前回の大絶叫から十分後、彼=心眼はなんとか正気に戻っていた。
「しかし、ここはどこだ?いやに汚い部屋だな・・・本当に人間の生活空間なのか?」
心眼の呟きも尤もである。
そこらかしこにゴミや下着が散乱し、食料と思われる物はカップ麺のみ。
そのくせ何故か台所だけは片付いている。・・・アンバランスだ。
心眼はしばらく部屋を見回していたが棚の上の写真に目をとめる。
「これは・・・家族写真か・・・どうやらこの体のものではない様だな・・・ってこれは!」
そこに写っていたのは心眼のよく知る人物・・・「横島忠夫」であった。
「つまりここは横島の部屋か・・・通りで汚いわけだ。」
変な納得の仕方をしていた心眼であったが急に顔色を変える。
「いかん!もしここで横島が戻ってきたら私は不法侵入者になってしまう!!」
「そうなると私は警察とやらに地の果てまで追い回されるのかそれだけは避けねば!!」
心眼の脳裏にGS資格試験で横島の煩悩をたくわえるに覗きをした時の光景が浮かぶ。
六台以上のパトカーから走って逃げる横島・・・。
さすがにあんな人間離れした逃走劇を繰り広げる気は心眼には無かった。
尤も住居不法侵入くらいではそこまで追い回されることは無いと思うが。
しかし現代法規にあまり詳しくない上に混乱中の心眼は冷静な思考が出来なくなっていた。
「脱出!」
ガシャーン!!
心眼は窓を割って二階から飛び降りた。
そして綺麗に着地するとそのまま何事も無かったかのように走り出した。
「ふむ、身体能力は中々だな、霊力は・・・怪光線くらいなら問題無いな、かなりの出力が期待できそうだ。」
ブツブツと独り言を言う三つ目青年・・・傍から見ると怪しいことこの上ない。
「・・・む。やはりこの姿では目立つな、しかし三つ目の隠し方など私は知らぬしな・・・小竜姫さまに相談してみるか。
となると目指すは妙神山か。」
しかしここで問題が発生する。
心眼は着の身着のままで横島のアパートを脱出した・・・つまり無一文なのだ。
そして現在地は東京、目的地は山奥。
人間の足ではとてつもない時間がかかってしまう。
「むぅ・・・どうしたものかな。」
考え込む心眼、どうでも良いが考えながらも全力で走ることを止めないのは危険極まりないのではないだろうか?
キキイィィィ・・・バガン!!
「ぐふぅ!!」
案の定横から出てきたトラックに撥ねられる心眼・・・死んだか?
「あ・あわわわ・・・オラやっちまっただか?トラック人生二十五年今まで無事故無違反でやってきたのに・・・」
青ざめた顔でトラックから降りてくる運転手。
しかし彼は奇跡を目の当たりにする!!
「あー死ぬかと思った。」
なんと心眼は何事も無かったかのように起き上がったのだ!
しかも無傷で!
・・・以前の宿主の影響でも受けたのだろうか?
「ヒィッ!?」
ビビりまくる運転手。無理も無いトラックに撥ねられた人間がいきなり起き上がったのだから。
「オイ貴様よくも人を轢殺しようとしてくれたな、事と次第によってはただでは済まさんぞ?」
明らかに心眼の前方不注意なのだがそんな事は臆面にも出さずに運転手を睨み付ける。
「ヒッ!許してけろ!許してけろ!」
本来彼に落ち度は無いのだが心眼の気合に圧されて謝りまくる運転手。
その様子を心眼は「コノウラミハラサデオクベキカー」といった顔で睨んでいたがふと何かを考え付くとニヤリと人の悪い笑みを浮かべる。
「まぁ私も鬼ではない、頼みを一つ聞いてくれれば今回のことは水に流してやろう。」
「ほ・・・本当け?オラに出来ることなら何でもするだ!」
「なに簡単なことだ、私をとある山の麓まで運んでくれれば良い。(ニヤリ)」
「そ・・・それで良いだか?」
「あぁ、行き先は追って指示する・・・嵐が近づいて来ているな、急ごう。」
「分かっただ!んじゃ早速乗ってけろ!」
心眼が乗り込むと同時に猛スピードで駆けて行くトラック。
こうして心眼は移動手段を確保し、一路妙神山へと急ぐのだった。
彼らが去った街では嵐は一層激しさを増していた、稲光の中に巨大な鳥と戦う女性のシルエットが浮かんだがそれはまた別の話。
〜あとがき〜
どうも、第2話を投稿させていただきました黄龍(仮)です。
まず初めに・・・ごめんなさい!第1話で転生したのは心眼なんです。
一応文末に(彼の嘗ての名は「心眼」)と書いていたのですが私の文章力が未熟なせいで皆様の誤解を招いてしまいました。
本当に申し訳ありません!
今後精進してまいりますので何卒御容赦下さいませ。