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!警告!インモラル、女女の絡み、男女の絡み有り
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「漆黒の女王様!!(GS)」

NEO−REKAM (2006-04-09 09:59)
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情報伝達経路:氷室キヌ→一文字魔理→タイガー寅吉→小笠原エミ

「令子が横島とおキヌちゃんと?・・・それってほんとなワケ!?」
「魔理さんはおキヌさんから聞いたと言っとりましたケン・・・本当じゃと思うがノー・・・」
「・・・」

小笠原ゴーストスイーパーオフィスでは、所長の小笠原エミが、助手のタイガー寅吉から聞き捨てならない話を聞いたところだった。エミは南方の血が混じっているのか、どことなくエスニックな雰囲気の漂う褐色の肌のセクシーな美女である。呪術に関しては世界でもトップクラスの実力を持つ。

話というのは、生涯の仇敵、同業者の美神令子が、アシスタントの横島忠夫と氷室キヌと3人で関係を持ってしまった。というわけの分からない情報である。

信じがたいとはいえ、おキヌちゃんは良い娘だし、まあ、エミは昔から、令子には若干レズの傾向があるのではないかと疑っていたから、その線は置くとしても、横島?

横島はないでしょう。

外見だって全然ぱっとしないし、中身と言えば、スケベ以外のことを考えているのかと思うような軽薄な青年である。確かに、ゴーストスイーパーとしては、特殊な能力を持っている事もあり、たまに活躍することはあったが、それでも、令子と釣り合うとはちょっと思えない。

(うぷぷ。焦って手近なところで手を打ったってワケね)

「横島ですって?おほほほほほほほほほほほ」
もちろんエミは令子と横島の前世云々の話は全く知らない。エミはしばらく笑っていたが、だんだんちょっと不安になってきた。手近なところで手を打ったとはいえ、もしかたら令子が幸せなのかもしれないと気づいたからである。

私には男がいないというのに・・・

エミは令子より3歳年上である。お肌の曲がり角もそれほど遠い将来ではない。もちろん、エミに言い寄ってくる男は数知れず、また、エミの誘惑のテクニックをもってすれば、ほとんど望みのままに男を落とすことも出来るし、時々はそうやって遊んではいたものの、本命と呼べる交際相手はいなかった。

(令子だけ私より先に幸せになるなんて絶対許さない!)
しかし、処女だったくせに(この点について根拠はないが確信していた)、いきなり3Pとは・・・さすがね令子!

情報伝達経路:氷室キヌ→一文字魔理→タイガー寅吉→小笠原エミ→六道冥子

「あら、エミちゃん〜。おひさしぶり〜」
自宅でエミからの電話を受けた六道冥子は、いつも通り微妙に間の抜けたテンポでエミに挨拶した。
「どうしたの〜」
「冥子、おたく最近令子に会った?」
「えーと、こないだ夢魔にさらわれた令子ちゃんを助けに行ったのが最後かしら〜」
「・・・」

六道冥子は令子よりも一つ年上で、セクシー系の令子やエミとは一味雰囲気が違う、愛らしい感じの美人ゴーストスイーパーである。冥子は、式神という、術者に使役する鬼神を12鬼持っており、自在に操ることが出来る。非常に強力なのだが、遺伝のためか、育ちがお嬢様のためか、精神的にパニックに陥りやすく、なかなか有効に使えないのが実情である。

ちなみに、令子と冥子とエミは同期でゴーストスイーパーの資格をそれぞれ主席、次席、3位の成績で取得し、以降は美人3人スイーパーとして大変な人気を博していたのだが、現在は、弓かおり、氷室キヌ、一文字魔理の3人娘に少しずつ人気を奪われつつある。とはいえ、まだまだ元祖3人娘のお色気と風格に対する人気には根強いものがあるのだが。

エミはそれとなく切り出してみた。

「令子ってさ、最近変わったとこない?」
「さあ?冥子よくわからない〜」

ずばりと切り出してみた。

「令子が横島とおキヌちゃんとできたって聞いてる?」
「?それって日本語おかしくない〜?」
「どこがおかしいってのよ」
「出来たってなにが〜?」

情報の裏づけが取れればと電話したのだが、冥子も知らないようだ。
(うーん・・・)
電話を切った後、エミはしばし考え込み、分厚い呪術の本を取り出してきて何か調べ始めた。

情報伝達経路:なし

知らぬが仏。という言葉の通り、唐巣神父とピートことピエトロ・ド・ブラボーは、教会の中でのんびりと日本茶を飲んでいた。教会の風景に日本茶には合わないように思えるのだが、実際にはあまり違和感はない。

「最近平穏な毎日で結構だなあ・・・」
「そうですね」
二人は平和を噛み締めている。企業から依頼された仕事が続いたので、経済的にも一息ついている。吸血鬼と人間のハーフであるピートは、ゴーストスイーパーの資格取得試験に合格したあと、唐巣神父に師事して修行をしていたが、半年ほど前に、唐巣神父より協会に正式な認定が提出され、晴れて見習いから正式なゴーストスイーパーとなった。

ピートは、ICPOの超常犯罪課、通称オカルトGメンの仕事に就くのが夢である。最低限必要なのは高卒資格だけなのだが、将来のことを考えると大学に行って勉強してからでも遅くないという美神美智恵と西条輝彦のアドバイスを受けて大学に通っていた。もちろん、奨学金を学費にしている。というわけで、今でも唐巣神父の教会にお世話になっていた。

「唐巣先生・・・」
その若々しい容姿とは別に、ピートは700年以上生きており、実際には唐巣神父よりも何倍も年上である。しかし、年齢の多寡にかかわらず、ピートはこの清廉で温厚篤実な先生を心から尊敬していた。
「先生は、恋をしたことがありますか」
「はっはっはっ。・・・私は神に仕える身だから一度もないよ」
唐巣神父はいつも通りの穏やかな表情で答える。

「と言いたいところだがね、そうではないんだ。・・・もちろんあるとも」
意外な答えである。ピートは、それ以上聞いてよいものかどうか迷った。唐巣神父は、ピートに聞かせたいことがあったのだろう。そのまま話を続けた。
「若かったからね。神職を投げ打ってでもその女性と一緒になりたいと思ったものだよ。それは、叶わなかったがね」
「どうしてです?」

病気で亡くなったから、と、唐巣神父は答えた。悪いことを聞いてしまったと思ったピートは、謝った。唐巣神父は少し遠くを見るような目をして、
「謝ることはないんだ。ピートくん。心が美しく、主に愛されるものは、早く天に召されるのだよ」
穏やかな表情は変わらない。
「私は、その人が亡くなる前に、一度だけその人と結ばれた。それを後悔したことは一度もない・・・」
「・・・」
続きがあるかと思ってピートは待ったが、唐巣神父の話はそれで終わりだった。

情報伝達経路:氷室キヌ→一文字魔理→タイガー寅吉→小笠原エミ→六道冥子→美神令子

「貴様ー、私とおキヌちゃんの下着姿では不満だっていうのかっ!」
「うわあっ!」
美神除霊事務所では、とりあえず横島が令子に殴り飛ばされていた。シロとタマモは厄珍堂までお使いに行っている。今日の除霊の仕事で、ピンチになったとき、令子とおキヌが文字通り一肌脱いででサービスしたというのに、パワーアップが十分でなかったということで、お仕置きを受けているのだった。普通なら、まーまーと止めに入るおキヌも少しふくれている。

しかし、一概に横島を責めるのは酷というものである。ここ数日間、毎晩のようにベッドの上ではっと二人の艶かしい嬌態を見ているのである、下着姿を見ても興奮できないことがあっても仕方ないであろう。

また、それとは別に、今日の除霊の依頼人が美しい令嬢で、横島が終始でれでれしていたのも令子とおキヌには面白くなかったらしい。すでに横島は血の海に横たわっている。

そのとき、電話の呼び鈴がなり、横島は一時的に一命を取りとめた。

「あら、冥子?なーに?」
「あの〜、エミちゃんから聞いたんだけど〜、令子ちゃんと横島クンとおキヌちゃんって出来ちゃったの〜?」
さすがの令子も慌てた。
「え?え?え?」
「冥子意味が分からないの〜。なにが出来ちゃったの〜?」
そ、それはね、ほら、たぶんあれよ、と、令子は適当にごまかして嘘の説明をすると電話を切った。

(エミが知ってる?)
どこから漏れたんだろう?エミが知っているとなると、タイガーからしか考えられない。

「横島クン。あんた私たち3人のコトをタイガーに話したわね?」
今度は、満面の笑顔と妙に優しい声で横島に問いかける。額にはくっきりと青筋が浮き出ていた。
(あ、これは、殺されるな)
と、横島は思った。その時、おキヌが小さくぱちん、と手を合わせて。
「あ、私お買い物に行かなくちゃ」
と言って慌てて部屋を出て行った。令子は気づかなかったが、おキヌの額には冷や汗が浮かんでいた。

「美神さんちが・・・うっ!がっ!あべしっ!」
令子のデンプシーロールが炸裂する。
「お、俺がそんなこと言ったって誰も信じな・・・うわああああっ!」

令子は横島に止めを刺した後、少し冷静になって考えると、横島の言うことももっともである事に気づいた。
(確かに、こいつが言っても誰も信じないわね・・・)
・・・そういえば、タイガーは魔理ちゃんと付き合ってるって言ってたっけ・・・?あれ?

「おキヌちゃんっ!!」
令子が大声で呼んだときには、おキヌはもう走って買い物に出かけた後であった。

しばらくすると、シロとタマモがたくさんのお札を抱えて帰ってきて、そういう話をする雰囲気ではなくなってしまった。

それから、その夜のベッドでは横島とおキヌが協力して、令子の思考能力が止まるまで責め続けたので、美神令子除霊事務所では、なんとなくその件はうやむやになったのだった。

ちなみに、令子と横島とおキヌが、夜遅くに3人で令子の部屋に集まってごそごそと何かやっていることには、シロもタマモも慣れてしまっていた。シロは、大人になったら自分も参画しようと密かに計画している。

次の日。六道女学院大学のキャンパスの芝生に座りながら、おキヌが一文字魔理に怒っていた。

「一文字さんひどいです!誰にも言わないでくださいって約束したのに!」
魔理は心からすまなさそうに言う。
「ゴメンおキヌちゃん、つい・・・」
「ついってなんですか!もう少しで横島さんが死ぬところだったんですよ!」
なぜ横島が死ぬのか良く分からないのだが、とにかく、正直に話すことにした。
「だってさ、弓やおキヌちゃんばっかり先に進んで、あたしだけ置いてきぼりになっているような気がして・・・弓やおキヌちゃんの話をすれば、タイガーももう少し積極的にしてくれるかと思ったんだよう・・・」

まあ、おキヌもその気持ちは分からなくはない。つい最近まで自分もそう思っていたのだから。
「・・・」
「ゴメン!」
「・・・で、タイガーさんとは進展があったんですか?」
魔理は赤くなってもじもじした。
「・・・うん、二人でね、ホテルに行ったんだけど・・・うまく出来なかった・・・ねえ、おキヌちゃん、どうやるの!?教えてっ」
「えっ?」
どうやるのと言われても・・・私だってビギナーだし、口で説明して分かるようなものでも・・・

「とっ、ところで、今日は弓さんはどうしたんでしょう?」
「さあ?こないだ、おキヌちゃんの話を聞いてだいぶショックを受けてたからねー・・・」
「・・・」

まさに青春は蹉跌の連続である。

情報伝達経路:氷室キヌ→一文字魔理→タイガー寅吉→小笠原エミ→ピエトロ・ド・ブラドー

日曜日。桜の並木道を、エミはピートと腕を組んで歩いていた。もちろん花はずっと前に散ってしまって、すっかり葉桜になっている。エミがわざと自分の胸を強くピートの腕に押し付けているため、ピートはさっきからずっと困ったような表情をしていた。エミと一緒のとき、ピートはいつも困ったような顔をする。

エミは、最初に会ったときからピートを狙っていて、機会あるごとに、あの手この手で誘惑しているのだが、ほかに好きな女がいるというわけでもなさそうなのに、絶対に落ちない。それでもなぜか、デートに誘えば、いつもちゃんと付き合ってくれるのだった。

二人は、赤い屋根の喫茶店に入って、窓際の席に座った。混んではいないが、ほかにも客はぱらぱらと入っていて、場所柄、ほとんどがカップルだった。人目を引くような美女と美少年が入ってきたので、一瞬静かになる。

(ほんと、いつ見ても素敵・・・)
正面からピートの顔をうっとりと見つめながらエミは考える。
(いつか奴隷にしてはべらしたい・・・)
エミはもちろん、こういう女であった。ピートは、まさかエミがそんな悪辣なことを考えているとは夢にも知らず、じっと見つめられて所在なさそうに、いつものように少し困った顔をしていた。

「今日はどこに行きたい?」
思いっきり猫をかぶったエミがにっこりと笑いながら優しい声で尋ねる。もちろん、今までにいろいろな状況のエミを見てきているので、さすがにピートもこれが演技だと言うことは知っている。しかし、それでもやっぱりエミさんは綺麗で可愛いなあ、とも思う。
「エミさんの行きたいところならどこでもいいですよ」
不用意な発言だった。
「じゃ、ホテル。決まりねっ」
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ!」
ピートが焦って制止する。
「男が一度言ったことを取り消すワケ?男らしくないわねっ」
「いやそれでもホテルは駄目ですよ!」
「なによ少年漫画のキャラは二十歳を過ぎても男とホテルに行っちゃいけないってワケ!?令子なんて3Pなのよ!?」

「いやそーいう問題じゃなくて、は?3P?」
「そうよ!あの女はそういう破廉恥な女なワケ!これで真のヒロインにふさわしいのが誰だか分かったでしょっ!?」
「3Pってなんですか」
・・・そうきたか。
エミは完全に出鼻をくじかれた形になった。とにかく、とピートは言った。
「ホテルは駄目です。恋人同士でないと」
これも不用意な発言だった。エミはすかさずピートの横に席を移る。

(しまった・・・)
ピートはさっと緊張して、いつでも霧になって逃げられるように準備した。エミはピートに身体を預けて、わざと胸がピートの腕に当たるように枝垂れかかり、うんと色っぽく、
「じゃ、恋人同士になればいいじゃない・・・ね?」
と言いながらピートの耳に吐息を吹きかける。ピートはびくっとして、思わずバンパイアミストになりかけるが、かろうじて踏みとどまった。冷や汗をかきながら言う。
「とにかく駄目です。他の場所にしましょう」

(んもう、堅いわね!)
しかし、これ以上迫ると、霧になって逃げられるおそれあり、と判断したエミは、少しだけ退却することにした。デートはまだ始まったばかりだし。
「じゃ、海でも見に行く?」
「そ、そうしましょう」

(海ねえ・・・)
エミはすかさず作戦を立てる、遠すぎず、夕暮れか頃らロマンチックなムードになるデートスポットに近い場所・・・行き先は八景島に決めた。

コーヒーを飲み終えると、二人は、エミのバイクに戻った。新しく買った漆黒のホンダCBR1000RRである。バイクのデートではスカートがはけないので、若干ビジュアル的な戦力が落ちるのだが、身体が密着するというメリットは、それを補って有り余るものだった。視覚的にも極力マイナスとならないよう、ぴっちりとしたジーンズを選んで、可能な限り脚線美を見せるようにしている。

まず、前にエミが座り、ピートは後ろのシートに跨って、タンデムステップに足をかけた。
「ピート、しっかりつかまってて。どさくさにまぎれて胸を触ってもいいのよ」
ピートは、黙ってエミの腰のところにぎゅっとつかまった。ピートに後ろから抱きしめられる形となったエミは、まるで少女のころのように、胸が高鳴るのを感じた。

エミは知らない。ピートも本当は、エミの柔らかそうな胸を触りたいのだが、それを一生懸命我慢しているということを。

エミはアクセルターンで一気にバイクを車道に向けると、一気に加速して車の波の中に突っ込んでいった。

美神除霊事務所には、令子とおキヌの二人しかいなかった。タマモは、先週に引き続き、今週もボーイフレンドの真友康則と遊園地でデートするということで、朝早く起きて、いそいそと弁当をつくったあと、出かけていった。シロは昨晩からお泊りで遊びにきていた令子の妹のひのめを肩車して散歩に出かけて行った。ずいぶん遠くまで行くといって張り切っていたから、夕方まで帰ってこないだろう。横島は、仕事がないので昨日から出勤していない。

「退屈ねー」
令子は、いかにも退屈そうに独り言を言った。おキヌもつまらなさそうに雑誌をぺらぺらとめくっていた。
「そうですねえ、テレビも面白いのやってないし・・・」
外はぽかぽかと良い天気である・・・
「ドライブにでも行く?」
「行きますっ」
ガレージのシャッターを開けて、911に乗り込んで勢いよく出発する。幌をあけてオープンカーになっている。まだ少し寒いといけないので、厚めの上着を羽織ってきていた。二人の長い髪が風になびく。
「あー、気持ちいい!」
おキヌが嬉しそうに言う。
「どこに行きます?」
「そうねえ・・・」
「・・・横島さんも誘いませんか?」
「・・・そうねえ・・・おキヌちゃんがそういうなら・・・」
令子はわざと気のないような返事をするのだが、おキヌがそう言ってくれて内心は嬉しそうだった。大体、二人だけでいいのなら、911ではなくコブラを選んだはずである。

「え?ドライブ?いいけど?」
おキヌが呼びに行くと、横島も暇にしていたらしく、服を着替えてのこのことやってきた。
「暇なんだったら事務所に来ればいいのに」
「事務所に行くと休みって感じがしないんスよねー」
確かにそうかもしれない。
「じゃ、横島クン運転ね!」
「えー?」
横島を運転席に押し込んで、令子は助手席に座ると、横島の腕につかまって枝垂れかかった。おキヌは後ろからシート越しに横島にくっつき、首の周りに腕を回す。・・・こんなに幸せで大丈夫かなあ・・・と、横島は少し不安になる。こんな美人二人が恋人なんて、どう考えても現実のこととは思えない。夢ならいつまでも覚めませんように、と横島は祈った。

「どこに行きます?」
おキヌはなんだかうきうきしている。そうねえ・・・と、しばらく考えてから、
「海でも見に行く?」
と、令子は言った。
「シロにタマモの面倒を見てもらってるから、あんまり遅くなるとまずいし、八景島あたりで手を打ちましょうか」
横島は軽くアクセルを踏み込んだ、横島はいつも安全運転である。

二組のカップル(片方はトリオ?)は国道357号線で遭遇した。見つけたのはエミである。前に嫌いな車が走っているなーと思ったら、案の定、令子の車だった。すかさずミラーに移らない位置に入る。たしかにバイクも目立つのだが、いつもと違うバイクだし、フルフェイスのヘルメットは、ミラーシールドとスモークシールドで顔が見えないので、意外と大丈夫かもしれない。

(・・・話は本当だったってワケね・・・)
しかし、横島に令子とおキヌがくっつくという、考えられないような光景である。横島ってそんなキャラだったっけ?と、エミは変な顔をした。どうやらピートも気がついたらしく。
「前に走ってるのは美神さん達じゃありませんかっ!?」
「騒がないのっ!」
バイクの前後で会話するためには、かなり大声で怒鳴らないと伝わらない。もっとも、騒いでも前の車に声が聞こえることは考えられないのだが。

令子は横島にもたれかかって、幸せいっぱいという表情だった。エミはどんどん腹が立ってきた。令子めー!おたくは男にもたれかかって甘えるような女じゃないでしょ!私はこんなに苦労しても駄目だっていうのに・・・

エミからの異様な雰囲気を察したピートは、苦笑していた。

令子たち3人は、やがて車を停めると、海辺に向かって歩き始めた、横島の両側で令子とおキヌが腕を組んでいる。しばらくすると、3人は腰をかけて海を眺め始めた。3人ともときどきお互いを見ては、笑いかけたりしているようである。

エミとピートは物陰に隠れてその様子を観察していた。
「エミさん、こんなことやめましょうよ」
苦笑しながら、ピートが言う。
「駄目よ。私を差し置いて幸せになるなんて絶対許さないワケ!」
「そんな・・・悪者みたいですよ?」
「どーせ私は悪者よ。ピートだってそう思ってるんでしょ!?」
「そ、そんなこと思ってませんよ!」
「うそ!だからピートだって私の想いに答えてくれないじゃない!でも私だって好きで悪者になったわけじゃないのよ!!」
幸せそうな令子の姿を見て、エミはかなり動揺していた。八つ当たりしてピートの顔をじっと睨む。令子だけ幸せになるなんて絶対許さない!

(でも、エミさんは僕よりずっと寿命が短い・・・)
ピートは、いつもと同じようにそう思った。どんなに愛していても、エミは自分よりずっと早くこの世界から去っていってしまう・・・

しばらくして、3人組は自動車に戻ると、また走り出した。行き先はホテルのようである。ピートもさすがにこれにはびっくりして、目を丸くした。3人で・・・?

3人がチェックインして、エレベーターの箱の中に消えてからすぐ、エミがフロントと交渉を始めた。どうやったのかは分からないが、しばらくすると、エミは令子たちの部屋の隣の部屋のルームキーを手にしていた。おそらく怪しい呪術を使ったのであろう・・・

エミとピートは、鉢合わせしないように数分置いてから、エレベーターに乗り込み、部屋に入った。異様な状況のため、エミもピートも、二人きりでホテルの一室に入ったという状況を深刻に考えていない。エミはホテルのメモにボールペンで、ピートにも読めない文字を走り書きすると、壁に当て、ぶつぶつと呪文の詠唱を始めた。最後に、エミの身体から霊波が発せられたかと思うと、メモは紫色に燃え上がって、灰になってしまった。

「・・・そうね、じゃ、今回は横島クンに決めさせてあげるわ。後で脱がされたほうがいじめられる役ね。いい?おキヌちゃん」
令子の声である。
「いいですよ」
おキヌちゃんが言う。
「じゃ、二人とも並んで、えーと、目をつぶって」
横島の声。隣の部屋の声がすっかり聞こえてくる。

「エミさん!こんなことしちゃ駄目です。やめてください」
エミはピートの言葉に耳を貸さない。
「ここにいるのがいやなら帰ればいいわよ。私はやめない」
そして、残りのメモをばらばらにして、また何かを書き始めた。

「こら、だめ・・・あん」
令子の声。衣擦れの音。くすくす笑い。
「じゃ、今日はおキヌちゃんの番ね」
「おキヌちゃん、3人の秘密を他の人に話しちゃったから、今日はちょっとお仕置き」
横島の声。
「あっ」
慌てたようなおキヌの声。
「どう、おキヌちゃん。目隠しされて後ろ手に縛られた感じは?」
「美神さん。ちょっと怖い・・・」
「全然怖くないから、安心しててね。横島クンと二人で可愛がってあげるから」
令子が優しく言う。

聞いているうちに、ピートは真っ赤になってしまった。
「エミさん・・・」
ピートはもう一度名前を呼んだ。隣の部屋の声はクリヤーに聞こえる。おキヌの声が次第に甘くなってくるのがはっきりと分かる。

「どうしてこんな事を・・・?」
「こっちの声は向こうに聞こえないから大丈夫よ。今からかける呪いは、声が聞こえないと効かないの」
「呪い?美神さんは友達でしょう?」

「・・・令子だけ幸せになるなんて絶対に許さない。横島を愛してるなら、7回生まれ変わっても横島とは結ばれることがないような呪いをかけてあげる・・・」
ここまで来て、ピートはエミが本気であることにようやく気づいた。

「ピート、悪い女が嫌いなら、私に付き合ってくれなくてもいいのよ」
「エミさん・・・」
「私だって好きで殺し屋になったわけじゃないわ!生きるために仕方なかったのよ!」
「エミさん!」
「どうしていつも私だけ・・・?」
エミはそうつぶやくと、呪文の詠唱を始めた。
「エミさん!!」

ひとつのメモが緑色に燃え上がって灰になった。

おキヌの声は、もう喘ぎ声に近くなっており、横島は令子にも手を伸ばしているらしく、令子の声も次第に甘い声になってきている。

(令子は完全に油断してる・・・私の呪いを避け切れないはず・・・)

ピートは、どうして、これほどまでにエミが令子の幸せを憎悪するのか全く理解できない。それでも、エミを止めなければならないことだけは分かっていた。こんなことをすれば、エミ自身も後からきっと傷つき、後悔することになる・・・

2枚目のメモが青く燃え上がる。

エミは目をつぶって呪文の詠唱を続けている。呪いのエネルギーであろう、黒い邪悪な何かが、霧のように渦を巻いてエミに流れ込んでいく。理解は出来ないけれど、エミはひどく傷ついている。その傷が身を焦がし、さらに自分が傷つくことになろうとも、自分を抑えることが出来ないのだった。

3枚目のメモが灰になった。残りはあと1枚。おそらくその最後の1枚が灰になったとき、呪法が完成するのだろう・・・

そのとき、ピートは、唐巣先生があのとき、なぜあんな話をしてくれたのか、突然了解した。ピートもまた700年の人生の中で傷ついていた。人間の女性を愛しても、ハーフ・バンパイアの自分は必ずまた独りぼっちになってしまう・・・

(一度だけその人と結ばれた・・・)
先生はたった一度だけでも、愛する道を選んだ・・・

最後のメモが燃え上がった。ピートは立ち上がって、エミを思いっきり強く抱きしめて、キスをした。それから、無理やりベッドに押し倒した。

ピートは、今までずっと我慢していたものが一気に溢れ出して、自分を抑えることが出来なかった。エミは詠唱に集中しているところを、突然ピートに襲われて、パニックになっていた。もがいてピートの腕から逃れようとする。だが、ピートの腕から逃れることは出来ない。

半分流れる吸血鬼の血がそうさせたのかもしれない。普段のピートからは考えられないほど乱暴になっている。吸血鬼の爪を出して服をびりびりと引き裂く。褐色の肌に純白の下着が艶かしい。

「ピート!?」
(私、ピートに襲われてる!?)
エミは最初、何が起きているのか分からなかった。ただ、反射的に身を守ろうともがいたに過ぎない。ピートは、あれほど触りたかったエミの胸を、下着の上から強く揉みしだいている。やがて、ブラジャーをめくって右の乳首を出すと、口を付けて、吸った。
「あっ!」
エミがびくんと反応する。

呪文の詠唱は途中で途切れたようだが、呪いが完成したのかどうか良く分からない。メモの炎は消えていたが、メモは灰になることはなく、元に戻っていた。隣の部屋の声は聞こえなくなっている。

乳首を吸っているうちに、ピートは少し落ち着いてきた。エミも、少し動揺が収まってきた。
「ピート・・・離して・・・」
エミの声を聞いてピートは顔を上げてエミの顔を見つめた。それでもエミを離さず、手はずっとエミの胸を揉み続ける。しかし、手つきはずっと穏やかになっており、いつもの優しいピートに戻ったようだ。エミの美しい顔を見つめながら告白する。
「エミさん。乱暴にしてごめんなさい・・・愛してます・・・」
「え・・・」
エミは、思いがけず突然ピートに襲われ、告白されて、さらに混乱した。ピートは再びエミを強く抱きしめ、エミの唇を奪った。力強いが、さっきよりはずっと優しく。エミの口の中に舌を入れていく。エミは抵抗しなかった。

しばらくして、エミもようやく今の状況を了解した。エミは、ずっと前からこうなることを望んでいた。ピートは右手でエミの胸を揉んでいたが、やがて乳首を弄び始めた。左手もエミの身体に巻きつけていたのを解いて、もう一つの豊かなバストをおもちゃにする。エミの身体も少しずつ燃え上がり始めていた。
「あっ、あんっ・・・ピート・・・素敵・・・」

やがて、エミは、自分からもピートの首に両腕を回すと、ピートの舌に自分の舌を絡ませ始めた。
「んっ・・・はぁ」
ピートは唇に直接、エミの吐息を感じでぞくぞくする。ピートの指が、いやらしくエミの両方の乳首をこね回し、触れるか触れないかという微妙なタッチで刺激する。エミの乳首はもう、恥ずかしいほど硬く尖っていた。ピートはエミの唇を吸うのをやめると、再び乳首にしゃぶりついた。舌で乳首を転がす。
「エミさん。すっかり乳首が硬くなってますよ」
「だっ・・・て、はぁ、ピートがおもちゃに、するから・・・!」

(ずっとそうしてほしかったの・・・)
いつのまにか、もうすでに、令子の事なんかどうでもよくなっている。

「あん、ああん、あっ・・・!」
エミの声はすっかり甘く切なくなっていた。いつもなら、男にこんなに一方的におもちゃにされるようなエミではないのだが、ずっと想ってきた男に優しく愛撫されて、反撃することすら出来ない。自分の秘所が蜜で蕩けてくるのを感じる。

「ピート・・・駄目よ・・・私だけ気持ちよくなっちゃう・・・一緒に・・・」
「いいですよ、エミさん、先に気持ちよくなって下さい」
ピートはだんだんエスカレートして、右手は乳房から、そっとエミの柔らかい下腹をなで、ジーンズを巧みに脱がしながら、そのままヒップに移っていく。エミの上半身にはもう白いブラジャーしか残っていない。それも、たくし上げられいて豊かな乳房を少しも隠してはいない。

乳首を散々蹂躙したピートの舌は、次にエミの耳や首筋の敏感なところ舐め回す。エミの首筋を舐めているとき、ピートは思いっきり噛み付いて血を吸いたいという強い衝動に駆られた。血を吸ってエミさんを永久に自分のものにしたい!
「く・・・」
でも、ピートは我慢した。それは、してはいけないことだったから。

(うそ、ピートってばすごく上手・・・)
エミは、快感に溺れながらも、反撃を開始した。本当はこのままおもちゃにされていたいのだが、わずかに残っていたプライドがそれを許さなかった。ピートの愛撫に反応する自分の身体を必死にこらえながら、ピートの服を脱がせていく。ピートはエミが脱がせやすいように自分の身体をうまく動かしてくれた。

エミのジーンズはもう全部脱がされ、下半身は白いパンティと赤いソックスだけになっている。ピートの手がパンティの中に侵入し、エミの茂みを優しく撫で回し、割れ目に沿って、指を往復する。指を中に割り入れなくても、あふれ出た蜜がピートの指に絡みつく。

エミもピートにアタックを開始していた。ピートはすでに固くそそり立っている。エミは両手でそっと撫ではじめる。先端からすでに染み出してきていた。

「あっ、あふん、ピート、染み出してきてるワケ。気持ちいい?」
「・・・はい、気持ちいいです。エミさんも?」
「・・・あぁん、あん、気持ち・・・いい・・」

エミは可愛い声で返事をする。美神除霊事務所の3人とは違い、エミもピートも初心者ではない。二人はお互いに、相手の感じるところを探りあった・・・

エミは起き上がって、ピートの股間に顔を持っていくと、ピートのものを舐め始める。舌で先端からカリの方へ這わせ、カリの裏側を刺激する。そのまま根元まで下を這わせていく。しばらくそれを繰り返してから、エミはピートを咥えてしごき始めた。

(う、エミさん・・・気持ちいい・・・)
ピートは必死にこらえながら、自分もエミのヒップをつかんで、エミの秘所を自分の頭の上に促した、エミは素直にそれを受け入れ、ピートの顔に腰を下ろしシックスナインの形になった。ピートの目の前に、エミの秘所があらわになる。
「エミさん、ここも綺麗です・・・。じゃ、頂きます」
ピートはとろとろになったエミの中に舌を入れて、いやらしい音を立ててクリトリスを優しく吸う。クリトリスの周りに舌を這わせ、エミの反応をみる。

「ああっ・・・ピート、ピートぉ・・・あん、あん、だめぇ・・・」

さらに左手は、エミの大きなヒップや、バストに手を伸ばし、その感触を楽しむ。突然乳首をつまんで強くひねった。
「ひっ!」

快感が、エミを痺れさせる。もう身体に力が入らなくなって、うつ伏せでピートの身体に顔をうずめて、それでも愛しそうにピートのものをさすり続けた。

ピートはそっとエミの蜜壷に中指を差し入れた。エミが甘い吐息を漏らす。中指の腹でエミの中を探っていくと、中ほどにたどり着いたとき、エミが、
「あああっ!!」
と叫んで反り返った。エミのGスポットだった。それから、舌で一番敏感なところを刺激され、同時に指でGスポットをこすられて、エミはもう我慢できなくなる・・・
「あっ、ああん・・・あっ、あっ、あふぅん・・・もっと、もっとぉ・・・」

そろそろかな、と思ったピートは愛撫を停めて、少しじらした。
「・・・ああん、ピート、意地悪しないで・・・おねがい・・・やめないで・・・もっと・・・」
エミは腰をくねらせて切なそうに懇願する。

(もうだめ・・・ピートがこんなに上手だなんて・・・だてに700年も生きてないってワケね・・・)
エミは自分のテクニックに絶対の自信を持っていて、ピートを自分の虜にする予定だった。
でも、もういい・・・

「・・・私、もうだめ、ピートぉぉ、・・・お願い。ピートのを入れてぇ・・・」
エミは甘えるようにおねだりした。エミはピートから離れて、隣で四つん這いになると、ヒップを上に突き出し、脚をすこし開いた。そして、自分の指で秘所を押し広げてピートからよく見えるようにした。すっかり蕩けて、今にも蜜が滴り落ちそうになっている。口からも涎をたらしている。

ピートももう、入れたくて我慢できなかった、後ろから、そそり立った肉棒を、エミの入り口に当てると、両腕でエミの大きなヒップをつかんで一気に挿入した。

「あぁん・・・」
エミが歓喜の声をあげ、ピートをぎゅっと締め付ける。ピートも快感と幸福で頭が真っ白になりそうになる・・・

エミにもピートにもほとんど余裕はなかった。ピートはさっき調べたGスポットに刺激がいくように激しく腰を動し、エミの中をかき回した。エミは喘いだ。
「はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・んっ・・・」
エミの喘ぎ声が、さらにピートの快感を加速させる。エミの声は次第に大きくなる。
「あん、あっ、あっ、あっ、ああああ・・・」

そして、遂に我慢できなくなり、エミは絶頂を迎えた。
「あっあっあっあああああああああああ・・・・・・・・・」
同時にピートも、うっ、といって射精した。どくどくと脈動する快感がピートを支配する。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」
エミはまだ息が出来ない。快感のうねりが何度もエミの身体を蹂躙する。

しばらくして、大きく息を吸い込み、同じくらい大きなため息をついて現実世界に戻ってきた。

やがて、落ち着いてから、ピートとエミは普通に抱き合う格好になった。ピートは、エミの身体や、敏感な部分をゆっくりと愛撫し、火照ったエミの身体を慰めている。エミは、ピートに身体を預けて幸せな余韻に浸っていた。

落ち着いたころ、ピートがたずねる。
「・・・エミさんは僕のことが好きですか?」
「・・・好き・・・」
素直に、エミは言う。それから、
「今日からピートは私の奴隷ね?」
「は?」
「私の虜になったでしょ?」
なんとも言えないほど色っぽい、妖しい表情でエミが言う。ピートは、エミの裸を見ながら、本当に綺麗だなあ、と思う。エミの言うとおりかもしれない。自分は、もう、エミから離れられないかも・・・
「ええ・・・」
ピートの返事を聞いて、エミは心から嬉しそうににっこりと笑った。その笑顔を見て、ピートは、奴隷でもいいか、と、思う。

エミは、今までどうしてもその気にならなかったピートが、急に自分を襲ったのか、理由が全然分からなかった。ピートもまた、どうしてそれほどまでにエミが令子の幸せを憎んだのか分からない。でも、焦る必要はない。これからゆっくりお互いを知り合っていけばいいことなのだから。

「隣ももう、終わったかもしれませんね。呪いはどうなったんでしょう?」
ピートが言うまでエミは隣のことをすっかり忘れていた。
「呪文が途中だから、まだ発行されてないワケ。あとから回収しておいたほうがいいかもね」
不完全な呪いは、やがて術者に跳ね返ってくる。もっとも、横島と結ばれなくてもエミはちっとも構わないのだが。
「終わったかどうかは、そうねえ、どうなったか隣の声を聞いてみたい?」
「や、やめましょう。そんなこと」
冷や汗をかきながら、慌ててピートが言う。
「・・・私もどうでもよくなっちゃった。どうしてかしら」

エミは自分でもちろんどうしてか分かっていた。自分が幸せなら、令子も幸せでも構わない。それに、令子の相手は横島だし。私はピート。どちらが上か一目瞭然なワケ。

あ、そういえば向こうにはおキヌちゃんもいたっけ・・・、とエミは思い直した。ピート一人では弱いかも。もちろん、女の子なんか要らないので、もう一人か二人、イイ男が必要よね。ま、焦る必要はないけど・・・

ピートはエミが隣でそんなことを考えているとは露知らず、自分にもたれかかっているエミの肌の気持ちよさを味わっていた。

しばらくしてから、エミは、
「ピート、もう一度してぇ」
と、甘えるような声でピートにおねだりした。
「・・・わかりました。女王様」
ピートはくすっと笑って、またエミに挑んでいった。

もう一度睦みあうと、すっかり夕方になっていた。エミの上着はピートが破ってしまったので、ピートの羽織っていた服を一枚エミに渡して身支度した後、ドアを開けて部屋から出た。ドアをパタンと閉めたとき、エミとピートは固まった。

ちょうど隣の部屋からも3人の客が出てきていた、令子と横島とおキヌも、エミとピートを見て固まっていた。

一番最初に正気?に戻ったのは横島だった。
「ピート貴様っ、俺のエミさんと二人でホテルに来て何しとったーっ!」
と叫んで、ピートに飛び掛ろうとした。次の瞬間、令子の手によって横島は壁にめり込んだ。

「え、え、エミっ?こ、こ、こんなところで会うなんて奇遇ねっ」
「そ、そ、そうね。令子。ほ、ほ、ほんと奇遇よねっ」
令子もエミもおキヌもピートも真っ赤になっている。横島は頭から血を流して別の意味で真っ赤になっている。

「お、お、おキヌちゃんっ。へ、部屋に忘れ物をしたわねっ、も、も、戻りましょうかっ」
「そ、そ、そうですねっ!」
「じゃ、エミ、そ、そういうわけでまたねっ!」

「そ、そう、じゃ、また電話するわねっ!ピ、ピート、帰るワケっ」
「は、はいっ」

エミとピートはエレベーターに消えていった。

(エミのやつ!つけてきたな?)
と令子は直感した、でも、それにしては鉢合わせするなんてマヌケね・・・なんか慌ててるし。偶然だったのかしら?いろいろ考えた末、ようやく令子も真実に突き当たった。
(なるほど、つまり、ミイラ取りがミイラになったってわけね?ふーん。ピートとねえ・・・)

エミとおキヌは窓から外を見て、エミとピートを乗せたバイクが走り去っていくのを確認してから、気絶している横島を引っ張ってホテルから出た。

「れーこおねーちゃんとおキヌおねーちゃん。おそいねー」
美神令子除霊事務所では、ひのめがシロの作ってくれた晩御飯をぱくつきながら、シロに話しかけていた。大好きなハンバーグやソーセージやハムやお肉がたくさんあるので、ひのめはご機嫌だった。
「本当でござるなー、どこに行ったんでござろう?おかわりは?たくさん食べるでござるよ?」
「うんっ、おかわりっ」
と、元気よくひのめが答える。ひのめは令子の子供のころに瓜二つらしい。年頃になったら、さぞや美しい娘になることだろう。今日はシロに抱っこされたり、肩車をされたり、一緒に歩いたりしながら、約50キロくらい散歩してきた。

そのうち、
「ただいまー」
と言って、タマモが帰ってきた。少し頬が上気している。
(・・・真友くんとキスしてきたでござるな?)
シロにはすぐ分かったが、今日はまあ、武士の情けでからかうのはやめておいてあげた。

「あれ?ひのめちゃんとシロだけ?美神さんとおキヌちゃんは?」
「さあ、拙者とひのめどのが帰ってきたときには、もういなかったでござるよ」
「タマモおねーちゃん。おかえりー」
舌足らずの声で、ひのめが言う。タマモはにっこり笑って、
「ただいまー。いい子にしてたかなー?」
「うんっ!」
「おりこうおりこう」
タマモは笑いながらひのめの頭を撫でた。

(どうせまた3人でいちゃいちゃしてるでござるなっ?)
(どうせまた3人でいちゃいちゃしてるのね?)
二人はそう思ったが、ひのめの手前、口に出すのははばかられた。小さい子供と言うのは、意味は分からなくても言葉を覚えるのは早いのである。

(サカリのついた猫じゃあるまいし、ひのめどのがいるときには、せめて昼間くらいは我慢して欲しいでござるなあ・・・)
まったくである。

情報伝達経路:氷室キヌ→一文字魔理→タイガー寅吉→小笠原エミ→ピエトロ・ド・ブラドー(ここで情報の裏付けあり)→唐巣神父

ピートは唐巣神父に自分とエミが交際を始めたことを報告した。神父はおめでとう、と言い、それから、お似合いだよ、と言った。全然違う性格の二人だけれど、きっと、エミくんも、ピートくんも、お互いに傷を癒して助け合いながら幸せになることができるのではないかと思う。

それから、令子とおキヌと横島の3人が関係を持ったという話を伝えた。
「3Pというんですよ」
ピートは付け加えた。

唐巣神父は、十字を切りながら礼拝堂に行き。そして、
(美神くんが、ここで3人で結婚式を上げさせろとか言い出しませんように・・・)
と、一心に祈り始めた。

(了)

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