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「もし、あの時・・・・・・10(GS)」

柿の種 (2006-01-28 21:13)
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<もし、おキヌの横島殺害が成功していたら―――――後日談4>

「あれ、横島さん、今日は訓練しないんですか?」

「あ、うん」

 妙神山の修業を終えた横島君。いくつかの技を習得し、戻ってきてからもしばらくは自主訓練をしていたのですが、どうやら飽きてしまったようです。

「やっぱ、何か目標とか無いとこー、燃えなくてさあ」

 横島君は一度はまるとトコトンな性格でありましたが、求道者のようにただ“強くなる”というような曖昧な目標を目指せる性格ではありませんでした。その為、訓練を始めた最初の頃、目に見えた成長があった頃はそれに面白さも感じていたのですが、それが過ぎると段々と興味を無くしていってしまったのです。

「横島さん、才能あるのに勿体ないな〜」

 そんなやる気の無い横島君を見ておキヌちゃんが呟きます。そこでおキヌちゃん、横島君にやる気をださせる為にある考えを思いつきます。

「じゃあ、横島さん、こういうのはどうですか?」

「んっ?」

「これから私が毎月、横島さんに宿題をだすんです」

「宿題〜?」

 その言葉に嫌そうな顔をする横島君。しかし、おキヌちゃんの策はこれからでした。

「はい。それで、その宿題をくりあーできたら、その・・・・恥ずかしくて今までできなかった横島さんのりくえすとに答えるってのは・・・どうでしょうか?」

「・・・・・・・・・・」

 沈黙する横島君、その様子におキヌちゃんは言うんじゃなかったと一瞬後悔します。しかし、それは彼女の早合点でした。

「・・・・本当に?」

「はい?」

「本当にリクエスト聞いてくれるの?」

「え、はい・・・・・」

「○○○や△△△も?」

「えーと、よくわからないんですけど、横島さんがしたいっていうのなら・・・・・」

 今、横島君が言った単語が今まで横島君がやって欲しいと言った事よりも数段マニアックな要求である事も知らず、半ば勢いに押され頷いてしまうおキヌちゃん。彼女、現代日本の風俗と横島君の煩悩を侮っていたようです。

「よっしゃああああああ!!!! やったるでぇぇぇぇぇ!!!!」

「きゃあああああああ」

 俄然やる気になった横島君と自分の発言にちょっぴり後悔したおキヌちゃん。この後の横島君の成長は・・・まっ、言うまでもないでしょう。


 さて、まあ、こんな調子で楽しく?暮らしていた横島君とおキヌちゃんですが、そこにある日、訪問客が現れます。その相手を見て横島君驚きました。

「お、親父!? お袋!?」

「えっ、横島さんのお母さんですか!?」

「やっと会えたね・・・・。この親不孝もんが!!」

 横島君の姿を見て叫ぶ百合子さん。実は、横島君の死については事故として処理されていました。幽霊(おキヌちゃんの事ですよ)に殺された訳ではなく、仕事中、落石が彼の頭部にあたって死んだ事になっていたのです。これは横島君も納得済みの事で、事実をそのままにした場合、おキヌちゃんが悪霊として除霊されてしまうと美神さんに説得(脅迫?)された為でした。こうして自らの責任問題をどうにかしたかった美神さんと、人(神)生のパートナーを失いたくなかった横島君の利害が一致し、横島君は単なる事故死として処理されたのでした。

「しかし、お前が神様になったとはなあ。前回来た時はそれを知らずに花添えてそのまま帰っちまったよ」

「あっ、あの花、親父達だったのか!?」

 妙神山から帰ってきた時、横島君が死んだ所に花が添えてある事がありました。それはどうやら横島君の両親がしたことだったようです。

「あれ、けど、なんで・・・・・」

 今まで知らなかったのなら何故また来たのか疑問を感じます。それについて横島君尋ねました。

「ああ、美神さん、お前のバイト先の上司だった人からそう連絡もらったんだよ。それにしてもあの人、美人だな。大方、お前がバイト先としてあそこを選んだのもそれが狙いだろ?」

「うっ」

 大樹さんの言葉に図星をつかれ動揺する横島君。ちなみに、大樹さん達は横島君のお葬式の時に直接、美神さんに会っていました。では、なぜ、その時に横島君が神様になった事を聞いていないかというと、別に美神さんがついうっかりしていたとかではなく、事故で死んだ筈の横島君がいきなり神様になったという話では不自然だからです。そしてほとぼりが覚めた頃、成仏したと思っていた横島君が実は自縛霊になっており、その時出会ったおキヌちゃんから神様の代替わりを受けたというようにして話しの辻褄を合わせていたのでした。

「まったく、馬鹿な子だねえ・・・・。それで、死んじまうなんて。けど、まっ、こうして2度目の命を拾ったんだ。反省して、少しはマシになりなよ。死んでも治らない馬鹿じゃあ、本当に救いようが無いからね」

 息子の死んだ理由に呆れ、毒舌を吐きながらも、再会できた事に百合子さんはとても嬉しそうでした。

「それで、あんたが忠夫の彼女かい?」

「あっ、はい、おキヌといいます」

 横島君と軽く雑談した百合子さんはおキヌちゃんに目をやります。百合子さん、彼女の事も美神さんから聞いていました。そして、品定めでもするように彼女に目をやります。

「あ、あの〜、何か?」

 その視線にプレッシャーを感じながら尋ねるおキヌちゃん。百合子さんは視線を止め言いました。

「いえ、忠夫をよろしくお願いしますね」

 そう笑顔でいいます。しかし、その笑顔は怖い笑顔というか、視線に敵意がこもっているというか。端から見ているだけの横島君と大樹さん思わず後ずさりをしました。

「も、もしかして、これが嫁と姑の諍いという奴か!?」

「そ、そう見たいだな」

 どうやら百合子さん、まだまだ子供だと思っていた横島君を嫁?に取られて嫉妬していらっしゃるご様子。嫌味の一つも漏れます。

「そういえば、神様ってのは子供もつくれるんだってねえ。あっ、けど、相手が幽霊とかじゃ無理かねえ」

「あっ、それは・・・・・・」

 百合子さんの言葉にショボンとするおキヌちゃん。その言葉には流石に横島君黙っていられなくなりました。

「ちょっと、お袋それは!!」

「何だい。私はただ、世間話をしていただけだよ?」

 しかし、百合子さんの笑顔の視線で見抜かれ、体が硬直してしまいます。けれど、怯みながらも彼は止まりましたよ。

「せ、世間話って、明らかに嫌味だろ。おキヌちゃんを虐めるなよ!!」

 その横島君の態度に百合子さん驚きます。そして、少し寂しそうな笑顔を見せます。

「好きな娘の為にふんばるなんてあんたも成長したんだねえ」

 そして、それから彼女はおキヌちゃんの方を見ると深く頭をさげて言いました。

「嫌なこと言ってごめんなさいね。それから、改めてお願いします。忠夫をよろしくお願いします」

 それは、今度こそ心からの言葉でした。それが通じたのかおキヌちゃんも慌てて彼女に駆け寄ります。

「い、いえ、気にしないでください。本当の事ですし。それに元はと言えば私が・・・・・・・」

「お、おキヌちゃん!!」

 つい口を滑らせ、自分が横島君を殺した事を言ってしまいそうになるおキヌちゃん。それに気付いた横島君が慌てて彼女の口を塞ぎます。

「んっ、忠夫、どうかしたのかい?」

「い、いや、なんでもないって」

 それを見て訝しげな顔をする百合子さんと大樹さん。それを笑って誤魔化しながら、横島君はおキヌちゃんに耳打ちしました。

「せっかく話がまとまったのにそれはまずいって。俺はもう気にしてないんだから、黙っておくんだ」

「わ、わかりました。でも、本当にいいんでしょうか・・・」

「いいんだって!!」

 おキヌちゃん、少し良心を咎めながらも頷きます。そして、横島君が手を離すと彼女は百合子さんの方を向くともじもじしながら言いました。

「あの・・・・・・、お義母さんって呼んでもいいですか?」

「あんな酷い事言ったのにそう呼んでくれるのかい?」

「はい・・・、私、昔の事あまり覚えてなくてお母さんの事とか知らないんです。もしかしたら、最初からいなかったのかもしれませんけど。だから、ちょっと、憧れとかあって・・・・・」

「そうかい。なら、私でよければいくらでもそう呼んでおくれ。まったく、私もこんないい娘にねえ」

 罪悪感を顔にだしながらおキヌちゃんに近寄ると、彼女の髪をなでる百合子さん。なでられているおキヌちゃんの方も嬉しそうです。

「私の事も父と呼んでいいぞ」

 そして、今度はそう言って大樹さんがそう言っておキヌちゃんを抱きしめようとします。当然、それは横島君の右フックと百合子さんの左フックによって妨害されました。

「おキヌちゃんに何しようとするんじゃ、この糞親父!!」

「息子の恋人に手をだそうとするんじゃないよ!! この宿六」

「ち、違うぞ。私は養父として純粋に!!」

弁解しますが、当然聞き入られてはもらえません。覚えた霊力をフルに行使する横島君と、素で何故か同じ位強い百合子さんの二人にぼこられる大樹さん。まあ、自業自得でしょう。

「だ、大丈夫ですか!?」

 大樹さんが折檻から解放された後、慌てて駆け寄るおキヌちゃん。美神さんの事務所で働いていない彼女にはまだ、こういう事態に対する耐性がなかったようです。

「心配しないでも。この程度直ぐ、復活するさ」

 けれど、百合子さんはにべもありません。大樹さんはかなりの大怪我に見えますが、まあ横島君のお父さんなのだから大丈夫でしょう。

「それじゃあ、今日はこれで帰る事にするよ」

「えっ、もう、帰るのか? もう少し、ゆっくりしていけば・・・・・」

「実は、今回は慌ててきたから宿も取ってないし、仕事の方も放ってきちまったんだよ。それを片付けてから、また来るから。それに、新婚の二人を邪魔するような野暮な真似はしたくないしね」

「し、新婚」

 百合子さんの言葉に顔を赤くするおキヌちゃん。それを見て微笑ましいものでもみるような百合子さん。そのまま、彼女は大樹さんを引きずって帰りました。


 そして、その後の事ですが、死津喪比女の復活の際、おキヌちゃんは彼女の体の事を知り、その体を一時的に使って、二人は二児をもうけたそうです。その二人は両親は勿論、百合子さんと大樹さんにも大いに可愛がられ、健やかに育ったとか。めでたし、めでたし。


(後書き)
百合子さんがちょっと嫌味すぎたかもしれません。けど、私の中ではちょっとこういうイメージがあるんですよね。割と陰険な手段を得意とするというか、なんというか。
それで、ネタも尽きた事ですし、「もしこの時、シリーズ」は今回で終わりの予定です。いつかまたアイディアが思いついたら再開するかもしれませんが。ここまで応援してくださった皆様、ありがとうございました。

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