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▽レス始

15禁注意

「もし、あの時・・・・・・9(GS)」

柿の種 (2006-01-18 06:57/2006-01-18 17:33)
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*15禁とありますがたいしたことは無いと思います。
*この話前回の話の裏に当たり、その内容を補完するものでもあります。まずはその8の方にある話を読んでからの方が内容が良く理解できるものと思います。

<もし、美衣さんと一緒に暮らす事になっていたら・裏>


「うう、美神さんを本気で怒らせてもうた。もう、事務所には帰れん・・・・」

 美衣さんとケイ君を守る為に初めて美神さんに立ちふさがった横島君。億単位の報酬を不意にした上に、髪まで切り落としてくれてはいくらなんでも怖くて帰れません。

「すいません横島さん、私達の所為で・・・・・」

 2日間何とか逃げ切った後、横島君と合流した美衣さんが申し訳なさそうに頭をさげます。それを見てさっきまで落ち込んでいた横島君、慌てて立ち上がって空元気を見せます。

「な、何を言うんですか、美衣さん!! 気にしないでくださいって。俺の方は大丈夫ですから!!」

 しかし、空元気は空元気、直ぐに又、消沈してしまいます。それを見て心配そうな顔をするケイ君。

「にいちゃん・・・・」

「あの横島さん、これからどうするんですか?」

 その落ち込んだ様子にケイ君も心配します。そして美衣さんが尋ねました。尋ねられた方の横島君考えます。

「うーん、これからねえ。美神さんの怒りがおさまるまでは事務所は愚か街にも戻れんなあ」

 街に戻れば美神さんはその驚異的な霊感を持って絶対に自分の動きを察知する、そう考えた横島君は街に帰ることを躊躇います。すると美衣さんとケイ君、横島君を家に誘います。

「でしたら、しばらくのあいだは家で一緒に暮らしませんか? ケイも喜びますし」

「うん、兄ちゃんも一緒に暮らそうよ」

 こうして、とりあえず、ほとぼりが覚めるまでという事で横島君、美衣さん達と一緒に暮らす事になりました。


「美衣さん、怪我の具合はよくなりました?」

「ええっ、すいません、お世話になっちゃって」

「そんな、気にしないでください。お世話になってんのはこっちっすから」

 一緒に暮らし始めて数日、横島君は家の仕事や美衣さんの看病を積極的に行ってきていました。そして、美衣さんの方はというと、実は既に怪我は大分よくなっているのですが、今まで人に頼る事のできなかった生活をしてきた事もあって、横島君の優しさ(無理をしようとすると横島君が叱ったりもする)についつい甘えてしまっているのでした。

「兄ちゃん、遊ぼー」

「おー、じゃあ、今日はかくれんぼでもするか?」

 横島君が美衣さんの包帯を変え終わった所でちょうどタイミングよくケイ君が家の中に入ってきます。横島君、それに笑顔で答え彼と一緒に家の外へとでます。

「ボク鬼ごっこの方がいいや」

「ははは、そいつは勘弁してくれや」

 ケイ君のリクエストに冷や汗をたらす横島君。それは以前一度鬼ごっこをした時、子供とはいえ猫又で身体能力の高いケイを鬼であった横島君は一度も捕まえられず、森中を追い掛け回す事になってしまうと言う事があったからでした。

「ふふふ」

 そして、そんな二人のやりとりを楽しそうに見つめる美衣さん。そんな彼等の生活が続き、それから更に数日の時が流れました。


「もう、すっかりいいみたいですね」

「え、ええ・・・・・」

 包帯を外し傷を確かめる横島君と美衣さん。もう、傷痕もほとんどなく、怪我はすっかり治っていました。にも関わらず美衣さんの表情は晴れません。それは、彼女がある事を恐れていたからでした。

「これなら、もう俺が居なくても大丈夫っすね」

 何気なく言った横島君の言葉に美衣さんがビクッっと震えます。彼と離れたくない、それが彼女の想いでした。何故ならこの数日横島君の優しさに触れている内にいつしか彼女は横島君の事を好きになってしまっていたからです。

「もしかしたら美神さんの怒りもそろそろ治まって・・・・いや、きっと不問にしてもらえないだろうけど、半殺し位で勘弁して・・・・・・」

(横島さんには横島さんの生活がある・・・・)

 顔を青くしながらのぶつぶつと言う横島君の呟きを聞きながら、彼女はそう自分に言い聞かせようとします。彼女は大人でしたから、そのまま行けば自分の気持ちを抑えられたかもしれません。けれど、そこで横島君が立ち上がりました。それを見た瞬間、彼女の想いが爆発してしまったのです。

「行かないでください!!」

「へっ?」

 別に横島君は今すぐにここをでていこうとかそう考えただけではなく、ちょっと立ち上がっただけでした。そんな行き成りに居なくなったりする訳がありません。冷静に考えればそれは彼女にもわかる事でしたが、その時は反射的に叫んでしまったのです。

「あの、どうかしたんすか?」

「あ、いえ、その・・・・・・」

 急に呼び止められた横島の方は怪訝そうな顔をします。美衣さんの方は自分の勘違い的な行動に気付き焦りますが、一度ついた勢いもあって、そのまま自分の本心を明かしてしまいました。

「このままここに居てケイの父親になっていただけませんか?」

「はっ?ケイの親父って・・・・・」

「そして・・・・・・私の・・・・・・夫になっていただけないでしょうか?」

「夫?」

 言われた意味が瞬間、理解できずポカーンとした顔をする横島君。それを見て美衣さんは自分は何て事を言ってしまったのだと後悔します。

(人間の横島さんが、妖怪の私の夫にだなんて、私は何て事を・・・・・)

 けれど、別に横島君の方はそんな事を気にしていた訳ではありません。ただ、いままでモテた事がなかっただけに(正確には気付いてなかっただけですが)行き成り女性からプロポーズされるという状況に頭がついて頭の方がついていっていないだけなのでした。

(えーと、ケイの父親で、美衣さんの夫。つまり、それは美衣さんと結婚するって事で・・・・)

「ぬぅわんですとおおおおおおおおおお」

 そしてようやく理解が追いついた横島君、思わず大声をあげます。その反応を見て美衣さんますます落ち込みます。

「そうですよね。妖怪の、しかも私のような叔母さんが横島さんの妻になろうなどと・・・ずうずうしいにも程が・・・・」

「いえいえ、そんな事はありません!!」

「えっ?」

「あっ、いや、その、けど結婚となると・・・・・」

 反射的に否定の意を示した後、美衣さんの反応に困る横島君。彼にとって見れば妖怪であるかどうかなど美人であるかどうかに比べれば二の次ですし、年齢だって美衣さん十分射程範囲内です。とはいえ、流石に結婚となると彼も悩みました。どうしたものかと考えます。

「どうしたの、兄ちゃん!?」

 すると、先程の横島君の大声に驚いたケイ君が部屋に入ってきます。そこで、横島君、まだ完全には混乱から覚めていなかったのか、思わず馬鹿正直に話してしまいました。

「いや、美衣さんが俺に結婚してケイの父親になってくれないかって」

「ほんと!! じゃあ、兄ちゃんずっとここにいるの!?」

 その言葉にケイ君目を輝かせます。それを見て、横島君、己の失態を悟りました。純粋な子供の期待の視線ほど裏切りづらいものはそうはありません。これで、横島君完全に断るタイミングを逃してしまいました。結局、その場は答えを保留し、待ってもらう事にします。そして、その日の夜でした。


「横島さん・・・・・」

「んっ?」

 夜中に自分を呼ぶ声がして、横島君目を覚まします。そして、目を開けるとそこには美衣さんの姿がありました。

「み、美衣さん、なじょしてここに!?」

 動揺して言葉遣いのおかしくなる横島君。彼の寝る部屋と美衣さんとケイ君が寝る部屋は別です。何故彼女がここにいるのか? その疑問を挟む前に彼女が口を開きました。

「昼間は失礼しました、あんな事を言ってしまって・・・・」

「あっ、いや」

「あの話は忘れてください。ケイには私から言い聞かせておきますから」

「あっ、そうっすか」

 美衣さんの言葉に少し残念に思いながらもほっとする横島君。しかし、この後、彼女から爆弾発言が飛び出します。

「その代わり・・・っと、言ってはなんなのですが、私に一夜の思い出をいただけないでしょうか?」

「はっ? 一夜の思い出?」

 昼間のプロポーズ同様、あまりに彼のいままでの人生から遠い言葉に瞬間的にはその言葉の示す意味が理解できませんした。そんな横島君に、美衣さんが懇切丁寧に事情説明をします。

「その・・・抱いていただけないかと言う事です実は、私、そろそろ発情期の時期が近くて、体が疼いてしょうがないんです。勿論それだけではなく、横島さんに、愛した男性に愛を注いでいただけたらとも思ってるのですが・・・・・」

プツ

 その誘惑に横島君の中で何かが切れました。そして、代りに一体の獣が降臨したのでした。


 それから、数ヶ月、横島君は今だ美衣さんの家に住み続けていました。何故なら、“一夜の思い出”になる筈だったその夜、美衣さんのお腹には新たな命が宿ったからです。こうなってしまっては立ち去れる訳もなく、横島君は責任を取って美衣さんと結婚しました。
 この事に関し、横島君が覚悟を決めて彼のお母さんに報告した所、強烈な説教は喰らいましたが意外にも許しがでました。ただし高校だけは卒業すること、ケイ君や生まれてくる子供がどこに言っても暮らしていけるよう人間社会の常識を教える事を条件とし、彼は美衣さんの家から比較的近くにある街の高校に編入。バイトをしてそのお金で子供向けの教養素材や食べ物を買ったりして家族を養う生活を始めました。

「ほれ、ケイ、美衣さん、おみやげだ」

「わーい、にいちゃ・・・違った、父ちゃん、ありがとう」

「忠夫さん、ありがとうございます」

 幸せな生活。けれど、彼には一つだけ気がかりな事がありました。

(美神さん達、いまごろどうしてるかなあ?)

 自分の今の状況について、せめて一言伝えたいと思いつつも彼は踏み切れずにいました。既に1月以上も音沙汰せず、ほとぼりが覚めるどころか逆に期間を置きすぎて会いに行き辛いようになっていました。おまけに子供ができた等という事を伝えたらあの美神さんですからどうされるかわかりません。それは、母親の百合子さんに伝えた時以上の勇気がいりました。

(もうちょっと後にしよう)


 横島君が美神さん達に会うのを先延ばしをしている内にやがて更に時が流れます。ケイ君や美衣さんは横島君と一緒に時々は街にでるようになり、最初は変な目で見られる事もありましたが、間に入った横島君の場を和ます才能等もあって少しずつ受け入れられるようになっていきました。そして、彼等の周囲がいい方向に進んでいった頃、アシュタロスによる騒動が起きます。

「ケイ、もし、俺が死んだらお前が母ちゃんを守るんだぞ・・・・・」

「父ちゃん!! ボクも戦う!!」

「美衣、ケイとお腹の子を頼むな」

「忠夫さん・・・・・・・・・」

 コスモプロセッサによって蘇った悪霊や古い魔物から家族や知り合った人達を守る為に横島君は戦いに身を投じました。


「嘘・・・・・だろ?」

 戦いの後、横島君は生き残りました。けれど、重傷を負い、病院に入院する事になった彼はその病室のテレビで美神さん達の死を知りました。TVは彼女等を英雄として称えています。けれど、そんな事は彼の耳には入っていませんでした。

「美神さんが死んだ・・・・」

 それは彼には信じられない事でした。彼の記憶の中にある彼女はどんな状況でも生きのびるそんなイメージだったからです。そして、隊員した後、事務所を訪れた彼はそこでおキヌちゃんもまたいなくなった事を聞かされます。彼は愕然とさせられました。


 その後の彼は幸せな人生を送ります。子供のケイ君と、彼の弟と妹として生まれた忠君とミエちゃんは元気に育ち、3人ともGSとなって妖怪と人間との架け橋になりました。けれど、彼の心には美神さんとおキヌちゃんに対する後悔がありました。


 重ねて言いますが彼は幸せな人生を送りました。彼の奥さんの美衣さんも、子供のケイ君も新しく生まれた双子も幸せでした。後悔はあくまで彼の心の隅に残っていたにすぎないのです。それでも“もし、自分が側を離れなければ彼女達は失われずにすんだかもしれない”そんな想いがずっと残っていたのは事実でした。そして、その想いが来世での縁となります。


 300年の時が流れました。そこにはバンダナを巻いた少年と袴姿の少女、亜麻色の髪の女性があります。前世で遣り残した事を適える為に、今、彼等の新しい物語が始まります。けれど、それはまた、別のお話。


(後書き)
コミックス読み返してみたらケイの一人称ってSSでよく見られる「おいら」ではなく「ボク」なんですね。


前回感想を返していない方への分の返信です

>バタフライ仮面さんへ

>「横島君が事務所を外れたズレを意識しすぎた」と言ってる割には、その影響を軽く考え過ぎです。

一応、私の考えでは何とかなるのではないかと思ったのですが、その辺の描写がなくて飛ばしすぎて説得力が無くなってしまったようです。テーマに対しあまり先の展開まで書こうとしてしまったのがそもそもの失敗でした。その辺の反省を生かして今回の補完編は時間の範囲を集約して書いてみたのですが(前回の補完をするという意味で終盤は少し早足の展開で描写しましたが)どうだったでしょうか?


>大気さんへ

>あなたは「物書きの卵」に引っ掛けてHNを作られたのではなかったのでしょうか?
それは私の事ではないですね。
>この一連の作品で、一発ネタに収まらないものもいくらかあるはずです。
おキヌシリーズは別としてこのシリーズは最初から一発ネタの読み切りを意識して書いています。ただ、前回は無闇やたらに書く範囲を広げてしまったのが間違いの元でした。今回はその辺の教訓を生かしてみたつもりです。

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