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▽レス始

「GSルシオラ?決戦編!!第11話(GS+型月ネタ)」

クロト (2006-04-14 18:16)
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 夜分いきなり対アシュタロス特捜部を訪ねて来た謎の人外に対して、美智恵はいきなり攻撃しようとはせずまずは会話を試みた。
 彼の行動と雰囲気に知性の存在を感じたからである。
「何者です。名乗りなさい」
 そう誰何されたアシュタロスは余裕ある笑みを浮かべて、
「最近マスコミを騒がせている魔族の親玉だよ。手を抜いてあんな連中に任せたのは失敗だった。で、直接結晶を返してもらいに来たわけだ」
「「そ、それじゃ、お前は……アシュタロス!?」」
 美智恵も西条も驚倒したが、さすがに美智恵はすぐ立ち直って、
「あいにくだけど、ここに令子はいないわよ。私も令子の居場所は知らないんだから」
 本当に知らないからこそ、逆に堂々と言えるというものだ。美智恵の態度にゆらぎはなかった。
「ふむ……?」
 アシュタロスはそれは意外だったらしく、軽く首をかしげた。
 別に美智恵が嘘をついているとは思ってないらしい。
「ではGS本部……それとも神魔族かな。君には秘密で美神令子君を隠した、ということか」
 なるほど、と美智恵も西条も得心したが、アシュタロスの次の発言は美智恵よりルシオラの度肝を抜いた。
「まあ確かに手の込んだ隠し方をしているようだが、私の目はごまかせんよ。君たちが曾野横山とか呼んでいる所だね」
 と、愛子が隠れている場所をあっさり言ってのけたのだ。ルシオラは思わず口を手で押さえて、
「うそ、あれだけやったのに見通せたなんて……」
 その顔色は血の気が引きすぎて白っぽくなっている。
「魔神を侮っていましたね……迂闊でした」
 小竜姫も愕然としていたが、ひとりエウリュアレだけは冷静だった。
「落ち着いて下さい。まだ愛子さんが襲われたわけじゃありませんし、アシュタロスは私たちが見てることにも気づいてません。続きを聞きましょう」
 特捜部に来ているのはアシュタロス本人ではなく、『前』と同じく人形を遠隔操作で動かしているものだ。いくらアシュタロスでもそれが千里眼で覗かれている事までは気づけない。手を抜いて失敗したと言っているが、また1つそれに上乗せしているのは彼の作戦ミスによるものか、それとも『世界』の修正力によるものだろうか。
「そ……そうね」
 ルシオラが気を取り直して再び画面に眼を戻す。そこでは美智恵が素朴な疑問をアシュタロスにぶつけていた。
「なぜそれを私たちに?」
「知っての通り、私が欲しいのはメフィストの転生である美神令子の魂―――正確には魂に含まれているエネルギー結晶だ。
 だが残念ながら、神魔族の牽制にエネルギーを使いすぎて、直接彼女を襲うことが難しい状態なのだよ」
 と言っても数百万マイトの霊力を行使できるのだから人間の護衛など軽く蹴散らせるのだが、敵は人間だけとは限らない。土偶羅の報告によれば、Dルシオラを拉致するほどの力を持った神魔族が少なくとも2名、人界に残っているのである。
 アシュタロスは結晶の大まかな所在地は突き止めたものの、そこがどんな場所なのか、美神以外に誰がいるかという事までは分からないので慎重になっているのだ。たとえば地下シェルターのような場所で神魔族に拘束されているとしたらかなり厄介だし、アシュタロス自身が下手に襲撃すれば彼らは逆に美神を盾にするおそれもある。そこにGギルガー級の兵鬼が出て来たら返り討ちに遭いかねない。
 ベスパやパピリオに見に行かせるという手もあったが、2人には別の任務を与えてあるし、第一本当に敵の神魔族や兵鬼がいたら無駄死にである。
「部下は役に立たんし、残り時間も少ない。そこでお願いがあるんだ。私の居場所を教えるから、そこへ美神令子を連れて来てくれないか?
 君たちにとっても私を倒すチャンスだと思うよ」
 仮に強力な神魔族が美神を守っていたとしても、自分のホームグラウンドでなら問題なく対応できるのだ。霊力源のない彼らがその時まで活動できていればの話だが。
「―――」
 美智恵は一瞬判断に迷った。
 まず今ここでアシュタロスを討ち果たす、というのは不可能だ。なら向こうが攻撃して来ないのにこちらから特攻する理由はない。
 美神の居場所が分かったのだから、その護衛を増強して冥界とのチャンネル遮断の時間切れを待つ、という方法もある。アシュタロス自身が「残り時間も少ない」と言ったのだから有効な手段だと思うが、彼ほどの魔神がわざわざ自分に不利な情報を教えたのには何か裏があると考えるべきだ。
 とりあえず、彼の居場所を聞いておいて損はあるまい。
「……どこに?」
「南極大陸……南緯82度、東経75度。そこに彼女を連れて来てくれたら、私の基地の入り口の扉を開けよう。
 私はつい先日、全人類を抹殺するに足る数の核ミサイルとかいうオモチャを手に入れた。そう言えば、美神令子を守ってる連中も君に渡す気になるだろう」
「「な……!?」」
 返す言葉を失って呆然とたたずむ美智恵と西条。
 アシュタロスが「時間が少ない」と言ったのは「早くしないとミサイルを使う」という意味なのだが、2人はそれにも気づけないほど動顛していた。
「まあ、準備も必要だろうから今日明日に出発しろとは言わんよ。せいぜい足掻いてくれたまえ」
 アシュタロスは最後にそう言って、特捜部の事務所を出て行った。

「か、核ミサイル……」
 京香が震える唇でやっとそれだけの言葉を紡いだ。
 これに比べたら今までのターゲット騒ぎなど問題にもならない。
「えっと、ハッタリとかじゃないですよね。やっぱり……」
「アシュ様はそんな底の浅い嘘はつかないわ。『前』もやってたことだし」
 ルシオラも沈んだ表情を見せている。自分の至らなさでこの事態を招いた事への自責の念があるのだ。しかし絶望しているわけではない。
「でも防ぐ手段はあるから、まだ負けと決まったわけじゃないわ。要は南極で勝てばいいのよ。もともとそうする予定だったんだから」
 ミサイルを防ぐ方法の1つ目は、パピリオの眷族にその目標地点を変えてもらうことだ。ただし当然ながら彼女を味方にする事が前提である。
 2つ目はアシュタロスが持っている発射ボタンを破壊、もしくは無力化すること。そのための装置―――超強力妨害電波照射鬼は開発済みで、発射ボタンを視界におさめさえすればその機能を奪うことができる。
 条件付きとはいえ方法が2つもあるのだから、確かに絶望する必要はないのだ。どのみちアシュタロスに勝つことが、自分達が生き残る唯一の方途なのだから。
「じゃ、南極に行くんですね?」
 師匠がまだ折れていないのを目の当たりにして、こちらも元気を取り戻す京香。
「ええ、もちろんよ。さあ、これが最後の戦いよ!!」
 こうしてルシオラ達は最終決戦、南極遠征の準備に取り掛かったのである。

 魔神が去った後、我に返った美智恵はさっそく西条に打つべき手を指示していた。
「至急GSのみなさんを招集してちょうだい。集まりしだい曾野横山に行ってくるわ。西条クンはその間に本当に核ジャックが実行されたかどうか確かめて」
「しかし先生、アシュタロスの罠という可能性も……」
 曾野横山に美神がいる、というのは嘘ではあるまい。しかし彼女をそこから連れ出した帰り道で襲われて奪われる、というのが1番まずいパターンだ。
「分かってるわ。でも曾野横山には、魔界の大公爵が直接手を出すのをためらうだけの何かがあるのよ。それを味方にできれば、アシュタロスもいきなり襲っては来ないはずだわ」
 美智恵はかなり気が逸っている様子だった。なにせすっかり手詰まりだったところへ全人類を人質に取られた、その状況で唯一見える光明なのだから無理もない。しかもそこには探し続けていた娘がいるのだ。
 しかし西条はそんな上司にさらに苦言を呈した。
「それはそうですが……でも山の中を探すんですからヘリを準備した方がいいですよ。もう夜ですし、明日にしては」
「そう……ね。ごめんなさい、ちょっと慌ててたわ」
 弟子に2度までも諌められ、ようやく冷静さを取り戻す美智恵。今日の仕事は情報収集と連絡作業にとどめ、行動に移るのは明朝からという事になった。
 西条がGS達に明日の出動を要請し、現地近くの公安にヘリの手配を依頼する。
 美智恵はICPOと世界GS本部に核ジャック行為の有無を確認していた。隠しておいていい話ではないし、これが事実であるか否かで対応が大幅に変わってくるのだ。
「……では、やっぱりアシュタロスは本当に原潜を奪ったと考えていいんですね」
「そう見るのが順当だろうな。ただし決して部外には洩らさぬように」
 数日前に核ミサイル搭載の原子力潜水艦が数隻行方不明になった、という事実は確かにあった。ICPOもGS本部もオカルト絡みとは見ていなかったが、美智恵の話と組み合わせればパズルのピースはみごとに揃う。
 しかし悪魔が核ミサイルを奪ったなどと知れ渡ったらどんな騒ぎになることか。せっかくアシュタロスが公表せずにいてくれているのだから、わざわざ自分でパニックを起こすことはあるまい。もっとも、余計なことをすればすぐさまバラされてしまうだろうが……。
「はい、承知しています。……はい、分かりました。では失礼します」
 美智恵が半分落胆、半分安堵といった複雑な表情で電話を切る。前者は核ジャックが事実であったこと、後者はそれに伴って美神暗殺命令が撤回されたためだ。
「先生、やっぱりアシュタロスの言ったことは本当だったんですか?」
 西条が不安げな面持ちで問いかける。美智恵は頷いて肯定の意を示した。
「ええ。これでどうやら南極に行かざるを得なくなったわね。とりあえず明日は予定通り曾野横山に行くわよ」
 まずは美神の身柄を確保しなければ話は始まらない。すべてはそれからだ。
「それじゃ今日はこの辺であがりましょう。おやすみなさい」
「あ、はい。お疲れ様でした」
 明日はどんな想像外の事態が起こるかも知れないのだから、それに備えて残業続きの身を少しでも休めておくべきだろう。美智恵は西条に背を向けて、自宅のマンションに帰って行った。
 ―――そして翌日の夕方ごろ。やっとのことで美智恵が手に入れたのは、つい昨日まで使われていたであろう小さなロッジに残されていた1通の置き手紙だけだった。


「拝啓 対アシュタロス特捜部御中

 ここのことがアシュタロスにばれたので撤収します。
 アシュタロスと美神令子さんのことは我々にお任せ下さい。

                    敬具
                    人界駐留の神魔族一同」


「な、何なのよこれはぁぁぁ!? もしかしてヘイト!? 美智恵ヘイトなのこのSS!?」
 美智恵は意味不明の絶叫をあげた直後、気を失って倒れたのだった。

「……ところでルシオラ、南極にはどうやって行くんだ? まさか身1つで飛んで行くってわけではあるまい」
 ルシオラに頼まれてガソリンを入れて来た車(美神護衛の件で使っていたもの)から降りたワルキューレ(春桐魔奈美Ver)が依頼主にそう問いかけた。昨晩はアシュタロスと戦うための方策については討議したが、その前段階、どうやって南極大陸の中央部までたどり着くかについては何も話していなかったのだ。
 横島と京香を担いで南極まで飛んで行く事も不可能ではないかも知れないが、自分達の目的は移動ではなく戦闘である。戦場に着く前に疲労困憊していては敗北は必至だろう。
 するとルシオラの目がキラーンと白く光った。
 何かイヤな予感がして1歩引いたワルキューレに向かって、ずいっと3歩間合いを詰めるルシオラ。
「よく聞いてくれたわねワルキューレ。これが私の最新傑作、陸海空用愉快型極点踏破兵鬼・トライキャメランXよ! 普段は見ての通り手乗りサイズだけど、乗るときは7mくらいになるの」
 とワルキューレの目の前に突き出されたのは、体長10cmほどのカメだった。開発時期はGギルガー完成の直後で、南極に行くことを見越してつくっていたものである。それでワルキューレは大方理解できたが、ふと見たルシオラの顔は何かを期待してうずうずしていた。
 人間誰しも自己顕示欲というものがあるが、特にマッドな科学者とか発明家というのは自分の研究成果について語りたいという欲望を持っているものだ。しかし実際にそれをやれる機会はあまり無かったのである。
 で、今こそそのチャンスと思ったらしい。
 それも分かってしまったワルキューレは、いやいやながら質問の言葉を口にした。
「ほう……そこまで言うからには、よほど立派な性能を持っているんだろうな?」
「もちろんよ! 戦闘力はGギルガーの足元にも及ばないけど、居住性・機動力・低燃費性は比較にならないわ。複数の燃料を選択できるから乗組員が霊力を供給する必要もないし、ある程度自動操縦も可能よ。言うなれば快適な移動に特化した乗り物ってところね。普通に外を見るだけじゃなくてレーダー・ソナー・霊波探知機も搭載済みだし、逆に偽装モードも用意してあるわ」
 嬉々として語り出すルシオラ。最後のは、もし『前』のように軍隊が出て来たら小さくなってただのカメのふりをするということである。
「あ、だからって攻撃力ゼロってわけじゃないわよ。蛍華にも手伝ってもらって、衝撃音波ビーム砲と霊波砲とレーザー砲をつけたから。普段は首は1つだけど、戦闘モードにするともう2本出て来てそれぞれ半自動で敵を攻撃するのよ。特に音波砲は水中でも使える優れものなんだから。たぶん使わなくて済むとは思うんだけどね」
 その辺が『トライ』の名のゆかりらしい。ワルキューレは思わぬ災難だったが、あきらめて右から左に流していた。
 そしてすべての準備が終わった後。ワルキューレの車でひとけの無い海岸に降り立った一行は、本来のサイズになったトライキャメランXに乗り込んで決戦の地、南極に向けて海中の旅を始めたのである。


 ―――つづく。

『曾野横山』というのは、原作19巻に出て来た御呂地岳の近くにある山です(原作に出た地図にあります)。
 ではレス返しを。

○ASさん
>アシュの願いが心眼ルシの元居た世界とは違う可能性がある事に気が付けませんでした
 これも蛍華がDカップになったせいです(ぇ
>美智恵
 退場はしてませんが、ある意味もっと酷いかも知れません。

○TORAさん
 おお、分かる方が見えたとは。
 しかしあの台詞はネタだと言わないと小竜姫さまがカッコ良すぎるのでああいう展開になりましたが(^^;

○通りすがりのヘタレさん
>アシュタロス、何しに接触しに言ったんだ?
 要するに美智恵に令子を連れて来いって言ったんですねー。
 核で脅迫です。非人道的です。
>そして、今度こそ活躍できるか人界組・西条と美智恵!
 無理でした<超マテ

○遊鬼さん
>如何に霊波迷彩やら文珠やら使ってもアシュを相手に誤魔化せるもんでしょうか?
 3重の隠蔽も通用しませんでした。
 あとは手を抜かずに本体が来れば完璧だったんですが。
>蛍華もしっかり覚悟が決まったみたいだし、いよいよ決戦ですね♪
 ルシにとっては迷惑な話でw
>「美神親子に幸あれ」
 あう(滝汗)。

○ゆんさん
>ルシオラ・・・会話のところどころで胸の話を持ってきて・・・そんなに恨めしかったのか?
 周りは豊乳娘ばかりで、仲間は小竜姫だけでしたからねぇ。
>まさか、この人本当に壊れてんじゃ?
 壊れるのはこれからです(嘘予告)。
>小竜姫、おいしいとこもってきましたね。京香、エウより先に言ったことに感服です
 横島君も果報な人です。

○ジェミナスさん
>アシュタロスに対するルシオラさんの言い分は凄い納得できるなぁ、胸ウンヌンでなくえこ贔屓の部分ですよ?
 原作では何も言ってませんが、後々落ち着いたらそんなことも考えるんじゃないかと思うのです。
>最愛の人がモテる原因が自分って結構複雑では?^^;
 ルシオラさん、あんた背中が(以下略)。

○kamui08さん
>こう言う『相手に襲われる』って状況は戦略的見地から言うとすでに敗北しているそうです
 そう言えば『孫子』にもそんな言葉があったような。
 まあ横島軍団と美智恵軍団が一致団結すれば、とうにベスパピを捕獲できてたんですがw
>前回の美智恵さん
 幸運にも恵まれてましたね。
 スパイ役もいましたし、逆天号は空母を使える場所に行ってくれましたし。
>「親を越えて成長していくのが子の務めである」
 ある特定の方面についてはとっくに越えまくってるかも知れないです(^^;
>それにしても、作者のふんだんに仕込まれたネタには感心します
 いや、恐縮です。
 こういうのが好きなもので。

○HEY2さん
>横島の額の傷の理由とは
 平安時代には行きませんでしたが、きっと前世でアシュに殺されたんですよ、たぶん。
>「夜分すいません、隣りに越してきました芦 優太郎です」
 これはこれで隊長のストレスが増えそうですねw

○なまけものさん
>アシュの真の目的
 原作ではベスパが「宇宙の創造か死か、そして願わくば死を」って言ってますから、やはり滅びの方をより強く望んでると解釈しました。
>ここのアシュは壊れアシュの可能性がかなり高いと思う
 いえ、蛍華が「おまえの記憶の中のアシュ様と私の知ってるアシュ様は特に変わりなかったから」って言ってますから、少なくとも表面上は原作通りですよ、ええ。

○わーくんさん
>出番のない面々
 きっと名前くらいは出るでしょう、きっと<超マテ
>そしてアシュ様に壊れスキルはあるのか!?
 強制的に付けられるかも知れません(ぇ
>無定見
 いえ、また何かありましたら遠慮なくご指摘下さい。

   ではまた。

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