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「GS横島 因果消滅再スタート!!〜第六話〜(GS)」

もけ (2006-01-09 03:44/2006-01-09 17:46)
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「ま、負けた・・・・! ピートさんが!?」

「おーやおや。残念ねぇ〜小竜姫」

小竜姫は信じられないといった表情。
胸が空く思いというヤツだ。

「ま、アンタの弟子が仕込んだにしちゃ〜上出来でしょうねぇ〜」

「このっ・・・!」

「ん〜? ここでヤル気なのかしら? 何人死ぬかわかったものじゃないわねぇ〜」

「ぐ、ぎぎいぎぃ〜〜!!?」

「なぁに? その目は!? 悔しいの?ねぇ悔しいの!? 」

ほーっほほほほほ〜〜!!と高笑いしてやる。
会場には受験者のほかに、たくさんの見物人やGS協会の係員もいる。
小竜姫とやり合うなら盾にとって動きを制限できるし、今みたいにからかうのにも丁度いい。
私個人にとってはGS資格試験など意味のないことだ。
最初からGS業界への「枝」の侵入工作などもどうでもいい。

―――――いくら集まったところでクズはクズ。

ゴーストスイーパーが霊能に優れていようとも、所詮は人間ということだ。
人間がどれだけ寄り集まろうとも、出来ることには限りがある。

「しかし――――なんだろうねぇ?」

声に出していたらしい。
小竜姫が怪訝な眼差しを向けてくる。が、構わない。
あの人間。
美神令子の所の坊や―――――ヨコシマ?だったか。

時々妙な動きをしていた。
身のこなし、技の使いどころ・・・・・私でもギクリとするようなタイミングで動き回る。
なにかに似ていた。・・・・・何に?
以前見た時は、本当にただのお荷物のように見えたが・・・・・さて?

「ああ、そうか・・・・・」

小竜姫、今度は無視する。
どうでもいいことだけれど。

あの坊や、ヨコシマの動き。
常に相手の死角へ動きながら、一足飛びに肉薄する潔さ―――――そう、ゴキブリに似ているのだ。

思わず吹き出した。
異様なものを見る表情で固まる小竜姫。
目障りだとイラつきながらも、笑いの発作は治まらなかった。


GS横島 因果消滅再スタート!! 〜第六話〜


GS資格試験会場、医務室―――――


「雪之丞をここに送り込むはずだったのに、とんだことになっちゃったわね〜・・・」

全身キズだらけでベッドの上に寝ているのは、先ほどの試合で雪之丞に敗れたピート。

「ひょっとして、ピートが勝てなかったらキミの計画は失敗なのですか・・・?」

途方に暮れたように呟く美神さんに、頭の薄い眼鏡・・・・唐巣神父が尋ねる。
たぶん、ほかになんも考えてなかったんだろーな、美神さんだし。
ちなみに、勘九郎たちとのいざこざはヒミツな。
失敗しちゃったし、バレたらどつかれそうだ。

「おたくたちが神族魔族絡みの依頼を受けていたってのはわかったけど、まだGS資格も持ってないピートに無茶させるのはやめてほしいワケ!」

唐巣神父と美神さんに食って掛かるエミさん。
おろおろビクビクしてる冥子ちゃん。
それに輪を掛けておろおろビクビクする俺とおキヌちゃん・・・・暴走しませんよーに!

医務室には美神さん、唐巣神父、エミさん、冥子ちゃん、おキヌちゃん、俺―――――横島忠夫と、日本最高レベルのGSとその関係者が集まっている。
ピートと美神さんの脱落という圧倒的な戦力不足に陥り、途中で打ち立てた『雪之丞を倒して自白させる』という目的も無理臭くなってしまった。
小竜姫さまがメドーサを見張ってるため、俺たちだけで対処できそうにないので急遽エミさんと冥子ちゃんも巻き込むこととなったわけだが・・・・
まあ、やろうと思えば何とか出来んこともないんだけどな。出来たら痛くない方向で纏まってほしい。

「・・・・・本当に、弁解の余地もない・・・・・・ピート君には資格試験に専念してもらうつもりだったのですが・・・・・・」

「あのね、私と先生は小竜姫さまに直接依頼されて来てるのよ? 先生の弟子のピートが先生の仕事を手伝うのなんて当然じゃない! 
 しかもピートはGS資格を取るために来日してるんだから、これ以上怪しまれずに依頼を達成できるヤツなんてほかにいないでしょ」

沈痛な面持ちで悔やむ唐巣神父。
けど、美神さんの言うことももっともだ。
唐巣のおっさんがピートのことを大切に考えてるのもわかるけど、今回は裏目に出てるよーな気がするな。

ピートが依頼のことをしっかり把握していれば、もう少し用心して試合に望めただろうし・・・・・

「それなら! おたくの所の横島がやればいいワケっ!
 ピートに魔装術なんて反則モノの禁術使いを相手にさせる必要ないじゃないっ!!」

エミさん・・・・・・?
ボクだって決してあんなん相手にして簡単に生き残れるワケじゃないんスよ?

「それこそ無茶苦茶でしょーがっ! 横島クンがあんなヤツら相手にして生き残れるなら、鉛だって金塊に変わるわよっ!!」

「ほーっ!? じゃあ業突く張りの美神令子はついに錬金術まで成功させよーってのねっ!!
 昨日の第一試合で実際に勝ってるじゃないのさっ!! どうやって仕込んだのか知らないけど無キズであんな化け物と戦えるんだから、ピートに無茶させることないワケっ!!」

「アンタこそ頭茹だってるんじゃないのっ!!? 横島クンよっ! 横島クンっ!! 確かに悪運だけはあるけど、それにしたって限度があるでしょーがっ!
 魔装術なんか相手に生き残れるわけないでしょっ! 第一試合だって相手の自滅だって聞いたわよっ!!」

おう? 美神さん・・・・・何やら誤解があるようなんですが・・・・

『あの〜・・・・でも横島さんが昨日のあいてのひとのこーげきを全部よけたのは本当ですよ・・・・?』

恐る恐るとおキヌちゃん。
アカンて! 今、こっちに水向けられたら危ないって!!

『あいてのひとがまそーじゅつ?とかいうのを使ってたのも本当ですし、試合中に横島さんがケガしたところも見てませんし〜・・・・・』

そういえば、試合中よりも待ち時間のほうが命の危険が多かったよ〜な・・・・・ハッ!?

勝ち誇るエミさんにイライラの募る美神さんっ!?
ああ・・・・・!? なんか嫌な雰囲気になってきた!!
逃れられない暴力の予感っ!!
このあと美神さんが『よ〜こ〜し〜ま〜・・・・』ってな感じで俺に非のない理由でギャクタイを・・・・!!?

「よ〜こ〜し〜ま〜・・・・・・」

「ヒィッ!!?」

ほらキタッ!!?

「なんでそういう大事なことを言わないのよ! アンタはーーーーっ!?」

「言いましたよっ! 白龍GSのヤツが相手だったって言いましたっ!? 美神さんが信用してくれへんかっただけやんかーーーーーっ!!」

「魔装術使えるようなヤツが相手だなんて聞いてないわよっ!! そもそも普段の自分の言動を鑑みてみなさいっ!? 信用できるわけないでしょーがっ!」

「ああっ! ほんとーだっ!? 自分でもさっぱり信用できないっ!!?」

襟首掴まれてガクガク振り回されてます。

く、苦しい・・・・!? し、死んでしまう! け、けーどーみゃくが〜〜・・・・・・

「もう〜〜〜〜! みんなケンカなんてやめてよ〜〜〜〜〜 でないと私・・・わたし〜〜〜〜!!?」


美神さん! 美神さんっ!! 冥子ちゃんが危ない! ちょっと美神さんーーーーーっ!!? ワーオ!?


とりあえず、生き延びたので作戦会議を続行です。

「で、ほんとーにどうするワケ? 白龍会の伊達雪之丞と鎌田勘九郎はもう合格ラインを超えちゃってるワケ」

「難癖つけて不合格っていうのは、さすがにもう無理でしょうね。
 連中がGSとして認められた以上、GS協会としてはまっとうな理由なしには合格は取り消せないでしょうし・・・・」

煤けたエミさんと美神さんがプロとしての理性で取り繕って話を詰める。できればもう少し早くそうしていただきたかった・・・・・

「やっぱり当初の目的通り、白龍GSの連中にメドーサとの繋がりを自白させるしかないでしょうね」

「しかし、横島君の第一試合の相手だった陰念選手は魔物化とダメージでまともに話せない状態だし、白龍GSの残る二人は見たところ、かなりの実力者だ。まともな方法では・・・・・まず無理だろうな」

滅茶苦茶になった医務室の床に、キズだらけのピートと包帯怪人の俺を横たえながら、冷静に指摘する煤だらけの唐巣神父。
うん? なんで俺だけこんなんなのかって?
『味方バリヤー』って言ってわかるか? わかるか。そうか・・・・

「ふひのひょうほほへははほへはほんあいはいんひゃはいへふは?」

「あのねぇ、先生の話聞いてたの? まともな方法では無理なの。つまり、こっちが相手を完全に拘束できるくらいに弱らせないと尋問は無理なのよ? アンタが雪之丞にそこまで出来るなんて誰も思ってないわよ」

「誰もそんな物騒なことは言ってないんだが・・・・・それより、美神君には横島君の言ってることがわかるんだね・・・・・」

包帯でグルグル巻きの俺。
まあ、声出しても、もごもごもごもご・・・・・

「でも、まじめな話、横島に期待するしかなさそうなワケ。白龍GSの試合中に小細工する手もあるけど、バレたら目も当てあられないし・・・」

まあ、結局そういうことだ。
勘九郎の不正をみんなにバラしたところで証拠もない。
闇討ちしようにも人目が多すぎるし、あの二人が相手だと簡単には済まない。もたもたしてるうちに騒ぎになる。
勘九郎を見習って試合中に何かすることも、メドーサが試合会場にいる・・・・・十中八九バレる。

「つまりこの『頼れる男』! GS横島忠夫が白龍GSとメドーサの野望を打ち砕くしかないとゆーことですなっ!!」

包帯の口元をずらして大騒ぎする俺。ケガ? 治ったよ?

「・・・・・・・ま、まあそういうことになるワケ」

「改めて無謀な賭けよねぇ〜・・・」

そうだ! 美神さんもピートも敗れ去った今、雪之丞か勘九郎を倒せるのはこの俺だけ!!
つまり俺がこの依頼の要! そして俺の霊力を手っ取り早く上げるには煩悩!
美神さんもエミさんも冥子ちゃんもプロのGS! ちょっとくらいのえっちなサービスはプロフェッショナルとしては冷静且つ当然の判断!

「美神さんエミさん冥子ちゃーーーーーーんっ!!!」


包帯グルグル巻きからシュポンッ!と音がするほどの勢いで抜け出し踊りかかる俺の行く手には冥子ちゃんを取り巻くように十二神将がわらわらしてて動く饅頭みたいなビカラのでっかくてとげとげした歯の生えた口があって重力に従って飛び込んだ俺を当然のごとく咀嚼するビカラの口の中・・・とってもあったか〜い・・・・・


「大丈夫〜〜〜〜〜横島くん〜〜〜〜〜〜?」

「・・・・・・なにしてんのよ、アンタ・・・・」

「コイツに頼るってホントに博打っぽいワケ・・・・・」

『あ、あの〜そろそろ横島さんを助け出さないと・・・・』

「そ、そのとおりだ美神君! 横島君が足まで飲み込まれて・・・・・・・あ。


ゴックン


第三試合―――――横島忠夫 対 伊達雪之丞


「おくれてすんまへ〜ん・・・・」

危うく先走ってあの世逝きになるところだったぜ・・・・・
食いしん坊だったり、でかい口のあるヤツには要注意だな。
竜化した小竜姫さまとか!

「巌流島の宮本武蔵気取りか? それにしちゃあ、櫂も神通棍も持たないってのは格好つかねえな」

いま俺は第二試合で使っていた神通棍を持って来ていない。
体のどこかに隠しているわけでもないのに気づいた雪之丞が、冗談混じり殺気混じりに話しかけてくる。

「ま〜な・・・おまえ相手に神通棍はちょっと頼りないからな。奥の手と代えて来たのさ」

『試合中の道具持ち込みは一つまで可』だからな。
神通棍のほかに何かを持ち込めば、神通棍は持って入れないってことだ。

「ほう、そいつは楽しみだ・・・・・・はじめてくれ」

待たされ坊主だった雪之丞と審判のおっちゃんだが、審判のおっちゃんがなんか言う前に雪之丞がうながした。

「試合、開始っ!―――――」


試合会場の一角、黒い胴着を破り捨てた雪之丞と横島忠夫。
彼の裏切りに訣別を持って答えた男と、彼の心を奪っていった男―――――

「どっちも負けて欲しくはないものね・・・・・」

勘九郎は、そう切に思いつつも露出した雪之丞の上半身やらジーンズ越しの横島の尻を舐め回すように見つめるのだった。


―――――ゾクリ

「ヒッ!?」

「な、なんだぁっ!?」

なんかゾクッとキタ!
雪之丞も同じらしく、試合中であるというのに自分の両肩を抱いて鳥肌を抑えている。

空調の不備だかなんかだろう・・・・・・・きっと!

「あ、改めて行くぜ!」

バシュッ!っと空気を吹き飛ばす音と共に、雪之丞が魔装術を身に纏う。
さすがに陰念とはモノが違う。
纏うのに掛かる時間は一瞬で、魔装術はほぼ完全に物質化している。


しかし、この頃の雪之丞の魔装術って―――――


「虚弱で母親に甘えていた俺がこんなにカッコよく強く逞しくなれたのは「なんか・・・・・みたいだな」


「っ! なっ! てめっ!? 誰がだとっ!!?」


応援席の小竜姫。
異様な緊張とかつてない危機感を持って、小竜姫は途方に暮れていた。

横島の試合が始まった。相手は白龍GSの伊達雪之丞―――――証拠は揃え切れなかったが、間違いなくメドーサの弟子だ。
悪魔との取引で得られる禁術、魔装術。
雪之丞がアレを身に纏っているだけでも十分すぎるほど怪しい。
なのに自分にはメドーサの企みを証明する手立てがない。それが悔しい。
この場で切り捨ててやりたいが、図々しくも隣に座っている蛇女は、自分が動けば容赦なく会場の人間を盾にしてくるだろう!
我慢に我慢を重ねてはいるが、小竜姫の怒りは鋼の理性で編まれた堪忍袋の緒を引きちぎりそうだ。

が、現在小竜姫が途方に暮れているのは別の理由でだ。
先ほどまでピリピリと空気を焦がしながら牽制しあっていたメドーサが突然、座席で背を丸めて震えだしたのだ。

奇怪である。
敵同士―――小竜姫が手が出せないとはいえども、絶対とは限らない。
倒し切る隙があれば、当然ながら神剣の錆にしてやろうとイライラしながら身構えてもいた。神剣は錆びないが。

目の前のメドーサはどう見ても隙だらけ。
斬って下さいと言わんばかりだ。

それが、逆に怪しい。

斬りたい、でも罠かもしれない・・・・・あぁ、しかし!

「ぐぎぎ、ぎぐ、ぐう・・・・・き、斬り〜・・・・いや・・・・でもっ!」

ぜーはー。ぜーはー。

ぶるぶる震えながら神剣の鯉口を切ったり戻したり切ったり戻したり・・・・音より速く振り上げてから思い直して納刀してみたり。
小竜姫の理性は決壊寸前。

二人の様子を見に唐巣神父が戻ってくるまで、この奇行は続いた。


ちなみにメドーサだが。


「ぷっくっくくく・・・・ゴ、ゴキブ・・・・・と・・・・・ゴキブリ・・・・・・ぐっくくく・・・・!!」


と、横島の茶々入れがツボに入っただけであった。


ごつごつした外殻とか、肘んトコの出っ張りとか・・・・・蟹だよなぁ〜・・・・しばらく食ってないなぁ〜

「誰が蟹だコラ! おい、聞いてんのかテメー!?」


・・・・・ジュルリ


むう!? いかん、いかん! 雪之丞はやはり危険だ。
視覚面でも気を散らすデザイン・・・・・意図的にやってるなら恐ろしいヤツだ!

「お、お〜い? 攻撃するぞ? いいか? 攻撃するからな〜?」

「・・・・・って、おおっ!!?」

いつの間にか空中に移動していた雪之丞。
見上げれば霊波砲で視界が真っ白になっとるがなっ!
言ってる傍から気ぃ散らしちまった。
つま先に二枚重ねの小さい《サイキックソーサー》を作り、《超加速もどき》で降りかかる霊波砲の範囲内から飛び出す。

「はっ! やっぱり大したモンだぜ、てめぇは! 様子見とはいえアレだけの霊波砲を一足で置き去りかっ!!」

「ふははははは!! この横島忠夫、あの程度のことでパニクらない程度には成長しているのだ! いつまでも丁稚だったり低所得平社員だったりは御免だからなっ!!」

とはいえ、肉体・霊力共に今の俺が真正面からのガチンコ勝負で雪之丞に勝てる見込みは少ない。
奥の手もあるにはある――――実はこの後の勘九郎との試合の事を考えて美神さんに用意してもらったものだ。
だから、雪之丞戦では詰めの場面以外では使う気はない。

それでもこの試合中で使っとかないと、勘九郎との試合で意味が無いくなるんだが・・・・・


「うおっと!?」

「っ! これだけ散らしてもかわすのかっ!?」

陰念の時と同じように、結界内を円を描くように逃げ回る。
雪之丞は右手の霊波砲で追い立てながら俺の逃げ道を塞ぐように左手でも霊波砲を被せてくるが、密度も精度も甘くなる片手撃ちなら、体捌きと《超加速もどき》で問題なくかわせる。
もっとも、その度に無理な酷使で体中の筋肉が悲鳴を上げてるわけだが。

ぜんぜん鍛えてないからな!


しかし、だんだん十七歳の体と二十五歳の感覚が馴染んできた。

丁稚と低所得平社員は手に手をとってあの住み慣れた四畳半からの脱出を目指すのだ―――――!

「あんまカッコ良くねぇなぁっ!!」


「うるせー! 蟹だろうとなんだろうと! 勝ったほうが・・・・強いほうがカッコいいんだよーーーーっ!!?」


独り言だったんだが、勘違いした雪之丞は両手を揃えてさらに霊波砲の勢いを増してくる!
つーか、やっぱり蟹っぽいと思ってたんじゃねーか。

だんだん捌き切れなくなってきた。
本当ならもう少し疲れさせてからの方がいいかな〜っとも思うんだが、これ以上ムリすると大怪我しそうだしな。
足を止めて左手に《サイキックソーサー》を作る。
もちろん、全霊力を注ぐなんておっそろしい真似はせんぞ!
受け損なったら即死だからなっ!

「だしやがったな! その板ッ切れと妙な動きにさえ気をつけてれば、てめぇにゃ打つ手なんぞねぇだろうっ!!」

ははははは! バレバレやんけ。
《ソーサー》をノーモーションで勢いつけて投げるには、十七歳の横島忠夫の霊波だと弱すぎてコントロールできないんだよなぁ!

「露悪趣味の吸血鬼ヤローとの試合で俺が消耗してることも見越して凌ぎ切ろうってハラだろうが・・・・俺を甘く見すぎだぜっ! ヘタに近付いてソイツをもらうつもりも無ぇッ!! このまま押し切ってやるぜっ!!」

空中を自在に動ける魔装術に《超加速もどき》で近付くなんてのもダメだわ。死んじゃう。
そうなると打てる手は一つだけ。

《サイキックソーサー》で霊波砲を正確に弾き返して、雪之丞に直撃させる。で、その後に《ソーサー》投擲で追い討ち。
まあ、第一試合で陰念相手にやっちゃってるから、当然のよーに雪之丞はそれを警戒しているわけで・・・


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ・・・・・!!!」


キュバババババババババババババ・・・・・ッ!!


「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァーーー!!」


カカカカカカカカカカカカカァ〜〜ンッ!!


打ち返してる余裕はまったく無し!

それこそ時でも止めなきゃムリ!
正直、逃げ回ってる間に体力も集中力もほとんど使い切った。

しかし! ここで例の『奥の手』が活きてくるのだっ!!

ジーパンの尻ポケットに無理やりねじ込まれた紙片―――――『吸引護符』!


それを右手で開いて『霊波砲に向かって』構える。


「吸引っ!!」

「な、なんだとぉっ!!?」


バシュウウウウウウウウ・・・・!!っと物凄い勢いで霊波砲の束を吸い込む『吸引護符』。
あんまり活躍の場がないのだが、幽霊、精霊、妖怪なんかを吸い込んで捕らえる事を目的として使われる護符だ。
しかし、コレの本来の能力は「霊体に近いものを吸い込む」ことらしい。
先ほど冥子ちゃんが暴走させてた十二神将の一体、丑のバサラが丁度同じような能力を持っているな。

この護符で霊波砲を引き付けてる間に渾身の《サイキックソーサー》で雪之丞を撃退!
勘九郎用に微妙な小技を温存しておけて俺、ヒャホウっ!という二度おいしい作戦だったわけだよ! ほかにも色々あるけどな!

なんで俺がこんなことを思いついたかと言うとだ。
二十五歳の横島忠夫であった頃、出来るとは思わなかったもんで面白半分で小竜姫さまと斉天大聖老師を吸い込んじまってな・・・・・・死ぬほどツライ目に遭わされたんだ・・・・

その時に改めて『吸引護符』の使用方法を熟読してたんで、曖昧に理解してた「使用対象について」が記憶に残ってたわけだ。

とは言え、本来の用途から外れた使い方だからな。
そう長く持つもんじゃない。
『吸引護符』がちゃんと機能しているうちに、左手に思いっきり霊力を注ぎこみ、コソコソと《サイキックソーサー》を五枚重ねで作り出す。

威力は単純に五倍。
現在の俺が作り出せる最高威力だ。

ソイツを『吸引護符』に気をとられている雪之丞目掛けて投げつける――――!


「なっ!? し、しまったっ!!」


ヒュドドドドドッ!


――――閃光、爆音。

吹っ飛ばされて結界の端まで転がる俺。
・・・・・・・・ヤバイ、雪之丞死んじゃったかも・・・・・

「ああああああ〜〜〜っ!? どうしようっ!? 調子に乗ってやりすぎても〜〜たっ!!
 これでは殺人・・・・・・・いや、今の俺は未成年だから少年A! いやっ! それ以前に試合中は全部事故かっ!!?」

もうもうと立ち込める爆煙の向こう、雪之丞がいた辺りには影も形も見えんっ!! 疲れさせるとか関係なかったやんっ! 粉々やんっ!!


ヤバイよ! ちょっと真面目に頑張ったら人殺しになってもーーーーたがなーーーーーっ!!?


大騒ぎする俺。
まさかこんなコトになるとは〜〜〜・・・・・・


ヒュバッ!「おわぁっ!!危ねーーーー!?」

煙を巻き込みながらカッ飛んでいく板っ切れ―――――俺のものじゃないが、《サイキックソーサー》だ。
つーことは、だ。

「ちっ! ハズレか・・・・・」


どっこい生きてた雪之丞。


ああ・・・っ! よかった!
生きていて本当に良かった・・・・・っ!!
一方的とはいえ、こんな後味の悪い死に方を知り合いにさせんでホントーに良かった!!

いきなしヒトゴロシにならんで良かった・・・・・・っ!!


「猿真似みてぇ〜で気に食わねぇが・・・・てめぇを倒すには、もうこれしか「生きとったんやな・・・・・ユッキー!「誰がユッキーだコノヤロウ!」


殺伐とした野郎だ!

霊力切れだろうな。
魔装術を解いて右手に《サイキックソーサー》を構えている。
危うく手違いで殺してしまうところだったが、どうにか計画通りの展開に持ち込めたな。
しかし、さっきので完全に終わらなかったのはチョイ失敗。
アレで終われば・・・・・いや、死なれるのは勘弁だが、大成功だったわけだ。

ここで第二案を実行。
雪之丞は死んどらんまでも、結構な出血だ。
待ってればブッ倒れるだろうが、その前に何らかの行動にでるだろう。
残った《ソーサー》を投げてくるだけなら問題ないが、雪之丞は本気で油断ならん相手だ。
土壇場で何をしてくるかわからんから、出来るならコッチのペースで終わらせたい。
ちゅーことで、雪之丞が立て直す前に止めを刺す。

幸い、煙が結界内を満たしている今なら、勘九郎に手の内を晒さずに済みそうだしな。

「っ!? なんだ! やつが消えたっ!!?」

と、煙にまかれた雪之丞には見えただろう。
実際にはその場にしゃがんだだけ。
残り乏しい霊力で左手にほどほどの霊力を注ぎ込んだ《サイキックソーサー》右手を添えて、背後に隠すように構える。
つま先に《超加速もどき》を作り、爆破。
倒れこむギリギリまで身を屈め、蛇のように雪之丞に肉薄する!

彼我の距離は十メートル足らず。まあ、問題ない。
飛び上がるように身を伸ばしながら、右手を添えたまま、《ソーサー》で雪之丞の《ソーサー》をカチ上げる。

突然現れた俺に雪之丞は反応できない。
一瞬、完全にコントロールを放棄されたヤツの《ソーサー》は、俺の《ソーサー》に半ばまで食い込みながらも、二つ合わさったまま頭上にすっぽ抜ける。

そのまま結界上部へ歪な回転を描きながら激突―――――する前に、俺の右手、未完成の《栄光の手》を発動し《ソーサー》をカチ上げた姿勢をそのまま構えとして、思いっきり振り下ろした!


「死ねぇーーーーーーっ!!」すぱーーーーーーーんっ!!「でっ!?」


べちん、と崩れ落ちる雪之丞―――――うん、やっぱり未完成だわ、コレ。
最後の音なんて、ハリセンとかスリッパなみのしょぼさだった。ヘコむ。

あ、ちなみに掛け声には意味ないぞ。ホント、ホント。

結界上部に激突した二枚の《ソーサー》の爆風が周囲の煙を撒き散らし、結界内の視界が開ける。

みんな何があったのかよくわかってないらしいな。
計画通り!

「ミッション終了。ただの高校生さ」って言ってわかる人、いるか?


―――――負けた!? 雪之丞が!!?


あのヨコシマとかいう坊や・・・・・・・何をした?

酷く、冷たいものがよぎった。

『吸引護符』をあんな風に利用する人間は初めて見た。

それではない―――――

はじめは理解出来なかったが目が慣れるにつれて気づいた異常な突進力の正体、足元で霊気を爆発させる加速法。

そんなことでもない―――――

雨のように降りかかる霊波砲を凌ぎ切る判断力。

それ以上に―――――


坊やと雪之丞、力量差は歴然。
それは例えるなら犬と獅子の戦いのようなもの。結果は犬の無残な死。


そう、それが覆された―――――

絶対的力量差の逆転・・・・あたかも人間と魔族の・・・・・

霊力、体力、その他多くの点で雪之丞が負ける要素は何一つとしてなかった。
雪之丞の油断・・・・・ですらない。
アレが最初から全力で掛かっていったのは、ここからでもよくわかった。

(つまり、あの坊やには実力以上の何かがあるということ・・・?)

最初に美神令子と一緒にいた時はただの足手纏いに見えた。
しかし、認識を改めるべきだろう。
あのヨコシマ―――――横島忠夫とかいう人間は、ひょっとしたら美神令子以上のクセモノかもしれない。

(でも、付け込む隙は多そうだよねぇ・・・)


―――――あれなら手勢に引き込んでから使えるコマに矯正出来るかもしれない。不確定要素は取り込んでしまうほうが楽だ。


スキップしながら応援席の美神令子たちに合流する、アホ面の少年。
あんなのに適当に鍛えたとはいえ弟子が負けるのは面白くないが。


面白くないと言えば―――――隣で後光でも射さんばかりの満面の笑顔で勝ち誇る竜神の小娘も面白くない!


(やりました! 蛇女のこの表情。痛快ですねぇ〜・・・・・!!)

メドーサの怒りがビリビリ伝わってくるのも心地好い事です。ええ。
先ほどまでの屈辱も、このためにあったと思えば許せると言うものです。

それにしても、横島さんは見込み通り・・・・いえ、それ以上に成長していますね・・・・

心眼の助けなど、もともと必要でもなかったようですね。少し残念ですが。
自分の見出した才能が成長する様を見守る師匠―――――憧れます。

(そうですねぇ・・・・試験が終わったら妙神山での修行を勧めてみましょうか)

まだまだ粗い部分も目立ちますから。
でも、逆に言えば伸び代はまだまだありそうということですね!

・・・・・・フフフフフ、鍛え甲斐がありそうです。

おや? 蛇女がこっちを睨み付けてますよ。笑っちゃいますね! この負け蛇がっ!

「ざァんねェんね〜〜〜? 手塩に掛けて育てた手下も案外大したことがなかったみたいでぇ〜〜」

「っ!フン・・・何のことやら・・・っ!」

ピキピキとかいってますよ! なんて愉快なんでしょう!! おもわず踊りだしそうですよ!

「あらあら〜? 私の勘違いだったかしら〜〜?
 そうねぇ〜・・・弟子に魔装術まで仕込んであの程度なんてお笑いですものねぇ〜〜・・・普通の神経じゃあ、お師匠さんもノコノコこんな所まで来ないでしょうねぇ〜〜」

「ぐ、ぐぐ、ぎいいぎ、ぎぎ・・・・・・・!」


ほほほほほほっ! 悔しい!? 悔しいんですねっ!? なんて快感! 横島さん、あなたに百万の感謝をっ!!


我慢しすぎてチョットおかしくなってきた小竜姫さまでした。


「おめでとう・・・・横島忠夫・・・・・結局争う事になってしまったけれど、今はあなたの勝利に心からの祝福を送るわ・・・・」

会場入り口に身を隠すように立ち、ハンカチで目元を可憐な感じで拭いつつも、漢泣きっぽく涙を流すという離れ業を演じる男・・・・・
敗れた友人も心配だが、今はただ、恋してはいけない相手に惹かれる一人の男として、焦がれる彼の勝利を祝うのだった・・・・・


終わる。
むしろ終わりたい。


あとがき
もけでございます。
つづきますよ、終わりません。

みなさん、勘九郎さん・・・・というよりも、オカマに大層興味がおありのご様子?
オカマはアレですよ、次で大活躍しますから。たぶん。

それと、小竜姫さまは弄ってるとどんどんはっちゃけてしまいます。なんでですかね?


はなしのながれ〜

つぎは勘九郎。オカマ。

オカマとのGS試験最後を締めくくる、熱い戦いが横島クンを待っています。
私なら迷わずご遠慮願いたいです。ええ。

メド子と小竜姫さまですが、オカマとともに今後も横島に絡んできます。
動かしやすいんですよ・・・・・この人ら。

そうしないとオカマが全面に登場しまくる話になってしまいそうですしね。御免こうむりたいです。

駄文ですが、待っててくださる方がいたりしたら、幸いです。


レス返し〜

>シヴァやん氏

SS初のオカマフラグ・・・・・なんと不名誉な・・・・・

九能市さんですか〜・・・・使えたら使いたいですねぇ〜えっちいですし。


>しらたま氏

毎回毎回、あたたかいレスありがとうございます。
大変ありがたいです。

ドクターカオスは〜・・・・・どうでしょう?
とりあえず、マリアがいる以上は登場回数は増えるかもしれません。

ピートは美神さん以上にダメですね。振り抜けた人として頑張ってもらいます。


>kyon氏

ありがとうございます。

ピートは大丈夫です。霧化も神聖な力も使えます。
ただ、価値観の根幹が『力こそ正義、正義とは力』になっただけですので。ええ。

それと・・・・
虎は受かりません。そして虎は書き辛いです。


>名称詐称主義氏

オカマも雪之丞も立ち位置はあまり変化しません。
と言うかですね、あまりオカマの好きにさせると修正利きませんので。

少なくとも香港あたりまでは変わりません。その後の予定は未定ですが。


>諫早長十郎氏

小竜姫さまはぁ〜〜・・・・はっちゃけちゃうんですよね、何故か。

書き辛いけど好きです。大好きですっ!


>・・・氏

ピンチの後にチャンス! あるといいですねぇ〜・・・

幸い18禁を書く能力は私にはありません。


>沙耶氏

はっはっは!
「勘九郎さんが出張ったらユカイな話になるかも」なんて考えてごめんなさい。

オカマ八割ホモ二割くらいの勘九郎さんが意味なく大暴れするのも、GS試験までです。
その後はしばらくお休み・・・・・の、ハズデス。


>白銀氏

尻は・・・・・まあ、かる〜いタッチくらいならあるかもしれませんが、大丈夫ですよ!

・・・・・大丈夫です!?


>柿の種氏

中身は二十五歳横島ですが、記憶も曖昧で肉体に精神を引っ張られまくってますので、奇矯な行動に出やすいのです。
曖昧な記憶のせいで横島クン本人も逆行した自覚が薄かったり濃かったり・・・・・・一定してません。

普通ならヤバイ人ですが、もともとがアレですから誰にも気づかれないのですね。


>嗚臣氏

勘九郎さんは・・・・・この場合、モノノケに分類しちゃえば楽な気もしますねぇ〜・・・・・

メド子は〜・・・・あんまり考えてませんね。


>イース氏


勘九郎さんは純愛派だと信じてますので、背後に気をつける事は・・・・・・事は・・・・・・なんともいえませんね・・・・


はい、全体的にいささか失速気味ですね。
バトルなんて書けねーYO!といった気分でしたので、テンション低めです。
次回は・・・・・・どうでしょう?
最近、気がつくとカチャカチャやってますので、いつ頃になるかはわかりませんが、早めかと?
とりあえず、早々にGS試験を終わらせたいですね。いろんな意味で。

お待ちいただければ嬉しいです。では。

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