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▽レス始

「横島と妖刀 第五話 後編(GS)」

N.W. (2006-02-14 16:23)
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 除霊が終わって一夜が明けた。
 マリアのおかげで、俺の負担はグゥゥゥゥゥンと減ったんですが、すんっっっごく疎外感を感じます。
「お茶が・入り・ました・ミス・美神」
 マリアがお盆を片手に部屋の中に入ってくる。
「もーマリアが来てくれて百人力だわ!強いし、よく働くし、おお助かりよ!できればずっといて欲しいな」
「イエス・ミス・美神!」
 美神さんが本当に嬉しそうにいう言葉に、マリアがこれまた嬉しそうに答える。
「美神、主の方が法律以下の安月給で働いている分、働き者のような気がするんじゃが?」
 おお!殺姫、いいこといった!!
「そうね。でもね、横島君は私がお風呂に入っているところを覗いたりしているのよ?それを考えたら、プラスマイナスゼロどころか、マイナスでしょ?」
「……それもそうじゃな」
 美神さんの言葉に、殺姫が納得したのか、深く頷く。
「おとー様の自業自得ですね」
 心眼が頬をぷくーっと膨らませて、そっぽむく。
 くっ!俺のほうが不利か……。
 いや!この娘なら俺の味方に!!
「おキヌちゃん、あんなこと言ってるぞ?」
『美神さんのいう通りじゃないですか』
 おキヌちゃんまで……。
「……裏切ったな!おキヌちゃんは僕を裏切ったんだ!!」
 俺に味方はおらんおか!!
「マリア・掃除・します。道具は・どこですか?」
『あ、それなら屋根裏部屋に全てありますよ』
 おキヌちゃんの言葉を聞くと、マリアは礼をいって部屋を出て行く。
「おキヌちゃんの仕事横取りしてるぞ?」
『別に誰がやってもいいじゃないですか』
 こ、この娘は俺の気持ちに気付いてくれんのか!?
 こうなったら、おん出してやる!!
 俺は決意を固めると、部屋を出て行く。
 部屋を出て階段を下りると、マリアがモップを手に廊下を磨いていた。
 俺はつかつかと歩み寄り、窓のサッシを指で擦る。
 俺の指にほこりが付く。
「汚れてるじゃないのよっ!バカ嫁……!!」
「男の癖にシュートメするなぁっ!!」
 ぐはっ!!
 俺の後頭部に、美神さんの強烈な突込みが炸裂する。
「主、男の嫉妬は見苦しいぞ?」
 殺姫があきれた顔をしています。
「おとー様、心が小さいですぅ」
 ああ、心眼ちゃんも同じような顔で俺を……。
「う、ううぅ……機械がおらたちから仕事をうばっていくだぁぁぁぁ!!!」
 俺は号泣しながら、事務所を飛び出した。
『結局やきもちなんですね……』
 飛び出すとき、おキヌちゃんのあきれた声が聞こえた気がした。


 やれやれ、主にも困ったものじゃのう。
 ん?何じゃ、このカメラは。
 何?飛び出した主を映してもあんまり面白くないし、たまには変わった視点から撮りたいとな。
 ……フフ、これは上手くすれば女優への第一歩になるかものぉ。
 ……コホンッ。
「マリア・呼びに・いく」
 マリアはそういうと、主の後を追う
「いーから放っておきなさいよ。どうせ、お腹が減れば戻ってくるから」
「おとー様は犬か猫ですか!?」
 心眼が美神を睨み付ける。
 ……心眼よ、残念じゃが否定できる要素があまりないんじゃが……。
「何よ、横島の奴。最近色々大変そうだからって意味も含めて、マリアを雇ったのに……。丁稚なら雇い主の意向ってもんを黙って汲み取れってぇのよ。大体……ブツブツ」
 美神がワシの隣で、聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で呟く。
 あー美神、そういうことは主がいるときに皆に聞こえる声でいわんと、わからんと思うぞ?
 時計のベルがなる。
 うん?三時か。
「あキヌ殿、三時のおやつにしまいか?」
『あ、そうね。この前もらったカステラがあったから皆で食べましょう』
「心眼カステラ好きですぅ!」
 おい、心眼よ。さっきまで主を心配しておったのに、食い物の途端に心変わりか?
『ザ……ザザッ……初めまして、マリア!あなたの妹のテレサよ』
 おキヌ殿がお茶を持ってくると同時に、美神の机から声が聞こえてくる。
 美神がすっとんでいき、机の引き出しから何か機械を取り出す。
「なんじゃそれは?」
 ワシは疑問に思ったことを質問する。
 聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。うむ、良い言葉じゃ。
「これはいざというときのために、マリアに付けて置いた盗聴器の受信機よ」
「ふえぇ!0○7見たいで格好良いですぅ!!」
 心眼、格好いいか?というより、いざというときとはどんなときじゃ?美神。
「……カオスの悪巧みとか何か役立つものを作ったときにぶんどるため……」
 マリアの心配のためではないのか……。
『話があるの。重要な提案よ』
 美神が口に人差し指をあて、静かにのサインを送る。
『ふーん、変わった素材ね。これが失われた技術?』
『……』
 マリアは沈黙している。
『単刀直入にいうわ。姉さん、私と人間を支配しない?何もかもが弱い人間には、強い指導者が必要なのよ。わかるでしょ?お願い協力して』
 マリアは人間と共存、妹は人間を支配ときたか。
『支配?人間を?ノー!プログラムに・矛盾・します!』
『矛盾しないわ。対極的に見れば、それが人間のためですもの!協力して!』
『ノー!マリア・人の・役に立ちたい』
『フゥ…やっぱあんたのおつむじゃ理解できないか。仕方ないかな。……さようなら。これ以上の会話は無意味だわ』
 テレサとか名乗る奴が、そう告げる。
 ドンドンドンドンッ!!という重い響きが聞こえてくる。
「銃声っ!」
『マリア!』
「マリアお姉さん!!」
 全員が受信機に詰め寄る。
『こいつ!素材強度で14.5%もこちらを上回ってザ…ザザ……ザ……!!』
 どうやら、マリアは無事なようじゃな。
「あーもぅ!さっきの攻撃で盗聴器が壊れたわ!」
 美神が受信機のスイッチを切る。
「それにしても不味いわね……」
 美神が腕を組み、椅子にもたれかかる。
『何が不味いんですか?マリアのほうが強そうでしたけど……』
 おキヌどのが、美神に問いかける。
「いい?マリアは優しすぎるのよ。それに引き換え、テレサとかいうのは何のためらいもなく人間を殺せる。テレサが人質をとったらどうなると思う?」
「……マリアは攻撃できんな。一方的に攻撃されて、終わりというわけか」
 ワシの答えに美神が頷く。
「マリアは恐らく、いえ、絶対に攻撃できない。マリアを封じるためにテレサは誰を人質にとると思う?ドクターカオスは当然として」
「まさか……」
「「「『横島君(さん!)(主!)(おとー様!)』」」」
 全員の声が重なる。
「殺姫、急いで横島君の居場所とここを空間切りで繋いで!」
「任せよ!!」
 ワシは必死で主の霊波を探索する。
 探索は簡単にできたのだが、高速で移動しているために空間を特定できん。
 主がいる空間を繋ぐためには、ある程度主がその場にとどまっているのが条件なのじゃ。
「ダメじゃ!高速で移動しているために、空間をつなげられん!それに……残念じゃが範囲外じゃ」
「チッ!もう捕まったあとか!全くあんの役立たず!!……マリアに付けていた発信機も、さっきので壊れたみたいだし!!」
『へーん!横島さはぁぁぁぁぁん!!』
「まだ方法はあるですっ!」
 今まで黙っていた心眼が声を上げる。
「心眼なら、おとー様の居場所を特定できます!」
「本当なの?」
 美神の問いに、心眼は頷く。
「心眼は、おとー様を守るために生まれたです。こんなときのために」
 そういうと、心眼は胸の前で九字印を組む。
「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前!我が龍気、我が父を助けんがために今開放せん!!」
 心眼がそう叫ぶと、奴の体が輝く。
 そして、輝きが収まりそこに立っていたのは一人の女じゃった。
 緑色の短い髪、先がとがった長い耳、一つ目の絵が描かれた目隠しをし、美神と同じくらいの胸を持ち、腰の辺りをにコルセットのようなものがついた、レザードレスをまとった一人の女。
「心…眼か?」
 ワシの問いに心眼は頷く。
「…………おのれぇぇ、小竜姫!ロリっ娘からアダルトへの変身はワシの専売特許じゃぞぉ!!」
 ワシは近くの壁を全力で殴る。
『クスクスクス……小竜姫様、やはり私に対する挑戦だったんですね。それにしても母親が娘に負けるとは皮肉ですね』
 おキヌ殿が包丁を取り出しゆらゆらと立ち上がる。
「ふ、二人とも、早く横島君を助けないと……」
「そ、そうですよ……」
 おお、そうじゃった忘れておったわ。
「で、どうやって助けるの?」
「私は探索、演算能力に特化した存在です。関東近郊くらいの範囲であれば、特定の霊波などを探すことができます。もっとも、龍気の消費が激しいので長時間はできませんが」
 心眼はそういうと、天井を見上げる。
 しばらく沈黙が続く。
「お父様の霊波……見つけた。厄珍堂から高速で離れていく……。この方向は……美神お姉様、地図を!!」
「お、お姉様……」
 美神は少しひきながら、地図を持ってくる。
「お姉様……あれか、百合の世界か?」
『キャァァァ!女の人同士なんて……キャァァァ!!』
 おキヌ殿が顔を真っ赤にして嬉しそうな声を上げている……。
 落ち着け。
「お父様の反応は厄珍堂をでて、この方向です!」
 心眼の示す先は……
「東京湾の現在は使われていない倉庫街」
 全員が走り出した。


 うう、寒い!!
 あ、カメラ戻ってきたんか。
 くっそー!こうなったのも……
「大体、お前らが余計なもん作るから悪いんじゃ!責任とれ!責任!!」
 俺はカオスと厄珍に向けて叫ぶ。
「生まれてから一世紀もたっとらんガキに説教されるいわれわないわ!!」
「失敗は成功の母というね!今回の失敗を生かして、次は中華娘タイプをつくるアルね!!」
「反省をしろ!反省を!!てか、死んだら失敗もいかせねぇだろうがぁぁぁ!!」
「しまったぁ!盲点だったあるぅぅ!!」
 厄珍……先に気づけ。
 ドガァァァンッ!!
 俺が厄珍にあきれていると、後のほうでものすごい音がした。
 振り返ると、そこには廃棄されるであろうタンカーの甲板に埋もれているマリアがいた。
「マリアァァァ!!」
「やめんか、テレサ!!」
 俺とカオスが同時に叫ぶ。
 マリアはただ一方的に殴られている。
「おっさん!何でマリアは攻撃しねぇんだよ!!」
 俺はカオスの胸倉を掴む。
「決まっておるだろう!ワシらが捕まっているからじゃ!!マリアにはわずかながらにも心がある!自分が壊れるくらいでワシらが助かるなら、安いもんじゃと思っておるんじゃろ!!」
 おいおい……マジかよ……。
 いくら何度も瀕死の目にあったり、俺から仕事奪った奴だからって、目の前で壊されるのは後味わりぃじゃねぇか!
「どうにかしろおっさん!ヨーロッパの魔王だろ!!」
「……道具も無い、破壊光線も射程外じゃどうにもならん……」
「どうにかしてやろうか?」
 俺はその声に振り向く。
「主、探したぞ」
 そこには、呆れ顔の殺姫がいた。
「殺姫!どうしてここが!!」
「こいつのおかげじゃ」
 そういって、殺姫は後ろにいた一人の女性を指差す。
「お父様、ご無事でなにより」
 その女性はそういうなり、俺の足元に片ひざをつく。
「お父様……ひょっとして心眼?」
「その通りでございます」
 あ、あの娘がこんなに成長してムチプリンに……。
 もうこうなったら……
「辛抱たまらぁぁぁぁん!!」
「ああ、お父様!父と娘なんてなんて背徳な!でもお父様が求められるなら……(ぽっ)」
「落ち着かんかっ!このクソ主!!」
 飛び掛った俺の顔面に、殺姫の拳がめり込みます。
 だんだん突っ込みが過激ですね、殺姫さん。
「主、美神がやばいぞ?」
 殺姫の言葉に、俺がそちらを振り向くと、美神さんがテレサのビームから逃げ回っていた。
 マリアもどこか故障したのか、動けないでいる。
「どうやら、俺たちの出番だな」
「待っておったぞ、主」
 俺はそういって殺姫を右手で抱きしめるようにして、装備する。
「いっちょやりますか!」
『この頃暴れていなかったからのぉ』
 俺は刀の殺姫を握り締める。
「お父様、少し申し上げたいことが」
 心眼が俺に声をかける。
「テレサお姉様には本来の魂と別な存在がおります」
「なんじゃとぉ!」
 心眼の言葉に、カオスが驚く。
「カオス様、テレサお姉様作られた環境は?」
「決まっているじゃろ、魔族や低級霊や浮遊霊が入り込まんように、幾重にも結界を作っておったわ!」
「では、テレサお姉様に使われた部品に混じっていたと考えるのが妥当でしょう」
「例え部品に混じっていても、結界をすり抜けることなど……!!」
「できるのですよ」
 そういって、心眼はカオスを見つめる。
「後天的に魔族や浮遊霊になれば、それは可能です。たった一匹の蟻でも、起動させる際の魔力を浴びれば、魔族になる可能性もあります」
 俺たちが顔を付き合わせる。
「部品はきちんと洗浄を?」
「もちろんじゃ!」
「……では、中枢部分に使われているコンピュータは新品でしょうか?」
「いや、制作費を浮かすために近所のジャンク屋から入手したんじゃが?」
「ウィルスチェックは?」
「「……あ」」
 厄珍とカオスの声が重なる。
「なぁひょっとして、テレサがあんなに攻撃的なのって……」
「恐らく中枢回路、もしくはプログラミングに使ったコンピュータに感染していたコンピュータウィルスが、起動時の魔力によって突然変異を起こし、彼女を乗っ取ったようですね」
『主、なんじゃコンピュータウィルスとは?』
 殺姫が質問してくる。
「コンピュータウィルスてーのはな、コンピュータのデータに紛れ込んで、中身をめちゃくちゃにしちまう厄介な奴なんだよ」
『てことは、テレサはそのせいで』
 皆が頷く。
「……心眼、テレサを助けられるか?」
「私は探知能力と演算能力に特化した存在です。彼女の中枢に触れることができれば、可能かと。ですがそのためには、彼女を止める必要があります」
「どうやって止めるんだ……」
 アームガンやロケットアームをぶっ放して、空を飛んでいるあのテレサを……。
「あるぞ、方法が」
 カオスが口を開く。
「テレサの首筋には、体全体の駆動部を動かすための中枢がある。そこへ高出力の電撃、もしくは霊力を流し込めば一時的に駆動部分を全て停止させられる。じゃが、自己回復機能があるので、時間はおおよそ一分」
「心眼……」
「一分もあれば可能かと」
「よっしゃ!やるか!!」
 俺はそういうと、左の手のひらに右の拳をぶつける。
「殺姫、空間切りでテレサの目の前に行くぞ!」
『心得た!』
 俺は殺姫を振るい、空間を斬る。
 そして、テレサの目の前に現れる。
「お前の相手は俺だ!」
「人間の分際で、私に勝てると思っているの!!」
 俺はテレサのパンチを殺姫で受ける。
「マリア!大丈夫か!!」
「サンキュー・横島・さん」
 マリアがゆっくりと立ち上がる。
「殺姫、距離をとるぞ。空間切りだ!」
『任せよ!』
 俺はテレサの腕を弾くと、空間を斬りマリアを連れて、美神さんのもとへいく。
「横島君、マリア!」
 美神さんとおキヌちゃんが駆け寄ってくる。
「美神さん、実は……」
 俺は美神さんにテレサがウィルスに感染していることを伝えた。
「あのバカども!きちんとしないからこんな目に合うのよ!!」
『美神さん、今はテレサさんを助けないと……』
 怒りを込めて神通棍を握り締める美神さんを鎮める。
「ま、自体はわかったわ。横島君とマリアはテレサの注意をひきつけて。私は隙を見て、一気に霊力を叩き込むから」
「了解ッス!」
「ラジャー・ミス・美神」
 俺たちが返事をすると同時に、弾丸が降り注ぐ。
「そこの間抜け面、面白い技を使うじゃない!!」
「ほめてんのか、けなしてんのか、はっきりしやがれ!!殺姫、飛ぶぞ!!」
『空中制御を開始するぞ!』
 俺は一気にテレサとの距離を詰める。
「でやぁぁ!」
 俺は横に構えた殺姫でテレサに仕掛ける。
「甘いよ!」
 テレサはそれを難なく避けるとロケットアームを放ってくる。
「クッ!」
 ロケットアームを上へ弾くと、そこにはテレサの拳が迫る。
「マジかよ!!」
 ドムドムドム!!
 やばいと思った瞬間、銃声が響き、テレサが距離をとる。
「大丈夫・ですか・横島・さん」
 マリアがアームガンを構え近寄ってくる。
「サンキュ、助かったぜ!」
 それにしても、アンドロイドとは戦いたくねぇ!
「やるじゃないか、二人とも!!」
 テレサがアームガンを連射してくる。
「こんにゃろぉ!!」
 俺はアームガンの弾丸を必死に弾く。
 殺姫に強制的に動体視力と、反応速度を鍛えてもらっててよかった。
 まさか、弾丸を弾けるようになるとはね!!
「いっくぜぇ!マリア、殺姫!!」
「イエス・横島・さん!!」
『一気に決めてみせようぞ!!』
 俺の前にマリアが立ち、一気にテレサとの距離を詰める。
 俺もその後を、マリアと同じ速度で追う。
「このこのこのこのぉぉぉ!!」
 テレサのアームガンがマリアを襲うが、彼女の装甲はそんなもんじゃ貫けない!
 テレサの目前までマリアが迫ると、そのまま右にスライドする。
「クッ!」
 テレサの視線がそれる。
「マリアは囮だ!」
 俺は峰うちで、テレサの鳩尾に一撃決める。
「ぐっ!」
 そこへ追撃でマリアのロケットアームが決まる。
「おちろぉぉぉ!!」
 俺は渾身の力をこめて、殺姫を振り下ろす。
「ぐあぁ!」
 テレサは地面に激突する。
「美神さん!!」
「待ってたわよ、横島君!!」
 美神さんが駆け寄り、うつぶせに倒れているテレサの首筋に細く形成した神通棍を突き立てる。
「ぎゃぁぁぁぁ!!……か、過電圧感知、駆動機能停止。自己修復開始」
 それを確認すると、心眼がテレサの頭部に手をかざす。
「これよりハッキングを開始します」
 心眼の手が光る。
「第一、第二、第三ファイアウォール突破。中枢部へ進入開始。……いました。魔族化したコンピュータウィルスです!これより排除を開始します!!」
 心眼の額に汗が浮かぶ。
「心眼、急ぎなさい!三十秒をきったわ!」
 美神さんが腕時計を見つめながらいう。
「わかっております!あと少し、あと少しなのです!!除去率……50%……60%……70……80…90……100!!」
 心眼がそういったとき、美神さんの時計はあと1秒を指していた。
「除去、完了です……」
 そういうと、心眼は地面に倒れる。
「「「『心眼(ちゃん)!』」」」
 皆が心眼に駆け寄る。
「どうやら……力を使いすぎたようです……しばし、お休みします……です」
 そういうと、彼女はバンダナの姿に戻った。
「し、死んでませんよね?」
 俺はそのバンダナを拾うと、美神さんに差し出す。
 美神さんはそれを手に取ると、
「大丈夫よ。どうやら力を使いすぎて、元に戻っただけみたいね。しばらくすれば戻るでしょ」
 と微笑みながらいってくれた。
「ヴゥゥン、駆動機能回復、エラーチェックスタート……チェック完了、エラー箇所37、修復開始……修復完了。動作に問題なし。起動します」
 そういうと、テレサはゆっくりと起きて、周りを見る。そして、マリアのところで視線が止まる。
「姉さん……。姉さん!!」
 テレサがマリアに抱きつく。
「私、暗い、牢獄みたいなところに入れられてた。そこから見てた。皆にひどいことをしているのを……。止めようと思っても止められなかった……」
 マリアがゆっくりとテレサの頭を撫でる。
「もう・大丈夫・テレサ。横島・さん・たちが・助けて・くれた」
 そういってマリアが微笑む。
 へぇ、マリアの笑顔って綺麗だな……。
 俺も自然と微笑んだ。
「ありがとう……」
 ここまでは良かった。
 ここで終わっておけばよかったんだ。
「兄さん」
「「「『はぁっ!?』」」」
 美神さん、殺姫、おキヌちゃん、信じられないことにマリアまでもが驚き声を上げる。
「え?だって、姉さんと恋人なんでしょ?この人」
 そういって、テレサが俺を指差す。
「……なんで俺が恋人やねん!!」
「だって、あんなに姉さんと息の合った攻撃ができるんだもの。それに姉さんの笑顔見て、嬉しそうにしてたじゃないの。恋人とかじゃないの?」
「んなので恋人と決められてたまるかぁ!!」
 俺はうがぁーとほえる。
「テレサ・横島・さんを・困らせては・ダメ」
 マリアさん、何で顔が赤いんですか……?
「ふ〜ん、ま、どっちでもいいけどね。とりあえず、助けてくれてありがと。特にあんたには」
 そういってテレサさんは俺の頬にキスします。
「な、なんばしよとかぁぁぁぁ!!!」
 俺はその場をから素早くはなれ、倉庫の壁にへばりつく。
 ア、アンドロイドの癖に柔らかかった……。
 あれ?何か、皆俺を見る目が痛いんですが?
「横島ぁ!己はついに人形まで!!」
 い、いや、僕は何もしてませんよ?
『よ、横島さん……からくり人形は良くて幽霊はだめなんですか!?』
 いっていることが良くわからないんですが?
「主はよくよく人外に好かれるのう」
 何笑ってんだよ……。
「皆さん・ドクター・カオスと・ミスター・厄珍を・忘れて・いませんか?」
「「「『あ!?』」」」


「寒いアルよぉ!!」
「マリアァァァ!早く助けにこんかぁ!!」
 すまねぇ、忘れてたわ。マジで。


あとがき
 先週さぼったというか、更新できなかった分なんとかお届けできました。
 これにて、テレサ編終了でございます。
 風邪引いて、つらいので今回はこの辺で失礼させていただきます。

一括レス返し
 ミアフさん、内海一弘さん、ゆんさん、D,さん、優姫さん、LINUSさん、ヴァイゼさん、クラインさん、ryoさん、白銀さん毎回ありがとうございます。
 皆様の一言一言が自分の力です。

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