」
洋品店に向かう道すがら、横島と、横島に叱られているシロに会った。
「雪之丞殿、その子供は誰でござるか?弟君にしては似ていないでござるが・・・。」
雪の顔立ちは幼少時の鬼道に似た優しい顔立ちなので、目付きの悪さからキツイ印象を与える雪之丞とは全く似ていない。
「雪だ。事情があって俺が預かってる。・・雪、バンダナしてる奴は俺の親友の横島だ。で、一緒にいるのが横島の一番弟子のい・・・狼の嬢ちゃんで、シロだ。狼の嬢ちゃんは人狼で、実はお前と大して年が変わらん。」
「雪之丞殿、今拙者のことを犬と言おうとしなかったでござるか?」
「横島は昨日行ったオカルトGメンの事務所の隣にある除霊事務所でバイトしてるし、狼の嬢ちゃんはそこで居候してるからなんか遭ったら頼れよ。」
「うん。」
シロの文句をスルーして雪之丞は雪に言った。
「おいおい、勝手に決めんなよ。つーか、美神さんがただ働きするわけないだろ?」
「大丈夫じゃねぇか?雪の身元引受人は隊長だし。」
「なら大丈夫か。・・・じゃ、よろしくな雪。」
軽く屈んで横島は笑った。
「よろしくお願いします、横島のお兄ちゃん。」
「拙者もよろしくでござる。」
「うん。・・・シロちゃん。」
見た目はシロのほうが年上だが、雪之丞が年が変わらないと言ったためにシロはちゃん付けだ。だがシロはそれが気に入らないらしい。
「拙者だけ“ちゃん”でござるか?」
「狼の嬢ちゃんは確か9歳だろ?こいつのほうが一つ年上だぜ。」
「じゃ、俺らは事務所に行くから。」
「おう。明日は学校に来いよ。」
「そろそろ単位がヤバいしな。明日は行く。」
じゃあな。そう言って横島はシロを連れて雪之丞たちとは反対の方に歩いてき、雪之丞と雪も洋品店に向かって歩き出した。


と言う訳で、陰念に登場してもらいました。陰念が更生している話って私は読んだ事がないので、更生してもらいました。チンピラくらいなら愛の力で更生できるかなぁと思いまして。シロの年齢は、初めて横島たちとであったときに女に見えなかったので実年齢9歳としました。

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