ヒャクメに泣きながら謝られた翌日。
今朝出会ったヒャクメはいつものヒャクメだった。
よくわからんがヒャクメが元気ならいいか・・・
ただ、この日から小竜姫様の修行にヒャクメが付き合うようになった。
「今日から次の段階に入ります!」
いつもの修行に入る前に小竜姫様がそう切り出した。
「次の段階ですか?」
「はい。予想以上に横島さんの成長が早いので次の段階に入ることにしました。」
なんかやたらと小竜姫様が張り切ってる。
「それでなにをやるつもりなのね〜?」
「霊力の効率的な使い方です。」
効率的な使い方?
「たとえば、敵の攻撃が横島さんの右手を狙ってきたとします。そのときに全体に霊力を回して防御するよりも右手だけに霊力を集中させたほうがより効率的な防御が出来ます。」
?よくわからん。
「つまり霊力を使わないところに回すより使うところだけに回せるようにするのね〜。」
おお、なんとなくわかった。
「でも俺は唐巣神父みたいにGSになりたいわけじゃありませんよ?」
「まあそうなのですが、これを覚えれば霊力を制御する技術が一段階上がります。それに教えるのは基礎の部分の使い方だけなので、先ほどの説明はあまり気にしないでください。」
「はあ。」
「まあ小竜姫は武神だから説明が物騒なのはしょうがないのね〜。でも、たしかに覚えておいて損はない技術だし、それができれば力のほうの制御のも楽になるのね〜。」
力の制御に関わることなら拒む理由もない。
「わかりました。よろしくお願いします。」
「いい返事です。それでは早速修行に入りますよー!」
しかしなんで小竜姫様はこんなに張り切ってるんだ?疑問に思った俺はヒャクメに小声で問いかかけた。
「なあヒャクメ?なんで小竜姫様はこんなに張り切ってるんだ?」
「それは横島さんが予想以上に教えがいのある人だからなのね〜。二週間で覚えさせようとしたことが半分ですんだからあの子のやる気にさらに火がついたのね〜。それに・・・」
「それに?」
「この頃修行者もいなかったからさらにやる気になってるのね〜。もし横島さんが武術の修行にきてたら、それこそ死ぬ目にあってたと思うくらいなのね〜。」
・・・・シャレにならん。
「なにをひそひそ話してるんですか!始めますよ!」
「「はい!」」
なんでヒャクメまで返事するんだよ。
こうして俺は効率的な霊力の使い方を教わることになった。
ちなみにヒャクメは俺の力が無駄なく使われているかチェックしてくれるらしい。
「それではまず、いつものように霊力を引き出してみてください。」
「はい。」
そういって俺は全身に霊力を行渡らせる。これはこの一週間の修行で出来るようになったこと。と、言ってもこれしか出来んが。
「次に右手に霊力を集めるイメージを強く浮かべてください。」
イメージ・・・右手に・・・霊力を集める・・・
全体に行渡らせた霊力を右手に・・・右手に・・・右手に・・・集める!!
「!よ、横島さん!?」
俺は小竜姫様が上げた驚きの声で集中をといた。
小竜姫様達が驚いた顔で見つめる先は俺の右手。俺もその右手に視線をまわす。
俺の右手には光る六角形の盾のようなものが浮かんでいた。
「しょ、小竜姫様!これはいったい!?」
俺は驚いて問いかける。しかし小竜姫様は驚いているだけだった。
「おいヒャクメ!これはなんだ?」
そう言ってからもう一度右手を見ると光る盾は次第に薄れて行き、最後には消えてしまった。
「驚いたのね〜。あれは横島さんが作り出した霊力の塊なのね〜。」
「塊?」
「そうなのね〜。横島さんはどうやら霊力を収束する力が天才的みたいなのね〜。あれは横島さんのほぼ全ての霊力が込められてて、かなりの強度を持った盾にもなるし、投げつければなかなかの破壊力を持った武器にもなると思うのね〜。」
「そりゃまた物騒なもんだな。」
「でも、あれに横島さんの霊力がほぼ集められていた分、ほかの部分がかなり無防備になってたのね〜。もしその時にダメージをくらったら致命傷になりかねないのね〜。」
「んじゃ、使えないな。」
「まあ、訓練すればほかの部分にも霊力を回しながら使えるようになると思うから、結局訓練しだいなのね〜」
そうなのか?まあ俺は力の制御さえ出来ればいいし。
「・・・おもしろい・・・」
今まで黙っていた小竜姫様が突然、ボソッと一声もらした。
「?小竜姫様、どうしたんですか?」
問いかけると小竜姫様は突然俺の両肩をつかんで・・・・
「おもしろいです!横島さん!まさかあれだけの言葉であんなものまで作るとは!」
そうおっしゃいました・・・
「ふふふ、やはり私の目に狂いはありませんでした!横島さん!あなたはかなりの資質をお持ちのようです。・・・腕が鳴りますよー!さあ、横島さん修行を続けますよ!あなたは私がきっちり一人前の武人に育ててあげます!」
武人って・・・主旨が変わってますが・・・小竜姫様の鬼気迫る勢いが怖くて返事が出来ません。
「さあ、ガンガン逝きますよー!」
字が違います!俺は助けを求めるべくヒャクメに視線を向けたが、ヒャクメは俺に向かって手を合わせ「南無ー。」と一言だけこぼした。
そんなこんなで修行は続き、(何度か死に掛けたが。)ついに妙神山を降りる日になった。
ちなみに力のほうは不安定ではあるが私生活では問題がないくらいまであつかえるようになった。霊力のほうはあの盾を自由に出し入れできるようになり、その際の霊力の回し方もある程度のレベルになった。
ちなみにあの盾にサイキック・ソーサーという名前をつけたら微妙な顔をされた。・・・・そんなに変な名前かな〜?
「本当にお世話になりました。」
「いえ、元はと言えばこちらに原因がありますので気にしないでください。」
「そうなのね〜。ほんとにごめんなのね〜。」
俺は門の前で別れの挨拶をしている。
「それより、ここで教えたのはあくまで基礎です。これは続けるほど効果がありますからきちんと続けてくださいね。」
「はい。」
「そうねのね〜。できれば人界のGSあたりに師事するといいと思うんだけど誰か心当たりはあるのね〜?」
ふむ。唐巣神父ぐらいしか思いつかんな。
「そうだな。唐巣神父にでも相談してみるよ。」
「それがいいのね〜。」
俺はもう一度小竜姫様とヒャクメに向き直る。
「横島さん、困ったことがあったらまたここを訪ねてください。あなたは私の弟子なんですから遠慮はするんじゃありませんよ!」
そう言って小竜姫様は笑う。
「私は休みになったら遊びに行くのね〜。」
ヒャクメも笑顔で言う。
「小僧、また来いよ。」
「ああ、その時こそ我らが試しの儀を受けよ。」
鬼門たちもそう楽しそうに言う。
俺はどうやらここで力以外にも大切なものを得たらしい。
「本当にありがとうございました。必ずまたここに来ます!」
「ええ、その時を楽しみに待っています。」
「それでは!」
「「「「気をつけて(ね〜)!!」」」」
こうして俺は妙神山を去った。大切な師匠と友人の思い出と確かな約束を持って・・・
「行ってしまいましたね。」
「そうなのね〜。」
私たちは部屋に戻りお茶を飲んでいた。
「しかし、あの人はかなり大変な目にあってきたようですね。」
「!」
私は驚いて小竜姫を見る。
「何ですかその顔は。私が気がついていないとでも思っていたのですか?」
「そ、そんなことないのね〜。」
私がそう言うと小竜姫はお茶を一口飲んだ。
「横島さんがあれだけ必死に修行をするのを見ていればわかります。」
そう言ってだまって私を見つめ、私の言葉を待つ。
「・・・私は横島さんの心の声を聞いたのね〜。」
私は呟くように切り出した。
「それは神族の私ですら耳を塞ぎたくなるような、絶望と闇に彩られた声だったのね〜。」
小竜姫は何も言わない。
「その時になって私は始めて自分の犯した罪に気がついたのね〜。」
私は俯いて続ける。
「でも、横島さんの心に希望の光を見つけたのね〜。」
私はその光を思い出す。
「そこはとても暖かくて、横島さんの大切な人たちがいたのね〜。」
そう、そこで見つけた物・・・
「そこには私と小竜姫もいたのね〜。」
私は自分に言い聞かせるように続ける。
「私は気がついたのね〜。この闇を与えてしまったのは私だけど、その闇を照らす光も私が与えることができることに・・・」
私は顔を上げて小竜姫に向き直る。
「だから決めたのね〜。私は罪を償う!彼の絶望を消すことが出来るならば私の体をさしだしてもいいのね〜。」
私は自分に誓った言葉を紡ぎだした。
「そうですか、あなたがそれに気がついたなら何も言いません。」
小竜姫はそう言って優しい笑顔を浮かべた。
「ありがとうなのね〜。」
私は誓いを聞いてくれた友に感謝した。
「それで具体的になにをするつもりなのですか?」
「じつはね・・・・・・」
私は顔を赤らめながら自分の立てた計画を小竜姫に話した。
ふふふ、横島さん。楽しみにしててほしいのね〜。あなたの心は私が照らしてあげる。
そして・・・必ず、そう!必ず幸せにしてあげるのね〜!!
あとがき
また長くなってしまいました。とりあえず次は人間の師匠に弟子入りなんですが・・・
誰にしましょう?おすすめの人がいたら教えてください!!
レス返しです。
初めに感想、ご意見を寄せていただいた皆様に感謝を・・・
広君1号様
ご期待にそえますようがんばります。
やぷ〜様
はっちゃけ横島君はちょっと難しいかもしれません。でも、考えて見ますね。
がん荼毘様
純情一直線!かどうかはわかりませんがこの横島君もニブチンの予定です。
ゆん様
実はそれを少し過激にして考え付いたネタだったりします。う〜ん、鋭いですね〜。
SS様
最高のお言葉ありがとうございます。がんばります!
亀豚様
ハーレムいいですね〜。どうなるかはわかりませんがご期待くださいませ。
スタンピード様
鋭いご意見ありがとうございます。今後のヒャクメにご注目くださいませ。
海様
私はヒャクメのいい意味での軽さをあらわす為にこうしましたが、もし不愉快に思われましたら申し訳ございません。
SIN様
成長したヒャクメにご注目くださいませ。がんばります。
quiqui様
師匠誰にしましょう?本気で悩んでます・・・