日本人なら露天風呂やろ!!(意味不明)
というわけで、やってきました人骨温泉。
その道中を美神と横島はえっちらおっちらと登っていた。
「横島クン、大丈夫?」
美神は横島に話しかける。
横島は相変わらずでかいリュックを背負っていた。
まあ、『前』と比べると半分程度しかないが・・・・・・
それでもそれだけの荷物を持って、かなりの時間歩いて、息ひとつ乱さないのはさすがである。
「大丈夫です。しかし、どんなところに旅館建ててるんでしょうね。かなり距離があるし、標高も高いから結構大変だと思うんスけど」
「この辺は山登りの人たちに人気があるらしいから、その人たちがよく泊まりに来るらしいわ」
「ふ~ん、なるほど。とすると、今回の霊は山登りで死んだ人っスかね?」
「その可能性は高いわね」
二人は話しながらのんびりと登っていく。
その二人を隠れながら覗いている女性と思われる人影らしきものがいた。
「あの人・・・あの人がいいわ・・・ようし・・・・・・」
女性は二人に気づかれないように移動する。
そして・・・・・・
「えい!!」
と、横島に体当たりをする。
が、横島はあっさりそれをかわす。
「きゃっ・・・」
体当たりをかわされ、勢いあまって倒れそうになった女性、というより少女の腕を、横島はとっさにつかむ。
「ごめんなさい、私ったらドジで・・・・・・・」
「あんた、幽霊ね」
横から美神が声をかける。
「えええええええ!?何でわかったんですか!!???」
すっごく驚く少女の幽霊。
「いや、私たちってGSだから」
「GSってなんですか?」
「まあ、簡単に言えば、幽霊を除霊する仕事の人かな」
美神がそういうと、少女の霊は顔を真っ青にして、
「ご、ごめんなさいごめんなさい!!」
少女の霊は逃げ出そうとしたが、横島が腕をつかんでいるため逃げられない。
「あ~~、落ち着いて、悪いようにはしないから。
事情を説明してくれないかな」
つかまれた腕から横島の霊波が流れ込んでくる。
それは穏やかでとても温かく、安心する感じがした。
少女の目から、ぽろぽろと涙が零れ落ちる。
「ごめんなさい・・・わたし・・・・・・」
少女は泣きながら事情を話した。
幸せな世界を・・・・・
第四話 絹
「で、温泉に出る幽霊ってこの子なの?」
場所は変わって、人骨温泉のホテル。
道すがら聞いた話によると、少女の名前はキヌというそうだ。
300年前に山の噴火を沈めるために人柱になったが、通常こういう霊は地方の神になるのだが、なぜかなることができず、おまけに成仏もできない。
というわけで、自分の身代わりになってくれそうな人を探していたそうだ。
美神の問いに、ホテルのオーナーである男が答える。
「うんにゃー、ウチに出るのはムサ苦しい男ですわ。こったらめんこいオバケならかえって客寄せになるで。てかウチのホテルで働かんか?い~い看板娘になれるだや」
オーナーはおキヌににじり寄っていく。そしてそのまま、
「え・・・あの・・・・・・」
「いやむしろワシの嫁にーーー!!!!」
おキヌちゃんに襲い掛かる。
「い、いやああああ!!横島さはーーん!!」
「やめんかこの変態!!」
霧恵直伝の踵落しをオーナーに叩き込む。
「えぐえぐえぐ・・・・・・」
泣きべそをかいているおキヌをあやす横島。
それを見て美神がむくれたりしたとかしないとか・・・・・・
「それなら、問題の温泉に行ってみましょう」
場の雰囲気を変えるため(というか、横島とおキヌの雰囲気を変えるため)霊が出るという温泉に向かう。
で、問題の温泉に到着。
美神は見鬼くんで辺りを見て回る。
「みたところ、霊の気配はなさそうね。少なくともここに地縛されている霊じゃないみたい」
『いや、いたぞ』
横島のバンダナにいきなり眼が現れ、なおかつしゃべった。
「わ、横島さんの額に眼が出ました」
『挨拶が遅れた。我は心眼と申す。以後、よろしく』
「あ、これはご丁寧に。はじめまして、キヌといいます」
のんきに挨拶を交わす心眼とおキヌ。
「・・・・・・まあいいか。それより心眼、見つけたか?」
『ああ、出てくるぞ』
心眼が言ったとたん、ひげ面の男の霊が現れた。
「じ、自分は明痔大学ワンダーホーゲル部員であります!!寒いであります!!助けてほしいであります!!」
「とりあえず、事情を聞こうかしら」
「自分は遭難して、仲間とはぐれ、雪に埋もれて死んだのであります。しかし、いまだ死体は発見してもらえず、放置されております」
ワンダーホーゲルは泣きながら事情を説明した。
美神は少し考え、おキヌとワンダーホーゲルを見て、
「・・・よし、ワンダーホーゲル、選びなさい。死体を捜して成仏するか、おキヌちゃんの変わりに山の神になるか」
「じ・・・自分が山の神になれるでありますか!?」
「うまくいけばね」
「やります!!やらせていただくであります!!俺たちゃ街には住めないっス!!遠き山に日は落ちるっス!!」
ワンダーホーゲルは感動のあまり(なぜか)横島に抱きつこうとする。
「ええい!!わかったから落ち着け!っていうか何で俺に抱きつこうとしてんだよ!!」
突っ込んできたところを宮田並みの右ストレートのカウンターを顔面に叩き込む。
「ひどいであります・・・・・・」
「はいはいそこまで。じゃあそういうことで、おキヌちゃんもこれでいいわね?」
「はい!」
おキヌはうれしそうに返事をした。
『ちょっと待て、美神殿』
心眼がいきなり待ったをかける。
「どうしたのよ心眼?」
『いや、この辺り、というかこの山になにやら妖気を感じるのだが』
「妖気?そのくらいなら大抵の山から感じるんだけど」
『うむ、しかし地脈に沿って感じるのでな。それに、どうやら封印されているようだが』
「!?ということはおキヌちゃんがその封印に関係しているのかもしれないわね」
『あくまでも可能性だが、調べたほうがいいだろう』
「そうね・・・・・・オーナー、ちょっと聞きたいのだけれど、この辺りに古い神社やお寺ってあるかしら?」
「んだなあ、ああ、氷室神社ってえのがちかくにあるだ」
美神たちはオーナーから道を教わり、氷室神社へ向かう
またまたところ変わって、氷室神社。
途中でであった氷室早苗という少女に案内され、氷室神社の神主である早苗の父に事情を説明し、資料を読ませてもらった。
さらに、神主そっくりの道士が現れ、300年前の出来事を見せてもらった。
「なるほど、この死津喪比女っていう妖怪を封印するためにおキヌちゃんを人身御供したってわけか・・・・・・」
「そうだ。そして死津喪比女が滅んだら生き返ることができる」
「・・・・・・・・・」
横島はこの事を識ってはいたが、改めて見せられてショックだったようだ。
『だが、地脈にあやつの妖気が感じられる』
「うむ、まだまだ時間はかかりそうだな。おそらく、最低でも数百年・・・・・・」
「・・・・・・その必要はない。今ここで倒せばいい」
横島が急にそんなことを言う。
「は、どうやって・・・・・・」
「まあ、俺に任せてといてください」
横島は自信満々だった。
夜になった。
暗い林の中をおキヌはさまよっていた。
突如地面が盛り上がり、女性の姿をした、しかし、下半身が枝状になっている妖怪が現れた。
「くくくくく・・・・・・見つけたぞえ。300年間わしを封じた娘。
おぬしを殺せばわしはまた力をとりもどせる」
おキヌはとっさに後ろへ逃げようとしたが、葉虫が現れ、道を塞いでしまう。
「おっと、逃がさぬぞえ。この300年間封じられた恨みを晴らしたいのでな、じわじわと生き地獄を味わってから殺してやる」
葉虫がじりじりと距離を詰めてくる。
「あ・・・あ・・・・・・」
おキヌは恐怖で動くことができない。
「さて、やれ」
葉虫がいっせいにおキヌに襲い掛かる。
「きゃあああああ・・・・・・なんてな」
おキヌに姿が消え、代わりにバンダナを巻いた少年、横島があらわれた。
「なに!?」
横島は襲い来る葉虫を次々と霊波刀で切り伏せていく。
葉虫はろくな抵抗もすることができずに滅んでいく。
「お主はなにものか?」
「さあね、通りすがりの者ってとこかな」
死津喪比女の問いに、横島は飄々と答える。
横島はただ立っているだけだが、死津喪比女は、動くことができない。
見た目は間違いなく人間だが、本能が危険といっている。いや、むしろ逃げろだ。この人間を相手にしてはいけない。この人間は自分を滅ぼすことができる。根拠はない。そんなこと、たかが人間にできるわけがない。だが、体が震える。この場から立ち去れと体が訴える。なんなのだこれは・・・・・・
初めての感覚に戸惑う死津喪比女に横島は問いかける。
「ちょっと聞きたいんだが、おまえはなぜ人間を襲う?」
「何を言う、人を造ったのが天なら、怪物を造るのもまた天。
わしが生まれたという言うことは天が人を滅ぼそうと思うておるということじゃ」
恐怖に震えながら、死津喪比女は言う。
「じゃあ、もう人間と共存はできないのか」
「もともとする気なぞない。それに、お主はここで死ぬのだからな」
横島の後ろから死津喪比女が20体近く襲い掛かってくる。
地脈が止められ、300年以上栄養をほとんど取らず、つい最近目覚めたばかりの死津喪比女が出せる花の数はこれで精一杯だった。
しかし、一流のGSをもってしても、これだけの数の死津喪比女を相手にしたら勝ち目はないだろう。
だが・・・・・・
「心眼」
『応。サイキックシューター、セット』
横島の周りに野球ボール大の光の玉が数十個現れる。
死津喪比女がたじろいた一瞬、
「シュート!」
光の玉はまるで意思を持っているかのような動きで死津喪比女に襲い掛かる。
さすがに数が多すぎるのか、死津喪比女は動くことができずに、光の玉に体を削られていく。
横島は両手に栄光の手を発現し、手を重ね合わせる。
両手の栄光の手についている霊玉が光る。
〔大〕〔剣〕
現れた文字通りに、横島の手には大剣が握られていた。
その剣は、いうなれば斬馬刀もしくはドラゴンスレイヤー並みの巨大さだった。
「ひっ・・・・・・」
斬!!
そのまま体を回転させ、一気に死津喪比女たちを斬りつける。
20体に及ぶ死津喪比女が、たったの一撃で消滅してしまった。
圧倒的な強さだった。
横島は残った一体に向かって歩く。
「く、化け物め・・・・・・」
死津喪比女はうめくようにいった。
「だが、わしを倒したところで本体を倒せなければ意味がないぞえ」
「・・・問題ない。お前が出てきた時点でな」
横島の手にビー球ほどの珠が現れる。
その珠には『枯/死』と言う文字が書かれていた。
その珠は横島の手を離れ、高速で死津喪比女を貫いた。
「ふん、こんな攻撃で・・・・・・な、なんだ、体が崩壊する・・・貴様一体何をした!?」
死津喪比女の体がどんどん崩れていく。
「く、もう・・・・・・」
地上に出ていた花が消滅した。
ただでさえ妖力が足りない上に、横島に花を大量に消されたのだ。この状態で横島の文珠に堪えることなどできるはずもなく、死津喪比女はそのまま地面の下で消滅した。
それを心眼で確認した横島は氷室神社へ戻っていった。
「まさか死津喪比女を倒すことができるとは・・・・・・」
道士は信じられないといった顔で言った。
「でも考えたわね、文珠でおキヌちゃんを『模』倣して、市津喪日女をおびき寄せて、文珠の『枯/死』で本体をつぶす。さすがね。でも文珠ってホント便利ね。うらやましいわ」
「おキヌちゃんがあの辺りをうろついてたら、あいつは出てくると思ったんです。おキヌちゃんを殺せば地脈は開放されるッスから、多少無理してでも出る価値はあるなと。まあ、万が一のために文珠の『誘/寄』も使ったっスけど。」
「でもこれでおキヌは開放される。お主たちには感謝しきれない」
道士は横島たちに向かって頭を下げる。
「私からも、ありがとうございます」
おキヌも横島たちにお礼を言う。
「いや、いいってことっすよ。おキヌちゃんもこれで生き返ることができるし」
横島はうれしそうに言った。
今おキヌが生き返ったら、おそらくもう会うことができない。
『前』と違い、おキヌとの絆が深くないのだ。
生き返っても、横島たちを思い出すことはないだろう。
横島はそれでも笑顔を崩さなかった。
たとえもう会えなくても、生きていればそれでいい。
幽霊のままでいるのは、一人でいるのは辛いから。
『前』の記憶、おキヌが生き返ったときの別れは辛く、再会はうれしかった。
たとえおキヌが忘れても、自分が覚えている。
生きていれば、また会うことができる。だから・・・・・・
と、そこで道士が言った。
「しかし、今のままではおキヌは生き返ることができない」
「へ?なぜに?」
「うむ、実は300年前に死津喪比女に山の神が殺されてな、今まではおキヌがこの地に留めていたので特に問題はなかったのだが、もしこのままおキヌが生き返ってしまったら地脈が乱れ、山はやせていくだろう」
「じゃあ、おキヌちゃんは生き返られないじゃないっすか!!」
「おちついて、それなら新しい神をつくれば・・・・・・・・・あっ!!」
美神が突然大声を出し、みんなびっくりした顔をする。
「そうよ、おキヌの代わりはいるじゃない」
「え?どこに・・・・・・あっ!!」
横島も気づいた。
「それなら俺、ちょっとあいつ連れてきます!」
と、ものすごい速さでどっかに向かう横島。
「彼はどこに・・・」
「おキヌちゃんの代わりを連れに戻っただけよ。」
10分後。
ホテルまで結構な距離があるのにわずか10分ほどで往復した横島(しかも、ほとんど息を乱してない)に皆が唖然としている中、美神は横島がつれてきた霊に話しかける。
「さて、準備はいい?」
「いつでもOKっス!!早く神になりたいっス!!」
横島がつれてきたのはワンダーホーゲルだった。
「じゃあいくわよ、道士たちも手伝って」
道士たちは美神に声をかけられ、現実に戻ってくる
「あ、ああ、わかった」
「この者をとらえる地の力よ、その流れを変え、この者を解き放ちたまえ!」
途端、おキヌを縛っていた力が消失し、代わりにワンダーホーゲルに流れていく。
ワンダーホーゲルの服が変わり、なにやら雰囲気までもが神聖化した・・・ような気がする。
「これで自分は山の神様っスねーっ!!」
「とりあえずはね。力をつけるにはまだまだ時間と修行が必要だけど。とりあえず、反魂の術ができるようになったら連絡して」
「わかった。私もそれまで残ろう。では」
そういって道士は姿を消した。
「おお、はるか神々の住む巨峰に雪崩の音がこだまするっスよ~~!!」
ワンダーホーゲルは喜びのあまり角笛を吹きまくる。
「あの・・・・・・」
おずおずといった感じで、おキヌは口を開き、
「ん、どうしたおキヌちゃん?」
「あの、私も連れて行ってもらえないでしょうか?」
おキヌはそう言った。
「わたし、ずっとここから出れなくて、だから、あの、生き返るまでの間はほかの所にも行ってみたいなと思って・・・あと、その、横島さんと一緒にいたいな~なんて・・・・・・ゴニョゴニョ・・・」
「おキヌちゃん・・・・・・美神さん・・・」
「まあ、別に問題ないからいいけど(っていうか、おキヌちゃんも横島クン狙いなわけ!?)」
「やったー!!じゃあ、これからよろしくお願いします、美神さん、横島さん」
その顔は本当にうれしそうで・・・・・・
「さあ、今日はもう遅いのでウチに泊まっていってください」
「(まあいっか)じゃあ、お言葉に甘えて」
美神たちは氷室神社に泊まっていくことにした。
翌日、美神たちは人骨温泉に戻ることにした。
「それじゃあ、お世話になりました」
「いいえ、こちらこそ。また会いましょう」
「ええ、じゃあ行くよ、横島クン、おキヌちゃん」
「うす、じゃあ行こうかおキヌちゃん」
横島が差し出した手を、おキヌは
「はい!!」
しっかりと握り締めた。
その笑顔は、この快晴の空のように明るく、澄んでいた。
続く
あとがき?
さて、お久しぶりです。シマンチュです。
もはや忘れられていると思われますが、がんばって書きました。
しかし、一つ書くのに軽く8時間以上かかってるのはどうかと自分でも思います。しかもネット喫茶で・・・
その場のインスピレーションで書いてるので遅いおそい・・・
だれか、もっと効率のいい書き方教えてプリーズ(泣)
というわけでレス返しにいきます。
>ガバメント様
いいよね、ひのめちゃん。
これからひのめちゃんは出しまくり・・・たいなと思ふ・・・
>エイシャ様
そういっていただけると光栄です。
これからも応援よろしく!!
あ、ちなみに今回横島が使った技は、最近流行のリリカルな魔法使いの技です。ほかにも、他の漫画の技を使ったりするんで、その辺はご了承ください。
さて、今回はこの辺で。
更新遅くて申し訳ない。
でもがんばります!!
ではでは!!