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「横島と妖刀 第五話 前編(GS)」

N.W. (2006-02-11 21:32)
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 こんにちは、皆さん。
 僕の名前は横島忠夫。この物語の主人公です。
 唐突ですが、今とってもピンチです。
 ……だって寒風吹きすさむ、クレーンに吊られた鉄骨の上にいるんですから!!
 しかも下は海。
 こんな日に海水浴はごめんだ!!ついでに、えらい高いところからの飛び込みも許してくれ!!!
 ご丁寧にさぁ、ワイヤーにTNT火薬まで付いてるんですよ……。
 さらに……
「寒いある〜〜〜〜っ!!」
「揺らすな馬鹿者!バランスが崩れる!!」
 厄珍とカオスのおっさんも一緒だ……。
「あんまりくっつくなよ!ジジむさい!!」
 これが美女だったら、俺は喜んでいるのに……。
 何で俺がこんな目にあっているかというと、話は数時間前まで遡る。


 俺はいつも通り、美神さんの事務所へ向かっていた。
 俺の右側に大人バージョンの殺姫、左側には心眼。
 肌寒いのにタンクトップの上にレザージャケットを羽織り、レザーパンツをはき、黒のニット帽をかぶっている。
 心眼は相変わらず黒いスパッツに白いパーカー姿。

 心眼が来てから数日間、釧路にいって雪女を退治したり、暴走神族の韋駄天をしばいたりと忙しかった。
 てか、俺が大変だった!!
 雪女のときは、俺が半分氷付けにされたし、韋駄天の時は美神さんにマ○オカ○トの甲羅よろしく投げられたりした。
 あの人曰く
「あんた殺姫装備してるんだから、大丈夫でしょ?」
 いや、確かに大丈夫ですけどね(右半分は殺姫アーマー着ているから)、あんたの師匠を一瞬で凍らせるような奴や、アクセル全開のコブラに追いつくような奴に俺を特攻させるのは、どうか勘弁してください。
「あんたと殺姫で、相手の霊力削って、私の戦いやすいようにしてこぉい!!」
 とかいって、ぶん投げられる俺って……。
 おキヌちゃんと心眼は必死で止めてくれたんですが、
「ね、横島君、あなたならできるわよね?」
 なんて甘い声で、しかも耳元なんかでささやかれたら、やらな漢やないやろぉ!!!
 え?お前騙されてるのわかってるかって?
 ……そんなのわかってるよ……。
 でもな……でもなぁ!漢の本能(てか煩悩?)ってぇもんは止まんねぇんだよぉ!!!
 そんなことで戦っていたら、殺姫が大人バージョンになったままです。
 霊力をたっぷり喰ったからな。
 ちなみに、心眼ちゃんを心眼と呼ぶようになったのは彼女が泣きながら
「心眼はおとー様の子供だから、呼び捨てにしてほしいですー!!」
 と、人の往来がえらいあるところで言われたからです。
 しばらく色んな人から白い目で見られていましたがね。

「はむはむはむ……ごきゅごきゅごきゅっ」
 心眼がおいしそうにアンパンと牛乳をほおばる。
「このメロンクリームまんとかいうのはダメだな。甘ったるくていかん」
 殺姫が俺に泣きついてまで買った、微妙な中華まんを頬張る。
 ……そんな微妙なもんの味、名前で分かれよ……。
「ふふ、そんな微妙なものを買うからいけないんです。変な冒険をせずに、普通のものを買えばよかったんですよ」
 心眼が勝ち誇ったような表情で、残りのアンパンを牛乳で流し込む。
「フッ、人生何事も冒険よ。まぁ、お主のような何事にも挑戦しようという気が奴は、面白みも無い平坦な人生を歩むが良い」
 殺姫が微妙な中華まんを完食する。
 殺姫と心眼の間で火花が散る。
「お前ら、喧嘩したら今夜のセ○ラ○ム○ンも暴れん○将軍もなしな」
 俺は二人にとっての切り札を発動する。
 この二人、事あるごとに喧嘩するので、喧嘩したら好きなテレビ番組を見せないようにしている。
 おかげで喧嘩がぐんっと減った。
「主、ワシらは喧嘩なんぞしてないぞ!ほらこんなに仲がよいじゃろ!!」
「そうですよ、おとー様!!」
 そういって、二人は頬を抓り合っている。
「……仲良くな。喧嘩したら、一晩中ホラー映画鑑賞かホラー小説一晩中音読だからな」
 俺は二人に微笑みながらいったんだが、二人はガタガタブルブルと震えていた。
 この前、いくらいっても聞かなかったので、罰としてオ○メンとエク○シストを連続で見せたのは不味かったか。
 次はリ○グとらせ○だな。いや、呪○もありか。
 てか、妖刀と小竜姫様の力を授かった存在が、ホラー映画がダメっていうのはどうよ?
 そうこうしているうちに、美神さんの事務所が見えてくる。
 敷地内に入ると、おキヌちゃんが植木鉢を持って庭にいた。
「よ、おキヌちゃん」
 俺は片手を上げて、挨拶する。
『あ、横島さん!待ってたんですよ!びっくりすることがあるんです!!』
 おキヌちゃんが興奮気味に話す。
「色々あったから、多少のことじゃ驚かんぞ」
 俺はちょっと引きながら答える。
『新しい助手が入ったんですよ!』
「え゛!!」
 あ、あの銭にがめつくて、いい娘の代表でもあるおキヌちゃんを日給30円で雇う美神さんが、新しい助手を!!
「だ、誰だ!美神さんのもとで働きたいという変わり者は!!」
「そんなこといったら、主もおキヌ殿も変わり者じゃな……」
「それをいったら、元も子もないです〜」
 俺の叫びに殺姫と心眼が突っ込みをいれる。
「『……』」
 辺りを沈黙が支配する。
 コホンッ!
 気を取り直しまして。
「その助手って〜のは男?」
『女の子ですよ、それもすっごく可愛い……』
 俺はおキヌちゃんの言葉を聞くと、世界を狙える速度で事務所の中へ駆け込む。
 うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!待っていろ可愛い女子で助手で後輩よ!!
「今頼れる先輩がいきますからねぇぇぇぇぇ!!!」
 俺は階段を一段抜かしどころか、六段くらい抜かして事務所へと向かう。
「そう、その書類はそこにまとめて置いてね。あ、使用済みのお札は産業廃棄物扱いで……」
 事務所の前までくると、部屋の中から美神さんが誰かに指示している声が聞こえる。
 この扉の向こうに、可愛い助手もとい、俺の彼女が!!
 俺は勢い良くドアを開く。
「やぁ!こんにちはっボク、横島……」
 俺はそこまでいうと固まった。
 だって、そこにいたのは、ショートカットの赤い髪に、アンテナのようなものがついたカチューシャをし、スリットの深い皮っぽいドレスをきた女性。
 だけど体は金属製で、その中には数々の武器を搭載している。俗に言うアンドロイドって奴だ。
 そして、そのアンドロイドは大昔はヨーロッパの魔王と呼ばれ、現在ではただのボケ爺さん、ドクターカオスが生み出したもので、名前をマリアという。
 俺はこのアンドロイドに、何度命を狙われたことかっ!!
「物覚えはいいし、力持ちだし、来てくれて嬉しいわ、マリア!」
「サンキュー・ミス・美神!」
 美神さんの言葉に、マリアが答える。
 しかも『DANGER』と書かれた箱を両手に抱えながら。
 マリアが俺に気付き振り向く。
「横島・さん。マリア・今日から・仲間!」
 マリアが俺に声をかける。
 無表情なのに、声はどこか嬉しそう……。
 でも、俺はこいつに何度危ない目に合わされたことか!!
 うっかり間違ってぶっかけちまった惚れ薬で、胴体がぶった切られそうになったり、カオスの爺さんと魂を入れ替えられたり!!
「横島君、今日からうちの助手三号よ。仲良くしてね!」
 美神さんが本当に嬉しそうにいう。
「な、何でこいつがいるんスか!カオスの爺さんが死んだんですか!!」
「マリア・担保に・なりました。ドクター・カオス・マリアの妹・造っています。その資金を・ミス・美神に・借りました」
「早い話が、借金のかたにマリアを預かったのよ。これ以上頼れる助手いないでしょ」
 美神さんがウィンクしながら嬉しそうにいう。
 マリアは、何となくだけど嬉しそうだ。
 でもさ!
「危険じゃないですか!こんな人型兵器!!」
「マリア・正常作動中。危険・ありません」
「殺人機械は皆そういうんだ!バカモノ!!」
「……」
 俺の言葉に、マリアが悲しそうな表情をする。
『横島さん!それはひどいですよ!マリアが可愛そうじゃありませんか!!』
 いつの間にか事務所に来ていたおキヌちゃんが厳しい口調で俺にいう。
「この娘は2億円でうちにトレードしたのよ!文句あるの!?」
 美神さんが俺に詰め寄る。
 美神さん、2億も人に貸す金があるなら、俺の給料もうちょっと上げてはくれませんかね?
「主、些細なことなど水に流せ。そんなに心が狭いと、女にもてぬぞ?」
 殺姫、お前は胴体が真っ二つになる危険を感じたことがあるか?
「マリアおねーさん、可愛そうです!そんな心が小さいおとー様は、大嫌いです!」
 ああ、心眼まで俺の敵ですか。
「マリア、ごめんなさいね。アレ馬鹿だから」
「ノー・プロブレム・ミス・美神。マリア・気にしてません」
『ねぇマリア、お花畑作るの手伝って』
「わしも花畑作るの手伝うぞ。ハエ取り草を植えたいのじゃ」
「心眼もウツボカズラ植えたいです!」
 俺を除く全員が、部屋を出て行く。
 殺姫さん、心眼さんお花畑に食虫植物を植える人はいませんよ……。
 てか、
「俺一人悪者かよぉ!!!」
 誰もいない室内に、俺の叫びがこだました。


「この敷地から今すぐ立ち去りなさい!さもないと、実力で排除します!!」
『シャァァァァ!!』
 美神さんの警告に、悪霊は威嚇で答える。
「美神おねーさん!来るです!!」
 心眼が叫ぶと同時に、悪霊が美神さんに襲い掛かる。
「クッ!」
 美神さんは紙一重で、悪霊の攻撃を避ける。
「美神さん!行くぞ殺姫!!」
「承知!!」
 俺は殺姫を装備すると、悪霊に飛び掛る。
 悪霊も俺に攻撃目標を変更したようだ。
 奴の体が沈み、攻撃態勢をとる。
 死と隣り合わせの戦いを繰り広げてきた俺が、お前なんかにやられるか!!
 だが、俺の脇をすり抜けていくものがある。
 マリアのロケットアームだ。
『ギャウッ!!』
 ロケットアームは当然のごとく、俺の攻撃よりも先に悪霊に当たり、そいつをノックダウンする。
『……合体、解いてもよいか?』
「……かまいません、殺姫さん……」
 ……俺の目からとめどなく涙がこぼれます……。
「ありがとうマリア!助かったわ!!」
「どう・いたしまして・ミス美神」
 美神さんが満面の笑みでマリアの肩を叩く。
 マリアも、役に立つことができたのが嬉しいのか、明るい声で返事する。
「なんだよ……なんだよ!僕に誰か優しくしてくれよぉ!!」
 俺の叫びが辺りに響く。
「「『主(おとー様)(横島さん)可愛そうに(ですぅ)』」」


あとがき
 遅れましてすみません。
 第五話前半をお送りしました。
 本来であれば、一気に書き上げたかったのですが、長くなりそうなのでここでいったん区切ります。
 今回は横島君と殺姫ちゃんの活躍が全くといっていいほどないですが、次回は活躍します!!(恐らく)

一括レス返し
 ゆんさん、Y.Uさん、kntさん、覇邪丸さん、優姫さん、BDさん、白銀さん、ヴァイゼさん、ケルベロスさん、HAPPYEND至上主義者さん、今回も楽しんでいただけたようで、嬉しい限りです。
 次回も楽しめるようがんばりますので、よろしくお願いします。

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