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▽レス始

「光と影のカプリス 第7話(GS)」

クロト (2006-06-16 18:05)
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 一口に陰陽道といっても、その守備範囲はかなり広い。
 中国の陰陽五行説を思想的背景として日本独自の発展を遂げたそれは、占い・祭礼・暦数・呪術など多くの要素を含んでいるのだ。
 ただし横島とカリンが実践するのは、GSの仕事に役立つ符術や霊術の類だけである。
 符術とは文字通りさまざまなお札を書いたりそれを使ったりする技術だが、カリンがこれを選んだのには深い意味がある。彼女が書くお札にこめられるのは横島の霊力なので、横島が起爆させるのは非常に簡単なのだ。試してみたところ、きちんと精神集中すればカリンが出ている状態でも使うことができた。これで横島とカリンが共同戦線を張ることも可能になったのだ。
 もっとも今は2人とも未熟なので、つくれるのは市販の破魔札に換算して5千円〜10万円程度の代物に過ぎないが。
 効力の落差がやたら大きいのは、かける手間と横島のコンディションの違いによるものだ。具体的には煩悩エネルギーの有無である。

「まったく、霊符を書いているそばでエロ本など読まれては堪ったものではないのだが……」

 というわけで、2人が窮余の末に考えたのがこういう手段だった。カリンとしてはため息の出る話だが、自分の乳や尻を捧げるよりはいくらかマシである。

「しょ、しょーがないだろ。俺の霊力源は煩悩なんだから」

 分身からの冷めた視線を浴びた横島はあさっての方を向いてそう言い逃れした。何しろ霊符の書写にあたっては場所と心身を清浄にしておく事はもちろん、一点の誤りもないよう細心の注意をする必要があるのだ。自分の行為が邪魔である事は横島でも分かる。

「それが不思議なのだが……まあいい、今日はもう終わりだからその本はしまってくれ」
「いや、まだ読み終わってないからあと15分ほど」
「いいからしまえ!」

 横島も美神やおキヌの前でエロ本を読むようなことはしないのだが、カリンは自分の一部ということもあってその辺りかなり気安く接している。カリンの方にも遠慮はないからお互いさまなのだが、必要もないのに目の前でというのは止めてほしい。
 カリンは実力行使してエロ本を部屋のすみに放り捨てると、墨や用紙などの後片付けを始めた。

「……」

 横島はその光景を黙って見ている。
 支度を手伝えとか、そういうことを言われたことはなかった。準備や後片付けをするのも、「存在意義」に含まれるらしい。
 しかし女の子1人にやらせて自分は見てるだけというのは気が咎めた。

「良かったら手伝おうか?」

 横島がそう声をかけると、カリンは振り向いて意外そうに、しかし心からうれしそうに微笑んだ。
 実際に役に立つかどうかより、煩悩少年が自分の存在意義を認めて手を貸してくれるという事実の方に意味があるのだ。

「そうか、それは助かる。では硯と筆を洗ってきてくれ。ていねいにな」
「分かった」

(こいつもこういう顔するんだな)

 横島はいつも怒られてばかりいるので、カリンの笑顔を見る機会は一緒にいる時間の割に少ないのだ。完全に自業自得なのだが。
 これが横島家における一般的なお札製作状況だった。


「よしピート、今日は俺の新技を拝ませてやろう!」

 教会の庭でピートと向かい合った横島がそう自慢げに大見得を切った。
 ピートはすでにGS試験を受けることを決定しているが、人間との試合は普段やっている除霊とは様相が異なる。そこで横島に組み手の相手を頼んだのだ。むろんお互い本気ではないが、やらないよりはずっといい。
 ―――半分でも本気を出すと言ったら横島は受けなかったが。

「新技ですか。望むところです!」

 カリン製のお札(習作)を両手にばっと開いた横島を前に、ピートも軽く腰を落として身構えた。

「いくぞ。蝶のよーに舞い……」

 横島がピートを幻惑するかのように右に左に動き回る。やがて機をつかんだのか、両手のお札を1度に全部投げつけた。10枚近いお札がシャワーのごとく半吸血鬼に襲い掛かる。

(これが新技ですか? だとしたら甘いです!)

 鋭い投擲は相応の練磨の形跡を窺わせたが、特筆に値するほどのことでもない。ピートはサイドステップしてシャワーの真ん中から逃れると、避け切れなかった最後の1枚を左腕で払うと同時に右手から魔力弾を放った。

「ダンピール・フラッシュ!」

 前述の通りお札は習作だからピートはちょっと痛い程度だし、魔力弾も手加減しているから横島なら直撃してもすぐ復活できる。
 とはいえ当たりはすまい―――とピートは横島の反射神経を高く評価していたのだが、のろまなことに横島は彼の攻撃をまともに食らってそのまま後ろに倒れた。

「横島さん!?」

 意外な結果に驚いたピートが横島に駆け寄る。いや、駆け寄ろうとした瞬間に背後から気配を感じた。

「蜂のよーに刺すっ!!」
「あだっ!?」

 側頭部にハリセンで不意打ちを受けたピートが頭をおさえてうずくまる。
 しかし痛みはたいしたことはなかった。それより確かに目の前で倒れたはずの横島の声がなぜ背後から聞こえて、しかも自分に一撃入れることができたのか?
 当然の疑問をいだいたピートが立ち上がって後ろを見ると、やはり横島はそこにいた。そしてもう1度前を見ると、当然ながら横島の姿はなくて、かわりに紙切れのようなものを持った唐巣が立っている。2人の組み手を観戦していたのだが、いったん仕切り直しになったので講評に入ったのだ。

「式神ケント紙か……考えたね横島君」
「ええ、カリンに手を加えてもらって俺の姿になるよーにしたんスよ。高いからあんまり使えないんですけどね」
「え、ど、どういうことですか!?」
「ああ、これを見たまえ」

 と唐巣はまだ理解できないでいる様子のピートに近づいて手の中の紙切れを見せる。人型に切り抜いた10センチ位の紙に「偽横島忠夫」と筆で書いてあった。
 式紙ケント紙というのは特別な方法で霊力をこめてあるケント紙で、人間や動物の形に切り抜いて念をこめると実物大のおおむね術者の命令に従う霊体―――簡易式神―――になるという霊能グッズだ。パワーはともかく持続時間が短い上に知能も低く、おまけにかなり値段が高いので用途は限られているが。
 ようやく腑に落ちたピートがぽんと手を打って、

「つまり最初にお札を投げたのは、囮の式神を出すところを隠すための目くらましだったというわけですね」

 そして自分の注意が式神に向いている隙に背後に回り込んだ、ということか。
 別に卑怯だとは思わなかった。事前に種明かしをしていたら通じなくなる技だし、「新技を見せる」という言葉をお札のことだと勝手に解釈したのは自分である。
 むしろ軽い敬意すらおぼえた。顧みれば自分の戦い方はただエネルギーをぶつけるばかりで、こういう創意工夫をこらした戦法は考えたことさえなかったから。

「まーな。自分で作るのは当分無理だから市販品で代用したんだ。ホントは逃げる時のために考えた技なんだが、奇襲にも使えると思ってな」
「そ、そうですか」

 最初に同僚に披露するのが逃走用の技だとは、いかにも横島らしいヘタレっぷりだ。ピートはさっき感じた敬意が微妙に薄れていくのを感じたが、彼の師匠は別の見方を持っていた。

「うん、確かに敵を倒すより自分が生き延びる方が大事だからね。横島君の言う通り奇襲にも使えるし、いい発想だと思うよ。
 ただしGS試験では使えないけどね」
「えっ、そうなんスか?」

 2対1の不意打ち作戦なら鬼道も恐れるに足らず、と胸算用していた横島が素っ頓狂な声をあげるが、唐巣は文字通り生徒を指導する教師の口調で懇切な解答を与えた。

「ああ、式神ケント紙とか霊体ボウガンとか、本人の技量と関係なく一定の効力を出せる道具は使用禁止になっているんだ。
 もし受験するのなら細則も読んでおくといい」
「うーん……言われてみればその通りっスねぇ」

 式神ケント紙の勝負なら金持ちの方が有利だし、霊体ボウガンに至っては霊能の戦いですらない。そういう道具が禁止されるのは当然だった。

「やっぱ俺にゃGS試験はまだ早いっスね。痛いのヤだし」

 いきなり自分にダメ出しした横島だが、正当な判断だとも言える。彼も多少は成長したとはいえ、煩悩抜きではカリンに半分の力を出させることもできないのだから。

「え、止めるんですか!? 一緒に受けましょうよー、故郷の期待背負ってるんでプレッシャーがすごいんです!」

 ピートが横島の胸倉をがっしと掴んで泣きついた。能力の割に繊細なところがあって、けっこう緊張しているのである。
 しかし横島は男にしがみつかれてもうれしくない。むしろ嫌だ。果てしなく。

「えーい、離れろ! おまえなら試験なんぞ楽勝だろが!!」

 と必死でピートを引き剥がす。唐巣はその光景をあきれながら見ていたが、ふと外が何やら騒がしいのに気がついた。

「今日はお客さんが来る予定はなかったはずだけど……おや?」

 唐巣の目に映ったのは、江戸時代を彷彿とさせるムシロ製の駕籠と、それを担ぐ大男2人だった。なるほど騒がしくなるはずだが、その駕篭かき2名が迷う様子もなく自分の教会に入って来るのはどういう訳なんだろうか。

「……な、何なんだ!?」

 唐巣は思い切り戸惑ったが、駕籠の中から降りてきた若い女性には見覚えがあった。もうずいぶん昔のことになるが、赤い髪に2本の角を生やした特徴的な外見だから見間違うはずもない。

「小竜姫さま!?」
「―――なぬっ!?」

 唐巣の声を聞きつけた横島が瞬間移動で小竜姫の前に現れる。

「おおっ、相変わらずお美しい……またお会いできて光栄っス! ささ、むさ苦しい所ですがどーぞこちらへ……!」

 さりげに失礼なことをほざきつつ、小竜姫の手をとって中に先導しようとする横島。小竜姫は手を取るところまでは許したが、調子に乗って肩にまで手をかけて来られては放置できなかった。

「私に無礼を働くと……」

 小竜姫の白い手が神剣の柄にかかる、と同時に横島の生存本能が最大級の警報を発した。いつまでもバカやってねーで逃げろごるぁ!てな感じに。

「仏罰が下りますと言いましたよねっ!?」
「うわちっ!?」

 抜き打ちの一閃を横島は紙一重でかわした。小竜姫はにっこり笑って、

「あら、この前より反応が速いですね。体術の修練もしているのですか?」

 ただし神剣はしっかり突きつけたままである。1歩間違えば死ぬと直感した横島は、とりあえず米搗きバッタのように頭を下げて反省の意を示した。

「すんまへーん、条件反射やったんですぅ。お茶入れますんでどーかお許しを」

 まあ、仮にも神様にセクハラしてこの程度で勘弁してもらえるのは彼の人徳なのかも知れない。

 …………

 ……

「突然来てしまって申し訳ありません。連絡を取る手段がなかったものですから」

 そろって教会の客間に移動した後、小竜姫はまずそう言って挨拶した。ついで横島がここにいる理由を訊ねる。
 横島が美神の転職から自分の再就職に至る経緯を簡単に説明すると、小竜姫はわずかに表情を曇らせた。

「そうですか、それだと美神さんには依頼できないですね」

 世事に疎い小竜姫もオカルトGメンがお役所である事くらいは知っている。神族とはいえ、いや神族だからこそ私的な依頼を持ち込むわけにはいかない。それに今回の用件はオカルトGメンとは商売敵であるGS協会が絡んだ話だから尚更である。

「では今日のご訪問は仕事の依頼なのですか?」
「ええ。唐巣さんはメドーサという竜神を知っていますか?」

 あいにく唐巣も横島もピートもその名に心当たりはなかった。小竜姫は「彼女」が竜族危険人物黒便覧『は』の5番で全国指名手配中という竜族最悪の「魔物」だと説明した上で、

「それでですね、今度はどうやらGS業界をコントロールしようとしているらしいんです。
 情報では、とりあえず自分の息のかかった人間に資格を取らせるようです。でもそれが誰なのかは分かりません」
「つまり、今度のGS試験を調査してほしいというわけですか?」
「ええ。私1人ではどうにもなりませんし、事情があって目立つことは避けたいんです」

 唐巣の問いに小竜姫はそう頷いた。
 小竜姫としてはメドーサの悪事を放っては置けないし、逆にこの事件から彼女の尻尾を掴みたい。唐巣もむろん魔物と手を結ぶようなGSが誕生するのは見過ごせないから、両者の目的は一致する。
 ちなみに小竜姫の言う「事情」とは、以前美智恵が娘に語った「神族と魔族の間で不戦協定みたいなものを結ぼうとする動き」のことだが、それを唐巣たちに明かすほど小竜姫も軽率ではない。
 もっともメドーサは今のところ「竜神族のアウトロー」であって、魔族の一員として認知されているわけではないから、小竜姫が彼女を斬っても不戦協定に悪影響はないのだが、だからと言って小竜姫が人界で好き勝手していいという事にはならないのだ。

「分かりました、お引き受けしましょう。しかし試験にはまだ間がありますが……どうしましょうか? 今からあまり表立って動くと勘付かれる恐れもありますが」
「そうですね、それは私も考えていました。やはり当日までは黙っていた方がいいでしょう。そこで美神さんに試験に潜り込んでもらおうと思っていたのですが……」

 と小竜姫が言いよどむ。唐巣では年齢的に無理があるし、かと言って観客席から見ているだけでは見落とす可能性が高い。さてどうしようかといったところだ。

「一応ピートくんが受験することになってはいます……が!?」

 唐巣がピートの方に目を向けると、齢700のバンパイアハーフはもうガチガチに固まってしまっていた。ただでさえ緊張しているのに、まさかこんなイレギュラーが舞い込んで来るなんて……!

「おー、そーいやそーだったな。がんばれよピート」

 横島がまるっきり人ごとの口調で無責任な声援を送ると、ピートは半泣きで横島にすがりついた。

「ちょ、ちょっと横島さん、僕1人で調べろって言うんですか!? 一緒にやって下さいよー!!」
「えーい、しがみつくな! そのメドーサの手下ってヤツは強いんだろ? 俺なんか相手になるかよ」
「……」

 また錯乱しだしたピートを唐巣は不安げな顔でみつめていた。この様子ではピートを1人で送り出したら調査も試験合格もおぼつかないが、横島に無理強いするわけにもいかない。
 しかし小竜姫は今の横島の言葉は看過できなかった。

「あの、横島さん。あなたは霊能力を使えないんですか?」

 あのあと横島と話すのは今日が初めてだが、結局彼は何もできていないのだろうか。それはちょっと寂しい、と思った小竜姫だが、横島のやることは今回も彼女の予想の枠内には納まっていなかった。

「や、そんな事はないっスよ。ほら」

 と横島はピートをひっぺがすと、いつものようにカリンを呼び出して見せる。彼女を初めて見た者はたいてい驚くのだが、小竜姫の場合は以前の姿を知っているだけに当社比3倍のショックがあった。

「えっと、あれ……? 横島さんの影法師、ですか……?」
「うむ、カリンと名づけてもらった。改めてよろしくお願いする」

 一方カリンは泰然としていた。こういう反応はもう慣れている。

「で、でも見た目も雰囲気も全然違うんですけど……」
「横島の色欲は並じゃないからな、『成長』した時にその方向性が影響を受けたんだろう。あくまで推測だが」
「そんなバカな……」

 小竜姫はそう思ったが、目の前にあることが真実だ。
 それより。自力で影法師を出せるのなら、それだけで霊能者を名乗る資格がある。あのスピードの持ち主を自分が底上げしたのだから、実力にも不足はないだろう。そしてGS助手をしている者が霊能力を手に入れたならGSを目指すと考えるのはごく自然な流れだった。

「横島さんはGS試験を受けないんですか?」
「あ、いや……ピートや鬼道みたいなのがいっぱい来るわけですし、俺なんか合格できるわけないから今回はパスしようかと」

 と横島はやはり腰が引けていたが、そこへ何故かカリンが口をはさんだ。

「別に落ちてもよかろう、合格率は2%程度なのだから恥ずかしくはない。試合になれば痛い目にも遭うだろうが、美神殿の所にいた頃は毎日のようにシバかれていたではないか」
「……」

 横島は沈黙した。いや確かにカリンの言うことは間違ってはいないのだが……。

「それにこの前クラスの女子にバカにされたとかで怒っていただろう。合格すれば見返せるぞ。金目当ての娘と交際するのは勧められんが……」
「そ、そーいえばそーだったな。あいつら、『絶対ザセツする』だの『危険すぎるカケ』だの好き放題言ってくれやがって」

 イヤな記憶が脳内で再現され、ふつふつと怒りを煮えたぎらせる横島。
 考えてみれば試合は勝ち抜き方式だから痛い目に遭うのは1回だけだし、受かろうが落ちようがそれで進路が決定するわけでもない。
 ならば美神に殴られたと思って受験してみるのも一興だろう。もし合格したら美神の所に復帰したとき前より待遇が良くなるかも知れないし。

「分かりました小竜姫さま。この横島がメドーサとやらの手下をお縄につかせてご覧に入れましょう!!」

 といきなり方針を180度転回させて小竜姫の手を握る横島。ポジティブというか懲りてないというか、しかし今度は彼女の「両手」を握っているから、失敗に学ぶという心がけ自体はあるようだ。
 しかしカリンが降臨した以上、横島の不埒三昧もそう長くは続かない。

「さっき斬られそうになったのをもう忘れたのか。少しは反省しろ」

 と横島の手をつねって小竜姫の手から離す。そのまま横島を引っ張って椅子に座らせると、改めて小竜姫の方に顔を向けた。

「ところで小竜姫殿、仕事の依頼というからには報酬はあるのか?」
「はい、それはもちろん用意していますが」

 当初は美神にも依頼する予定だったのだ、金子なしでは済まされぬ。それにしても影法師のこの口調は横島本人との違和感が甚だしい。

「では少し前金でもらってもいいだろうか。私たちが試合で使えるような霊的な武器、あなたなら持っているだろう? できれば刃物以外のものが望ましい。
 ―――はっきり言って、素手ではとても勝ち進めないからな」

 カリンが出ている間は横島は霊的に無力な状態になってしまうが、普段の除霊ならお札や簡易結界で身を守ることができる。しかしGS試験では道具の使用は1つだけと決まっているので、それではいかにも心もとない。
 刃物以外と言ったのは、もちろん相手を殺したくないからである。受験者の中にはむしろ斬りたい!というアブない者もいたりするが……。

 小竜姫はすっと目を細め、修業場の管理人、いや武神の表情を浮かべた。

「分かりました。お2人とも目覚めたばかりですし、多少のテコ入れは構わないでしょう。そうですね……」

 そこで小竜姫は妙神山にある霊具の一覧表を脳内に出力して、2人に適していそうな物を検索した。
 ただ初級者に本格的な武器を渡すのはかえって害になりかねないし、逆にメドーサに目をつけられる恐れもある。

「では真銀(ミスリル)製の棍か手甲、どちらか好きな方を差し上げましょう。霊格は霊剣や妖刀の類には劣りますが、硬度では勝っていますよ」

 真銀製のアイテムならカリンが出ている状態の横島でも霊的な効果を出せるから、持ち込み用道具としても報酬としても十分といえた。カリンは満足げに頷いて、

「ありがとう、では手甲の方をいただこうか。今回は横島の守りの方が大事だからな。横島、それでいいか?」

 前金の件はカリンの独断だったが、それでも本人にちゃんと確認を取る辺りは律義だった。しかし横島はそういう事には関心が薄いらしく、

「いいんじゃねーか? おまえがそっちがいいってんなら。それより小竜姫さま、俺への報酬は小竜姫さまの唇ってのはダメっスか!」
「ダメです」

 間髪入れずに却下されてへこむ横島。
 別の時系列では額のバンダナにキスしてもらえたのだが、ここでは接触した時間がまだ短いためか、好感度が不足していたようだ。
 ともあれ、こうして横島は進路のことはとりあえず棚上げにして、己の名誉と小竜姫へのカッコつけのためにGS試験を受けることを決意したのだった。


 ―――つづく。

 今回カリンが10万円のお札をつくっているという描写がありますが、GS世界のお札ってけっこう高いんですよねぇ。11巻を見ると10万円札でも安物みたいなのでこうしました。もっとも横島製のお札なんて誰も買ってくれないのでこれで飯は食えませんけどw
 ではレス返しを。

○ANUBISさん
 どちらかというとセコさとヘタレになるかも知れませんが宜しくお願いしますm(_ _)m

○通りすがりのヘタレさん
>このままでは独身貴族にナラナイカ?
 それも1つの人生かと。
>メフィスト
 今回は出演できたらいいなぁ(ぉぃ
>後々辛い戦いを強いられそうですね。特に作者様が(ヲ
 無謀な設定に挑むのもSS書きの花道の1つなんです(嘘)。

○KOS-MOSさん
>文珠とかよりかえって横島のトリッキーな戦い方が見れそうでとても楽しみです
 筆者もそういう方向をめざしております。
>カリンが前衛、横島後衛といった感じになるんですかねぇ?
 その辺は状況に応じて臨機応変に、ですね。いっそ横島は隠れちゃうのも手ですし(ぇ

○whiteangelさん
 美神さん曰く「横島の欠点は外面より内面に集中してる」んですが、本人は自覚してませんからw

○ゆんさん
 就職活動がんばって下さいねぇ。
>横島なら捕縛術を覚えそうですけどw
 捕縛というか金縛り系の術はけっこうメジャーなんですよね。横島が金縛りにして神父が聖句を詠唱する時間をつくる、なんてコンビネーションもできますし。
 煩悩上乗せならグーラー辺りにも効いちゃいそうで怖いですw

○滑稽さん
 横島の性向はやはり『邪』でしょうw

○ジェミナスさん
>影法師と陰陽術の二刀流
 ……は、原理的にやれないんですこれが○(_ _○)
 本文で書いたように、カリン出撃中の横島は自作のお札か霊力不要のアイテムを使うぐらいしか出来なかったりするのでorz

○遊鬼さん
>鬼道
 横島君と方向性が似てますので、いろいろ頑張ってもらおうかと。
>魔鈴さん
 台詞はそのうちに(^^;

○内海一弘さん
 原作と同じ技だと前作との差別化ができそうになかったのです(^^;

○HEY2さん
>前世に倣って陰陽術ですか
 素質があったのも多分そのおかげですからねー。
>せめて陰陽術を使っている間『だけ』でもカッコ良い横島を期待したいんだが……
 その辺は今後の努力次第ですねぇ。
>魔鈴
 前回は顔見せですから。

○わーくんさん
>だって、煩悩の塊・邪くんだもん!
 どう考えてもキリストの神が力を貸してくれるとは思えませんw
>2名って……鬼道くんと…黒猫?
 おう、さすがに黒猫君の重要性を分かってらっしゃる。
 いや本気にしないで下さいね?<マテ
>天龍童子編
 ……は、どうなるか未定です(^^;

○鍵剣さん
>ヒャクメから見て七桁違うアシュタロスの力
 ヒャクメの観測ですから大幅に見誤ってるとしても(マテ)文珠なしでどうにかできる相手じゃないですねぇ。どうする気だ自分(ぉぃ
>シロタマ
 必ずしも原作と同じ展開で始まるとは限らないのですよー。
 でもシロの先生になるのは難しいかも。

○TA phoenixさん
>妙神山での修行
 その辺はネタバレ禁止ということで。

○LINUSさん
>横島らしさをかもし出す技が無い!!!
 いやいや、横島らしさとは技そのものではなくその使い方にあるのですよー。
 ……と、偉そうなことを言えるほど上手ではないのがつらい所です。

○hiroさん
 鬼道の活躍(?)については次回以降をお待ち下さい。
>陰陽道の練習
 いろいろあると思いますが詳しくは知りませんですorz

○kamui08さん
>勉強についてはがんばりましょう
 横島君に1番足りないのは知識でしょうからねー。

   ではまた。

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