蛇神様の極楽大作戦
第五話 蛇神様の就職事情、及び横島君の給料事情
「何だって言うのさ」
メドさんの開口一番です、確かに美神さんのお言葉、なんでさ、とでも言いたい気分かもしれません、美神さん以外全員そんな気分でしょう。
雇われるだなんて誰が考えるでしょうか、メドさんは面通し程度のつもりで来たのですが、迎えられるなんて欠片も思っていませんでした。
当たり前です、命のやり取りをした間柄、敵意を向けられても友愛は向けられない、それが当たり前、それが通用しないのが横島君だったわけですが、奇特な例外です。
例外は普通でないからこそ例外なので、転がっていたら例外じゃなくなります。
敵意を向けられると思ってメドさん来ていたのですが、黒キヌ様には盛大な敵意で歓迎されましたし美神さんなら尚の事敵意を向けてくるだろうと思っていたのです、実際の所女性に対する敵意に関してはどちらが上かはいうまでもありませんね。
確かに好意的という出迎えでは無かったのですが、そえなりに刺々しい言葉も出ていますが雇用を促すのは敵意ではありません、扱き使うつもりなのかもしれませんが普通は嫌いな相手を身近に置いたりはしないでしょう、排斥するのが普通です。
身近に置く、つまりは居てもいい、好意の表れに近い申し出です。
ですが自分が好意を向けられるなど判らないのがメドさんです、敵であっても、敵のつもりは無いのですが、誘われる理由がわかりません。
美神さんなので何か企んでいるだろうとは思っていますが、何を企んでいるかを判らない。
まぁ、彼女が丁稚の護衛の為にメドさんが何処かに行ってしまうよりは横島君の身近に居た方が都合がいいという判断を下すとは思いつかないでしょう、判るのは何処かの覗き専門の女神様ぐらいのものですよ。
無論指摘されたら全力で否定するでしょうが、加えて口封じのために口に出来ないことを観光することも考えられます、稀代の意地っ張りです自分の意地の為には神様を足蹴にするぐらいへいちゃらですよ。
だからメドさん疑問なのです、そんな意地っ張りだと思っている彼女がそんな思考を浮かべるはずも無いと思っているのですから。
ぶっちゃけ彼女の美神さん評価は守銭奴ですし。
「何だっていいじゃない。私はあんたを祓うつもりなんてないし、あんたは横島君のとこに居つくんでしょ。だったら私のところで働きなさい」
と、仰られる美神さんです、全然疑問に答えていませんね、まぁ、真相を答えるつもりはないのでしょうが。
そしてこれからメドさん色々質問します、適当に抜粋しますと。
何でさ A.強いし経費掛からないでしょ
確かにメドさんの戦い方は横島君以上に経費が掛かりません、道具0で済みます、そもそも自前ですから。
いや、だから何で雇うのさ A.便利そうだから、横島君と二チームに分けると依頼料増えるし、あいつ一人だと危なっかしいし
やっぱり答えていません、因みに二チームの辺りでパターンブラックが強くなりました、誰かさんがどんなチーム分けをされるか悟ったのでしょう、わからない方がおかしいかも知れませんが。
美神、前衛もしくは中衛、おキヌ、問答無用で後衛、横島、オール、メド、前衛。
組むとしたら分かりそうなものです、絶対横島+キヌチームはないでしょうね、バランス的に、メドさんを使う時にGS資格もちを同行させないとまずい感じもしますし。
答えになっていないと思うんだがねぇ A.手元に居た方が安心だから
微妙に答えっぽいですが、建前的な答えにメドさん聞こえました、勿論建前ですが。
埒があかないと見たメドさん質問の方向性を変えます。
給料は? A.時給千円
安過ぎませんか、一応は元神様ですよ、それとも小竜姫の一時間も1000円ですか。
因みに隣で横島君が何か騒いでいます、長年仕えた自分より高いのを嘆いているようです、嘆くのは神様に近い力を持ってからと言いたい所ですが、彼の給料が理不尽に薄給なのですし、技術職的な仕事なのだから出来高と基本給でいいと思います、報酬から経費を引いた額の何割かという感じの、そうなったら世界の終わりかもしれませんが。
少なくとも横島君は現実を否定することでしょう、案外横島君の評価が一番低いのは彼自身ですね。
美神さんはそれなりに横島君を評価していますけど、そこまでは出さないでしょう、前よりは出す気なのですが、誰かさんのせいで出せないので255円なのですよ、美神さん的にはもう少し上です、上でも法的な最低時給を割っていますが、上なのです横島君の勤務時間で計算すると一人暮らしには十分なぐらいに。
因みに時給、いや給料に関してはメドさんが後日調べ上げてきた雇われGSの報酬の相場に色を付けたものとなりました、それは熾烈な交渉があったのですがメドさんが億仕事を数分で片付けてしまうと美神さんの頭の中で、高額報酬の仕事を沢山請ける、沢山報酬を払うの戦いが起こり。
前者が勝利したりしました。
美神さんでも億仕事は数日間の準備期間などが掛かってしまうのですから、時間的にかなり経済的だったのです、その時間に別の仕事を入れれば出るものも大きくなるがそれ以上に見入り大きくなると踏んだのです、経費から税率という言葉が浮かんだり浮かばなかったり。
どうやら昨今税務署も高額所得者に対する徴収が洒落にならないそうで、国に収めるぐらいなら美神さん的にはばら撒いたほうがマシなようです。
国家の敵ですね、国家の敵のほうが好きですが、消費税10パーセントにするなら所得税を下げなさい、医療費負担もこれ以上増やさないでください、さもなきゃ脱税するしかないのですよ。
追記すると何故か横島君の給料も上がっていたのですが上がった当月から銀行振り込みにされ給料明細を見た横島君の意識がお空に旅立ち、暫くビクビクして過ごすようになったそうです、因みに税金は源泉徴収で美神さんが収めていたりします、使わないはずの道具(しかも自腹扱い)を経費として計上して税金を軽減するのは優しいのか、それともそれだけ税金を払うという行為が嫌なのか、後者のような気がします。
普段縁がない金銭を得て情緒が不安定になったそうです、横島君的に諭吉さんを大量に保有するなど非現実過ぎるのですから、つまりはそれだけの給料を受け取るようになったということです、その翌月も、その次も、大体平均すると諭吉さんが二グロスほど、まぁ、彼の実力的には妥当どころか安いのかもしれませんが。
給料が上がった理由は、まぁ、双方が合意したというか、何と言うか。
因みに双方に横島君の意思はありませんよ、彼は廻りの波に翻弄される存在なのですから。
メドさん側は、メドさんのお金で生活することを横島君は馴染めません、どうもヒモ生活が彼の倫理に抵触するようです、これで家事でも出来れば違うのかもしれませんが、一人暮らしのはずなのに横島君の家事スキルは高いとは言えません、料理などはほぼメドさんです、となると生活の全てがヒモっぽい状態です。
メドさんとしてはどうでもいいのですが、変に遠慮されるのも戴けないものがありますし、街に遊びに出て全部自分が出すのも遠慮されるので今ひとつ楽しめません、どうやら案外横島君モラルがあったようです、他人が楽しんでいるかどうかを気にするメドさんもメドさんらしくない気もしますが、若返って感性も女の子に戻っているのかもしれません。
まぁ、邪魔しているのは横島君のプライドです、あって無きようなプライドかもしれませんが、人間この薄っぺらいプライドが大事なものです、邪魔かもしれませんが大事なのです。
となると遠慮を取り外すにはある程度、少なくとも金銭面では折半するのがいいと判断したのです、今一メドさん横島君が嫌がる理由を理解していませんでしたが考えて行き着きました。
奢られるのは嫌がる、では奢るのはいいのだろうか、でもそれも違う気がする、間を取って折半という思考です、何で奢られるのを嫌がっているのかは理解していません、彼女的に持っているものを使っているだけで、それなら多く持っているほうが使えばいいと考えているのですから。
やっぱり金銭面的というか常識がずれているのでしょう、致命的ではないですが。
で、折半するにも金が無い、給料が安いからですが、それで安い場所に遊びにいくメドさんではありません、そこまで高いところに行きたいわけでもありませんが彼女の趣味はそれなりにお金がかかる傾向なのです、料理ですら輸入食材ばかりなので少し根が張りますし、金銭感覚が崩壊しているっぽいですし。
で、お金が無いならばあればいい、安い給料を何とかしてしまえばいいと考えたのです。
美神さん側としては給料は上げてやりたい、でもなんとなく上げるとよくないことが起こりそう、いや確実に、多分、きっとという予感はあるのですが。
故に上げるのが恐ろしいのですが、でも上げないといけないとも思うのです、例え得体の知れない恐怖感に贖っても、その恐怖の根源が身近な少女、給料を上げることを相談した時やんわり止められた、口調だけはやんわりだった少女から発せられていると薄々気づいていようともです。
思い出すと冷や汗が止まらないというか、彼女の耳には“わたしのじゃまをするだなんてみかみさん、しませんよねぇ”と聞こえたとか聞こえなかったとか。
でも、横島君の為には給料を増やさなければなりません。
それは成長した横島君にはそれに見合った生活の向上が必要だと考えたのです、そして生活の向上とは所得の増加です、それに付随するものもあります、例えば更なる成長。
幾らお金大好きの美神さんでも、お金は使わなければ溜まっていくものではないと理解しています、彼女だって富を築いて来たわけですから、投資の大事さも理解しているのです。
そして横島君の給料の増加は投資に繋がります、人は報いられれば更に伸びるものですから、逆に報いられなければ腐っていくものですが、それを促すのは本人の努力と周囲の正当な評価でしょうし、直接には報酬になるでしょう、過剰な報酬も問題ですが低すぎるのも問題です。
それに彼女も横島君の頃があります、力が付いてきて自分の力で仕事が出来るようになった時です、それで手に入れたお金は嬉しいものでした、どう使おうか、今日は美味しいものを食べようかと考えたりもしました、その嬉しさを味合わせてあげたいとも思っていたのです、今の生活にあえぐ給料では夢がありません。
美神さんも人の子です、初めての従業員、初めての弟子に自分の味わった喜びを味合わせてあげたいと常々思っていたのです、素直でないので考えるだけですし、恐怖の具現たる妨害者がいた為実現は難しかったのですが。
その考えの後押しとしてメドさんの給料を上げてやれと言われて、気に入らないという態度をとりつつ増やすことが出来たのです、対面的にはメドさんがゴネタということになっていますが、之が素直でないのか、黒キヌ様の目先を自分に向けない為なのかはわかりません、多分どっちもです。
で、質問が続いていたのですが、一応話が纏まったという事で、メドさんが頷いたのでお開き「あんたも今日は帰っていいわよ」と言われて横島君とメドさんは帰宅しました。
新しい住所と連絡先、ぶっちゃけメドさんの携帯の番号なのですがを控えて「明日の午後に来るのよ」で、終わりました。
二人が帰った後、書類を片付けていた美神さん、雇われ蛇神様の関連書類を作成中の彼女に暖かい紅茶のカップがだされます。
「あら、おキヌちゃん。お茶、淹れてくれてありが・・・・・・・・・・・・・・・」
美神さんがお茶を入れてくれたであろう方に目をむけ礼を言おうとしたのですが、途中で絶句し凝固し、薄っすらと脂汗を滲ませました、それも瞬間的に。
美神さんの見たおキヌちゃん、黒のオーラが体を覆い、髪は何故か白髪に脱色され、頬には邪悪っぽい刺青、服装は悪魔っぽいゴスロリ、その名を黒キヌ様。
モード、“黒色庭園”、彼女の黒き心象世界を現実世界に投影する固有結界を常時発動状態なのです、その根源は理不尽。
完全に爆発してしまったらしいのです。
何がって、黒に変身するのを阻んでいた理性ですよ。
よいこのめっさつしりーず ジャプニカ暗殺帳
○月×日 天気:あら真っ暗です ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
みかみさんったらうらぎるんですねうらぎっちゃうんですね、くすくすおかしいです、へびなんですよ、がいじゅうなんですよ、くじょしないとたいへんじゃないですか。
あはー、でもみかみさんのことだいすきですから、でもわたしのこころははりさけそう、だからおしおきです、なにがいいでしょう、よるのべっどでなかせてあげるとかわいいかもしれませんね、あしたにはとってもすなおになってくれるはずです。
じゃあばんのおしょうじにはなにをまぜましょうか、でもみかみさんスパイスがきらいみたいですききらいするんですよ、わからないようにするのがたいへんです
「お、おキヌちゃん・・・・・・・・・・・・・」
震えた声で馴染んだ元幽霊少女に言葉をかける美神さん、声が震えているというか体が振動しています、彼女はこのモードを見るのが初めてというか、誰もが始めての黒色庭園なのですがその怖さは知るまでも無く本能が理解しています。
理解したくないのに、魂が叫びます、あれは全てを斥ける存在だと、言葉は届かないと。
「何です、美神さん」
「着替えたの」
「ええ、ちょっと気分転換に着替えてみたんですけど、美神さんどうでしょう」
「そうね、に、似合ってるわよ」
「それで、美神さん少しお話があるんですが、よろしいですか」
このお話が何なのかは不明だが、美神さんは断ることが出来ず、断ったら何されるかわからなくて恐ろしかったのです。
数分後に悲鳴を上げて外へ飛び出す美神さんがいたとか、その姿を窓から眺めて微笑んでいる黒キヌ様がいたとか、恐慌状態に陥ってシャットダウンした人工幽霊がいたとか。
後書き。
殆ど日刊で連載したのにものすごく期間があいてしまいました。
事情としてはこの話を一度書いて手直ししている際に突然電源が落ちてしまった。
二度目も同様、どうやらコードが痛んでいたようで、買いなおしましたら大丈夫に。
でも突然落ちただけなら修復されるはずなのに何故かされていないという不可思議、それでも三度目と為るとやる気が出るまで今日までかかってしまいました。
何故か固有結界持ちの黒キヌ様です、そのうち黒キャラを追加する予定ですが、基本的に被害者、横島&美神、黒化、黒絹(桜)、竜神さま(セイバー)は決定ですかね。
>ヒロヒロ様
時給ではなく出来高払いになりました、手当ては一切無いですが、億仕事の数割を掻っ攫うので額はかなりの高額かと。
>D様
暗殺帳は半ばに、墓穴スキルは磨きがかかるかと。
>眞戸澤様
周りの筆頭が美神さんになりそうな感じです。
>内海一弘様
黒キヌ様の反応、次回辺りに。
>とんちゃん様
竜神様と蛇神様、新たなる黒の来訪と申しましょうか、被害者はどちらだ(横島or美神)。
>徹夜覚悟様
そろそろ暴れます、黒き少女の本領発揮、目指すは桜&まじかるアンバー。
>涼太様
会話が少ないのが仕様ですから。
>シヴァやん様
転がり込む方決まっています、因みに月前ですよ~
>貝柱様
恋愛感情が無いわけじゃないのですが、案外その辺りはちゃんとできる人のはずです、お金にうるさい人は結構使い方も知っていますし、守銭奴という割には散財しますしね。
高密の黒は心象世界を打ち破り現実世界を侵食し始めました。
>なまけもの様
冷静というか、現実的な美神さんです。
修羅場は発生するかもしれません。
>ジェミナス様
素直な美神さんならもう横島君は詰まれていたでしょうね。