「……それで結局、コレって何のお祭りなわけ?」
外へ出るために廊下を歩いている最中、タマモが素朴な疑問を横島に尋ねた。
駄菓子屋だの射的だのといった縁日じみたものもあれば、絵画展とかお茶処のような真面目っぽい出し物もある。どういうコンセプトで企画されたものなのかが今いちよく分からない。
「写真とか演奏は部活の出し物だからな、マジメにもなるさ。それ以外はまーお遊びだろ、この学校は」
「ふーん。どうせならデジャブーランドぐらいにしてくれれば最高なのに」
「無茶言うなよ……」
「では先生、拙者とこのお化け屋敷に入るでござるよ」
何を考えたのか、シロが唐突に目の前の『2年2組 お化け屋敷』を指さした。
横島は少々呆れて、
「俺たちが入って面白いわけないだろ」
日々本物とやり合っている自分達が驚くようなものなど出るわけが無いし、もし驚かされてしまったらそれはそれでメンツにかかわる。
「先生と一緒なら面白いのに……」
シロは未練があるようだったが横島は頓着せず、
「それより早く行くぞ。12時過ぎると混みそうだからな」
というわけで、横島は外の屋台でタマモと並んできつねうどんを食べていた。
「まさか本当に両方ともあったとは……」
文化祭のパンフレットを確かめたところ、『3年5組 うどん』とあったので、そこで昼食と相成ったわけである。
その横島の後ろに立っているシロの手には焼き肉が山と盛られた紙皿があった。昼間からよく食べるものだが狼としては当然の食性である……ドッグフードも好きだが。
「美神さん達も来てるはずだけど見なかったか? というか何で別々に来たんだ?」
横島が何気なくそう訊ねるとタマモは僅かに眉をしかめた。
「見てないわよ。それより傾国の美女と『2人で』食事してるのに他の女の名前出すなんて無粋じゃない?」
その頃の記憶は残っていないが、プライドにチクリときたらしい。
「傾国ね……それはせめてあと3年ぐらい痛ててっ!?」
タマモが無言で横島の太腿をつねりあげた。横島はロリ属性は無いと公言しているし、どちらかと言えば美神やエミのようなナイスバディが好みだからそう思ったのだが――どう考えても失言ではある。
「わ、分かった分かった。このお揚げやるから離せ」
横島の降伏宣言にタマモはぱっと手を離して、
「まあ、横島だからいいけどね。少しは女心とか勉強した方がいいわよ?」
と言いつつお揚げを奪うことは忘れない。
「うう、奢ってやってこの扱いかよ……」
その後シロにフランクフルトや焼き鳥をねだられて財布が空になったため、横島の昼食は素うどんだけで終わってしまった。
南無。
昼食の後いったん自分の教室に戻った横島は、また外に出られなくなった。
彼が外に出ている間にエミが来てピートを拉致して行ったため、模範演技ができる者がいなくなったからである。
「おのれピート……エミさんもどーせなら俺をさらってくれればいいのに。ってゆーか何で俺ばっか仕事せにゃならんのだ」
ピートが教室にいれば横島もキヌ京や魔鈴・冥子を案内して両手に花のプチデートができたのだ。もともと模範役は交代でやる予定だったが、エミが連れ去った以上戻っては来るまい。
――シロタマはデートの相手としては認識していないようだ。
(チッ、モテ男クンめ。奴には天誅が必要だな。《大》《蒜》《砲》……いや《陽》《電》《子》《銃》辺りか……?)
何やら激しく物騒なことを考えている横島だが、モテ男クンという言葉に深い意味はない。単に自分だけ働かされるのが不愉快だっただけである。
それなら自分もさぼってしまえばいいのだが、意外なことに(?)この男は1度自分がやるべきだと決めた事は放り出せない性格だった。責任感というよりは一種の気弱さに近いものだが……。
とにかく横島は自分の責務を果たすべく、仕事の邪魔になりそうなシロタマも帰して追加のお札を準備した。
そしてその行動が吉だったのか凶だったのか、またしても現れたのは彼に会いに来た女性が2人。共に女子大生風で、1人は黄蘗色のジャケットとデニムのミニスカ、もう1人はベージュのシャツにスラックスという出で立ちだった。
ただしその正体は人の子にあらず、お忍びで人界に下りて来た女神さまである。その名を小竜姫、そしてヒャクメという。
意外な来客を目にした横島がさっと駆け寄ってその手を取った。
「小……じゃない竜村(たつむら)さん、と百屋(ひゃくや)。相変わらずお美しい! 今日はまたどーしてこちらへ?」
竜村、それに百屋というのは彼女達が人界で行動するときの偽名である。小竜姫とかヒャクメという名前は人間のそれとは思われないので、GS以外の一般人が集まる場所ではこう名乗る事にしたのだ。ちなみにステンノとエウリュアレはそれぞれ横瀬 珠洲乃(よこせ すずの)、横瀬 恵宇(よこせ えう)と称している。
「ありがとうございます横島さん♪」
容貌を讃えられた小竜姫はにこやかに礼を返したが、おまけ扱いされたヒャクメはぶーたれて、
「横島さんひどいのねー。私だって横島さんに会いに来たのに」
もともと今日が文化祭だという情報は彼女の千里眼で得たものだ。本当は1人で来るつもりだったが、小竜姫にバレたので2人で来校という次第になったのである。当然、サーヴァ○ト仲間とはいえワルキューレにまで教えてやるほど酔狂ではない。
「ああ済まん、百屋もわざわざありがとな」
「んー、一緒に回ってくれたら許してあげるのね」
ということで彼女もなかなか抜け目が無い。
横島も美女の誘いに乗り気になったが、いかんせんキヌ京のときと同じ事情が彼の行動の自由を奪っている。
彼がそれを説明すると、ヒャクメは女神にあるまじき狡猾な笑みを浮かべて、
「それなら問題ないわ。姫子が残ってくれればいいのね」
今の彼女は神族の調査官にあらず、一介の女子大生である。ゆえに少しくらいの悪謀は許され――はしなかった。
「な、何てことを言うんですか芽衣。それならあなたが残りなさい!!」
小竜姫が柳眉をはね上げ、肩にかけた袋に手を伸ばす。中に入っているのは彼女愛用の神剣だ。横島があわててその手を止めて、
「ま、まあまあ竜村さん落ち着いて。どっちみち部外者に頼むなんてできませんし、せっかくですからお茶でも飲んで行って下さい」
みんなに言っているような気もするが、小竜姫がここで剣を抜くのはまずい。今は彼女をなだめるのが最優先だった。
「……そうですね、少し興奮しすぎたようです」
妙神山の中だったらお仕置きしているところだが、ここは一般人が大勢いる。人界に駐留する神族の代表として、自制心が必要であろう。横島の前だし。
こうしてお茶を飲みながら雑談を始めた3人を、例によって教室にいた級友たちが観察していた。
「な、何で横島があんなにモテるんだ……!?」
そう言った男子生徒Aの背後には嫉妬の炎がめらめらと燃えている。ついに現実を認めざるを得なくなったらしい。
3人の会話の内容はよく聞こえないが、最初のヒャクメの言葉と小竜姫が横島に向ける笑顔には希望的観測をする余地はなかった。しかしかって自作自演までした男(と彼らは信じている)のどこを彼女たちは好いているのであろうか?
「……本能に正直なところ?」
「それは無いでしょ」
男子Bのボケに女子Aがハリセン代わりのお札でツッコミを入れる。どうやら霊力がこもっていたらしく、パシッと閃光がひらめいて50円が無駄になった。特に霊能がある生徒ではなかったが……突っ込み道の神秘?
「しかしだ、あの状況でなぜ横島が襲い掛からん? もしかして不能にでもなったのか? だから女の方も安心して話ができるとか」
だんだん言うことが支離滅裂になってきている。横島はさっきの京香の件もあるし役目も持ってるから自粛しているだけなのだが。
そしてついに、立ち上がる者が現れた。
「くっそー、奴1人にいい目見せてたまるか! 男の友情ナメるなよー!!」
昨晩の横島とルシオラの会話にも登場した男、本田である。握り拳に中指を突き立て、同志を語らってカチ込みをかけるべく椅子を蹴った。
「うーん、これも青春……?」
愛子はちょっと首をかしげながらも得意の台詞を口にしたが、特に止める様子はなかった。代わりに割って入ったのはタイガー。
「あのー、それは止めた方がいいと思いますジャー」
「何故だ? 不幸は分かち合うが幸福は邪魔してやるのが我が校の掟だぞ!?」
そんな事をしていたら誰も幸せになれないのだが、とにかく本田はそう言ってタイガーを睨みつけた。
「いや、あの女の人は物凄く強いですケン」
タイガーも面白くはなかったし、本田と特に親しいわけでもないが、小竜姫を怒らせるという愚行を止めてやる程度の人情は持っていたようだ。
「「……」」
雲突く巨漢のタイガーがそう言うからには、武道か何かの達人なのだろう。本田たちは一旦矛を収め、彼女たちが離れるのを待つことにした。
そんな彼らの動向をヒャクメは100の感覚器官で捉えつつ、
「ところで横島さん、横島さんは学校ではどんな風に振舞ってるの?」
と急に声をひそめて横島にささやいた。
「振舞うって?」
「あの人たち、横島さんと私たちが仲良くしているのが信じられないみたいなのねー」
客の相手をしたり投げられたお札を回収したりしている生徒達がときどきこちらに向ける視線はどう見ても怪しい。ぶっちゃけ軽く心を読んでみたりもしたのだが……彼らはなぜか横島が女にモテることはないと固く信じ込んでいた。
「いや、今みたく普通にしてるだけだぞ?」
「……そうですか」
小竜姫の表情は複雑だった。
たぶんここでは横島のいい面はあまり表に出てなくて、バカでスケベな所だけが目立っているのだろう。横島にとっては不本意なことだろうが、彼と会える機会の少ない自分達にとってはむしろいい事で、でもそんなことを考える自分にちょっと腹が立って……。
そこへまた彼女と横島の共通の知人が現れた。1人はTシャツにジーンズ、その上にジャケットをはおった姉御肌っぽい女性、もう1人はワンピース姿のふんわりした印象の娘だった。横島が使用済みのお札の入った箱を整理しているのを見て、
「横島、忙しそうだね」
「横島さん、こんにちは。遅くなっちゃってすいません」
「ああ、ス……珠洲乃に恵宇か。いや、そんなに忙しくないぞ。つーか暇にする」
ざわっ!!
それだけのやり取りで教室に軽いざわめきが走る。
ステンノは見た目23〜24歳くらい、エウリュアレは21〜22だ。その年上の2人に横島は名前を呼び捨てにしてタメ口をきいている上に、恵宇と呼ばれた方は逆にさん付けして敬語で話している。どんな関係なのだ?
「横島さん、もし良かったらこれどうぞ」
とエウリュアレが屋台で買ったクレープを差し出す。その何とも細やかな心遣いを横島はありがたく受け取って、
「ああ、ありがとな。ちょうど小腹がすいてたんだ。昼メシが素うどんだけだったからな」
「素うどんだけ? なんでだ?」
ステンノが不思議そうに問い質す。貧乏なわけでもあるまい。
「ああ、シロに奢らされてな。財布が空になったんだ」
「あははは、あんたらしいね」
彼女にとって横島の生態はけっこう面白いもののようだ。そして妹の方は本当に親切だった。
「では、お飲み物も買って来ましょうか?」
「いや、お茶がここにあるからいいよ。お前たちも飲むか?」
本来景品であるハーブティーを勝手に飲んだり飲ませたりしている横島だが、彼の中では労働に対する報酬という位置づけらしい。
「はい、ありがとうございます」
梨の花の開くような、とでも形容しようか。そんな綺麗な笑顔が横島1人に向けられているのを目の当たりにした本田とその一党は、ついに理性がブチ切れた。
「横島ああーーっ! 貴様横島のくせに4つ股かけるなんてどーいう了見だごるぁ!?」
その素敵なご挨拶に、横島も勢いよく席を立つと礼をもって返答した。
「やかましい、俺が誰と仲良くしよーと俺の勝手だろーが! それとも女にモテる横島なんか横島じゃないとか手紙でぬかすか!?」
「当たり前だっ! 『局を脱するを許さず』という局中法度を忘れたか!」
「んな局に入った覚えはねえっ! だいたい俺なんかよりピートの方がモテてるだろが!!」
確かに人数で言えば横島の客よりピートの客の方がずっと多かったのだが――ピートは美形だし振る舞いもまあ紳士的だからという事で、本田たちも不本意ながら理解はできたのだ。しかし横島には合理的な理由がみつからない、というか横島と恵宇たちでは釣り合いが取れなさ過ぎる。
「他人を隠れ蓑に使おうとしても無駄だ! ところでお前、そもそもこの4人とどういう関係なんだ!?」
「知らないなら4つ股なんて決めつけるんじゃねえぇッ!!!」
――知られない方がいいと思うのだが?
(こ、この人たち何なんでしょう?)
エウリュアレが目をぱちくりさせている間も口論は続く。小竜姫とステンノはすでに実力行使の態勢を整えていたが。
そんなサー○ァント陣4人に、午前中にも現れた週番Aが話しかけた。
「ところで皆さん。ご存知ないでしょうがこの男は女と見れば見境無しの性欲魔人、あまり関わり合いにならぬ方がよろしいかと思いますが」
(こ、こいつ……殴っ血KILL!!)
その遠慮の欠片もない発言が耳に届いた横島が脳内で滅殺を決意する。後腐れのない方法を模索する段階に入ったところで、
「知ってるよ、そんなこと」
とステンノが何でもないかのように言い放った。
「でもストレートで分かりやすいし無理強いはしないし、可愛いもんさ」
(こ、これが大人の余裕ってやつか(かしら)……!?)
驚愕と尊敬の眼差しがステンノに集中する。あの横島の煩悩を「可愛い」の一言で済ませるとは……。
「それに私たち、横島さんの恋人とかそういうのじゃないですよ。お仕事の関係では本当によくしていただいていますが」
とエウリュアレが姉の発言を補足する。
さて、これだけなら単に疑惑を否定したに過ぎないと思われるかも知れない。しかし彼女の目的はそうではなく、主のために、
(何だ、仕事の付き合いだったのか。営業スマイルってやつ?)
と安堵の息をついた横島の級友たちの、
「横島さんはとっても素敵な方ですから、そうなれたらいいなあといつも思ってはいますけれど」
横島はモテない、という固定観念を破壊することだった。わざわざ安心させてから会心の一撃を叩き込むという辺りに、エウリュアレの彼らへの感情が読み取れる。
ちなみに彼女の言葉は嘘ではない。横島がいま自分や姉に向けている感情は、LIKEであってLOVEではないと理解していたから。
「「「…………はう」」」
本田、週番A、タイガー、その他級友一同がばったりと倒れ伏した。まさか自分達の最後の牙城が実は敵の大要塞だったなどと、あまりにもむごすぎる話ではないか。
エウリュアレのスキルに『石化の発言:A+』を加えてもいいかも知れない。
後夜祭。
秋の日もとっぷり暮れて、外来客も帰った後。生徒達は文化祭で使ったいろいろなものを燃やした火を明かりにしてフォークダンスをしていた。誰もが祭りの最後の余韻にひたっている。
その光景を、1人で校舎の屋上から見下ろしている者がいた。
机妖怪の愛子である。
「あれ、愛子じゃねーか。何でこんなところにいるんだ?」
突然後ろから声をかけてきた男に少女は振り返って、
「あ、横島君じゃない。何でフォークダンスに行かないの?」
「聞かなくても分かるだろ」
横島は苦笑してそう答えた。
サーヴ○ント達の活躍によって、横島は女にモテないという一般認識は完膚なきまでに粉砕された。もはや今後彼をモテナイ君呼ばわりする者は現れまい。
しかしその事実が級友達に与えた衝撃は大きく、しばらく冷却期間をおくために横島は身を隠しているのであった。明日になればみんな落ち着いているだろう……たぶん。
「……まあね」
「そーいうお前は何でここにいるんだ?」
「……私、机妖怪だし」
この学校には愛子が妖怪だというだけで嫌悪する生徒は(少なくとも表面的には)いないが、机をかついでフォークダンスに参加するのはさすがに迷惑だろう。余計な心配かとも思ったが、遠くから見るだけでもいいかと思って屋上に来たのである。
「ま、これも青春かな」
「そーは思えんが、確かに机かついでフォークダンスは物理的に無理か」
背中に背負うという手もあるが、邪魔くさいことこの上ないし、木製だから火花が飛んで来たりしたら危険である。
「……まあ、俺でよかったら一緒に踊ってやるが」
「えー、横島君と?」
「い、いーんだ、どーせ俺なんて」
屋上のすみでいじけた横島を愛子はまあまあと慰めて、
「冗談よ。それより横島君踊れるの?」
「……」
横島は沈黙をもって答えた。
周りに合わせてならともかく、1人で愛子をリードするなんて器用なことが彼にできるはずがない。
「もう少し考えて喋った方がいいわよ?」
愛子もあきれてそう言ったが、
「でも……ありがと、横島君。おかげでホントに青春になったわ」
「そっか?」
「うん。だって、私がいたからここに来てくれたんでしょ?」
「……なかなか鋭いじゃねーか」
実際、横島は愛子が1人で歩いているのを見かけて、それが気になってこっそりついていったのだ。愛子は黙っていたが気づいてはいたらしい。
愛子は机の上に腰掛けて校庭に視線を戻した。
「だてに学校妖怪何十年もやってないわよ。あの人たちの言ったことも分かるし」
「あの人たち?」
「うん――横島君がストレートで、とっても素敵なひとだってこと」
「え」
横島がピシッと硬直したが、愛子は構わずに言葉を続けた。
「横島君、本命の彼女いるんでしょ?」
そうでなければ、横島が恵宇――エウリュアレほどの美人を『恋人になりたい』のまま放っておくわけがない。横島とエウリュアレの関係はそれだけではないのだが、少なくとも彼女の発言からはそうとしか考えられなかった。
「……まあな」
横島も校庭に視線を落としたままそう答えた。
「そっか……でもまあ、なりたいって言うだけなら自由よね。恵宇さんだってそうなんだろうし」
「へ?」
横島の硬直具合が30%ほど上昇した。この後の展開が予想できる。
愛子が机から下りて横島の真横に立った。
「どうせなら当たって砕けるのが青春よね。恵宇さんには手を出してなさそうだから、実は意外にストイックみたいだし……私も立候補するわ。横島君の恋人になりたい」
「……」
横島は即答はできなかった。愛子が軽い気持ちで言っているのではないことだけは確かだったから。
さて。ハーレム要員が何人いようと、好きだと言ってもらえるのはやっぱりすごくうれしいのだが、まず誤解はといておかねばなるまい。
「先に言っておくが、そんなに甘い男やないで、俺は?」
(てゆーか、ルシオラの妨害さえなければとっくに(以下略))
なぜか悔しそうにしている横島に愛子はクスッと笑って、
「やっぱりねー。それは別にいいけど、あれって何か分かる?」
「え?」
愛子が指さした先を見て、横島は『世界』の恐ろしさを思い知った。
クラス :ライ○ー
マスター:横島 忠夫
真名 :愛子
性別 :女性
パワー :50マイト
属性 :青春、委員長
スキル :なし
宝具 :固有結界『机内学校』
こうなってしまっては説明せざるを得ない。横島は重い口を開いて、
「要するに、お前は俺の使い魔として『世界』から認定されたんだ。といっても俺に使役されるとかじゃないから心配しなくていいぞ」
文珠《令》《呪》による強制は可能だが、よほどの非常事態でもなければそんな事をするつもりはなかった。
「せ、世界って。また大げさな話ねえ。嘘じゃないっていうのは何となく分かるけど……」
ただちょっと気になる点がある。
「でもクラスがラ○ダーっていうのがよく分からないんだけど。何かに乗る者って意味でしょ? 私乗り物なんか持ってないのに」
それに対する横島の答えは合理性もへったくれもなかった。
「いつも机に座ってるからじゃねえのか?」
当然愛子は激しくキレて、
「そ、そんな理由で納得すると思ってるの横島君? ぜんぜん青春じゃないわよ、ねえ!?」
「も、文句なら『世界』に言ってくれ。俺が決めたんじゃねえ」
愛子が襟元を締める手を必死で振り解きつつ横島がうめく。
「そ、そうね。ごめんなさい」
ようやく落ち着いた愛子がそう言って手を離した。横島ははあーっと盛大なため息をついて、
「気にすんな。でもまたルシオラに怒られるな……」
「ルシオラって?」
「俺の彼女だよ、今度紹介する。……そろそろ冷えてきたな、戻ろうぜ」
と横島は愛子の返事も待たずに校舎の中に戻っていく。肩が落ちているところを見ると、ルシオラという娘の怒りがよほど怖いらしい。
(それなら私なんて放っておけば良かったのに――)
それでも放っておけないのが、『とっても素敵』なのだろう。愛子は心に頷いて、横島の後を追いかけた。
おまけ
「ヨコシマーっ、おまえというヒトは! いったい何人サーヴァ○ト増やせば気が済むの!?」
「そ、そんなつもりじゃなかったんだって。寂しそうだったから慰めてやっただけで」
そのやさしさが罪なのだ、とルシオラは思ったが口には出せなかった。だってそれが無ければ自分も助けてもらえなかったし、こうして結ばれる事もなかったのだから……。
かわりに、
「とにかく今日は特訓よ! たっぷり反省してもらうからね!!」
「だから何を反省するんじゃー!!」
「お黙りなさい! さあかわさないと痛いわよ、夫婦剣二刀流・回天蛍舞六連ーーー!」
ルシオラの剣がびゅんびゅんと横島の体をかすめた。
「だーーっ、危ねえ!」
顔をひきつらせて逃げる横島をルシオラが追い掛け回す。バイオレンス風味ただよう光景だったが、でも2人ともどこか楽しそうで――。
だからきっと、これも恋人同士の語らいの一環。
で、あるらしい。
――――つづく。
前回タイガーが模範演技要員に含まれなかったのは、お札を起爆させる事はできても遠くに投げて命中させられるほど器用ではなかろう、という筆者の独断と偏見によるものです(爆)。
新しい注意事項『椎名作品のキャラが他作品の技を使いまくるような場合』ってこれの他にあったっけ(汗)。
さすがに型月その他が主体になってるとは思えませんが、管理人様に指示されれば移転します。
ではレス返しを。
○ジェミナスさん
>いや横島原作でもモテるでしょ?
この辺り判断が難しいです○(_ _○)
今回参考にした7・11・13巻の辺りでは、少なくとも表面的には愛子以外に横島に好意を持ってそうな女子はいなかったですし。
○naoさん
>つーか、修羅場確定ですかい、すでに
修羅場というよりは、文字通り横島君による周囲への衝撃ですねー。
>ルシの服
作れるのはあの戦闘服だけなんですよー。原作でも本人が消えるときは一緒に消えてましたし。
あの服で文化祭の中をうろついたら目立ち過ぎます(^^;
>何故か薬物を操る割烹着の悪魔しか思い浮かばない(ヲイ
騒ぎの規模が倍になりましたねぇ、おそらく(汗)。
○京さん
>横島がガッつかなくなると、なんかビミョーな違和感がw
ちょっとおとなしかったですかね。
女性陣総出演に近い状況なので、1人1人に暴発されると収拾がつかな……もとい、横島君もルシの指導で更生してきたんですよ、きっと(ぉ
>文殊ネタ
うーん、ホントに文珠の変身技って反則極まりないですね(^^;
光速拳なんて強いにも程があるというか。
○ASさん
>魔鈴
一応キャ○ター候補ではありますが今回は無しでしたm(_ _)m
>後でサー○ァントに闇討ちされるのは確定でも参加します
後でというか、その場で殺られますが(激怖)。
>美智恵
まあルシも彼女を恨んでいるわけではないので、邪魔はすれども仕返しはせず、ってところでしょうか。
GSルシオラ?にダークやヘイトは無いですし。
>エウ京だったら黒化するような状況にさせない気がしたんですけど…やっぱ無理ですか?
エウはともかく京香はむしろ見せつけてますから(爆)。
○わーくんさん
>横島君本人が否定しても、他人から見たらこりゃ間違いなくハーレム状態ですな!
横島君的には恋人とハーレムメンバーは別のようです(ぉ
>雪之丞&弓かおり、タイガー&一文字魔理の二組って文化祭に来てるんですか?
来てません(断言)。
そもそもカップル自体成立してませんし。
ところで原作のサバイバル合コン編って雪之丞と弓が同じくらいの強さに描かれてるように見えるんですが実際どうなんでしょう??
>美神さん、楽屋(?)でヒャクメやタイガーと一緒に涙流してそうだね
エミやワルQよりはマシだと思ってるかも知れません<マテ
>こういう光景みたらしっとマスクに変身しなきゃねぇ
今年度の文化祭は激しく失敗に終わりそうですねぇ(怖)。
やっぱり横島君のせいになるんでしょうか。
○踊る人さん
はじめまして、宜しくお願いします。
>対アシュ戦が控えていることを考えると、ある意味、現状を正しく突いた意見ですな
横島君がモテるほど人類側は強くなりますから、むしろ方向が正反対かと(ぇ
○なまけものさん
>女子が不安そうなのは好意的に見るなら横島に気があるからですよね
1割くらいはいる……んでしょうか??
>新撰組か貴様らは
けっこう大きい組織のようです。
>愛子
こんなんでいいのかどうか疑問ですが(^^;
>横島セカンドインパクトって…ファーストは?
恋闘編第29話です。今回もエウの策によって終結しました。
>基本設定が既に型月ネタですから「+型月ネタ」は毎回付けるのかな?
そうですね、付けたり外したりというのも何なのでずっと付ける事にしました。
○蒼き月の夜さん
気に入ってもらえたようで何よりです。
横島君がいきなりモテっぷりを見せつけた場で何事もなく終わる、というのは物理的に有り得ません(ぉ
>《超》《驚》《男》
確かに敵も驚く……のかな??
○流星さん
>まあとりあえず横島・・・死ぬなよ
むしろ守ってもらってますv
>何か副作用でも見つかったんですかねぇ
いえ、単に戦略的な理由です(以下ネタバレにつき削除)。
>一喝したら間違いなく、学校中の窓ガラスが割れますね
次の日の新聞が楽しみですw
○ゆんさん
>すいません、最初のルシ横のシーンで軽くバーサークしてました
最近の横島君はモテすぎでいけません(ぇ
>愛子
やっちゃいました。小鳩はそのうちいい事もある……のかな?<マテ
○通りすがりのヘタレさん
>しかしシロタマに対してはやはり妹的扱いだ
かたくなにロリを否定しておりますw
>≪偽≫≪経≫≪典≫
おお、あれっスか。でもあれなら《恋》《人》の方が<マテ
>≪投≫≪影≫
むしろ反則すぎて使えないというか(^^;
○D,さん
>愛子
こじつけで正式クラスにしてしまいました(^^;
○遊鬼さん
>ルシオラたちとのエピソードには必要な物だったとは思いますが
確かにそうなんですよねぇ。
横島もおキヌも美智恵が同じ手は使わないと信じてたようですし(爆)。
>タマモ
今回は1歩及びませんでしたorz
○夜雲さん
>でもこれって核ミサイルも近くに寄っただけでエネルギーにされて吸い取られるんじゃ…?
そんな設定があったんですか……。
しかしどんな生物なんだ怪獣王(^^;
>いや逆にお小遣いや状況を最大限使ってでも抜け駆けしようとする方がいますよwかなりたくさんw
級友たちは事実を直視できていなかったのですww
>インパクト
ひどい話でした(ぉぃ
○彗星帝国さん&nackさん
はい、ルシベスパピとメフィストで4人です。
○ROMさん
>神装術
今の横ルシだと使うべき状況があまり無いですからねぇ……。
○ケルベロスさん
>さりげなく来ている小鳩ちゃんを無視ですかい!
うーん、横島が無視したわけじゃなくて小鳩が出遅れたんですよ。
○みょーさん
細かいところまで読んでいただけてうれしいです。
>《三》《只》《眼》とか、《无》で不老不死になったりとか
文珠の効果が切れたら元に戻ってしまうので無理ですm(_ _)m
○HEY2さん
>読んでた本が「民明書房刊」だったりしたら
ひどく偏った歴史観になりそうでこわいです(汗)。
>なのに脳内には『初号機暴走』のあのテーマが流れて来たのは何故なんでしょう?
黒絹ちゃんの呪いですか??(怖)
というか理解してくれた人がいてよかったです。
これで遠慮なく逆天号VSホタルゲリオンが書けます(ヨタ話)。
実は原作そんなに詳しくないのですが<マテ
○てとなみさん
>クロト様、ベリーグッジョプ( ^_^)b
やはー、どーいたしましてです。
>横島、諦めろ。幸せな君には修羅場を受ける義務がある(ぉ
ハーレム否定派だけなら修羅場になったところなんですが、横島君も運のいいやつです。
>個人的には《姫》《君》がデフォ技(使うかは別として)として認識されていることに、にやり
世界観的に、やはり横島君の切り札はアルクかなー、と。
>ファーストインパクト
やー、わざわざ読み直していただいたとはすいませんです。
○通りすがりさん
わざわざありがとうございます。
>効果:右手に触れたあらゆる異能の力を自動的にキャンセルする
直接触れなきゃいけないとなると条件厳しそうですね。
栄光の手と引き換えですし。
ではまた。