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▽レス始

「GSルシオラ?決戦編!!第12話(GS+型月ネタ)」

クロト (2006-04-18 18:25/2006-04-22 18:34)
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 横島たち一行が乗り込んだカメ型兵鬼は、現在は東京湾の中ということで余計な騒ぎを起こさぬよう、偽装モードにチェンジしてのてのてと海底を這い進んでいる。公海に出たら本来のサイズに戻ってトップスピードで行く予定だが、今はまだおとなしくしている方が無難だった。
 そしてその中では、ようやく愛子の机の中から解放された美神事務所の面々と、横島軍団のこの作戦における対外的な代表者である小竜姫との対面が行われていた。事ここに至っては、美神達も一緒に来て作戦に協力してもらうしかないのだ。
 話すべきことは色々あるが、まずは、なぜこんな海中で彼女達を机から出したのかが最初であろう。
「「か、核ジャックですってぇ!?」」
 美神達がそろって腰を抜かした。本体の机の上に座っていた愛子など、後ろに転んで頭を打ったくらいだ。
「ええ。言わばアシュタロスは全人類、いえ地球上のすべての生き物を人質にとって美神さんの身を要求したのです」
「そう……さすがに魔神、やる事が違うわね。でも小竜姫さま、このまま南極に行ってアシュタロスに会えるの?」
 美神は隠れていること自体不満だったから、今こうして南極に連れて行かれることに異議を述べる気はない。しかしもし自分がアシュタロスの立場なら、直接姿を見せずに部下を使って結晶を取り上げようとするだろう。美神達が「アシュタロスに会わせろ」などとごね出したら、みせしめに何発か核ミサイルを使ってみせれば無条件降伏させるのはたやすいし。
「……そのときはこちらも美神さんを人質にするしかないですね。たぶんアシュタロスは自分の手で直接結晶を奪おうとするでしょうけど」
 アシュタロスがメフィストを『娘』だと思っているなら、顔も合わせずに結晶だけ奪ってさよならという素っ気無いことはしないだろう。
「うーん、私を人質に、か……まあしょうがないわね。お手柔らかに頼むわよ!?」
 相手は魔神、しかも向こうが取っている人質は世界全てだ。はっきり言ってムカつくがやむを得ない。
「はい。私もそういうことは本意ではありませんから」
 小竜姫が生真面目に答える。美神はそれでとりあえず安心して、さっきから不思議に思っていたことを口にした。
「で、何でルシオラが2人いるわけ?」

「……それは私から話すわ」
 と小竜姫の傍らに控えていたルシオラが前に出る。美神達に協力を乞う以上、避けては通れない道だった。とりあえず京香にも話した自分の正体、それと蛍華を説得した経緯を話す。
 話を聞き終わった美神が恐れ入ったような表情を浮かべた。
「……へえ、そんなことがねぇ……」
 美神もトンデモ話には慣れていたが、いまわの際に恋人の過去に向かって転生したなどというおとぎ話は初めてである。しかもそれをネタに『現在』の自分を説得して味方につけるとは。
 ルシオラがおキヌ達の方に顔を向けて、
「みんな分かってるとは思うけどこれは秘密よ。さすがに隠しておけないから話したけど、できれば忘れちゃってくれると嬉しいわね」
「そうね。あなたの正体なんて別にどうでもいいことだし」
 タマモはぶっきらぼうにそう言ったが、彼女も正体を隠して生きる身だからルシオラの言うことはよく分かる。だからこそ無関心なように答えたのだ。
「狐もたまにはいいこと言うでござるな。大先生が何者だろうと、大先生のえらさには何の変わりもないでござる」
「うるさいわね、バカ犬」
 シロの台詞の前半がタマモのカンにさわって、お決まりの口ゲンカが始まる。おキヌがそれをまあまあとなだめて、
「でもルシオラさん、どうして今まで教えてくれなかったんですか?」
 ストレートな追及にルシオラは小さく苦笑した。
「無理言わないで。信用されなきゃ変人扱いだし、信用されたら悪魔の手下なんだから。ヨコシマにだって妙神山に行くまでは内緒にしてたのに」
 あのときですら猿神にバレたからやむを得ずしゃべっただけで、本当はアシュタロス出現の予兆が現れるまでは隠しておくつもりだったのだ。もっとも、あの場で話したからこそこうしてこれだけの仲間を集められたのだが……。
「そう……ですね」
 頷いたおキヌの顔には微妙な翳りがあった。別に話してもらえなかったのが不満なのではなく、横島とルシオラにそんな縁があったことに衝撃を受けているのだ。むろんルシオラが話したのは『前』の経過の概要だけだが、それでも横島を異性として慕っているおキヌには十分ショックな話だった。
「ところで……ちょっと失礼かも知れませんけど、ルシオラさん体形変わってませんか?」
 ルシオラの顔色と胸部をちらちらと流し目で窺いつつ、やや遠慮気味に問いかけるおキヌ。より具体的にAAがDになったんじゃないか、とかそういうチャレンジャーもとい非礼なことは言わない。
 美神とシロタマ、ステンノと愛子も気づいていたらしく、しめて6対の視線がルシオラに集中する。
 ルシオラは待ってましたとばかりにとっても素敵な笑みを浮かべて、
「ええ、いいネタが手に入ったから豊胸手術をしたの。もちろんシリコンとかじゃなくて完全天然仕様よ。いえ、手術というより遺伝子改良といった方が近いわね。つまり私自身がDカップな存在になったのよ。
 これでペチャパイとか終わってるとか言われることはもうないわ。この質感、この揺れる感触! ヨコシマも(中略)だし、たまに邪魔くさいけど人生っていいわね」
「……」
 おキヌは胸のサイズにはさほどこだわりはないのだが、ここまで大演説をかまされると面白くない。いや怒りを再発させた者さえいた。
「ルシオラさん、それは私に対するあてつけですか?」
 貧乳者同盟を一方的に破棄された小竜姫である。いつぞやの黄金色なオーラが再び燃え上がった。その闘志に応えて、ルシオラのバックにも黄金の射手の姿が現れる。
「小竜姫さま……神さまが嫉妬なんて見苦しいですよ」
「2人とも待てーーーっ!!」
 横島があわてて2人の間に割って入った。このままだと光速の格闘で船が粉々になりかねない。
「今はそんな話してる場合じゃないでしょ? そう! 今までの戦いの経過とか話すのが先じゃないっスか」
「そう……ですね」
 小竜姫は意外にあっさり引き下がった。確かにその通りだし、あまり大人気ない所を見せていたら自分の株がまた下がってしまう。それは胸のサイズより重大な問題だった。
 何とか心を鎮めて、
「では胸の話はこれくらいにしておいて、美神さんたちに隠れててもらってた間に起こった事を説明しようと思うんですが」
「そうね、ぜひそうしてちょうだい」
 と美神も同調した。美神はかって小竜姫が暴れて修行場を全壊させたのをその目で見たことがあるから、話題を変えるのは大歓迎である。矛先がこちらに来ないとも限らないし。
 そして小竜姫が経過を話し始め、3姉妹のアジトを訪ねるところまで来た時に美神がようやく納得いった、という風に息をついた。
「それで分かったわ、横島クンとルシオラが何で机の中に来なかったのか」
 妙神山の修行の時に小竜姫達がルシオラの正体を知ったのなら、アシュタロスとの戦いには駆り出して来て当然である。ルシオラを呼ぶと横島もおまけでついて来てしまうが、彼は彼で文珠という秘密兵器を持っているし。
「作戦立てるときは参考になるし、ここのルシオラ―――蛍華っていったっけ? 口説くには最適だものね」
 さすがに蛍華本人には聞こえないようにそう言った。
「まあ、そんな感じですね」
 美神は神魔族がルシオラに協力を依頼したと認識しているようだったが、小竜姫はあえて否定しなかった。最初から美神がそう思うように話していたのだから当然である。この集団の実質的な主導者がルシオラだと公言するのは憚りがあるし、横島とルシオラにとっても小竜姫に依頼されてという事にした方が体裁がいい。例の置き手紙の署名が「神魔族一同」になっていたのもその流れである。
「……で、何で京香ちゃんまで一緒にいたわけ?」
 確かに彼女は急成長した。GS試験ルールならあるいは自分に勝つかも知れない―――が、神魔族と肩を並べて戦うのは無理だろう。
「それはですね。隠れてもらおうと連絡した時に横島さんとルシオラさんが私たちと一緒にいるのがばれて、どうしても手伝いがしたいと強くせがまれまして」
「なるほど、そうだったんですか」
 おキヌがじろーりと京香を睨む。彼女が机の中に来なかったのをずっと心配していたのだが、まさかこんな事だったなんて。
 しかし京香もそれくらいで怯むほどヤワな神経はしていない。
「別に出し抜いたわけじゃないわよ。氷室さんも来たければ来ればよかったじゃない」
「そ、それは」
 言われてみればその通りで、ヒャクメの連絡を受けた時おキヌが横島のことに気づいていればこうはならなかった。しかし最初に聞いた話では、横島とルシオラはともかく京香が行って役に立てるような相手ではないと思うのだが……?
 おキヌがそう言うと、京香は一瞬黙った。
 そんなことはない。横島と同期合体すれば、アシュタロス以外の敵は軽く打倒できるほどの戦力になれる。が、それはあくまで秘密の最終手段。京香はおキヌにさえ言おうとはしなかった。
 代わりに実際にやっていたことを告げる。
「そうでもないわ。ご飯の支度とかお掃除とか、あとモニターの監視もしてたわね。後方支援だって立派な仕事よ」
「そ、それなら私にもできたじゃないですかー!!」
「拙者にもできたでござる!!」
 おキヌに加えて話を聞いていたシロもかみついたが、京香は相手にしなかった。というか、今さら言われてもどうにもならない。
「だから2人とも自分で言えば良かったのよ。私みたいに」
 まあ、おさんどんが大勢来ても邪魔なだけだろうが。
 タマモはその言い争いをあほらしそうに見物しているだけだったが、美神はいいかげんトサカに来た。
「あーもーうるさい! 今は大事な話してるんだから、ケンカならあっちでやりなさい」
 と腕を振り回してかしましい小娘どもを追い払う。
 そして小竜姫の話がいよいよ昨晩のアシュタロス来訪の部分まで来た時、美神ははっきりと顔色を変えた。
 できの悪い蝋人形のように白く固まってしまっている。
「小竜姫さま……そのひと本当に『美神美智恵』っていう名前なの……!?」
「ええ、そうですよ。美神さんのことを令子、って呼んでいましたから美神さんのお母さんですよね。それがどうかしましたか?」
 小竜姫は美神が何に驚いているか知っているのだが、それは隠して何気ない風を装ってみせる。
「だって……ママは死んだはずなのよ。5年前に」
「「ええっ!?」」
 叱られて小さくなっていたキヌ京とシロタマが思わず身を乗り出した。しかし美神はそれに気づいた様子もなく、ぶつぶつと独り言を続けている。
「確かにあの遺体はちょっと変だったけど……それじゃあれは別人のもの? だとしたら何のために? 5年間もどこで何をしてたわけ……!?」
 と自分の世界に入りかけて、前にあった事件を思い出した。かって美智恵はれーこを連れて自分の前に現れたことがあったではないか。
「そうか、きっと過去から私を助けに来てくれたんだわ。どうやってアシュタロスのことを知ったのかは分からないけど……」
 ようやく納得できる解答を得た美神の顔色に生気が甦り、いつもの覇気に満ちた表情になった。
「そう言えば美智恵さんは時間移動能力者でしたね。ではお母さんともう1度会うためにも、南極から生きて帰りましょう」
「そうね、そのためにもさっさとアシュタロスを倒して帰らないと。
 だいたいいつまでもこんな事してたら商売あがったりなのよ。エミ辺りに客取られたらたまったもんじゃないわ。
 ……って、それもこれもみんなアシュタロスのせいなのよね。このGS美神にケンカ売ったらどーなるか、骨の髄まで思い知らせてやるから首を洗って待ってるがいーわ!!
 つーか金! 仕事! あああっ、妖怪しばきたい……!!」
 生気が戻りすぎて日常モードになったついでに禁断症状を起こしたらしく、拳を震わせてぜーぜーと息を荒げる美神。おキヌ達になだめられてようやく正気に返ると、ふと気づいたことを小竜姫に問いかける。
「でも何でわざわざママたちを避けるようなやり方してるわけ?」
「はっきり言ってしまえば、足手まといになるからですね」
 いかに美智恵や西条たちが一流のGSであるとはいえ、小竜姫やワルキューレと比べたらパワーの桁が2つ違う。普通に考えれば、役に立つどころか足を引っ張るのがオチであった。
 ―――もっとも、やり方次第では実に強力な援軍になり得るのだが。
『前』に西条が使った『1体の人間以上』作戦もそうだし、文珠《雷》と美智恵の能力を組み合わせればアシュタロスにさえ勝てるかも知れない。
 が、彼らと一緒に行動すればルシオラと蛍華のことを話さざるを得なくなるし、アシュタロスやベスパ・パピリオを救うことができなくなってしまうかも知れない。だから単に足手まといという事にして、同行するのを避けたのだ。
 美神はそんな手段のことは知らないから、小竜姫の説明にあっさり理解を示して、
「それもそうね。そんじゃまあ、南極着いたらどうするか作戦でも立てましょうか。小竜姫さまたちも何も考えてないってわけじゃないでしょ?」
「ええ。美神さんたちにお願いしたいことがあるからこそ、こうして机の外に出てもらったのですから」
 と昨晩のうちに練り上げた作戦案を話し出す小竜姫。
 対決のときはもはや間近に迫っていた。

 一方頼みの綱をものの見事にぶち切られ、魔神に要求された美神の身柄すら連れ去られた対アシュタロス特捜部の面々は、どうにか息を吹き返した美智恵もまじえて作戦会議を行っていた。
「しかし例の置き手紙なんだけど、『神魔族』っていうのは神様と悪魔が連合しているっていうことなんだろうか……!?」
 敬虔なキリスト教徒である唐巣には今いち納得しがたい文面で、もしかしたら何かの間違いなんじゃないか、と思いたい所なのだ。
 しかし美智恵の判断は彼よりは柔軟だった。
「そうでしょうね。アシュタロスの行動は神族にとっても魔族にとっても危険なものですから、一時的に手を組むことは有り得るんじゃないでしょうか」
「そんなものかねぇ」
 かっての弟子の雰囲気の変わりように少々戸惑いつつ頷く唐巣。
「もちろん、あの署名が騙りでなければの話ですが。しかしもし騙りだったとしても、相当の実力を持った方々なのは間違いないでしょうね」
 アシュタロスに立ち向かう意志があるだけでも大したものだし、彼の行動も特捜部の行動も知っていた情報力は端倪(たんげい)すべからざるものだ。
「で、私たちはその方々に戦力外通告されたワケね」
 そう突っ込んだエミも面白くなさそうな顔をしていた。ここにいるのは自分も含めて日本でも最優秀のGSばかりだ。いくら神魔族とはいえ、彼らも拠点を全て破壊された身なのだから、ちょっとはこちらのことも認めてほしいものだ。
 美智恵はその非建設的な台詞をとりあえずスルーしたが、次の発言者はエミよりよほど率直だった。
「で、隊長さんよ。南極には行くのか行かねぇのか!?」
 雪之丞としてはうだうだと議論しているより、さっさと行動する方が好みなのだ。
 美智恵は力強く頷いて、
「もちろん行きます。令子がいないからと言ってここで手を拱いているわけにはいきませんし、神魔族のみなさんも南極に行っているはずですから、我々も彼らを追うべきです」
 勝算があるわけではない。今実行できる方策はタイガーの精神感応を応用した連携作戦だけで、アシュタロスの部下どもならともかく魔神本人に挑むにはまことに心もとないものだった。しかし勝ち目があろうが無かろうが、人類には彼を倒す以外に生き残るすべはないのだ。
「ま、他にする事もないからのう。いや、連中がアシュタロスを倒してくれれば万々歳なんじゃが」
 カオスの発言は身も蓋も無いものだったが、実は程度の差はあれ彼ら全員が内心で願っていたことでもある。
「西条クンはここに残って、情報収集と連絡調整を頼むわ。何かあったらすぐに連絡してちょうだい」
「分かりました。どうかお気をつけて」
 ということで美智恵はさっそく高速の砕氷船を調達し、南極に旅立つ準備に入ったのである。
 ―――結局、横島達に追いつくことはできなかったのだが。

 横島とルシオラは話が終わったあと、2人だけで談話室に残っていた。
「しかし何だ。今ごろ美神さんのお母さん荒れてるだろーなぁ」
「仕方ないわよ。一緒に行くわけにはいかないし」
「まーな。でも俺たちよくここまでやったよな。全部計画通りとはいかなかったけど」
 ベスパとパピリオを味方にできず、核ジャックも許してしまったのは痛恨の極みだが、相手が相手なのだから多少の齟齬(そご)はむしろ当然だし、今それを悔いても仕方のないことである。
「そうね。作戦も決まったし、後は全力で戦うだけだけど……きっと勝てるわ。私たち、がんばってきたもの」
 GS試験のあの日から今日まで、2人でずっと準備をかさね、修行もしてきた。だから負けるはずはない―――とルシオラは思っていたが、横島の表情が妙に沈んでいることに気がついた。
「ヨコシマ……怖いの?」
「ああ……前に言ったろ。俺の前世はアシュに殺されたって」
 横島はアシュタロスが特捜部に来たのを見た時に額から出血していたが、その理由がどうしても気になって、1人になった時に文珠《原》《因》《解》《明》を使っていた。その結果、前世の自分がアシュタロスに額を射抜かれて死んでいたのを魂が覚えていたからだと分かったのである。
 横島は他のメンツには言わなかったが、ルシオラにだけはこっそり打ち明けていたのだ。
「大丈夫よ。言ったでしょ、今のおまえは強いし、みんなも一緒なんだから」
「分かってるよ。でもほら、今までの敵とはワケが違うからちょっと不安になってな。
 ……とゆーわけで、思い残すことのないよーにここで1発ー!!」
「きゃぁっ!?」
 いきなり襲い掛かってきた横島をルシオラは反射的にアッパーカットでかち上げていた。煩悩少年の体が天井近くまで舞い上がり、脳天から床に落ちる。
「い、いきなり何するのよ!?」
「だ、だから最後の戦いを前に愛を確かめ合おうと思ってだな……」
 倒れた横島がぐぐっと頭を持ち上げ、言葉だけでなく視線も使って訴える。ルシオラは彼の気持ちは分からないでもなかったが、行動にはいろいろと問題が多すぎた。
「……。それならそれで、もうちょっと流れってものを考えなさいよ。いきなりあれじゃ驚くでしょ!? 第一みんないるのにそんな事できるわけないじゃない」
 キスくらいならともかく……とルシオラが小声で呟いたが、それは横島には届かない。
「じゃ、じゃあ……日本に帰るまで……ずっと……おあず……け?」
 人生の楽しみの99%を絶たれた横島はがくっと床に突っ伏し、そのまま意識を手放した。

 そして南極大陸の中央部。『到達不能極』とも呼ばれるその地に無事たどり着いたトライキャメランXの前に、すでに彼らの到来を察知していたアシュタロスの命によって派遣されて来たベスパとパピリオが現れる。
 分厚い防寒服を着こんでカメ型兵鬼から出て来たのは、美神を先頭にキヌ京・シロタマといった美神事務所従業員ズである。何故か横島とルシオラはいなかったが、代わりに霊波迷彩ネックレスとサングラスで正体を隠したステンノが最後尾にくっついていた。
 その真正面に立ったベスパが口火を切る。
「あんたが美神令子か。思ってたより早かったね」
「……」
 美神は答えない。ただ無言でベスパを睨みつけていた。
「神族どもはいないようでちゅね。もう動けなくなったか、それともあの兵鬼の中でちゅか?」
「……どっちでもいいじゃない」
 パピリオの問いに美神は投げやりな口調で答えた。そこでわざとらしく悔しげな顔をしてみせたのは、小竜姫達はいないと思わせるためである。
 案の定、ベスパはそれで神魔族はすでに行動不能になったのだと解釈して、
「そうだね。やつらが来てるんならルシオラの仇を討ちたいところだけど、私たちはここで戦えなんて命令は受けてないし。さっさとアシュ様の所へ行くよ」
 と後ろに向かって軽く手を振る。
 それに応えるかのように空間が裂け、その中に石造りのバカ高い建物が見えた。
「あれは……バベルの塔!」
「異界空間にこんな巨大な構造物を……!?」
「すごいでござるな……」
 口々に感嘆の声をあげながら呆然と塔を見上げる美神達にベスパが講釈を入れる。
「この塔はアシュ様の精神エネルギーでつくられたものさ。砂や氷の粒子が波動を帯びただけでこんな形に結晶するんだよ」
「「……」」
 あらためて魔神の力の強大さを思い知らされ、返す言葉もない美神達。ベスパはふんとつまらなさそうに振り向いて、
「ついてきな……入り口はこっちだよ」
 ベスパがパピリオの手を取って塔の正門の方に歩いていく。
 むろん美神達もそこで立ちすくんでいるわけにはいかず、足早に2人を追いかけていくのだった。


 ―――つづく。

 南極まで来ましたが、隊長さんは結局放置です(ぉ
 ではレス返しを。

○ASさん
>アシュ様がまともだなんてorz
 まあ、アシュが壊れだったらルシがあまりにも哀れすぎて何も言えませんしw
>なんてお茶目な連中なんでしょうねぇ
 それにしてもヒドい話です。
>あと美智恵は放置プレイですか
 監視された上で避けられてるんですから、ルシ達には絶対会えませんw

○なまけものさん
>老師の加速空間みたいにだらだらとゲームとかやってるんでしょうか?
 学校ですからゲームは無いでしょうねぇ。
 暇つぶしは図書室くらいしかなさそうです。
>なるほど「表面上」はまともなわけですね
 その辺は乞うご期待ということで。

○ふぁんとむさん
 はじめまして、あんな邪悪な手紙を笑っていただけて嬉しいです(ぉぃ
 ここまで来たからには完結までいくつもりですので宜しくお願いします。

○通りすがりのヘタレさん
>やはりマッドでしたね心眼ルシ
 Dルシはまともであることを祈るばかりです。
>ついに放置されることになった人界組の美智恵と西条
 せっかく未来に来たのにこんな扱いを受けるなんて、夢にも思っていなかったでしょうねぇ美智恵さんも。
>どこまで行っても詰めがわずかに甘いアシュタロスが妙に面白いと思いつつ
 まあアシュが完璧な作戦立ててたら今ごろ(以下略)。

○tomoさん
>Dルシ(どじっ子ルシ)の出番は無いですよね?
 うーん、Dがどじっ子の略ならばカメが火を噴きながら回転してたかも知れませんねぇ。
 それだと目が回るどころか遠心力でくたばれそうな気もしますが(^^;
>それと美智恵さん、ヘイトじゃ無くて純粋にいじめられてるだけな気がだけがしますよ♪
 いやいやすべては円滑な作戦遂行のためなんですよww

○ジェミナスさん
>そろそろ魔神とのガチンコが近づいてきたかな?
 ガチです。やることはえげつないですが(謎)。
 隊長さんはまたもや出遅れです。

○kamui08さん
>「1億4千人」の読者の皆様よりメッセージが届いております
 え、そんなにいたなんてびっくりです<マテ
>「ふぉーんとぉーのところー、どぉーなぁーんでぃーすかー」
 あくまで物語進行上の必然ですよー。私的感情の入り込む余地はないですw
 いえ別に美智恵さん嫌いじゃないですが。

○遊鬼さん
>ようやく人間GSサイドにも活躍の場が与えられるかと思えばまたも放置(w
 放置されたからって仕事は放り出せないのが哀れです。
>トライ〜の説明には是非とも「こんなこともあろうかと!」のひと言が欲しかった古い人間は自分だけでしょうか?(w
 この台詞は前に使ってしまっていたのでorz

○ゆんさん
>やっぱり、このSSのキャラはこれが2次創作だと自覚している〜〜〜〜;бロб)!!
 楽屋ネタは良くないですねぇ<マテ
>そろそろ黒化しちゃいそうな、忘れられているおキヌちゃんに敬礼!!
 ようやく美神事務所のメンツが出てきました。
 でも活躍できるかどうかは知りません<マテ

○HEY2さん
>美神の居場所がそこまで特定出来るなら、先に一言言っておいてやれば良いのに、ベスパピ無駄骨折っただけじゃない
 そこはそれ、ステンノにシバかれずに済んだんですからむしろラッキーということで(ぇ
>さあ2名様、どうぞこちらの席へ、相席になりますが……
 そこはいったいどこなんですか?w
>「しまった! 移動、戦闘性能にばかりこだわったせいで、ベッドがやたら大きいの一つしかないわ!」
 横島君が大喜びしそうな設定ですねぇw

○わーくんさん
>大勢:「もっとぉ〜、出番を〜〜、よこせ〜〜〜〜!!」←某ドラマCDよりセリフをパクってます
 作者の筆力ではこの人数は扱いきれず……ガクorz
>いや、むしろ美神親子ヘイト(ズシャ!ドガ!)………
 違いますよぅ、あくまでも単なるギャグ待ですから(ぉぃ

   ではまた。

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