インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「霊光波動拳継承者『横島』(改訂版)21話(GS+幽遊白書+いろいろ)」

柿の種 (2006-01-16 22:34/2006-01-16 23:15)
BACK< >NEXT

「先生!? 西条さん!?」

 美智恵についで倒れていく皆の姿に美神が声をあげる。そして、そこに更におキヌの悲鳴が響き渡った。

「横島さん!? 美神さん!! 横島さんが・・・・・」

「横島君!?」

 その悲鳴に美神は横島の方を見る。見ると横島もまた倒れていた。まさか彼までもが・・・・と慌てて駆け寄り頭を抱き上げる美神。動悸や脈拍を確認すると、意識はないもののそれほど大きな乱れは見られなかった。

「これは・・・・・ただ寝ているだけだな。大技の連発で消耗しすぎてしまっただけだろう」

 倒れた横島に対し、いつの間にか佐藤が近づいてきた佐藤が彼を見て判断を下す。それを聞いてとりあえずはほっとする美神達。しかし、美智恵等、他の者達は医務室に運ばれそして診察が行なわれた。


「感染した呪いは強力かつ複雑なもので、感染のもととなる霊体がなければワクチンの製作は不可能です」

「文珠や小僧の技を使っても恐らく解呪は不可能じゃろう。しかし、望みが無い訳ではない。呪毒を感染させた妖蜂はおそらくはあのベスパとかいう魔族の嬢ちゃんの眷属じゃろう。そして、前回捉えたルシオラとかいう嬢ちゃんは同時期に創られたというだけあって、恐らくは基本は同じ霊気構造でできとる。呪毒の方には改良が加えられ取るからそれ、そのままという訳にはいかんが、そこからワクチンを作る事もわしならば不可能ではない。じゃが、問題は時間じゃ。ワクチンが完成するまで感染した者達の命が持つかといえば・・・・まっ、五分五分じゃろうな」

 倒れた美智恵達を診察したオカルトGメンの職員がその結果を伝え、それに更にカオスが言葉を続けた。それを聞いて表情を暗くする美神。アシュタロス程の相手がこちらをおびき出す為に、仕掛けてきた手段である。解呪が難しいのは予測できていた事だったが、やはりその事実を聞かされるのは辛いものがあった。

「それで、ママや先生、西条さんはどの位もつの?」

「生命力や霊力にもよって個人差もあるが・・・・・まあ、10日から20日というところじゃろうな」

「タマモちゃんの場合はどうなるんですか?」

 美神が尋ね、ついでおキヌが問いかける。妖怪であるタマモは他と比べて長く持つのか、それとも逆なのか。その問いに対し返ってきた答えは意外なものだった。

「ああ、あの妖狐の嬢ちゃんは大丈夫じゃ。もう、治っとる」

「えっ!? ちょ、ちょっと待ってよ。どうしてあの子だけ?」

 その答えに驚き疑問を挟む美神。それに対しカオスが説明をした

「あの、嬢ちゃんが金毛白面九尾の生まれ変わりじゃと言う事はお主も聞いておるじゃろう。そこを利用して佐藤の奴が薬を作ったんじゃ。そういう代物じゃから残念ながら他のものには効果がないがの。しかし、あやつの道具作りの腕はなかなかたいしたものじゃわい。わしがもう少し若ければ助手にしたいところじゃった」

 佐藤を評価するカオス。その後、話しがずれていた事に気付いて、真面目な顔になって言った。

「まあ、なんにせよ。お主の取る道は二つじゃな。南極に乗り込んでワクチンを手に入れるか、それともわし等に任せてここで篭城を続けるか」

「・・・・・・・」

 命題を突きつけられて押し黙る美神。美智恵達を助ける為になんとかしたい気持ちはある、しかし、勝ち目がほとんどないのも事実なのだ。前回の戦いでワルキューレとジークが負傷し直ぐには動けない。GSとオカルトGメンのメンバーの半数は呪毒に感染してしまい、現在動けるのは、横島、美神、おキヌ、雪之丞、ピート、佐藤、カオス、マリア、タマモ、そして時間制限付で数人の神族。魔神であるアシュタロスと直接戦うにはあまりに戦力不足だった。

「まあ、少なくとも数日の猶予はある。直ぐに答えを出す必要もなかろう。どのみちあの小僧が目覚めるまでは動けんじゃろうしな」

 悩み美神にカオスがそう助言する。横島がこちらにとって最強の切り札である事は、もはや誰もが認める事実である。横島が居ても勝算は低いが、横島抜きでは勝ち目は0でしかない。その言葉に頷き、彼女はその場をあとにした。


「私に何か用?」

「命の恩人に対して随分だな」

 ぶっきらぼうに言うタマモに対し、その態度に佐藤が少しムッとしたように答える。

「そうね。助けてもらった事は礼を言うわ」

「ふう、まあいい。それよりもだ。美神令子が南極に行く事を選んだとして横島は確実についていくだろうが、お前はどうする?」

「勿論ついていくわよ」

 相変わらずのタマモの態度に諦めたように溜息をついた佐藤が本題を切り出すと、タマモはきっぱりと答えた。その答えを聞いて佐藤はポケットから液体の入った瓶を取り出す。

「これはお前の呪毒を解除した時に使った薬だ。俺は他の者達の治療があるから多分ついていけない。代りにこれをお前に渡しておく。使うかどうかはおまえ自身で決めてくれ」

 そう言って差し出された瓶に対し、タマモは一瞬躊躇うような仕草を見せた後それを受け取って答えた。

「一応もらっておくわ」

「そうか。なら、ついでにこいつをあのピートとかいうバンパイアハーフの奴に渡しておいてくれないか。今のままだとあいつだけ足手纏いになるだろうからな。使い方と効能はこのメモに書いてある」

 タマモが受け取るとついで佐藤は瓶をもう一つだすと、メモを添えてタマモに渡す。それには、タマモに渡したものとは別の色をした液体が入っていた。

「わかった。渡して置く。これで、貸し借りなしね」

「おい、命を救った借りが随分と安いな」

「もともと、それが、あなたの仕事でしょ?」

 呆れた表情の佐藤にタマモがしれっと答える。その答えに対し、佐藤が反論しようとして途中で考え始めた。

「別に俺は医者じゃあ・・・・。いや、霊光波動拳の使い道って、それが本来の役目だったか・・・・?」

 そのまま思考する佐藤を放っておいて立ち去るタマモ。その視線の先は最初に渡された瓶の中の液体にあった。


「横島さんて、本当に変わらないんだから」

 戦いの後、気を失った横島の側に付きながら、その寝顔を見ながらおキヌが笑って言う。横島は大口を開け、そこからヨダレを垂らした状態で寝ていた。そのだらしいない寝顔を見れば、今や彼が人界最強の戦士だなどと誰も思わないであろう。

「昔から馬鹿ばっかりやって・・・・・・・それで、無茶ばかりするんだから・・・・・・・」

 今度は少し咎めるような口調で言いながら回復が早まるようヒーリングをかける。
 初めて会った時から、横島はずっと変わらない。大切なものの為ならどんな無茶でもし―――まあ、その大切なものというのが自分の欲望だったりする事も多い訳だが―――そして、いつも明るく辛さを感じさせない。そんな彼がおキヌは好きだった。

「私、まだまだ横島さんに頼ってばかりでした。今度からはもっと頑張ります。だから、横島さんもあまり無茶しないでくださいね」

 ヒーリングを当てる箇所を胸からうつし頭を撫でる。今は仲間の多くが倒れ、大変な状態だ。だからこそ、彼女には横島が何か無茶をしそうで心配になり、そして何だかんだで横島に頼ってしまっていた自分を少し恥ずかしく思った。

「横島さん、好きですよ」

 最後に彼女はそう言ってくちづけた。唇を離した後、気恥ずかしくなったおキヌはそのまま横島の顔を直視していられなくなり一旦部屋をでる。そして、それと入れ違いに美神が部屋に入るのだった。

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

e[NECir Yahoo yV LINEf[^[z500~`I
z[y[W NWbgJ[h COiq@COsI COze