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「横島と妖刀第三話 後編(GS)」

N.W. (2006-01-15 17:14/2006-01-17 06:24)
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 何か良い匂いがする。
 後頭部が暖かくて、やわらかいものに包まれている感じがする。
 これが天国ってやつなのか?
 俺の人生、振り返ればいいもんじゃなかったけど、天国に来れたんだ……。
「黙って聞いてりゃ人のこと悪徳高利貸しみたいにっ…!!勝手なこと言ってるんじゃないわよ!!」
 美神さんも天国来れたのか……奇跡だな。
 俺はゆっくりと目を開ける。
 そこに広がったのはお花畑でも、綺麗な天使の姉ちゃんでもなく、俺の顔をじ〜っと覗き込んでいる殺姫だった。
 しかも、頭に猫か犬みたいな耳がついたカチューシャをして、黒を基調としたフリルたっぷりの服(ゴスロリっていうのか?)を着ている。
 ……お前、どうした?
「美神、主が気が付いたぞ」
 俺はゆっくり体を起こす。
 どうやら、俺は殺姫に膝枕をされていたようだ。それにしても、殺姫っていい匂いがするんだな……。
 ……ハッ!これじゃ俺は変態じゃないか!!イカンイカン!!俺は匂いフェチじゃないぞ!!!
 俺は頭を振って、今のことを忘れようと努力する。
 そして、俺は改めて周りを確認する。
 周りはコンクリートに囲まれ、近くを水が流れている。臭いからして下水か。
「俺たち……生きてるんスか?」
「当たり前でしょ?あんたと心中なんてもったいないこと、私がするわけないでしょ!そんなことより手伝ってよ」
 美神さんが、シートのようなものをたたみながらいう。
「ここって、下水ですか?」
「そうよ。こんな事もあろうかと、緊急脱出用のシューターをビルの管理人に内緒で作っておいたのよ!」
 美神さんが笑顔で解説してくれた。
 あんたって何でもする人ね……。
「それにしても良く間に合いましたねぇ」
「運良く、余が天界の結界破りを持っておったからな」
 ……今更だが、何でもありだな……。
「何か不満でもあるの!?別にあんただけ置いてきても良かったのよ!」
 美神さんが怒気をはらみながら、俺を睨む。
「い、いや、私はこうやって生きているだけで、シヤワセであります!!」
「主、美神、はようここから離れようではないか。ここは臭くて仕方が無い」
 殺姫が鼻をつまみながら話しかけてくる。
 確かに臭いな。
「そうね。バッテリーの用意はできた?」
 美神さんが、近くのボートの中にいた二人に話しかける。
『い、い、いいと思うんだな』
 その声に俺ははっとする。
「お前ら!イームにヤーム!!」
 俺は咄嗟に右手を殺姫に突き出す。
「落ち着け主」
 そういって、殺姫が俺の脛を蹴る。
「いってぇぇ!!何しやがる!!!」
 この野郎……思いっきり蹴りやがったな!!!
「横島君、今はじゃれている場合じゃないわ。とにかく、これに乗って!こいつで小竜姫の所に合流するわ!」
 そういって、美神さんは俺に乗船を促す。
「…これもやっぱこんな事もあろうかと用意しといたんスか?」
「まーね。ギャラ払えない客の持ち物を差し押さえたりとかはたまにあるから」
 平然と言ってのけますかこの人は……。
「のぅ主、先ほど美神は自分のことを悪徳高利貸しではないといっていたのだが……。これを悪徳高利貸しといわずに、何を悪徳高利貸しという?」
 俺は殺姫の質問に答えることができませんでした……。


 下水にモーターボートのエンジン音が響き渡る。
 長い間ほったらかしにしていたらしいが、どうやら問題なく動くようだ。
「おお!この時代の舟は早いのう!!」
 殺姫が嬉しそうに笑う。
 何か、これだけ見てると子供って感じで可愛いなぁ……。しかも、けもの耳とゴスロリが似合っているし……。
「あ、主!何をする!!」
 気が付くと俺は殺姫を撫でていた。
「わ、悪い!」
「横島君……見た目九歳児に手を出したら犯罪よ……?」
 美神さんが冷たい目で僕を見ます……。
「俺はロリコンじゃないんやぁぁぁぁ!!!」
「ま、あんたがロリコンなのは置いておいて」
 いや、俺はロリコンじゃありませんて……。(多分)
「それにしても、さっきの魔族、只者じゃなかったわ!何とかこれで裏をかければいいんだけど」
 美神さんがいつになく真面目な表情になる。
「ところで、何でこいつらも一緒なんスか!?こいつのせいで俺たち死ぬところだったんスよ!!」
 俺はイームとヤームを睨みつける。
「……ついでに言えばあんたと殺姫もね!」
 美神さんが俺と殺姫を睨む。
「しかたなかったんやぁぁぁぁっ!!」
 俺はひたすら反省していますが、殺姫さんはしれっとした表情でモーターボートを楽しんでいるご様子……。
 お前も一枚かんでいるんだから、ちったぁすまなさそうな表情しろよ!あとでしばかれるのは俺なんだぞ!!
『殿下……!!申し訳ありませんでした!!』
 ヤームが天龍に土下座をする。
『俺…俺…利用されているだけとも知らず、大それた事を……!!』
 ヤームが涙をボロボロこぼして、天龍に許しを請う。
「もうよい!余とこの女の機転があったとはいえ、お前たちが連れ出してくれねば、間に合わなかったであろう。それより、なぜこうなったか話せ!」
 へぇ、天龍って意外と心が広いな。
『俺たちゃその昔竜族の下級官吏でやした。それが職務怠慢を竜神王様にとがめられ、地上へ追放されたんでやす』
「それで父上と余を恨んでおったのか」
『へい!そこへあの者が現われやして、恨みを晴らし役人に戻れるチャンスだと……』
「何?それじゃさっきの奴、竜神の偉いさんだったの!?」
『…正体はわかりやせんが、本人はそのように言っておりやした。何せあれほどの霊格、まんざら嘘でもなかろうと信用したんでやす』
「んな手に引っかかるなんてバカじゃないの?竜神なんてやめて、いかがわしい新興宗教に洗脳してもらえば?」
 美神さんがあきれながらそう言い放つ。
 まぁ言ってる事はもっともなんだけど、いかがわしい新興宗教に洗脳とは言いすぎですよ?
「それにしても、こんっなに支出の激しい仕事は初めてだわ!!後片付けを考えただけでも頭が痛い……!!」
 美神さんの額に青筋が浮かび、凄まじい殺気が放たれる。
 ……この事件の犯人ただじゃすまないな……。
「よし、話はわかった!お前たち余の家来となれ!!」
『え!?なんともったいない!!』
「お前らも根は魔物ではないのであろう。家来になれば、今までのこと父上にとりなしてやる!」
『ありがたきしあわせぇぇぇぇ!!!』
 天龍の言葉に、二人は大泣きして感謝している。
「どーじゃ横島!!わずか一日で家臣がこんなに増えるとは、余の徳は凄いであろう!!我ながら名君であろう!!」
 天龍が扇子を広げて大声で笑う。
 騙されたとはいえ、自分の命を狙った連中を家臣にするとは本当に心が広いな。
「ああ、本当だな。このままいけば、いい王様になれんじゃねぇか?」
「やはりそう思うか!?」
 天龍が嬉しそうに笑う。
「主、今後ろで何か光ったぞ」
 殺姫が指を指している方を見ると、無数の蛇というかうなぎの化け物みたいのが迫ってくる。
「なんじゃありゃぁ!!」
 俺の叫びに、美神さんが振り返る。
「な、何なの、あのビッグイーターの大群は!?」
『あ…ありゃあ下等な魔竜の一種ですぜ!!俺たちが助かったのがバレたんだ!!』
「チッ!飛ばすわよ!!スーパーターボブーストチャージャーON!!!!」
 美神さんが、運転席の脇にあったレバーを引っ張ると、モーターボートの速度が一気にあがる。
「わーーーーーーっ!!」
「おお!凄まじく速くなったな!!楽しいぞ!!!」
 俺が絶叫する隣で、殺姫が凄く楽しそうな表情をしている。
 お前の神経どうなっとるんじゃい!!
 そのとき、一匹のビッグイーターが天龍に襲い掛かる。
『ふん!!』
 ヤームの雷撃によりそのビッグイーターは焼き払われる。
「このまま振り切るわよ!!」
「美神さん前っ!!出口に鉄格子が!!」
「大丈夫よ!ちゃんとリモコンで開閉できるように細工してあるから」
 美神さんがリモコンのボタンを押すが、鉄格子は開かない。
 美神さんが何度も押す。でも全然反応がない。
「美神、開かぬぞ?」
 殺姫が美神さんを見上げる。
 もしかして……
「ねぇ、横島君。電池持ってない?単三の」
「んなの持ってるわけ無いでしょう!!!!」
「しょうがないわね!横島君、運転変わって!!」
 そういうと美神さんは後ろから何かを取り出す。
 それは筒状のもので、グリップと引き金が付いていて、おまけにスコープのようなものまで付いています。
 ひょっとしてバズーカって奴ですか?
「おお!バズーカという奴か!!」
 殺姫がとても嬉しそうです。
「いっくわよぉ!!」
 美神さんが引き金を引くと、腹に響くような音と共に、バズーカの砲弾が発射され、鉄格子を吹き飛ばす。
「備えあれば憂いなし!私にぬかりはなくてよ!!」
「電池さえあれば、そんなものは必要ないんッスよ!!」
 もっと穏便に行きませんか?美神さん。
「どうやらこのスピードには追いつけないようね。一気に東京湾に抜けるわよ!!」
「主!美神!!安心するのは早いぞ!!上だ!!」
 殺姫の言葉に全員が上を見上げる。
 そこには火角結界をぶっ放してくれた謎の人物がいた。
 奴の右手が輝き、霊波砲が放たれる。
「殺姫!あれ喰ねぇのか!!」
「無理じゃ!ワシが喰えるのは、敵の肉体からのみ!!霊波砲などの攻撃を喰らうことはできん!!世の中そう都合よくはいかん!!!」
 てことは……
「チェックメイト……ね」
 美神さんが苦虫を噛み潰したような顔をする。
「こうなったら……回避運動開始!!取り舵いっぱぁぁぁぁいっ!!」
 美神さんが操舵輪を勢い良くまわす。
 だが、霊波砲から逃れることができない。
「うわぁっ!!」
 もうダメだ!!
 俺は恐怖から両腕で顔を覆う。
 だが、いつまでたっても霊波砲の衝撃がこない。
 恐る恐る目を開くと、そこには頭の両脇に角が生え、茶色のジャケットにミニスカートをはいた一人のお姉ちゃんが剣を構え、空中に立っていた
「仏道を乱し、殿下に仇なす者はこの小竜姫が許しません!!私が来た以上、もはや往くことも退くことも叶わぬと心得よ!!」
「小竜姫…!!」
 天龍が嬉しそうに叫ぶ。
 小、小竜姫様!!これで何とかなりそうだ!!
『美神さ〜ん!!はい、これお土産です!!』
 そういっておキヌちゃんが飛んできて、たこ焼きと書かれた箱を美神さんに手渡す。
「ま、まーおいしそう……」
 助かったのはいいんですが、あんたらどこにいってたんや!!
「ほう、久しぶりに小竜姫を見たが、服装以外は変わっておらんようだのう。どこまでも真っ直ぐな性格も、貧相な胸も」
 殺姫が勝ち誇った笑みを浮かべる。
 今のお前に、胸のことは言われたくないと思うぞ?
「音に聞こえた神剣の使い手、小竜姫か……。お前と戦えるとは嬉しいぞ!!」
「私を知っているところをみると、お前も竜族かっ!?何者です!!名乗りなさい!!」
 小竜姫様が問いかけると、謎の人物はまとっていたローブを投げつける。
 小竜姫様がローブを切り払うと、そこから二又の槍が現れるが、ギリギリ回避する。
「やるねエリートさん!!だが、そんなお上品な剣じゃあたしは倒せないよっ!!」
 そこには二又の槍を構え、きわどい服装のお姉ちゃんがいた。
 しかもええチチしとる!!
『女っ!?』
 ヤームが驚きの表情をする。
 どうやら、女だということを予測していなかったようだ。
「思ったとおり、ええチチした女だったか!!」
 俺の女レーダーを甘く見るなよ!
 だが、ちと年増っぽいな。
「心配いらん!小竜姫が勝つに決まっておる!!」
「うむ!!なんぼええチチしとっても、年増は年増!若く明るい小竜姫様のミニスカにはかなうまい!!」
「何の勝ち負けを解説しとるか!!」
「美神、主はこういう人間じゃ……」
 なぁんか皆が呆れた表情で俺を見ているな……。
「お前は…!!竜族危険人物黒便覧はの5番!!全国指名手配中、女蜴叉(メドーサ)!!」
 小竜姫様、詳しすぎる解説ありがとうございます。
「ほう!あたしを知っておいでかい!!」
 メドーサがそういうと同時に、奴の髪の毛が無数のビッグイーターに変わり、俺たちのほうへ向かって来る。
「美神さん!!殿下を連れてここから離れて!!こいつは竜族の中でも、最悪の魔物です!!」
「わかったわ!そのおばはんは任せるわよ!!」
「誰がおばはんだぁぁぁ!!!」
 美神さんの一言が、メドーサを怒らせたようで、ビッグイーターたちがものすごい勢いで向かってきます……。
「美神さん!余計なこといわんといてくださいよっ!!」
「私はあいつのせいで散財してんのよ!!あんなのまだ言い足りないわっ!もう一言二言いってやりたいわ!!」
 そんなことのために、俺たちの命を危険にさらせないでください。お願いですから。
「ヒスもち蛇女〜っ!バストがたれて戦いの邪魔なんじゃないのっ!!」
「そんなこといいに戻ってこないでください!!」
「殺す!!」
 だから、んなことのために命はらんでください!!!
「ちょっと気が晴れたけど、追いつかれそうね」
 ちらりと、美神さんが俺を見る。
 はいはい、やりますよ。やりゃーいいんでしょ!!
「殺姫!」
「心得た!」
 殺姫を装備し、襲い掛かるビッグイーターを次々に切り捨てる。
『お前やるな!』
『す、凄いんだな!!』
 ヤームとイームが感心しながら俺を見る。
「当たり前だ……!こちとら命がかかっとるんじゃい!!殺姫、霊力どんぐらいたまった!?」
『こんな雑魚どもいくら斬っても、大してたまらんぞ!!』
「皆伏せて!!」
 美神さんの叫びが聞こえ、前方を振り向くと一匹のビッグイーターが突っ込んでくる。
「わぁぁぁぁっ!!」
 俺たちは何とか伏せるが、天龍が棒立ちとなっている。
 まずいっ!
 そのとき、イームが天龍を庇う。
「てりゃぁ!!」
 俺はそのビッグイーターを斬り捨てる。
『よ、よかった…で、殿下、ぶ、無事なんだな…』
「余は大丈夫じゃ!それよりお前……!!」
 全員がイームの傷に注目する。
『傷口から体が石に!!』
 おキヌちゃんが驚きの声を上げる。
『イ…イーム!!』
『あ、兄貴、お、俺……!』
『だ、大丈夫だ!心配すんな!こんなの天界にいきゃ、すぐ治る!!』
『て…天界…お、俺たちまた天界に戻れるんだな……』
『おうともよ!!何しろ俺たちゃ殿下の家臣なんだぜ!!大出世したんだからよ……!!』
『や、やっぱり、あ、兄貴はすげぇや……』
 イームが完全な石になる。
『イームゥゥゥッ!!』
 ヤームがイームに抱きついておお泣きする。
「し、心配いらん!必ずや、余が元に戻してやるからな……たぶん。だから決して、一連の成り行きを余のせいだと思うなよ」
 天龍が冷や汗を流しなら、そういう。
 おい、いい王様になれねぇぞそんなんじゃ!!
「わ、私が悪口言いに戻ったからでもないからね……。それに私は注意したんだから……」
 いや、美神さんもその片棒担いでますよ?
『こ、この人たちって……』
 おキヌちゃんが軽蔑の視線を二人に向ける。
 あんただけだよ、まともなの。
『この野郎!!』
 ヤームがモーターボートから飛び上がり、角に雷撃をチャージする。
「あ、バカ!!」
『主、あの者の霊力では勝てぬぞ!!』
『よくもイームをぉぉぉ!!』
 小竜姫様と戦っていたメドーサ目掛けて、ヤームの雷撃が放たれる。
 メドーサはその雷撃を難なくかわし、左の人差し指に霊力をためる。
「クズが…!死ねっ!!」
 メドーサの人差し指から霊波砲が放たれる。
 目の前で、人が死ぬなんて……胸クソわりぃじゃねぇか!!
「殺姫!どうにかなんねぇか!!」
『霊力がほとんど無い状態ではどうしようもない!!』
 霊波砲がヤームに当たる直前、小竜姫様がそこへ割り込む。
『小竜姫様!!』
「くっくっく…おバカさんだね…!!そんな虫けらのために、勝負を捨てるとはね」
 メドーサが槍を構える。
「とどめだ!!」
「小竜姫様!!」
 メドーサの槍が小竜姫様を襲うかという瞬間、俺の脇から美神さんが飛び出し、精霊石を投げつける。
 それは、メドーサの目の前で炸裂し、奴を怯ませた。
「横島君、運転変わって!!急いで戻りなさい!!バカたれ!!!」
 ヤームが小竜姫様を抱えて、ボートに転がる。
「こいつでも喰らってなさい!!」
 美神さんがありったけの精霊石を投げつける。
「く、クソッ!!」
 メドーサがいったん距離をとる。
「小竜姫!!小竜姫ーーーー!!」
 天龍が駆け寄って声をかける。
「で、殿下……申し訳ありません……」
 小竜姫が天龍に苦しみながら、謝る。
「横島君!エンジン全開!!最大戦速!!」
「了解!エンジン全開、最大戦速!!」
 美神さんの指示で、俺はスロットルを全開にする。
「逃がすかぁ!!」
 メドーサも速度を上げる。
『お…俺のせいじゃないよな!?』
「「「『お前が悪い』」」」
 ヤームの問いに俺、殺姫、美神さん、天龍が声をそろえて答える。しかも怒気をはらんで。
「し、仕方ありません!!み、美神さん!!」
 そういうと、小竜姫様は自分が装備していたヘアバンドと篭手、剣を手渡す。
「こうなれば……あなたが頼りです。お願いします!これを装備すれば、私と同等くらいの力が出るはずです」
 小竜姫様の真剣な表情に、美神さんは頷き、手渡されたものを装備する。
「いいもんもらっちゃったぁ!!」
 美神さんは空に舞い上がりながらそんなことをいっていました。
「それはあげたんじゃなくて、貸したんですからね!あとで返してくださいね!!」
 小竜姫様、多分返ってこないと思いますよ?
「さぁこい!年増蛇女っ!!私が地獄に逆落としにしてやる!!」
 美神さんが剣を構えてメドーサと対峙する。
 美神さん、頼みましたよ!!
「横島さん、岸へ寄せて!!」
「はいっ!」
 俺は小竜姫様の言う通りに岸へ寄せる。
「いくら美神さんが強くなったとはいえ、人間とメドーサでは勝負は見えています。行かないと……。皆さんは殿下を連れて妙神山へ……」
 小竜姫様がゆっくりと立ち上がる。
『でも、その傷じゃ……!!』
 おキヌちゃんが心配そうに声をかける。
「大丈夫!!」
 小竜姫様が勢い良く立ち上がるが、すぐに顔色が悪くなる。
『無理じゃな。その傷では死ぬな』
 篭手の状態だった殺姫が俺から分離して、人型になる。
「久しいな、小竜姫」
 殺姫が軽く右手を上げて挨拶する。
「あなたは……殺姫っ!あなた、封印されていたはずでは!?」
「そこにいる主がワシの封印を解いてくれたのじゃ」
 そういって、殺姫が俺を見る。
「横島さんが……?」
 小竜姫様が俺を驚きの表情で見つめ、そして
「そうですか……」
 と小さい声でつぶやく。
「なぁ、殺姫。お前と小竜姫様って一体……?」
 俺の問いに、殺姫が遠い目をして微笑み
「一人の男を取り合った仲……かのう?」
 とつぶやく。
 小竜姫様もどこか寂しそうな表情だ。
 あの小竜姫様が、恋をしていた……?それも殺姫と取り合っていたって……。
 俺は小竜姫様の意外な一面を見た気がした。
「ときに、小隆起?小乳姫?貧乳姫?どれが良い?」
 殺姫の発言に、小竜姫様の額に青筋が浮かぶ。
 殺姫さん、いくらあなたと小竜姫様が既知の間柄であっても、人様の欠点をあまり責めるべきではありませんよ?
 あ、俺は小竜姫様のチチが大きかろうが小さかろうが気にしませんから。でも、できればメドーサくらいがいいんですがね。
「私は小・竜・姫です!横島さん、人の胸を見て何を考えているんですか!?」
 ああ!小竜姫様から殺気のこもった視線が!!
「場を和ます小粋なジョークじゃ、許せ。それでじゃ、小竜姫、お主の霊力を少し喰わせよ」
 そういうと、殺姫は真剣な表情で小竜姫様を見る。
「……私ではダメだと?」
「怪我を負っている上に、お前の攻撃は馬鹿正直じゃ。主にはワシ直々に生き残る剣術を教えてある。お前が昔いった、卑怯な戦い方をのぉ。あの蛇神にはお誂え向きじゃろ?」
 小竜姫様が殺姫をにらむ。
「殺姫!そこまでいわんでもいいだろ!第一、俺じゃあいつには勝てねぇよ……」
 そうだよ。あのメドーサから放たれるプレッシャーは、ナイトメアの比じゃねぇよ。
「主、誰も勝とうとは思ってはおらん。あいつを退かせれば良いだけじゃ。お主はワシの言うとおりにすればよい」
「できるのか?」
「小竜姫が霊力を喰わせてくれればな…。早く決断せよ。そろそろ美神も限界ぞ?」
 少しの間をおいて、
「……お願いします」
 小竜姫様が頭を下げた。
「任せよ。小竜姫、人差し指を出せ」
 殺姫の言葉に、小竜姫様が人差し指を出す。
 殺姫が右の人差し指の爪を鋭く変化させ、小竜姫の人差し指を傷つける。傷口からは赤い血が滴り落ちる。
 そして、殺姫はその人差し指に舌を絡める。
 次第にそれは指を吸う行為に発展していき、ぴちゃぴちゃという音が響く。
 ゴスロリ少女が、年上のお姉さんの指を吸う……。実にエロい光景だ……。
 おキヌちゃんなんか顔が真っ赤だし、小竜姫様なんて……何かうっとりとしてるぞ!!
 少しして、殺姫が指から口を放す。
 小竜姫様の人差し指と、殺姫の間にかかる銀の橋が実にエロい……。
 何か二人の間に百合が咲き乱れてないか……?
「ふむ良いかな」
 そう殺姫が呟いた瞬間、体が輝き、殺姫アダルトバージョンに変化する。
 しかも、ゴスロリの衣装だったのが、Gパンにタンクトップ、丈が短く半そでのジャケット、手には指先が出ているレザーグラブ、頭を覆うバンダナという格好になっている。
 ……あんた服買う必要あるか?
「主、行くぞ」
「生きて帰ってこれるんだろうな?」
「任せよ」
 そういうと、殺姫は俺尾の右腕に体を絡め、鎧となる。
『良いか主、ワシは飛行のために霊力を制御し続ける。お主は、蛇神を徹底的に挑発せよ。攻撃は徹底的にかわし、こちらから決して打ってでようと思うな。攻撃は、向こうに隙があるときにのみ行え。いいな!!』
「おう!」
 俺がそう返事すると、俺の体が浮き上がり、メドーサの元へ向かう。


「美神さんっ!」
 剣を弾かれた美神さんの前に俺が立つ。
「横島君!あんたじゃ無理よ!!逃げなさい!!」
 美神さんが失った剣の代わりに神通棍を取り出し構える。
「大丈夫ッスよ。負けませんから!!」
「威勢のいいガキだねぇ!」
 メドーサが霊波砲を撃ってくる。
『主、かわせ!!』
「避けるのと、逃げるのは大得意だ!!」
 俺はメドーサの霊波砲をかわすと、ポケットにこんな事もあろうかと忍ばせておいた、癇癪玉を取り出し投げつける。
「そんなの効くかっ!」
 メドーサが癇癪玉を槍でなぎ払おうとするが、槍に接触したことで癇癪玉が盛大に爆発し、もうもうとした煙を巻き上げる。
「美神さん!今です!」
「ナイス横島君!!」
 美神さんが神通棍を振り下ろす。
「舐めるんじゃないよ!!」
 煙の中から、美神さん目掛けて槍が突き出される。
「クッ!」
 美神さんがそれを捌いて距離をとる。
『主!』
「わかってるって……」
 俺は深呼吸をし、意を決して
「おいチチでか蛇女!!」
 と指を指して叫んでみた。
『主……』
「横島君……」
 殺姫と美神さんが頭を抑えている。
 ダメだった?
「チチでか……。どこ見てるんだい!このガキ!!」
 メドーサが槍を構える。
 効いてるっぽいですよ?殺姫さん。
「そんなに大きいと戦うのが大変なんじゃない?いい加減止めて帰ったら?それとも、俺と一緒に一晩ベッドで過ごす?」
 俺は某韓国俳優も真っ青な微笑を湛えてそういう。
「……おちょくってのか……このガキャァ!」
 猛然とメドーサが俺に襲い掛かってくる。
 ……ちょっとやばくない?……
 俺は必死にメドーサの槍を捌く。
 殺姫に稽古つけてもらってて良かったぁ、何とか槍の動きが見える!
「あたしだって好きで大きくなったんじゃねぇ!肩は凝るし、大きくて戦いだと本当に邪魔で困ってるんだ!!それに男どもは厭らしい目で見るし……!!本当に困ってるんだぞ、このガキ!!!小竜姫やあそこの巫女姿の小娘みたいに小さければ、こんなに悩むこともなくてよかったのに!!」
 メドーサさん、大きかったら大きかったで悩みがあるんですね。
 てか、岸のほうから凄まじい殺気を感じるんですが。それも二人……。
 と、そのとき、俺の目にパンプスを構えた美神さんが映る。
 そして……ヒュンヒュンヒュン……パコンッ!!
 俺に攻撃を仕掛けていて、パンプスのことを知らなかったメドーサの後頭部にクリーンヒットする。
「……このクソ女ぁぁぁぁ!!」
 メドーサが後頭部を抑えながら、美神さんのほうを振り返る。
『主、今じゃ霊波砲を撃ち込む!右手を前に出せ!!』
「おうよ!一発頼むぜ!!」
 俺の右手から霊波砲が放たれる。
 メドーサとの距離がほぼゼロ距離であったため、奴はまともに霊波砲を喰らったようだ。
「チッ!」
 メドーサが冷静さを取り戻し、槍と霊波砲を構える。
 もう一度挑発して!!
 俺が次の挑発の言葉を考えていると、メドーサを霊波砲が数発襲う。
 その射線の先にいたのは、角が変わった天龍だった。
「余の家臣に手を出し、しかも手傷を負わせた罪!後悔するが良い!!」
 角が変わっただけじゃなく、何か王の威厳っていうか、高貴な感じが天龍から感じる。
 霊波砲を俺のも含めて、まともに連続して喰らったメドーサはすでにボロボロだ。
「こ、この力……これが竜王家の力…!!チッ!悔しいけど、撤退だね!!」
 そういうとメドーサはきびすを返し、逃げていく。
「待ちなさいよ!!」
 美神さんがもう一方のパンプスを全力で投げつける。
 夜空のかなたで「パコンッ!」という音と、「だッ!」という声が聞こえた。


 翌日、俺たちは小竜姫様と天龍から報酬として千両箱をいくつももらった。
 まぁ、ほとんどは美神さんのものとなったが……。
 結局デジャブーランドにいけなくて、天龍は残念がっていた。
 そこで俺が連れて行くこととなった。
 天龍はデジャブーランドを楽しみにしていたんだし、今度いつ地上に来れるかわからないんだから、思い出を作ってあげたかったのだ。
 ま、金は俺持ちになったが、ナイトメアのときのボーナスもあれば、天龍が直々にくれたわずかばかりの報酬があったから、何とかなった。
 ついでに殺姫、おキヌちゃんは当然のごとく、ヤーム、イームも一緒に来た。ヤームとイームは天龍の家臣でボディーガードも兼任らしい。
 それと、小竜姫様から聞いたけど、殺姫は空間を斬って、自分が行きたいところへ空間をつなげられるので、別に俺に括られてるからって、三メートル以上離れられないことは無いとの事……。
 このことを、殺姫に問い詰めたら
「乙女には話せないこともあるのじゃ。それに……空間斬りを一人でやると疲れるのじゃ」
 とかいってきたので、頭をちょいと小突いてやった。
 そしたら、そのときの殺姫がロリっ娘バージョンだった(メドーサとの戦いで霊力の大半を消費してしまったらしい)ので、保護欲をかきたてられたおキヌちゃんに怒られた……。
 そういえば、事件の夜、殺姫と小竜姫が二人で何かを話していたな……。なんだったんだろ。
 ……ハッ!もしかして、二人で百合な世界に目覚めたのか!!そんなのお兄さんは許しませんよ!!!
 そして妙神山に戻り、天龍が天界に帰るとき、好きなだけの小判をくれるといってくれたが俺は、
「俺は友達として、お前と遊んだだけだ。それなのに、友達から金なんか取れるかよ」
 といって断った。
 ま、美神さんからもったいないことするなってぶん殴られたけど……。
 でも、一緒にバカなことやって、一緒に楽しんで、一緒に戦ったんだから友達だ。それなのに、そんな奴から金なんか取れないよ。
 一瞬後悔したけど……。
 また、遊びに来いよ。天龍。


おまけ
「横島さん、殿下に思い出を作ってくれてありがとうございました」
 そういって小竜姫様が俺に頭を下げる。
「んなこといいってことですよ、小竜姫様。俺も楽しかったし」
 神様に頭下げられるなんて……。何かバチが当たりそうだ……。
「これは私からのお礼です」
 小竜姫様の顔が迫ってくる。
 こ、これはもしや!!
「我、竜神の一族小竜姫の竜気を授けます。そなたの主を守り、主の力となりてその敵を打ち破らんことを……」
 小竜姫様はそういうと、俺のバンダナにキスをする。
 どうせなら唇に!!
「バンダナに神通力を授けました。きっと役に立つでしょう」
 小竜姫様が微笑む。
 その笑顔がもうかわいくてかわいくて、僕は思わず
「小竜姫様!僕と神様と人間の禁断の恋をぉ!!」
 そう叫んで飛び掛ったんですが、美神さんたちにぶちのめされました……。
 気を失う一瞬、殺姫さんが小竜姫様を睨んでいました。
 こうして、天龍暗殺未遂事件は解決したわけですが、このバンダナが後日騒ぎになるわけで……。


あとがき
 天龍編なんとか終わりました……。
 何か長くなってしまった感じが……。
 ついに殺姫と小竜姫様との関係が明らかに!この二人の関係については、番外編で詳しく書いていきたいなとおもっとります。
 それにしても、指定入りそうな感じが……。

それではレス返しを
*ゆんさん
>やばいやばいやばい!!!
ピンチですよ!!!!
つうか小竜姫!とっととこんか〜〜〜い!!
 きました!たこ焼きのお土産つきでw

*沙耶さん
>つるペタになったら『今』の横島じゃあ、駄目なのにoTL
 次第に横島は侵食されていっています。もうしばらくお待ちをw

*meoさん
>ふと思ってしまった
殺姫に冥(この時が一番合いそう)と言う名の妹がいそうだな、と
 もしや○ブリの隣のあの人ですか!? Σ(゜Д゜)

*白銀さん
>お聞きしたい! 裸Yシャツを装備している時……『くつした』を装備していますか!?(斬
 それは読者一人一人の脳内で変換してください。ちなみに筆者の中では、標準装備です。

*kntさん
>殺姫なら火角結界も切れそうだな。霊力を吸収して威力を弱めるとか
 できないことは無いですが、横島君の霊力に殺姫様の性能は左右されるので……。
 強くなれ横島!!

*ヴァイゼさん
>まぁ、兎に角次回はロリーな殺姫が暴れまわると思うんで楽しみにしております。
 殺姫ロリっ娘登場です。暴れまくったと思うんですが……。

*覇邪丸さん
>横島、君が早くロリコンに目覚めるのを期待してるよ。
 あせってはダメです!じわりじわりと攻めていかないと!!

*BDさん
>この貧乳馬鹿め→貴方だって貧乳でしょう→力溜めればボインじゃ→……ブッチ殺ルって展開に?
 危うくなりかけました。

*ryoさん
>新しい能力が出てきました。さてさて横島がこれからどうなることやら、次回楽しみにしています。
 期待に沿えるようがんばっていきたいと思います!

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