妙神山から下山した翌日。
俺は高校の入学式をすますとその足で唐巣神父の教会に来ていた。
「それじゃあキミの力の制御には成功したんだね?」
「ええ、小竜姫様とヒャクメのおかげでなんとか。」
「そうか、それはよかった。」
そう言って唐巣神父は人のいい笑みを浮かべた。
俺は妙神山でわかったことや、修行の内容を唐巣神父に話した。
「ふむ。しかし原因が忘れ物とは・・・神も酷な試練を課したものだね。」
「確かにそうなんですが。そうだ!実は唐巣神父にご相談したいことがあるんですが。」
「?なんだい?」
「実はヒャクメにGSに師事したほうがいいと言われまして・・・」
「そうだね。話を聞く限り確かに霊力の制御の勉強は続けたほうがいいようだね。」
そう言ってから神父は考えるようなそぶりを取る。
「私が教えられればいいんだが、生憎しばらく海外に行くことになってね・・・」
「そうですか・・・」
まあこれ以上唐巣神父にご迷惑をかけるのもなんだしな。さてどうしたものか。
「しかし何人か心当たりがあるから当たってみよう。また明日来てもらえるかな?」
「!!いいんですか!?」
「ああ、たぶん大丈夫だとは思うが・・・しかしGSに弟子入りすると言うことは除霊の際に助手なんかについてもらうことになるかもしれないが、大丈夫かい?」
う、それは自信がない・・
「あんまり自身はありませんが・・・一応小竜姫様の修行のおかげでこんなことができるようになりましたが・・・」
そう言いながらサイキック・ソーサーを作って神父に見せる
「ほう、これは驚いた。たった二週間の修行でこんなことまでできるようになったのかい?」
「はぁ、でもこれしか出来ないんですよ?」
「いや、充分だよ。これなら修行しだいではGSにだってなれるかもしれないよ?」
「いや、今はこの力の制御することで精一杯ですよ。」
「ふむ。そうだね。しかし結論を急ぐことはない。制御出来るようになってからでも試験はうけられるからね。選択肢の一つとして覚えておくといいよ。」
出来るようになってから、か。そうだな。
「はい!わかりました。」
「いい返事だね。弟子入り先のことは任せておいてくれ。」
俺はもう一度神父に礼を述べてから帰路に着いた。
俺は借りたばかりのアパートに戻り、自室のドアを開けた。
「おかえりなのね〜。」
そこには一人の神様がいました。
「どうしたのね〜?」
「どうしたのね〜?じゃなくて、なんでここにヒャクメがいるんだよ!?」
「昨日言ったとおり遊びにきたのね〜。」
相変わらず軽い!!
「いや、昨日の今日はいくらなんでも早すぎないか?それにどうやってこの部屋の場所がわかったんだよ?」
「まあ、それはきちんと説明するのね〜。とりあえず夕飯を作ったから一緒に食べながら話すのね〜。」
確かにテーブルの上には白いご飯と味噌汁。そしておかずは目玉焼きハンバーグ。
・・・・後で聞いたらやはり目玉焼きは得意らしい。どうでもいいが・・・
「それで、どうやってここがわかったんだ?」
俺たちは夕飯を食べながら話を始めた。ちなみになかなかのお味です。
「わたしはヒャクメなのね〜。それぐらい調べようと思えばいつでもわかるのね〜。」
力の無駄使いのような気がするんだが・・・
「まあそれはいい。こうして飯も作ってくれたことだしな。それじゃもう一つ。何しに来たんだ?まさかほんとに遊びに来たわけじゃあるまい?」
「半分はほんとに遊びに来たのね〜。もう半分は挨拶なのね〜。」
「挨拶?」
「そうなのね〜。私は今度から妙神山で暮らすことになったから挨拶にきたのね〜。」
「?なんで急にそんなことになったんだ?」
「それは秘密なのね〜。」
「なんだよそれ?」
「ふふふ、まあこれからもよろしくなのね〜。」
そういってヒャクメはいつもの笑みを浮かべた。・・・まあいいか・・・
「それでこれからもちょくちょく来ると思うからよろしくなのね〜。」
「おいおい、そんなに暇なのかよ?」
暇な神様はもう充分です・・・
「そんなに邪険に扱っちゃ嫌なのね〜。それにこんなにかわいい女の子が部屋に来るんだからもう少しは喜んでくれてもいいと思うのね〜。」
かわいい・・ね。でもヒャクメだしな〜。
「そ・れ・に、もしかしたらとってもいい思いができるかも・・・」
そう言ってヒャクメはいつもと違う艶めいた視線を向けてきた。
ビクッ!
「じょ、冗談はやめてくれ。」
俺が多少あわてながら返すと・・
「ふふふ、冗談なのね〜。横島さんてば照れちゃってかわいいのね〜。」
そこにはいつものヒャクメがいた。
やっぱりなのね〜。
私は彼に艶めいた話をしたときの彼の反応で確信した。
彼は『欲』が怖い・・・
おそらく多くの人間の歪んだ心の声を聞いてきたせいだろう。
人間は多くの欲を持っている。金、権力、力、異性、など多くの人間はこれらを求める。
もちろんそれが悪いこととは言い切れない。
これらの『欲』は人間の生きる気力という大切なものにだってなる。
金を求めなければ生きていけず、権力を求めなければ人はついてこない。
力を求めなければ何も護れず、異性を求めなければ人は繁殖できない。
しかしそのどれもが多くを求めすぎてしまうと心を歪めてしまう。
その声を多く聞きすぎてしまったのだろう・・・・彼は『欲』が怖い。
だから異性を求めず、必要以上の力を求めない。
彼はおとなしく礼儀正しい。おそらくそれは相手に不快感を与えないよう、自分に向けられる心の声を少しでも軽減するために自然に身につけたものだろう。
わかっている。これは私のせいだ。
しかし私は懺悔も後悔もしない。いや、してはいけない。
そんなことで彼は救えない。そんなことで償えるほど私の罪は軽くない!!
私は心の中で確認する。そしてもう一つの不安が心を過ぎる。
横島さんは明日からGSに弟子入りするらしい。
私はその不安を現実のものとしないようにしばらく彼に付いていくことにした。
翌日、俺はヒャクメと共に再び唐巣神父に教会を訪れた。
ヒャクメは学校が終わるのを校門で待っていたらしい・・・・おかげで俺に年上の彼女がいると言う噂が立ちました。高校生活二日目にしていらんところで目立ってしまった。
ヒャクメを見た唐巣神父は多少驚いたようだがいつもの笑顔で迎えてくれた。
「それで横島君、昨日の事なんだけどね。これを見て欲しい。」
そう言って神父は数枚の書類を渡してきた。
その書類は美神除霊事務所、OGASAWARA GOHST SWEEP OFFICE、六道家、闘龍寺の四つの名前が書かれていた。
「これは?」
俺は書類と唐巣神父を交互に見つめた。
「うん、実はね、短期でよければ引き受けてくれた所がこの四つでね。申し訳ないんだがこの四つを渡り歩いてもらえないかね?」
そう言って唐巣神父は頭を下げた。
「ちょ、わかりましたから頭を上げてください。こっちが無理なお願いしたんですから。」
俺はあわてて唐巣神父に頭を上げてもらう。
「そうかい?そういってもらえるとありがたいよ。」
神父は安心したようで一息つくと、
「これらのどこかに気にいられれば本格的に弟子入りできるかもしれないし、もし出来なかったらうちにくればいい。ただし、帰ってきてからだけどね。」
そう言ってくれた。はは、俺はこの人にもう頭上がらないな。
「はい。ありがとうございます。」
よし、やるぞー!!
「私もしばらく付き添ってあげるからがんばるのね〜。」
・・・・なぜだろう、俺はそのときヒャクメより、唐巣神父のほうが神様に見えた・・・
あとがき
今回のお話には皆さんのご意見をかなり参考にさせていただきました。ありがとうございました。まだ本決まりではありませんがとりあえず次回からGS行脚です。
レス返しです
初めに感想、ご意見を寄せていただいた皆様に感謝を・・・
なかあき様
この話は基本的に時間軸は原作に近いです。しかし美神(母)は面白いご意見でしたので悩みました。
ゆん様
勘弁してください。氷室神社ではさすがに続きません〜。
甲本昌利様
文章量はイマイチ感覚がつかめません。今まで短編しか書いたことなかったのでそう言って頂けるとありがたいです
kamui08様
この話ではあんまり横島君がはっちゃけませんのでたまに違う人がはっちゃけます。次は誰にしようかな?
への様
心が読めない理由は同じと考えて頂いて問題ありません。因みにヒャクメの心も読めませんよ〜。実力がつけば可能かもしれませんが難しいかな。
ジェミナス様
ヒャクメの制服姿・・・・想像できません。でも面白いかもしれませんね。
ういっす様
メドーサの希望が多いことにビックリです。一応横島君の力は元は神族のヒャクメの力なんで魔族がそれに手を出すとは考えにくかったんでごめんなさい。
SS様
応援ありがとうございます。小隆起様・・・命知らずな・・・
サイ様
このご意見がなければ唐巣神父に弟子入りしてたかもしれません。ありがとうございます。
山の影様
次から色んなキャラが出てくる予定なんで期待してみてくださいね。
クラウム様
一応それにも理由があったりします。でもやはり不自然に感じましたか・・・実力不足を痛感してます。
GON様
う〜ん、これもかなり悩みました。今後ありうるかもしれません。
tomo様
魔鈴さんは考えてませんでしたね〜。う〜ん、面白いかも・・・
斉貴様
一応今回多少の欠点を描きました。ちょっと弱いかな?
亀豚様
ご意見をかなり参考にさせていただきました。がんばりますよー。
宇宙人K@@様
GSじゃなくなってます〜。まあ問題ないような気もしますが・・・
影(仮)様
公彦案は面白いと思い少し構成を考えてみたんですが・・・霊力の制御というところで躓きました。
内海一弘様
ヒャクメがかわいいというご感想ありがとうございます。いろんなヒャクメを描いていきますよ〜。