「た、大変。早く魔鈴さんに知らせないと……!」
愛子はとりあえずピートを長椅子に寝かせると、急いで厨房に駆け出した。
「何ですって……! 外に出てはぐれた……!?」
ことの顛末を聞いた魔鈴が青ざめる。
「そ、そうなんです。そのあと空間が閉じてしまって……」
「閉じた!? 大変、私の魔法がみんなの霊波に干渉されておかしくなったのかも。もしそうなら簡単には再接続できないわ……!」
「え……。ど、どうにかならないんですか!?」
愛子が思わず魔鈴に詰め寄ると魔鈴はその手を押さえて、
「落ち着いて、接続ができないってわけじゃないわ。ただちょっと時間がかかるだけなんだから」
その答えに愛子は多少冷静さを取り戻した。
「それでどうすればいいんですか?」
「えっとね、魔法でつながってた入り口があの7人の霊波の干渉で消えちゃったってことは、もう1度接続するにはその波形を打ち消すだけのパワーが要るってことなの。だからコンデンサーに霊力を蓄えてパワーを確保しなきゃいけないのよ」
と魔鈴が樽のような形をしたアイテムを取り出す。それが霊力を蓄えるコンデンサー装置らしい。
そこから伸びた聴診器のようなものを自分の額に貼り付けた。
「あなたにも手伝ってもらえたらいいんだけど……」
魔鈴の霊気と愛子の妖気を混ぜたらうまく扱えなくなるかも知れない。微妙な調整が必要だけに、不安要素は入れたくなかった。
「じゃ、私はここで待ってるしかないんですね……ううっ、これも青春なのかしら……」
魔鈴の隣で自分の本体の机に腰掛けながら、愛子は手を組んで空を見上げた。
ヒョオオオオ……。
横島たちがいる雪原では絶え間なく北風がふぶいていた。それほど冷たくはなかったが、足元に雪(?)が積もっていて歩きにくいこともあって、7人は体力の消耗を感じていた。
「行けども行けども雪景色、辺りには怪物の気配がうようよ……」
「えらいクリスマスになってしまったのー。どうやって元の世界に戻ればいいんじゃろか」
一文字とタイガーがぼやいた。状況はあまり良くないようだ。
「この先どうなさるおつもり? 何かアテがあって歩いてるんですか? 私もう疲れて……」
最初に移動を提案した雪之丞に弓が食って掛かる。雪之丞もこの状況で機嫌よくはしていられなかったから、
「俺だって疲れてるよ! けどあそこにいたってしょーがねーだろ!?」
こうなると2人ともケンカ腰である。
「何、その言い方!? そんなだからイブを過ごす彼女もいないのよっ!!」
「だーーっ!? その台詞、そっくり返すぜ!!」
「「ま、まーまー」」
一文字とタイガーが弓と雪之丞をなだめる。雪之丞はとりあえず矛を収めたが、弓の方はこれとは別に納得いたしかねる事があった。
「そこの3人! この状況で何いちゃいちゃしてるんですの!?」
彼女がずびしっと指さしたのは、行列の最後尾で腕を組んで歩いていた横島とキヌ京である。おキヌはあわてて横島の腕を離したが、京香は微動だにしなかった。
「だって対抗戦の優勝チームが3人揃ってるんだもの。このくらい怖くないでしょう?」
「え」
意外な回答に弓が一瞬固まる。まさかこの娘が自分を認めるような発言をするとは……?
「……ってあなた、本当はそんなこと全然考えてないでしょう!」
顔を見れば分かる。
「そうでもないわよ。少なくとも守ってあげる必要はないから」
「!?」
自分に負けた相手にしゃあしゃあとそう言われて、弓は頭からぼむっと蒸気を噴き出した。
「あ、当たり前でしょう! だいたいあなたこそそんな事してて自分の身は守れるの!?」
「ええ、私と先輩くらいはね」
確かに怪物の気配は感じるが、これだけ気配をはっきりさせている相手なら逆に奇襲される恐れはない。だからこそこうして禍を転じて福となすべく、横島に体をすりつけたりしているのだ。おキヌは単に不安でしがみついていただけのようだが、それに対抗するという意味もあった。
いや理屈では弓の言い分の方が正しいと分かってはいたけれど。どのみちもう終わりみたいだし。
「それより後ろ。誰か来てるわよ」
「え?」
そう言われて弓が振り向くと、先頭を歩いていた雪之丞がサンタクロースらしき服装をした老人と話をしていた。
「じーさん、道に迷ってるんだがどっか休めるところを知らないか?」
「わしの仕事は今日の12時までこの世界を守ることじゃ。今すぐここから立ち去れ!」
雪之丞に頼みに老人は無愛想にそんな事を言った。
「いや、だから帰ろうにも道が……」
「立ち去らん場合は、実力で排除する!」
老人は雪之丞の言うことに全く耳を貸さず、背負った袋の中から大きな斧を取り出した。
「あ、危ねぇっ!?」
ためらいもなく振り下ろされた斧を雪之丞がとっさに後ろに跳んでよける。老人は初撃をかわされたことに不快の表情を浮かべると、左手を唇にあてて指笛を吹いた。
ピィィィッ!
その音と共に、老人の周りの地面から身長80cm程の雪ダルマがぼこぼこっと20体ほど湧いて出て来た。
「ゆ、雪ダルマが……!?」
「何か知らんが、やる気なら相手になるよっ!!」
7人の中で最もケンカっ早い一文字が、先手必勝とばかりに手近な雪ダルマに殴りかかる。しかし彼女の霊力がこもったその一撃を、雪ダルマは己の腕でブロックした。
「え……!?」
「こ、こいつら強えっ!?」
「このままじゃやられる……!?」
雪之丞と弓も加勢に入ったが苦戦していた。落ち着いて戦えば2人にとってそれほどの難敵ではないのだが、いきなり襲われた上に数が多いので狼狽しているようだ。
「先輩!」
「おキヌちゃんを頼む!」
横島は後輩の声に言葉だけでそう答えると、右手を突き出して栄光の手を発現させた。
「フラッシュ・ピストン・グローリー・パンチ……!」
それは栄光の手の拳を伸ばして殴っては縮めて戻す、という事を繰り返す技である。鋏の形でも同じことはできるが、拳をまっすぐ往復させるだけ、というこの技はその単純さによって常人では―――いや、横島自身ですら視認できない程の速さに到達していた。
ドガガガガッ!!
雪ダルマの群れを一気に半分ほど突き倒す。雪之丞たちに余裕ができた所で、横島はボスであろう例の老人に狙いをつけた。
「くらえ!」
顔面に強烈な張り手をくらわせる。もしかしたら人間である可能性も捨て切れなかったので、剣や杭といった死にそうな攻撃はできなかったのだ。
「ぐっ……おのれ!」
案の定、老人が倒れると雪ダルマの動きも鈍くなった。
「よし、今のうちに逃げろーー!」
その声を合図に、7人は一斉に背を向けて逃げ出した。
「ふ、2人とも大丈夫か……!?」
しばらく走って敵の姿が見えなくなると、横島は足を止めて後ろにいたおキヌと京香に声をかけた。
「はい、大丈夫です」
「は……はい、だ、大丈夫……です」
京香はきびきびと返事をかえしたが、おキヌは両手を膝について荒い息をついている。
「雪の中を走ったからなあ。どうやら撒けたみたいだし、ちょっとひと休みするか」
「ごめんなさい、やっぱり足手まといになっちゃって……」
おキヌは体力も7人の中で最も低い。京香に手を引っ張ってもらっていたにも関わらず、疲れた顔をしているのは彼女だけなのである。
それでもおキヌはこちらに来た事を後悔してはいなかった。横島の負担になっている事は申し訳ないと思うけれど、彼がこうしてやさしい言葉をかけてくれるのが嬉しかったから。
「まあ、仕方ないさ。……ってあれ? 他の連中は!?」
おキヌと京香だけは見失わないよう気をつけていたが、その分他の4人への注意がおろそかになっていたらしい。
「はぐれちまったか……どこ行ったんだろうな」
「あ、私分かりますよ。弓さんと雪之丞さん、一文字さんとタイガーさんが2人ずつで別の方向に逃げて行きました。わざとじゃなくて成り行きだと思いますけど」
京香は忍者として、逃げながらも周囲の状況を観察することは忘れていなかった。横島が感心して、
「マジで? よく見てたなあ」
「えへへ……」
京香がぽーっと頬を染める。ちょっと褒められただけなのに、なぜか胸の奥がきゅーんと締まった。
このままどこか行きませんか、と言い出しそうになったが、それはいくら何でも非常識過ぎる。
「……で、これからどうしましょうか?」
「うーん。雪之丞と弓さんはともかく、タイガーと一文字さんは探してやらんとまずいかな?」
自分達3人の都合だけを考えるなら、むしろ別れたままでいた方がいい。このメンツなら文珠も全開モードも気兼ねなく使えるからだ。しかし雪之丞と弓は霊的格闘の専門家だからまだいいとして、タイガーと一文字を放置するのは危険だと思われる。
「そうですね、方向的にも一文字さんたちの方が近いですし」
「じゃ、早く行きましょう」
おキヌにそうせっつかれて、3人は探索を開始した。
さて、サンタと雪ダルマの本隊が追いかけていたのは雪之丞と弓の両名である。
「し、しつこいっ! まだ追って来やがる」
「……! 一文字さんたちがいないわ」
そう言われて、雪之丞もいつの間にか弓と2人きりになっていた事に気がついた。
「はぐれちまったらしいな。あいつらなら大丈夫だろうが……」
雪之丞は残りの5人も2組に分かれてしまっていた事には気づいていない。横島と京香がいればどうにでもなると思っていた。
が、弓はそういう風にはとらなかった。
「ははーん。あなたさてはわざとはぐれたわね?」
「何……!?」
「あなたが私に気があったのは分かってるのよ。でもこんな状況なのに非常識じゃない?」
「て、てめーこそこの状況でンなこと考えてんじゃねーよ! んな事だから可愛げのない女って言われるんだぞ!?」
雪之丞は確かに最初は弓狙いであっただけに、反応もかなり過剰かつ意地になっていた。ちなみに当然の事ながら、雪之丞は弓が可愛げのない女と言われるのを聞いた事はない。
「だ、誰が可愛げのない女ですって……!?」
状況をわきまえていないのはお互い様のようであるが、もめている間は走る速さが遅くなっていたらしい。サンタ達が近づいてくる。しかも雪原が終わっていると思ったらその先は垂直に切り立った崖になっていた。
「き、来た……どうしよう……!?」
「ちっ、本格的にやるしかねえか……」
雪之丞が覚悟を決め、魔装術を展開する。その悪魔のような姿に弓が驚いて、
「なっ、あなたそれはいったい……!?」
「メ……いや、とある人外から教わった術だ。危ねえから下がってな」
彼自身が喋った事だが、メドーサはGS業界を牛耳ろうとした魔族として悪名高い。わざわざ喧伝するような事ではなかった。
「わ、私に下がってろですって!? あなたこそヘマするんじゃありませんわよ!」
下がれと言われておとなしく言いなりになる弓ではない。即座に水晶観音を展開してその後に続く。
「……! どーやら素人じゃねえみたいだな。足手まといになるんじゃねえぞ!?」
「その台詞、そのまま返してあげます!」
口ゲンカを続けながらも、2人は身を翻して雪ダルマ達に向かっていった。
その頃、タイガーと一文字は少々危険な状況に陥っていた。
「大丈夫ですかいノー、一文字さん」
「いや、大したことはないんだけどさ……」
敵は何とか撒けたものの、逃走する途中で一文字が足首を捻挫してしまったのだ。
「走ってる途中は平気だったんだけど、一息ついたら急に痛くなってきて。……お荷物になっちまったな」
「いや、早く気づいて良かったですケン。しかしこれからどうするかのー」
こういう時は動かずに発見してもらえるのを待った方がいい、とどこかで聞いた事がある。
しかし事態はそう生易しくなかった。最初に現れた怪物がまた雪の中から飛び出してきたのだ。
「ぐふっ!」
太い根が一文字をかばったタイガーの胸板を叩き、そのまま巻き付いて空中に持ち上げる。さらにからみついてくる根をタイガーは空いた手で殴りつけたが、後ろに飛んでいくばかりで今いち効かない。
「胴体を殴らんとダメですかのー……ってこの状態でどーすればいいんじゃ!?」
彼は図体こそ大きいが格闘術そのものは素人で、得意の精神感応もこういう本能オンリーな相手には効き目が薄い。
「タイガー!」
一文字が加勢に入ろうとするが、その瞬間に足首に痛みが走る。
「くっ……」
「ワシに構うな! ここは任せて逃げるんジャ、一文字さん!」
「なっ、そんな事できるわけねーだろ!」
捻挫した右足を庇いつつ、左足で地面を蹴って飛び出す一文字。しかしそれを何者かの鋭い声が制止した。
「―――下がってなさい。まったく世話がやける!」
「え!?」
聞き覚えのある声に一文字が思わず足を止める。次の瞬間、横から飛んできた何かが怪物の口の辺りに命中して爆発した。2人が怪物に襲われているのを例の遠目で発見した京香が1人で先行して、サイキックソーサーを投げたのだ。
タイガーが放り出されて地面に倒れる。続けざまに飛んで来た2つめの爆発で怪物は完全に動かなくなった。
「あ、あんた、峯……!? そっか、あんたも無事だったんだ」
「先輩と氷室さんもすぐ来るわ。そっちもとりあえず大丈夫のようね」
京香と一文字がそう話している間に、横島とおキヌも追いついていた。
「おお、横島サンたちも無事だったか。良かったですジャ」
「まーな。野郎はともかく女の子のピンチは見過ごせん」
「相変わらずですのー」
「と、とにかく2人ともケガがなくて何よりです……って、横島さん、あれ見て下さい!」
「ん、何おキヌちゃん……ってぬうあっ!?」
おキヌが指さした方を見た横島が奇声を上げる。雪ダルマの群れが気配をかぎつけて追って来たのだ。その数およそ20。
「は、早く逃げましょう!」
「そ、そうだな。……っく、痛て!」
おキヌに答えて走り出そうとした一文字がうずくまって足首を押さえる。それを見たタイガーがいきなり一文字を抱えあげて自分の肩の上に座らせた。
「大丈夫ジャ、ワシがかつぐ! 命に代えても一文字さんは守るけえ、安心してつかあさいっ!!」
そのまま怒涛の勢いで駆け出していく。京香があわてて、
「ちょ、ちょっとあんたらどこ行く気!?」
せっかく合流してやったのにまた分散してどうするのか。一文字が走れないというならなおさらだ。
「しかも俺たちに押し付けていきやがった!?」
「タ、タイガーさんは一文字さんを助けようとしただけだと思いますよ。そんなに怒らなくても……」
おキヌがそう言ってとりなしたが、それは火に油を注ぐ台詞だった。
「だからこそ許せんのじゃー!」
1人だけいいとこ取りしやがってー! 横島は吼えたが、それでも文珠の用意はしていた。こめた文字は《重》《圧》。
横島がそれを放り投げると、追って来た雪ダルマ達はいきなり地面の雪の中まで墜落し、そのまま音もなく圧し潰された。これならタイガーや一文字は気づきもしまい。
「相変わらずすごいですね、先輩」
横島のその意図を察した京香が感嘆する。能力もだが、音や光を出さずにすむ方法をすぐ考え出せるとは。バカと言われてはいても、それは決して知能が低いという意味ではないのだ。
横島はこれくらいはもう普通のことなのかごくあっさりと、
「じゃ、行くか?」
「そうですね。一文字さんは助ける必要なかったかも知れませんけど、タイガーさんは一応先輩のお友達ですし」
「そだな。タイガーを憎んで女の子を憎まず、だったっけ?」
「……気が合いますね、先輩」
「うむ、さすがは我が妹弟子」
横島と京香ががっちりと握手する。おキヌは唇の端をひくつかせつつ、
「あの、2人とも機嫌直して下さい……」
何とかしてなだめようと空しい努力を繰り返すのだった。
「はああっ!」
ボコォ!
水晶観音の6本の腕が雪ダルマを破壊する。1体1体はさしたる敵ではなかったが、倒しても倒しても数が減らないので弓はそろそろへばり始めていた。
「おらぁ!」
雪之丞の連続霊波砲が10体まとめて吹き飛ばす。横から襲って来た2体をそれぞれパンチ1発ずつで殴り倒した。
「な、なかなかやりますわね……!」
雪之丞は強い。弓もそれは認めざるを得なかった。六女では上級生を含めても自分より優れた者などいないと思っていたが、横島やルシオラのことも考えると、それはどうやら井の中の蛙だったらしい。
「いや、お前も女子高の1年にしちゃ大したモンだ。それより囲まれちまったからな、後ろは頼むぜ」
「ええ……!」
同列に立って戦うには力の差が大き過ぎるが、それくらいの事は頼めるし、できる。弓は呼吸を整えて構え直した。
「フンガーーーッ!」
そこにどこぞの人造人間のような奇声がひびいてくる。
「タイガー! 助けに来てくれたのか!?」
ダンプカーのような勢いで走って来たその男に雪之丞は期待をこめてそう声をかけたが、男は答えはそれとは正反対だった。
「いや、追い詰められて逃げて来たらここに……助けてつかーさいっ!」
見ればタイガーと一文字の後ろには数十体の雪ダルマが続いている。
「ば、ばかやろー! 俺たちだって疲れてるのに……!」
雪之丞はひとしきり魂の叫びを放った後、
「ん? お前ら横島たちとは一緒じゃないのか!?」
来て欲しいと思う者がいないのに気がついてそう訊ねた。
「いやそれが……1度合流したんじゃがまたはぐれてしまって」
「ば、ばかやろーーー!」
今度こそ本当に絶叫した。
その横島とキヌ京は、タイガー達を追っている雪ダルマ達のさらに後ろを走っていた。
「一文字さんたちまた追われてますね。ホントにどこから湧いて来てるんでしょう」
「うーん、やっぱあのサンタを倒さねーとダメなんかな?」
雪ダルマの群れは彼が何か術でも使って呼び出しているのではないか、と横島は思うのである。しかしだからと言って簡単に殺せるものではなかった。正当防衛になるのは間違いないだろうが……。
『大丈夫よ、ヨコシマ。あれは人間じゃないから』
「え!?」
いきなり脳内に話しかけられて横島は驚いた。
(ルシオラ、起きてたのか!?)
『ええ、おまえがこの空間に放り出された辺りからね。あれの正体はよく分からないけど、人工の精霊みたいなものじゃないかしら。とにかく人間じゃない事は間違いないから遠慮しなくていいわ』
(そっか、ありがとな)
『ええ。それじゃまた後でね』
話が終わると、ルシオラの気配は感じられなくなった。
「―――横島さん?」
急に黙りこくった横島を不審に思ったおキヌが声をかける。横島ははっと我に返って、
「いや、何でもない。それじゃ俺たちは別の仕事をしよう」
「別の仕事?」
「ああ、敵のボスを仕留めるんだ」
タイガー達は雪之丞達と合流したはいいが、敵も2倍になって包囲されている。しかし幸い(?)こちらには注意が届いていないようだ。横島はおキヌと京香を腕でとどめ、見つからないようこっそり近づいてサンタの姿を探す。
ターゲットは雪ダルマ達の中央に仁王立ちしていた。それを確認した横島は栄光の手を出すと、その中に文珠《光》《牙》を発動させる。栄光の手の先端が白く輝く竜のような形に変わった。
この『栄光の手を文珠で強化する』という方法は、もともと栄光の手が形状を自由に変えられる物であるだけに文珠の存在がばれにくい。もし威力が強すぎると思われたら『大技は消耗するからいつもは使わないのだ』と答えればすむ。事実文珠という貴重なエネルギーを消費するのだし。
「いけーーっ!」
『光牙』がサンタめがけて飛翔する。ほとんど鎧袖一触のていでサンタを爆砕すると、雪ダルマも地面に落ちて動かなくなった。
「はー、何とかみんな助かって良かったなー」
魔鈴が空間を再接続したあと、横島たちは元のパーティールームに戻って一息ついていた。さいわいケガは一文字の捻挫だけだったので、おキヌがヒーリングで治している。
魔鈴が大きなクリスマスケーキをトレイに乗せて部屋に入ってきた。
「―――ごめんなさい。彼らも悪気はないの、許してあげて」
「あ、こ、このケーキ……!?」
何とそのケーキの上は、さっきまで走り回っていた雪原だったのだ。壊れたサンタと雪ダルマがその証。林の中のログハウスがこの部屋というわけか―――!!
「俺たち、ケーキの世界にいたのか!?」
「こんな所であんなに苦労を……?」
雪之丞と弓が顔を見合わせてぷっと吹き出す。魔鈴がすまなさそうに頭を下げた。
「景色を見せて後でケーキを出す趣向だったんです。まさかこんなことになるなんて……」
「いやあ……」
一文字は屈託なく、いや照れくさそうに笑って、
「けっこー楽しかったよな?」
とタイガーにパチッとウインクする。
「……! そ、そーじゃのー」
タイガーはもう真っ赤である。その光景にまだ寝ているピートの横にいた愛子が目を輝かせた。
「よ、予想もしなかったカップルが2組もできてる!? こ、これこそ青春だわ。さあ、何があったのか洗いざらい喋ってもらうわよ!!」
とタイガーたちの所に突進していく愛子。
むろんピートは置き去りである。
哀れ。
―――つづく。
おおむね原作通りの流れになりました。
魔鈴さんゲットはさすがに無理でしたー。しかしキャ○ターの席はいずれ埋めますので。
ではレス返しを。
○ゆんさん
>サーヴァン○全員で同期合体
ど、どんな化物ができるのやら(汗)。
>やっぱり一番はヨコルシの合体でしょうw
ぜひ実現したいテーマではありますが、100倍のパワー差はいかんともしがたくorz
○樹海さん
>横島排除したからっておキヌちゃんとか京香が靡く訳ないですよねえ…
雪之丞とタイガーもそのくらいは分かってたみたいです。
>この話の横島は他二組のカップルを成立させようとする意図があったのか
そう言えばソーサーも栄光の手も使ってませんでしたねぇ。しかし彼がそんないいヤツだとは思えな(以下削除)。
○ト小さん
>原作でもこちらでも相手が決定している横島には縁の薄いイベントです
横島には特にいいこと無かったご様子でした。
まあ初めから分かってた事ですからね。
>ホントに直ってる!まるでゲームの選択肢を変えた時のようです!
物書きのはしくれとしてのぷらいどですよー(ぇ
○茶刀さん
>この一文に思わず噴出しました
狙いがヒットしたようで何よりですw
>京香の全開状態がOKの時点で特に弓さんとかの反応がすごい事になりそうな予感がします
うーん、どんな反応するんでしょう(^^;
○ASさん
>ピート
美形なんて(以下削除)。
>同期合体は京香とですか。少し驚きましたが、これはこれで納得です
素でほぼ霊力同等ですからね。マスターとサーヴァ○トですから、美神とやるよりうまくいきますw
人間組では1番しっかり者かつ役に立ちますから、戸籍上の妻最右翼ですねー。
あとはルシのOKをもらうだけw
○通りすがりのヘタレさん
>すでに人外の領域に来てしまった京香さん、あなたは一体どこまで逝くのデスカ
初登場の頃からは考えられない躍進ぶりですw
>ビート
美形は(以下略)。
○蒼き月の夜さん
>タイガーと同列一歩手前、最高のポジションに…
哀れタイガー(涙)。
しかし2人とも春が来たのだから幸せでしょう、きっと。
後は出番さえあれば(爆)。
○UEPONさん
>するとルシが家庭教師で京が勇者?
ええっ、横島が勇者役じゃなかったんですか?(驚)
もしそうなってもルシは教師役のままでしょうけどw
○遊鬼さん
>おキヌちゃん
守ってもらうお姫様役というか突っ込み役というか(マテ
>同期合体
話に出したからには1度は使わせたいですねー。
ビジュアルは……ジュー○スペインなダークシュ○イダー?(激違)
○HEY2さん
>やっぱり「寿命の短い相手」と繋がりを強く持ちたくないんでしょうかねえ?
あ、それはあるかも知れませんねえ。愛子なら大丈夫そうですが……もう遅いですw
>と言うことは声は野沢雅子さんで「フュー(略
横島の方は違和感ありませんなw
>おお、変わってた!
当然ですよー。
○わーくんさん
>小竜姫様
彼女もがんばってはいるのですが(何を)。
>こういう「甘〜〜〜い」シーンの表現がうまいです
一応ラブコメのつもりで書いてるので、そう言ってもらえると嬉しいです。
○青樹さん
確かに最初の頃とは路線がだいぶ変わってますね。いつの間にこうなったのやら(マテ
でもルシは不幸じゃないですよ。横島との絆の強さは次元違いですから。
だからって浮気(?)されたら面白くはないんですけどね。でも横島は父親みたいに隠してはいませんしw
○新聞寺さん
>全開モードの京香を見て驚愕する弓と一文字
今回はそうなりませんでしたが、見たら驚くでしょうねぇ(^^;
>それから京香ちゃん、そのまま突っ走って、法律上の嫁の座をゲットしてくれ。応援してるよ
むー、京香はホントに応援団多いですな。イラストまで貰ってますし。
ではまた。