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▽レス始

「GSルシオラ?恋闘編!!第44話(GS+型月ネタ)」

クロト (2006-02-16 18:23)
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 弓と一文字は最初はぎこちなかったが、料理も出されて話が進むにつれて、だんだんと打ち解けてきた。
「へえ、バンパイアハーフなんですか。道理で目の奥に不思議な光があると思ったわ」
 そのようなものが本当にあるかどうかは不明である。あるとすればそれは魅了の邪眼と思われるのだが……。
「今度除霊するところ見学したいわ」
 遠回しなデートの申し込み、しかもうまくいけば共同作業&吊り橋効果で好感度UPが期待できるGS見習いならではのコースである。おそらくあらかじめ準備してきた台詞だろう。
「あ、私も行きたいな。臨海学校からこっち実戦とはご無沙汰だし」
 一文字も遅れじとそう言ったが、なぜかピートは尻ごみして、
「あ……うん、でもそれなら横島さんや雪之丞の方が……」
 好みに合わないのか、それとも迫られるのが苦手なのだろうか。ピートはそこそこ楽しそうにしているものの、デートにはいまいち乗り気でなかった。
「あれ、おキヌちゃん。その服いつかのクリスマスのときの……」
 合コン開始後15分にして、ようやく横島は気がついた。『いつか』というのがいつなのかはさだかでないが、とにかくおキヌが今日着てきたのは、横島が厄珍の使いで織姫のところに行った報酬としてもらった幽霊でも着られる服なのだ。
「もう、やっと気がついてくれたんですか?」
 それは彼女が横島から初めて貰ったプレゼントで、とっておきの勝負服でもある。遅まきながらも気づいてもらえて、おキヌはうれしそうに微笑んだ。
「……」
 蚊帳の外の京香が三白眼になっている。『その服に何か謂れでもあるんですか?』とその視線が問うていた。
「あ、これ横島さんがクリスマスにプレゼントしてくれた幽霊でも着られる服なんです」
 おキヌが形だけは笑顔のままそう答えた。いつもは仲良くしているが、今この場ではライバルである。
「私のためにわざわざ織姫さまの所まで行ってくれたんですよ」
「あー、手編みのマフラーくれるってんでな。金も無かったし」
 早とちりされそうな気配を感じた横島が慌てて注釈を入れた。途中で手段が目的になっていた事は当然ながら極秘扱いだ。
「そうなんですか……先輩やさしいんですね」
 幽霊でも着られる服というのは織姫の手製で1着数百万円はする、というから当時の横島ではとても買えまい。代金がわりにお使いをしたのだろう。
 織姫は世俗を捨てて山の頂で機を織り続けていると聞く。マフラーのお返しぐらいで真冬に登山するなんて……。
 京香の中の横島像が一気にグレードアップした。知らぬが仏というやつである。
「も、もしかして京香ちゃんも欲しいとか……?」
 横島の声はかなり腰が引けていた。織姫の正体を知ってしまった今、再びかの断崖絶壁に挑む力はないのだ。いや今は若いのに代替わりしているかも知れないが、もしハズレだったら今度こそ凍死してしまうだろう。
 しかし京香はかぶりを振って、
「いえ、先輩にそんな事してほしいなんて思ってないですよ。むしろ反対ですね、先輩のためだったら冬山登山くらいいつでもします」
 羨ましくない、と言えば嘘になる。しかし今までの恩義すら全然返せていないのに、そんな大変なことをしてもらうわけにはいかない。そして横島も真実を話していないぶん引け目があったから、対応は謙虚だった。
「い、いやあれはマジでハードだったからな。気持ちだけ受け取っとくよ。うん、可愛いコがする事じゃないって」
「先輩……」
『強いけどバカでスケベ』というクラスの横島評は確かに正鵠を射ていると思う。でもそれが目立つぶん見えにくい、不器用だけどやさしくてあけすけで安心させてくれるところも、こうしてそばにいればよく見えるのだ。
(先輩、大好きです!)
 と、2人きりなら大声で言えたのだけれど。

(な、何だかやぶ蛇になっちゃったような)
 今度は自分が蚊帳の外になってしまったおキヌが眉をしかめる。しかしここにはもっと辺境の地に追いやられている者もいた。
「何か……面白くないと思わんか?」
 放浪の魔装術使い、伊達雪之丞である。普段は硬派っぽく振舞っているが、歳相応に女の子への関心はあったらしい。
「不公平を感じるのー」
 タイガーもそう相槌を打った。
 一応彼の隣には愛子がいるので弓に全く相手してもらえない雪之丞よりはマシな状態だったが、今日のメイン客である六女のお嬢様たちはみんな取られてしまったので不愉快な事にかわりはないのだ。
 というかその愛子も横島とキヌ京の掛け合いに気を取られていてあまり構ってくれないのである。一応愛子はタイガーの相手をするために来たのだが、今は『1人の男子を取り合う女子2人の鞘当て』という青春度120%な見せ物の方に魅力を感じているようだ。
「俺が思うにだな、1人多いんじゃないか!?」
「……どういうことじゃ?」
「ふ、知れたことよ……」
 雪之丞が邪心と妬心を丸出しにしつつ取り出したのはテーブルガーリックの小瓶だった。
 2人にとっては横島も目障りなのだが、彼とキヌ京は同僚だからある意味当然だったし、仮に横島を排除しても自分達のところに来る可能性は低い。それに彼にあまりえげつないマネをしたら後でルシオラが怒るかも知れない。魔装術も精神感応も通用しない絶対的強者を敵に回すほど2人ともバカではなかった。
 よって今回のターゲットはピートのみと相成って、
「思い知れ……!」
 雪之丞がピートと弓・一文字の目を盗んでピートの皿にガーリックの粉を投げかける。それがかかった鶏肉を口にしたピートがうっと一声うめいて口を押さえた。
 その目にタイガーと雪之丞がブラックな笑みを浮かべているのが映る。
「な、なぜ……!?」
 ばたん。
 ピートは悶絶して椅子から転げ落ちた。

「ピート!? ニンニク抜きを頼んだはずなのに……!?」
 横島とおキヌたちが心配そうに見下ろしているが、加害者であるタイガーと雪之丞は愉快そうに笑っていた。
「心配いらねーよ、よくある事でな」
「しばらくそっとしといてやるのが1番じゃ……!」
「そ、そうなの?」
 バンパイアハーフの生態をよく知らない弓と一文字はとまどうばかりだったが、そこへピートがぐぐっと根性で身を起こした。
「ゆ、雪……! タイ……ガ……! 僕に……食べ……」
「うっ、しぶとい!?」
「えっ!? 『雪が食べたい』!?」
 ピートが犯人の名を口にしようとしたのを雪之丞が大声をあげて妨害する。それを真に受けた一文字が窓の外を見て、
「私、ちょっと取ってくる!」
 窓を開けて外に飛び降りる。外には出るなと聞いていた愛子が慌てて止めたが、そのときには一文字は外の雪を踏みしめていた。
「あれ、この雪冷たくないぞ? 雪じゃなくて何か他の物質……!?」
 その言葉と同時に、彼女の目の前の雪(?)がぼこっと盛り上がり、その下から巨大な植物の根のような白い怪物が飛び出してきた。奇怪な叫びをあげながら一文字に襲い掛かる。触手のような根のような何かが一文字に巻き付いて空中に運び上げた。
「うわあああっ!?」
「一文字さん!?」
「ヤバい! この外、雪景色に似てるだけでどこか異次元だ!」
 雪之丞と弓が飛び出して怪物に攻撃をしかける。あっさり倒れた怪物からタイガーが弓と一文字を救いあげた。
「大丈夫か!?」
「え、ええ!」
 しかし安心してはいられなかった。出入り口である窓の形がぶれ始めているのだ。
「おい、急げ! 景色がおかしい、空間が閉じかかってるぞ!」
 横島がそう叫んで室内から手を伸ばした。
「よし……う、うわっ?」
 横島が弓の手を掴んで引っ張る。しかし足でも滑ったのか、逆に外に引っ張り出されてしまった。そのまま弓とタイガーと一緒になって雪(らしき物)の中に倒れこむ。
「先輩!」
 京香は迷わず外に飛び出した。おキヌも窓に手をかけたが、それを見た横島があわてて制止の声をあげる。
「ま、待て! おキヌちゃんは来るな!!」
 おキヌは一瞬たじろいだが―――ぐっと足に力を入れると、そのまま窓の外に飛び降りた。
 その直後、窓が消えて外の雪原とパーティールームは完全に分断された。

「おキヌちゃん、俺は来るなって言ったんだけどな」
「……ごめんなさい」
 横島の言葉におキヌは小さくなって頭を下げた。
 敵は霊ではないのだから、おキヌが来ても危険なだけだ。横島が止めたのはまったく当然のことだった。自分も頭では分かっていた―――それでも今は京香に負けたくなくて、つい飛び出してしまったのだ。迷惑になるだけなのに。
 横島の手がすっと上がる。おキヌは反射的に身をすくめた。
 ―――ぽん。
 でも頭に触れたその手は痛くなくて。
「もっと考えて行動しないとGSは務まんねーぞ!? 美神さんとルシオラの受け売りだけどな」
 落ちてきた声も普段と変わらなかった。
「……はい」
 叱られた形ではあるが嬉しかった。自分がなぜこちらに来たのか、彼に通じたのが分かったから。
 しかし当然のように、その幸せを邪魔する者がいた。ライバルの冷たい声が2人の間に割って入ったのだ。
「で、氷室さん。これからどうするの?」
 見れば他の4人も砂糖でも吐きそうな顔をしている。横島とおキヌがあわてて離れると雪之丞が腕組みして意見を述べた。
「ここにいてもしょうがねーだろ。戻る手掛かりでも探しに行こうぜ。せめて風をしのげる所でも見つけねーと」
「手掛かりってどこにあるんですの? まったく、せっかくのクリスマスイブなのにこんな所であなたたちとサバイバル!?」
「そ、そんな言い方するなよっ! 俺たちはお前らを助けよーとして……」
「……」
 雪之丞と弓が口論しているが、京香は特にこの事態を憂慮してはいなかった。要は魔鈴が空間を再接続するまで待っていればいいのだから。愛子が室内に残っていたからすぐ話をしてくれるはずだ。
 怪物がまた現れる可能性もあるが、あの程度なら問題ない。いざとなったら弓と一文字には見せたくないが全開モードがあるし、それでダメなら横島の文珠に加えて『横島&京香同期合体』という超ウルトラCもある。
 使うかどうかを決めるのは横島だし、これ以外に助かる方法がないという状況でもなければ使ってはいけない、と念を押されてはいたけれど。
 ……
 …………
「やっぱり人に知られたらまずいからですか?」
「ええ。あなたの全開モードぐらいならともかく、同期合体は数十万マイトに達するわ。これは人間の常識をはるかに超えてる。何の後ろ盾もない私たちがそんな能力を持ってる事が知れ渡ったら―――あなたなら分かるでしょ?」
 ルシオラの試すような眼差しを受けた京香の表情が、普段の弟子としてのそれから冷徹な忍者のそれに変わる。
「はい。危険な仕事を強制されるか、研究材料にされるか―――最悪の場合は殺される、ですね」
 むろん可能性の問題であって必ずそうなるというわけではないが、いずれにしても良いことは何もあるまい。
「先輩を独立させたいって言ってたのもそれでですか?」
「察しがいいわね。美神さんの弟子だから中堅クラスって感じになると思うけど、そのくらいなら目立たないしそういう力を使う必要もないから」
「分かりました。先輩の迷惑になるようなことはしませんから安心して下さい」
 京香自身の身の安全にもかかわるだけに、決して軽く考えていい話ではない。
 それでもルシオラが自分にこんな技術の存在を教えたのは、ひとえに横島を守りたいからだというのはすぐ分かった。何しろ彼女は『GSとして強大な魔物を退治するため』にこの技を使えというような事は欠片も考えてなさそうなのだ。ルシオラにとっては何千人の生命、いや世界の全てよりも横島1人の方が大切なのだろう。
 京香も恋する乙女だからその気持ちは分かるし、今の問答を考えれば柄でもない正義の味方をしたいとは思えないけれど。
 ちなみに同期合体は霊力がほぼ同等でなければできないが、仮に横島がさらに成長して京香に大差をつけたとしても、文珠《令》《呪》や全開モードによる一時的なパワーアップが可能だから彼女に限っては問題なかった。
「それで、この話って他の人にもしたんですか?」
「いいえ、ヨコシマの他にはあなただけよ。だからくれぐれも内密にね」
「分かりました」
 ルシオラの考えていることは分かる。おキヌに聞かせるにはシビアすぎる話だし、そもそも格闘が苦手だから同期合体の相手としても不向きである。美神やシロタマに話すべきことでもない。
 それを自分だけに話してくれたのは、自分の人格と能力をよほど信用してくれているのだろう。むろんそれに応えるのは弟子として当然の義務である。
「使うことがなければそれが1番いいんだけどね。バレたら死んだふりして妙神山に隠れるっていう手もあるけど、それじゃ普通の人生は送れないもの」
「え、先生妙神山知ってるんですか?」
 そこは知る人ぞ知る伝説の修行場である。並大抵の霊能者では中に入れてもらう事すらかなわない難関だ。その最上級コースなど、1日で強くなるか死ぬかの2択だと聞く。
「言ってなかった? 私はそこの管理人につくられた心眼よ」
「あ、そう言えばそうでしたね。うーん、やっぱり先輩ってすごいんだ」
 小竜姫が横島に『心眼』を与えた経緯は以前に聞いたことがある。それまでの横島は単なる煩悩少年だったというのだから、その成長ぶりたるや理解を絶するほどだ。
「フフッ、だって私のヨコシマだもの。それじゃそろそろ戻りましょ」
「はい」
 …………
 ……
(あの台詞には妬けちゃったけど、先生が私を信じてくれてることは間違いないわ。それによく考えたら先輩と『合体』なんて妻も同然、いえそれ以上のパートナーよね。がんばろう!)
 と京香が回想している間に、横島たちはどうやら雪之丞の提案通りここを離れて手掛かりを探しに行くことに決めたらしい。
 とにかく横島にくっついていれば大丈夫だろうし、それが自分の使命でもある。
「先輩、待って下さい♪」
 京香はぱっと雪を蹴って、横島の腕に飛びついた。


 ―――つづく。

 管理人様から注意がありましたので、本文の内容と関係のない文珠ネタはご遠慮下さい(注意事項も変わっています)。また当方からのレス返しも致しませんのでご了承願います。
 あとルシと京香の危惧ですが、二次創作ではよく見る話ですが、原作でも死津喪のときに『GS協会の命令で西条の指揮下に入ってる』とか、タマモ抹殺とか美神暗殺、あるいは茂流田&須狩のような連中もいましたので、そういう心配もあるかと考えました。ちなみに文珠については恋闘編第1話で美神が言及してます。
 実際に政府とかに能力が露見して云々、という展開はテーマじゃないのでやりませんけれど。
 ではレス返しを。

○ゆんさん
>先生〜!おキヌちゃんと京香ちゃんの掛け合いが見たいです!
 むー、今回は直接対決とまではいかなかったですねぇ。
 次は……どうなるんだろ<マテ

○ももさん
 リアルの季節に合わせて書ければ良かったんですが(^^;
>雪之丞とタイガー
 いよいよ正念場に来ましたw
>愛子
 前回目立った分、今回はおとなしいようです。
>なにげに京香と弓さんの仲が悪いのは林間学校で出番取られたからですかぁ?(ぉ
 何しろ扱いに天地の開きがありますから(違)。

○新聞寺さん
 さて、ここから原作と流れが変わるのかどうか……まだ未定だったりします(ぉぃ

○ASさん
>キャスター
 むう、果たして落とせるのかどうか(ぉ
>自分は“7(ピー)”も“壮大な夢”も応援してたりしてます
 漢の夢ですもんねぇ。関門はルシだけですし。
>エウさんが一番横島への誘惑が得意ということですね
 人生経験が違いますから(ぇ

○遊鬼さん
 やっぱりピートは哀れでした。彼に救いはあるんでしょうか<マテ
 しかし横島君は幸せ過ぎですねー、何故でしょう。

○狩人さん
 はじめまして、よろしくお願いします。
>魔理さん、タイガーとくっついたばかりに原作で影が薄くなってしまった気も
 ここでは横島君にくっつくのが1番目立て(以下削除)。

○茶刀さん&ninninさん&なつかしのさん&ふぁんぐさん
 はじめまして、よろしくお願いします。
 とりあえずピートは報われなさそうです(ぉぃ
 タイガーと雪之丞は今のところ原作ルートですが……。
 魔鈴さんは……どうなるんでしょ。

○樹海さん&流星さん&ケルさん
 ピートは普段モテてますからこの位いいんです。
 モテてない2人のほうに幸が……いくかな?<マテ

○kntさん
 ニンニク攻撃は発生しましたねぇ。でないと雪原冒険シーンがなくなってしまいますので。

○滑稽さん
>徐キヌは策が失敗したら黒化して有耶無耶にするという最終奥義を(マテ
 ある意味無敵ですか!?(怖)

○蒼き月の夜さん
>横島と愛子、なにあの甘い空間は…?
 いつの間にあんな女たらしになっちゃったんでしょ。おとーさん許しませんよ?(マテ

○通りすがりのヘタレさん
>愛子
 さすがに予想できた方はいなかったかとv
>魔鈴さん
 かなり期待されてるような(汗)。

○HEY2さん
>あれ?? おキヌちゃんは?? 京香と一緒に来てたはずなのにぃ
 だって、おキヌちゃん呼んだら止められちゃうじゃないですか(涙)。
>でも愛子、この前の250万円まだ残ってるんじゃないのかな?
 OUCH! そう言えばそうでしたね。自分で書いておきながら忘れてました。
 というわけで修正しました。ご指摘ありがとうございます。

   ではまた。

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