その翌日、横島とおキヌは約束通り横島の部屋からほど近い所にあるテニス場への道を歩いていた。
横島が持っている手提げ袋にはカリン用のテニスウェアが入っている。彼女の服装(?)は人前では目立つし、どのみち水曜日には使うことになるからデパートに寄って買ったのだ。カリンは霊体だが、エネルギーの密度が濃いのでちょっと気を張っていれば普通の服も着られるのである。
テニス場についた2人は、受付を済ませてラケットとシューズとボールも借りた。
「しかしこれだけ金使ったんだから負けるわけにはいかんな。つーか負けたら神父と共倒れになりかねん」
「大丈夫ですよ、死んでも生きられますから」
「フォローになってねぇ!?」
いつぞや包丁を研いでいたときといい、良い娘ではあるのだがどこか普通でなかった。しかし横島の「金を使った」は美神のそれと比べると4〜5桁ほど違っているのがいじましい。
更衣室の前でカリンを出し、手提げ袋を渡す。おキヌと並んで女子更衣室に入って行くのを見て―――覗こうと思ったが止めた。どこに行けば覗けるのか分からないし、おキヌがいる所でやるのは横島的に鬼畜そのものである。
横島は自分用のテニスウェアまで買うほど金持ちではない。靴だけ履き替えて男子更衣室を出た。
やがてカリンとおキヌが談笑しながら女子更衣室から出て来る。一般的にはここで服を褒めてやったりするのが見目麗しい妙齢の(?)女性に対する礼儀だと思われるが、あいにく横島にそんな感性は微塵もない。
「こらカリン! 貴様なぜそのウェットスーツみたいなの着たままなんじゃゴルぁ!?」
「失せろ色魔!!!」
もはや恒例となったドツキ漫才をすかさず披露する横島とカリン。だが今回の横島はボケではなくマジだった。いつもの服の上にテニスウェアを着ただけでは煩悩が刺激されぬではないか。健康的な太腿と風に舞うスカートから時折のぞくアンダースコートこそテニスウェアの真髄だと言うのに! いやアンスコ穿き忘れというならなお良いが。
ちなみにカリンが着ているのはごくシンプルな白いテニスウェアで、おキヌが選んだものである。
横島は殴られた頬をさすりながら立ち上がると、己の分身に向かって思いのたけをぶちまけた。
「俺の影法師のくせに男の浪漫が分からんのか! 見ろおキヌちゃんを。ちゃんと巫女装束は脱いで来てるだろ」
と横島がずびしっと指さしたおキヌは、いつかのクリスマスの時に横島にもらった幽霊でも着られる服を着ていた。ただし上着とストッキングは脱いでいる。こうするとテニス場でもさほど違和感がないのだ。いつも巫女装束で通しているので、ミニスカート姿はなかなか新鮮である。
もっとも横島の浪漫とやらを理解したわけではなく、単に周りの人たちの服装を見て判断しただけなのだが……。
「おまえの趣味はともかく、この防護服を脱いだら裸になってしまうからな。いくら何でもまずいだろう」
確かにウェットスーツの下に普通の下着はつけないだろうが、どうやらただの装飾ではなかったらしい。しかし彼女の本体が注目するのはそういう部分ではなくて、
「裸だと!?」
その一言で横島の煩悩ゲージは急速に上昇したが、いかな横島も己の分身に羞恥プレイをさせるのは嫌だった。というか他人の目に晒したくない。だからそれ以上は何も言わなかったのだが、カリンは彼の思考回路を3歩ほど先回りして、とっても辛辣なツッコミをかましてきた。
「先に言っておくが、おまえに下着を買ってもらう気はないぞ」
「んなこた誰も言ってねーだろが!」
野獣のように吼える横島。女性の下着に興味があるかと聞かれれば無論YESだが、それを誰かに贈る趣味は持っていない。
「ま、まあまあ2人とも。ケンカしてないでテニスの練習しましょう」
「そ、そーだな」
おキヌが仲裁に入ってくれたのを機に、横島は不毛な論戦を切り上げた。これ以上言い争っていても傷つくだけだし。
「ま、最初は軽くラリーでもやってみるか。おキヌちゃんも入るか?」
「あ、はい。そういうことなら」
何も最初から試合形式でガンガン行くこともない。まずは簡単なことから始めるべきだろう。
…………。
……。
そして30分後。
「―――はッ!」
横島のオーバーヘッドサーブをカリンは軽く打ち返した。おキヌから2mほど離れた場所に着地したが、彼女の反射神経では追いつくことはできなかった。
「ふむ、だいぶ慣れてきたな。そろそろ真剣にやってみようか」
「カリンさん、すごいですねー」
ことも無げにそう言ってのけたカリンにおキヌが賛嘆の声を送る。カリンは横島の霊能力だから、彼女が強いのはおキヌにとっても喜ばしいことだった。
「でもカリンさんって横島さんの一部っていうか霊力を抜き出して形にしたものなんですよね。何か思いっきり横島さんに逆らってるように見えるんですけど……?」
妙神山のときもそうだったが、今は本体を平気で殴るところまで行っている。美神の影法師はちゃんと彼女の念波通りに動いていたのに、この落差は何なんだろう。
カリンはふっと顔を上げると、そのままネット際まで寄ってきた。
「自我のレベルが上がったからな。その分命令や干渉はしにくくなるのだ。ちと極端な喩えだが、幼稚園児を従わせるより高校生を従わせる方が難しいだろう? そういうことだ」
それに本体が横島だからな、とカリンは苦笑した。霊能者として未熟なのは今さらだが、簡単に彼に服従していたらどんな目に遭わされることか。
「やかましいわ!」
分身のくせに本体への敬意が欠片もないカリンの言い草に横島が憤慨して、拾ってきたボールをきつく握り締めラケットを突きつける。
「こーなったらこの場で貴様の性根を叩き直してやる。この横島の地獄の千本サーブ、その身で味わうがいい!!」
「ふむ、それは良い練習になりそうだな」
熱血コーチとは評しがたい、というか性根を叩き直されるべきは横島の方だと美神なら突っ込んだだろうが、カリンは特に意見を述べようとはしなかった。
「……じゃ、私は球拾いしてますね」
それでも一応は真剣な練習になりそうだと察したおキヌがコート外に退避する。
こうして、横島言うところの地獄の特訓が始まったのだった。
夕日がビルの向こう側になかば隠れかけた頃、横島はおキヌと並んで帰路についていた。カリンはすでに彼の中に戻っている。
「つ、疲れた……」
横島がかなりだるそうな顔で、一言だけ口から漏らした。
調子に乗ってカリンをしごいたはいいが、彼女が疲れるということは横島の霊力が消耗するということだという事実をすっかり失念していたため、2人分の疲労を背負っているのだ。
おキヌが自販機で買ってくれたスポーツ飲料を飲んで一息ついた。
「でもカリンさんだいぶ上手になったと思いますよ。私も楽しかったですし。
……もしよかったらまた来ませんか?」
ちょっとだけためらいながらのおキヌの台詞の後半は、デートの誘い、という程のものでもない。彼女が横島に抱いている感情は、いまだ「Like」の域を出るものではなかったから。
横島も疲れていたから特に深読みすることもなく、
「そだな、遊びでだったらいいよ。報酬が入ったらの話だけどな……」
美神からもらった最後の給料もそう多くは残っていない。依頼を成功させて唐巣に報酬を受け取らせねば、テニスごっこどころか食事代すら怪しくなるのだ。
「……。が、がんばって下さいね」
おキヌが微妙に視線をそらしながらも励ましの言葉を口にする。いかに好意を持っていても、いま彼女にできることはそのくらいしかなかった。
「ああ、ありがとな」
横島も頷いて礼を返す。
ともかく、人事は尽くしたのだ。あとは天と―――横島の煩悩が決着をつけるだろう。
そして仕事の当日、横島たちはレンタカーで現場の別荘に向かっていた。山の中の古びた洋館の庭にテニスコートがあって、そこに件の地縛霊がいるのだ。ちなみにエミは自分のバイクで来ることになっている。
「で、神父。ピートはどこにいるワケ?」
合流してすぐエミは唐巣にそう訊ねた。彼と一緒に仕事ができると思って引き受けたのだ。今ここにいる唐巣や横島では能力的にも不向きな話ではあるし。
「彼なら上流の滝で修業して来るとか言ってたよ。欲しかったのは女性スイーパーだったんでね。君のパートナーは彼女に頼むことにしたんだ」
と唐巣が横島の顔を顧みる。横島が頷いてカリンを呼び出した。
「え、何……影法師!?」
横島の頭上に現れた非日常的な服装の美少女にエミが目を丸くする。たぶんそうなのだろうと目星はつけたが、このスケベ小僧の分身がこんな綺麗な娘だというのは信じがたかった。
「初めまして、かな。横島の影法師のカリンだ、今日はよろしく頼む。ああ、あなたのことは知っているからそちらの自己紹介はいらないぞ」
が、当人にそう言われては是非もない。しかも今のは横島が喋らせたようには見えなかった。つまり『彼女』は自分の判断で行動できるタイプということになる。
ただ問題は彼女がどれだけ使えるかだ。
「なるほど、おたくなら見た目女の子だから先方の霊も納得するわね。でも横島の影法師じゃ今いち不安なんだけど?」
エミは歯に衣着せずに言い放った。真剣勝負の場におためごかしは無用である。どうせ相手は横島だし。
その失礼な態度にカリンは怒りもせず、逆にニヤリと含んだような笑みを浮かべた。
「横島の煩悩パワーはあなたも知っているだろう。足手まといにはならないから安心してくれ」
「……そう」
自信ありげなカリンの様子にこっくり頷くエミ。
確かに1度呪いに使った事もあるし、アレを使えるのなら霊力面での不安はないと言える。
むろんカリンの発言がまさか自分のテニスルックで横島の煩悩がアップするのを見越してのことだなどとは想像もつかなかったのだが……。
唐巣が3人を連れてテニスコートに移動する。
そこにはやはりテニスウェアを着たお嬢様風の幽霊がいた。普段祓っている悪霊と違って姿の輪郭が非常にはっきりしている。具体的には横島が一目見て「おお、美人!」と鼻の下を伸ばすくらいに。
これは彼女―――竜崎霊華の意識がほぼ生前通りに残されていることを意味していた。唐巣への対応もいたって平静で、
「まあ神父、この方たちが私のお相手ですの?」
「うむ、小笠原エミくんとカリンくんだ」
と霊華に答えた唐巣に続いて、エミとカリンも自己紹介した。
横島は霊華とエミをきょろきょろと品定めでもするかのように比べ見て、
「では俺は撮影班とゆーことで……!」
「おたくは球でも拾ってるワケ!」
どこからかカメラを取り出した横島の脳天をエミが力いっぱい小突いた。横島はあえなく地に伏したが、エミが離れた隙にカリンがすっと歩み寄って少年の耳元に何事かをささやく。
「横島、カメラなど使うのは邪道だろう。こういう時は心のフィルムに焼き付けるのが漢というものではないのか?
あと蛇足を付け加えるなら、あの霊華殿を見られるのは今日限りだな」
「む、確かに……!」
カリンの言う「漢」が世間一般に受け入れられるものかどうかはともかく、横島の心琴にはいたく響いたようだ。カメラはどこかにしまって、むっくりと力強く起き上がる。
実に恐るべき謀略であった。これで横島の煩悩≒カリンのパワーは維持しながらもエミの注意がそれる恐れはなくなったし、逆に霊華が横島に気を取られてミスをするかも知れない。
その間にエミは唐巣と霊華にちょっとした苦情をつけていた。
「ま、いったん引き受けたからにはやるけど……わざわざダブルスにする必要はないんじゃないの?」
エミは呪術に関しては文字通りの日本一だが、GSとしても一流だと自負している。たかが地縛霊ごときに2人がかりで挑む必要は感じなかった。
すると霊華は口元を薄く綻ばせて、手に持ったボールを軽くトスした。
「ほほほほほ、それはね……」
ラケットを振り上げ、すさまじい勢いで打ち下ろす!
「こういうことよッ!」
豪速のスピンサーブがエミの足元に突き刺さり、直後に矢のような勢いで跳ねていった。
「世界ランクのプレイヤーが来られない以上、楽しくするにはそれしかないからですわ」
そう言った霊華の腕と脚は、まるでボディビルダーのごとく太く逞しくなっていた。地縛霊になった理由の通り、テニスへの執着によって霊力が強まっているのだ。
「へーえ、1人じゃ役者不足ってワケね? 言ってくれるじゃない、お望み通りたっぷり楽しませてやるわ。
カリンって言ったわね。足引っ張るんじゃないわよ?」
幽霊に見下されて闘志を燃え立たせるエミ。さっそくテニスウェアに着替えてコートに戻り、神通棍入りのラケットを構える。
球拾い係の横島はカリンの心理誘導に乗って主に霊華の腰や胸の辺りに注目していたが、霊華も大観衆の中で堂々とプレイしてきた一流の選手だけあって、たった1人の横島の視線に動揺する様子は見られなかった。
そして唐巣の審判で試合が始まる。
「ザ・ベスト・オブ・3セット・マッチ! 竜崎サービスプレイ!」
ラケット倒しで選択権を得た霊華は、ごく普通の選択としてサーブ権を取っていた。カリンに向かって叩きつけるようなサーブを放つ。
さっきのスピンサーブとは違って、今度は回転をかけないフラットサーブだった。カーブがかからない代わりにスピードが速く、相手に重い感覚を与える。初心者が最初に覚えるものだが、生前の彼女が最大の得点源としていた打法だ。
さっきスピンサーブを打ったのはむろん実力を見せ付ける示威行動なのだが、そこで本当の得意技を見せてしまうほど単純な頭はしていないのである。
しかしカリンも3夜漬けとはいえテニスの勉強はしていた。何しろこの依頼の成否に自分と勤め先の運命がかかっているのだ。しっかりと両手でラケットを握って的確なレシーブを返す。
が、霊華はそのボールが返る先を読んでいた。すばやく前に出て、バックハンドでカリンとエミの真ん中辺りに叩き込む。2人とも反応できず、ボールはその間を通り抜けていった。
「フィフティーン・ラブ!」
唐巣が右手を挙げて霊華の1ポイント先取を宣言する。
「……なるほど、確かに口だけのことはあるワケ」
エミは素直に相手の力量を認めた。もしペアを組んだのが美神だったらまず彼女を責めていただろうが、横島やカリンとはそこまでの確執はないし、「格下」相手にむきになるのも大人げない。むしろ自分が冷静にリードしていくべきだった。
今度は霊華のサービスをエミがレシーブする番である。
もう2度も見たし、こちらはダブルスだからシングルスよりは受けやすい。エミは霊華がいるのとは反対側のレフトサービスコートを狙って返した。霊華は何とか追いついたが、距離的に強い打球は返せない。カリンにボレーを決められて同点になった。
「よし、これで同点よ。あんたも意外とやるじゃない」
「いや、思ったより美人だったからな」
「……?」
カリンが何を言っているのかエミにはよく分からなかったが、まあ横島の分身だし、ということでスルーした。
そして試合は進み、セットカウント1−1、第3セットの第10ゲームまで来た。
「第3セットで5−4……つまりこのゲームを取られたら私の負けということですわね。この私とここまで張り合うなんて……燃えてまいりました! 本気にならせていただくわ!」
霊華が両手首にはめていたリストバンドを外すと、その背後に蒼い炎が吹き上がる。生前は腕を鍛えるため鉛を入れて使っていたのだが、今は霊力を抑えつける役目を果たしているのだ。解放された本来のパワーはさっきまでとは段違いだった。
「何コイツ、さっきまでは手加減してたってワケ?」
「そのようだな。しかしエミ殿はだいぶ疲れているだろう、大丈夫か?」
「……ちょっとヤバいかもね」
今までが全くの互角だったのだ。そこへあれ程のパワーアップをされてはカリンもエミも焦燥を覚えざるを得ない。
「……なら、1つだけ必勝の策があるのだが」
「何、そんなの隠してたワケ? あるならもっと早く出しなさいよ」
エミが不機嫌になるのも当然だろう。最初からそうしていれば、ここまで試合を引っ張ることはなかったのだから。
「いや、これはあくまで奥の手だからな。
具体的には、勝てたらエミ殿がキスしてやる、と横島に言えば私のパワーが大幅に上がる、ということなのだが」
「いやよ、何で私があんなガキにキスしてやんなきゃなんないワケ!?」
とエミはカリンの提案を速攻で拒絶した。カリンは場所を指定していないから唇にでなくてもいいのだが、それでも女性にとって不愉快なのは当然である。エミはピートのような美形が好みだから、横島ごときお笑い少年は論外だった。
ただ彼女の失策は、驚きのあまり大声で答えてしまったことで。
「エミさんのキスだと? その誘惑乗ったーー!!」
それを聞きつけた横島が超加速もかくやという高速移動でエミの前に立ってその手を取る。
当然ながらエミはそのバカをはたき倒して、
「あんたらが何しようと勝手だけど、私まで巻き込むんじゃないワケ!」
「そうだな。しかしここで負けたら当分仕事はできなくなるし、美神殿がさぞ喜ぶと思うが」
「……ぐ」
エミが言葉に詰まった。
霊華には害意がないから負けても命に別状はないだろうが、霊的に大ダメージを受けることは免れない。間違いなくカリンが言った通りの未来が訪れるだろう。
もはや選択の余地はなかった。
「く、確かにこうなったら仕方ないワケ。ただし頬よ。それとカリン、言い出しっぺのあんたも当然やるワケ」
「……まあ、いいだろう」
カリンがそんなところかといった風に頷く。そして彼女の期待通り、いまや横島は燃える男、魂のチャレンジャーになっていた。
「よっしゃー! 見ていて下さいよエミさん。この横島忠夫があなたに輝ける勝利をプレゼントしますからね!!」
ごごごごご、ぶおーん、ぴーん、かきーん!
謎の効果音と共に横島の精神コマンド、気迫・瞑想・ド根性・神速・激闘・集中が同時発動してカリンが一気にパワーアップした!
「す、すごい霊力……私より上?
でも私もプロとしてお子様に負けてられないワケ。いくわよ、必殺イナズマサーブ!」
エミのラケットに電光のような霊気が迸り、強烈な打球となって霊華を襲った。霊華は何とか返したものの、カリンのボレーであえなく先取点を奪われる。
2点目、3点目も同様にしてGSチームが取った。
「ここまでやるなんて……こんな楽しい試合は久しぶりでしたわ。でも私もウィンブルドンを期待された身、そう簡単には負けません!」
と霊華がエミのサーブを渾身の力で打ち返す。並みのGSでは到底受け切れない霊力がこめられていたが、残念ながら相手の2人はそんなレベルではなかった。
「これで終わりだ。秘剣・天翔小竜姫閃(あまかけるしょうりゅうきのひらめき)!」
背景に火を吐く竜をまといつつ、カリンが空中に飛び上がって体ごと回転しながら居合い斬りのようなスマッシュを叩きつける。さらなる霊力を加えられたボールが真っ赤に燃え、霊華のラケットのストリングをぶち抜いた勢いのままバックコートの真ん中辺りに突き刺さって破裂した。
「ゲーム・セット! ウォン・バイ・GSペア!!」
唐巣が試合終了を宣告する。それを聞いた霊華の顔に気の抜けたような、それでいて満足そうな笑みが浮かんだ。
「ふ、負けたわ……」
霊華の姿がかすみ、陽炎のように消えていく。ようやく執着が解消されて昇天したのだ。
とりあえず、これで依頼は完了である。
ちなみに報酬についてだが、理の当然としてエミが半分持って行った後、唐巣は自分は除霊作業そのものには参加していないということで税金・保険その他諸経費を差し引いた残り全てを横島に渡そうとしたが、カリンの厚意で半分は彼の手元に残ることになった。
「別に気にすることはない。横島が今後迷惑をかけるだろうから、慰謝料の前渡しだとでも思ってくれ」
ということで、唐巣教会はあと10年は無理だがその3分の1くらいは戦えそうな補給物資を得たのだった。
そして横島も約束通り、球拾いしかしてなかったくせに「現場手当」に加えてカリンとエミに左右の頬にキスしてもらうという過分な報酬を受け取った。しかしその直後に暴走して2人に襲い掛かったためリンチされ、気がついたときは前後の記憶を失っていたという。
まあ、横島にはそんなオチが似合いである。
―――つづく。
今回はテニスの用語を知らない方には分かりづらいかも知れませんが平にご容赦を。実は筆者もネットで調べただけですし(ぉぃ
ではレス返しを。
○ミアフさん
横島に常識があるかどうかはかなり疑問なところですねぇ……煩悩抜きならそこそこマトモかも知れませんけど、それは横島じゃないですし(ぉぃ
○whiteangelさん
>相手が美人なら欲情が出て試合(除霊)どころではなくなるのでは?
試合をするのは横島じゃなくてカリンなので無問題なのです。
○KOS-MOSさん
>今回横島が怒らなかったら
身体的なダメージはないでしょうけど、精神的には激痛でしょうねww でも横島ですから何とかしたでしょう、きっと。
>これにより煩悩が掻き立てられ横島の煩悩は更なる領域へ・・・
至りましたが、ご想像の通りシバキで記憶を失ったのでリセットです(ぉぃ
○遊鬼さん
>いや、今回の横島君はなかなか強くなりませんね(笑)
GS試験前Verですから。
でもそろそろ横島君自身にも芸の1つくらいマスターさせたい所ですね。
>おキヌちゃん
ライバルが少ないうちに点を稼げればいいんですが。
○TA phoenixさん
>煩悩=カリンの強さという構図だと、成長してもカリンからしばかれるのはかわらなそうw
横島の成長=カリンの成長ですから、彼がどう頑張ってもカリンを越えるのは原理的に不可能だったりしますw
>次回はカリン達のアンスコとかを見ながら霊力アップするのでしょうか
むしろ敵を生贄にしました。
○雨上がり溺死体さん
>この悪霊と横島(カリン)が二身合体してパワーアップ!
これ以上煩悩レベルが上がったら筆者にも扱い切れませんのでw
>けど、期待のカリンとのラヴも、仮に上手くいっても、それは究極の自己愛かも?(笑)
ま、人生なんて自分が満足できればそれでいいんですし<マテ
>美神
次回出演の予定が当分ないというのは我ながら問題だと思っているのですが○(_ _○)
○ゆんさん
>カリンとおキヌのテニスウェア姿に横島、煩悩全開?の巻き(爆)ですか・・・
煩悩全開の境地に至るにはもう1つ刺激が欲しいところでした。
>あの台詞はいただけないけど、女の子が危険なときはぶち切れる
横島君のパワーアップはみんなそれが動機ですからw
>おキヌちゃん
女っ気を増やすためにも頑張ってほしいところです(ぉぃ
○kamui08さん
>しかし、自分の影法師であるカリンに煩悩を燃やせる横島はある意味すごいですね
横島は美(少)女には差別しませんから。
原作では時々妖怪娘にヒドいこと言ってますが、グーラーや雪女の例を見るに完全に人間の姿なら文句ないものと思われます(ぇ
○HEY2さん
横島君の活躍……いつになるやら<マテ
>神父に負債を課して、金を稼がざるを得ない様にさせるとは、なかなかの策士ですな
そのくらいの知略がなければ横島は操縦できませんのでw
>おキヌちゃん
やはり体がないと横島攻略は難しいかと。
>セイリュート
3巻打ち切りが残念でした。
○DLフリーさん
>1話から一気読みしました、カリンが良い味出しててよかったです
有り難うございます。今後とも宜しくお願いします。
>危険性も考えるともうちょっと色をつけてもいいような気がします
その辺は「現場手当」でカバーされますから。
○くっきーさん
>なんて漢らしい叫び(*´¬`)横島×カリンマダー?(ぇ
漢たるものこうありたいものです(ぇ
横島×カリンは……どうでしょう(^^;
○わーくんさん
>「(唐巣+美神令子)/2」な唐巣神父
そんな人間的にバランス取れてそうな神父なんて(以下略)。
>おキヌちゃん
今がチャンスなんですがどうなることやら。
○鍵剣さん
順当なところでカリン&エミペアになりました。
というか冥子だけは危険かと。いや除霊と建物解体はできるでしょうけど。あれ? これが1番手っ取り早いのか??
>エクトプラズムスーツを着た唐巣神父本人
もしかして美智恵(若)になったりするのでしょうか<マテ
ではまた。