唐巣神父から4つの弟子入り先を紹介された翌日、神父は旅立って行った。
俺とヒャクメは地図を片手に最初の弟子入り先へと向かっている。
「それで最初はどこに行くのね〜?」
「ああ、ここだよ。」
そう言いながら俺は紹介状をヒャクメに渡した。
そこには『美神令子除霊事務所』と書かれていた。
「お邪魔しまーす。」
そう言って俺たちは最初の弟子入り先へと足を踏み入れた。
「はい。どなたでしょう?」
俺たちを出迎えてくれたのは燃える様な赤い髪の女性だった。
「俺は唐巣神父の紹介で・・・・」
「ああ、聞いてるわ。短期の弟子入り希望の人ね。えっと・・・」
「はい。横島忠夫といいます。お世話になります。」
「私はヒャクメなのね〜。」
「私はここの所長の美神令子。とりあえず立ち話もなんだから中に入って。」
「はい。失礼します。」
中へと通された俺たちはソファに座って詳しい話を始めた。
「えっと、たしか力の制御のために修行をしたい。で、よかったっけ?」
「ええ、そうです。」
「OK。それと聞いてた話だと弟子入り希望は一人だったと思ったけど?それにあんたもしかして・・・」
そう言いながら美神さんはヒャクメを指差した。
「私は単なる付き添いなのね〜。それと御察しのとおり私は神族なのね〜。」
「つ、付き添い?それになんで神族がこんな所にいるのよ!?」
「それは・・・」
ヒャクメは事のいきさつを美神さんに話し始めた。
「なるほど。彼が力に目覚めたのはあんたのせいなわけね。でもあんたがこっちに来れるんならあんたが教えればいいじゃない?」
「私は力の制御は教えられてもそのための霊力の修行は正直専門外なのね〜。」
「ふ〜ん。まあいいわ。ほんとならこんなめんどくさいこと御免なんだけど・・・」
そういいながら美神さんはため息を一つつくと
「まあ短期だし先生の紹介じゃしょうがないか。OK。詳しい話に入りましょ。」
そう続けた。
「はい。お願いします。」
「とりあえず弟子入りはするとして、修行のほうなんだけどしばらくはここで基礎の修行を続けなさい。ここは結界がはってあるから外でするよりは効果があるわ。」
「はい。」
「それで仕事のほうはしばらく荷物持ちでもお願いするわ。」
「わかりました。」
「最後にお給料なんだけど・・・」
「え!?」
「なによ?なんか希望でもあるの?」
美神さんはジト目になりながらこちらに視線を向けてきた。
「いえ、そうじゃなくて・・・お給料なんかもらえるんですか?」
「へ?いらないの?」
「いや、だって修行を見てもらう代わりに仕事をお手伝いするわけですから。これ以上何かしらしてもらうわけにわ・・・」
俺がそう言うと美神さんは満面の笑みを浮かべて、
「そう。そういえばそうね。じゃあお給料の話はお終い。それじゃ仕事の話に入るわね。」
そう続けた。その時俺に美神さんの大きな心の声が聞こえてきた。
(ラッキー!!ただで労働力ゲットー!!)
クッ、何だ?力の制御はしてたはずなのに。
その後も恐ろしいほどの美神さんの金に対する心の声が聞こえてきた。
どうやら美神さんはかなりお金が好きらしい。正直・・苦手なタイプかも。
それから数日。俺たちは週末を利用して地方の除霊現場に来ていた。
場所の名前は『人骨温泉』。なんでも温泉旅館にでる幽霊の除霊が仕事内容らしい。
そこは4月の頭というのに今だ雪の残る山の中の温泉郷だった。
「ぜー、ぜー、す、すいません美神さん。後から追いつきますから先に行っててください。」
俺は山の中腹で荷物の重さと酸素の薄さにより体力を使い果たしてしまった。
「そう?じゃあ悪いけど先に行ってるわよ。場所はここだから迷わないでくるのよ。」
そう言って美神さんは地図を渡すと先に行ってしまった。
「ふ〜。疲れた。・・・ここなら誰もいないよな・・・」
俺は周りに人がいないことを確認すると力の制御をやめた。正直制御するのもきついほど疲れた。
「このところハードだからな〜。美神さんのお金好きにも困ったもんだ。」
ここ数日かなりこき使われて確信したのがあの人は筋金入りのお金好きだということだ。
しかし、俺はそれに違和感を感じていた。あの手の人は何かしら苦手意識を持つのだが美神さんにはそれをあまり感じない。
「まあ今回も交通費がもったいないって言ってヒャクメを置いて来ちまうぐらいだから、お金好きは間違いないんだけどな。」
そうこぼしてからそろそろ行こうとした時俺に声が聞こえてきた。
(あの人がいいわ。あの人なら・・・)
俺がその声の主を探すべく振り返ると・・・
「えい!」
巫女装束の女の子がこちらにすごい勢いで向かってきていました。
「うおっと!?」
俺は女の子を何とかかわした。
「ああっ、また失敗・・・」
女の子はそう言ってから徐々に体を消し始めた。・・・・幽霊!?
「ちょ、ちょっとまって!」
「はい?」
俺が呼びかけると女の子は律儀に待ってくれた。
「きみ幽霊だろ?なんで俺に向かってきたの?」
「うう、実は・・・」
話を聞くと彼女の名前はおキヌ。300年前に人柱になった幽霊らしい。
「そういった霊は普通山の神様になるらしいんですけど・・・私才能なくって・・・」
そう言いながら彼女は涙目になると・・・
「ごめんなさいっ。私あなたなら私のかわりになってくれるかもって、それで成仏できるかもって・・・それで・・それで・・」
「わっ、わかったから泣かないで。俺は気にしてないから。」
「ううっ、すみません。えっと・・・」
「ああ、俺は横島忠夫。それでおキヌちゃん、きみは成仏したいんだね?」
「はい。できることなら。」
「実は俺はGSのお手伝いできていてね、おキヌちゃんは温泉なんかに化けて出たことある?」
「いえ、私は一度も・・・」
「そっか。違ったみたいだけど美神さんなら何とかしてくれるかも。」
「ほんとですか?」
「ああ、どうなるかわかんないけどとりあえず付いて来てくれるかな?」
「はい!」
俺は荷物を担ぐとおキヌちゃんを連れて美神さんの元に向かった。
俺が仕事先の旅館につくと美神さんが男の幽霊をしばき倒してました。
「あら横島君遅かったわね。?その後ろの幽霊はどうしたの?」
「実は・・・」
俺はおキヌちゃんを紹介して事情を話した。ちなみにその間男の幽霊は美神さんに踏んずけられてました。
「ふ〜ん。なるほどね。ねえあんた?」
話し終わると美神さんは今まで踏んでいた幽霊に話しかけた。
「な、なんでありますか?」
「あんた山の神様になってみない?」
「!な、なるであります!やるであります!」
そう聞くと美神さんは霊力を高めてなにかを唱えた。
俺はその時のことをあまり覚えていない。なぜなら俺には美神さんの心の声が聞こえてきたから・・・
言葉の意味は理解できない。しかし圧倒的に強くたった一つのことを成さんとする意志の声。これがプロのGSの力か!?
俺がそのことにしばらく呆然とし、気がつくと男の幽霊の姿は消え、
「成仏ってどうやるんですか?」
と間の抜けたことを聞くおキヌちゃんがいた。
その後俺はあわてるおキヌちゃんを慰め、美神さんはしょうがない。といった顔をして彼女をしばらく雇う形で預ると言ってくれた。
俺はその時の美神さんの顔を見てなぜ彼女に苦手意識を持たないのかを理解した。
美神さんはお金が好きだ。これは間違いない。
ただ彼女は人に対する優しさを失っていない。
お金に歪まされた人は優しさを失い、身内でさえ信じられなくなっていく。
しかし彼女はそれを失っていない。それをひた隠しにしているが決して失わない。
俺はそれをどこかで感じていたのだろう。だから彼女にそれほど苦手意識を持たなかった。
それに気がつくと俺は理由もわからず嬉しかった。
だからだろうか?俺は今だ話を続ける二人を見ていると自然と笑顔になった。
あとがき
問題が発生しました・・・コミックスの一巻が行方不明に。うわーんうろ覚えで書きました。まあおキヌちゃんが出てきたから良し!!私はおキヌスキーなんで。
・・・・ごめんなさい。さて次はどこに行きましよう?
レス返しです
初めに感想、ご意見を寄せていただいた皆様に感謝を・・・
たたたん様
美神さんの話が今回なんですが・・・六道母をどうしましょう。出した方がおもしろいんですがあつかいが・・・悩みます。
鳳雛様
はじめましてです。応援ありがとうございます。私も新参者なんで見守ってくださいね。
ゆん様
とりあえず当たり障りなく美神編でした。ある程度の制御ができるためそんなに嫌われることはないと思います。今後どうなるかわかりませんが・・・
樹海様
予想ありがとうございます。さてどうなることでしょうか?
SS様
それも悩みの一つです。六道家・・・実は最初冥子に弟子入りする話を書いたんですがボツにした経験がありちょっと悩んでます。
斉貴様
今のところ美神にしろエミにしろ横島君を「男」として見ていないんでしばらくはそうならないと思います。でもご意見は正直かなり参考になりました。
EVE様
今回かなりご意見参考にさせて頂きました。本当にありがとうございました。
kamui08様
え〜サイキック・ソーサーは修行終了時にある程度の弱点の克服は出来ています。う〜ん説明不足を痛感しています。反省。
サイ様
ご期待に沿えるかどうかはわかりませんが、がんばります。
ガバメント様
メドーサ人気ありますね〜。いつ出しましょう?
ジェミナス様
ジェミナス様のご意見もかなり参考にさせていただきました。ありがとうございました。
いしゅたる様
ちょっと考えましたが・・・そうすると横島君が力を悪用しそうなので・・ごめんなさい。
けー様
眼を拾ったのは転校前です。なので夏子もしってますよ。横島君の希望の光のひとつと思ってもらって問題ありません。
こ・さいん様
応援ありがとうございます。本当にメドーサどうしましょう?
亀豚様
ギャグ今回はあんまりなくて申し訳ありません。やはりヒャクメは必要だったかな・・・
内海一弘様
ご意見ありがとうございます。実は冥子のところ以外話の構想は出来てるんですが・・・賛否両論分かれそうなんでどうなるかわかりません。お楽しみに。