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「願い〜外伝〜 タマモ初めての学校編 前編 (GS)」

水稀 (2006-01-08 15:54/2006-01-10 13:47)
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とある教室でソイツは唯、己の存在意義を考えていた。


『人が笑い、怒り、そして泣く 』
その感情の移ろいを眼前にして人に興味を持った時
私は、私として存在する様に成ったのだろう。


……人に使われる事は好きだった。
それが例え身体に傷を負う事があったとしても、だ。


その瞬間は、孤独を感じずにいられたから。


そんなある日、やがて言葉を覚えた私は
以前より、胸に抱えていた問いかけの答えを知りたくて
主人に話しかけた。


──が、幾度と話しかけても言葉は聞いてもらえず
主人の成長と共に捨てられる事の繰り返しを唯、過ごすばかり。


それでも、私は問い続けたい。


答えを得るために…。


           願い〜外伝〜 タマモ初めての学校編 前編


──たしたし♪

何時もと変わらない学校への道のりを横島は眠たそうに
欠伸をしながらユックリと歩いていた。


「 何でこんなに朝早くから…。 」

ぼやく様に呟いたが、それを聞き取る人は、まだ居ない。


それもその筈で
時刻は未だ午前5時を指し示したばかり。

昼間は人通りの多いこの通学路も、流石にこの時間帯には
人影一つと見当たる事は無かった。


──たしたし♪クューン♪

横島は頭上に乗って、一定のリズムを取るように肉球で
横島のおでこ付近を叩きながら『クューン♪』と上機嫌な声を出す
妖孤の鳴き声を聞いて幾度目かの短息を漏らす。


『 はぁ…。何でこんな事になったんだ…。 』


と、胸中で呟きながら横島は
ほんの一時間前の出来事を思い返していた。


                 ・
                 ・
                 ・
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                 ・


ガバッ──と、音を立てながら布団が吹き飛ぶ程の
勢いで捲くられる。


「 学校ッ! 」


横島が目覚めて聞いた第一声がその一言だった。


無理やり布団を肌蹴られて──それに伴い吹き込んできた
冷たい風に体を丸める様に己の腕で膝を抱えると横島は

『ビデオデッキ』の現すデジタルな数字を目に留めながら呟いた。


「 ……。……おやすみ。 」

「 ちょっ…と、いきなり寝始めるなんてどういう事よッ! 」


『 わーわー 』と捲くし立てるタマモに横島は気だるげに
先程見た、デジタルな数字を指差した。


「 あれが表している意味、わかるか? 」

「 月氏の数字でしょ 」

「 ……。な、なんて書いてある? 」

「 4:47って書いてある。 」


『 読めてるじゃないか… 』と、横島は呻く様に呟いた。
そんな横島にタマモは


「 学校行くわ……よ? 」


再び横島に同じ言葉を投げ掛ける。

──が、突如『 ゆらり 』と立ち上がった横島が
『ガシッ』と音がする程に強くタマモの肩を掴んだ瞬間、タマモの
吐いたその言葉は勢いを失った。


「 ………。 」


ぐいッ──、横島を見据えていたタマモの体を無理やりに
『ビデオデッキ』の方向へと向け、顔を僅かに寄せる。


「 な、何するのよ…? 」


怪訝そうなタマモの表情を座った視線で見据えると横島は
再び『ビデオデッキ』の表示している数字を指差した。


「 昨日…寝る前に言ったよな? 」


『 じぃー 』と穴が開く程に目線を合わせてくる横島に
タマモは額に汗を出し、顔を背けた。


「 学校は8時からだっていっただろッ!?
   何が楽しくてこんな朝早くから行かねばならんッ!! 」


そんなタマモの耳元で怒鳴る様に語った。


「 そ──そんな事は、重要じゃないでしょッ! 」


耳を手で押さえ、蹲りながらタマモは言い捨てる。
──が、横島は一度嘆息すると『 ぼそり 』と呟いた。


「 お子さま… 」


『 興奮して寝れないんだろ… 』と続けて呟いた横島に
タマモは『ガーン』と擬音が付きそうな程に顔を俯かせる。


「 そ、そんな事いわれる筋合いは無いわッ! 」


「 じゃぁ何だってんだよ…お・こ・ちゃ・ま? 」


暫くの間、タマモは俯いたままで何も言い返さなかったが


「 …ど、どうした? 」


その横島の言葉にタマモは俯いていた顔を上げ
『 うぅ……。 』と、捨てられそうな子犬の瞳を何処か連想させる
弱々しい眼差しを浮かべて…唯、横島と目線を合わせた。


「 う゛……。 」


『 違う──違うんだ…。
  俺は泣かせるつもりで言ったんじゃなくてッ!

         ──唯、もう少し眠りたかっただけなんだ…。 』


子供や、か弱い女性に只管弱い横島は
目の前のタマモに必死で、声は出せなくても表情だけでも
言い訳をしようとした。


『 じわり 』と再び目に溜まったタマモの目尻。
─ぎゅっ と強く握られたその拳が微かに震えた。


そして

『 う・・ぅ・・・ 』 時折漏れる嗚咽を堪えるような声に
横島は慌てふためくと


「 何でもいう事聞くからッ!泣かんといてぇッ!! 」


タマモの肩を抱きながら必死で慰めた。


その肩の向こう側で
タマモが笑っている事に気づかないままで…。


                 ・
                 ・
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                 ・
                 ・


ガラッ──

『開/錠』の文殊を使って校内へと入り込んだ横島達は
然程時間をかける事無く教室に辿り着いた。


『 はぁ…。文珠後5個しか残ってねーぞ…。 』


胸中で不満を呟いた横島は教室内を珍しげに見回している
人間の形態に戻ったタマモに苦笑を浮かべた。


「 寂しい所ね… 」


自身と横島の姿しか見えない教室に
タマモは期待が外れたと肩を落としていた。


『 そりゃそーだろッ!! 』

「 そうだな…って、愛子いねぇのかな? 」


想いとは正反対に優しく相槌を打ちながら辺りを見回した。
──が、ふと感じる違和感に横島は眉を顰める。


「 ………。 」


突如、押し黙った様に固まる横島に怪訝な表情を
タマモは浮かべた。


「 どうしたの? 」


その声が耳に届いたのだろう。
瞬間、『ワナワナ』と横島は体を震わし


「 ──な…。 」

「 な? 」


僅かに訪れた沈黙。
──が、突如



「 なんで俺の机がコ○ヨの
  学習机(子供用)になっとるんやーッ!? 」


教室内を震わす程の声音で横島は叫んだ。


「 きゃッ!? 」


その突然の怒声にタマモは飛び跳ねる様に驚くと
『何なのよ…もうッ!』と僅かに遅れて苛立つ様に呟いた。


──が、そんなタマモを気にも留めずに横島は
そのコ○ヨの学習机(子供用)の元に駆け寄って
凄絶な視線を巡らした。


その机は天然木ならではの木目が優しく
温もりある風合いを演出。上棚付きだから収納にも便利ッ!

長く使うものだから、細かい気配り設計に注目したい。


と、設計者の注意書きみたいな物が貼り付けられており
その横に、でっかくテカテカと赤色の文字で


『 横島忠夫 御用達 』

と、書かれた紙が貼り付けられている。


「 ………。 」

その文字に…その形に呆気に取られていた横島は
何時の間にか傍に来ていたタマモを視界に入れると


「 黒板…見えないやんけ… 」

自身でも良く解らないツッコミをしていた。


暫くの間、呆けたままの横島を不思議そうに眺めていたが
それに飽きたのか、タマモはその『横島の机』という物に
手を伸ばした。

──が、『ハッ』と我に返った横島が


「 ばかっ! 」


短く伝えるとタマモを庇う様に
机とタマモの間に体を滑り込ませた。


「 ………? 」


何も起らないな…と閉じていた瞳をユックリと開く。
と──唐突に耳元で声が響く。


「 アンタこそ…バカ? 」


呆れた様な、情けない様な
どちらにも取れる声音でタマモは呟いた。


「 ………。 」


そんなタマモに横島は何度か首を横に振ってから
すっ──とタマモと視線を合わす。

閑静で、隠居した穏やかな老人の様な色をその瞳に浮かべると


「 お前にはわかるまい…。久しぶりに登校したら
    机に呑まれたという経験を持つ男の気持ちなんて… 」


悲しそうに呟いた。


『 わかる訳無いじゃない… 』と、タマモは胸中でのみ呟いたが
ふと、何かに気づくように視線を横島からずらすと


「 妖気…? 」


呟き、横島の肩越しに見える机を見据える。


瞬間──


『ぽんっ』と背後から手が肩に置かれる。
『 えっ? 』と呟いた時には、視界に広がる机に
吸い込まれるように


──ありえない力で横島を巻き込んで背中を押された…。


               ・
               ・
               ・
               ・



「 やっぱりぃぃぃぃぃぃッ!!? 」


意識を戻して、絶叫。──そして悟る。


『 学校は休んじゃ…ダメだ…。 』


頭を抱える様にしながら蹲る横島の直ぐ傍で
タマモも又、頭を抱えていた。


「 な…何よ…。この場所はッ!? 」


そんな絶叫じみた悲鳴を上げるタマモの視界に移った光景は


一面に広がる


薔薇ッ!

    薔薇ッ!

        薔薇ぁぁぁぁぁッ!


瞳に優しくない程の真紅『辛紅』に彩られた薔薇が
果ての見えない程に敷き詰められた花園にタマモは
呆然とするよりも先に訳の判らない恐怖を感じていた。


「 ヨ…ヨコシマ… 」


未だに『ブツブツ』と変なトラウマを刺激されたのか
蹲りながら呟き続ける横島の肩に手を置く。


「 い、今なら…アンタの気持ちがわかる様な気がする… 」


小さく呟かれたタマモの言葉に横島は
『 ぴくッ 』と耳を動かすと、次の瞬間には立ち上がり


「 わかってくれるかッ!そうか…そりゃそうだろッ!! 」


『 ハッハッハァッ! 』と哄笑を浮かべながら
滂沱の涙を流した。


その変に器用な感情表現にタマモは若干引くが

流石に此処では離れたくないのか横島の傍から
距離を取ることは無かった。


暫くの間
唯、虚しく横島の哄笑がその薔薇色空間に響き渡るが
小さく聞こえた女性の声により場は進展を迎えた。


「 よ…横島クン…? 」


『 ……? 』

怪訝そうに振り向いた横島達の視界に
机を背負った、セーラー服姿の少女が映りこむ。


「 横島クーンッ! 」

「 愛子ッ?! 」


『 タッタッタ… 』と某 恋愛ドラマ並みに横島の胸に
飛び込もうと駆け込んでくる愛子。


そんな愛子の様子に此方も…と、腕を広げて彼女を待つ横島。
二人の繰り出すベタベタで、現実では有り得ない再会は


「 青春よぉぉ─…?『 ふははは…は? 』
  おぉぉぉぉおっッ『──ぐふッ!?』!?」


突如、愛子の足元に『にょっきり』と、生えた角刈りの男の頭部に
因って強制中断された。


────暫くの間音声のみでお送りします────


ガツンッ!『愛子が角刈りの頭部を蹴った音』
──ゴロゴロ…ゴロ……『愛子が転がる音 』


ピク…ピク…ドクドク…『角刈りが痙攣してを流す音 』


─────────お終い──────────


暫くの間


「 ……… 」


呆けた様に眺めていた横島は広げていた腕をそのままに
唯、沈黙する。


「 ………。」

「 ………。」

「 …きょ、強烈な登場の仕方ね… 」


僅かな間を置いて、足元に転がり込んで来た愛子の姿に
『タラリ』と脂汗を流すタマモに続け様とするが、横島は
『あぁ…』と呻く様に答える事しか出来なかった。


「 よ…横島クン…… 」


唸る様に再び、名前を呼びかけてくる愛子に
横島は一度短息を吐くと『しょうがないな…』と手をさし伸ばし
声を掛けた。


「 ……大丈夫か? 」


瞬間



「 角刈りが花園で私にマッチョで尋ねると私に青春じゃなくてッ!横島クンが生えてきたのッ!!」


矢継ぎ早に意味の通じない言葉を捲くし立てる愛子に横島は
一度頭を抱える。

──が、暫くして『 …ぽんッ 』と恐る恐る彼女の肩に
手を置くいた。


「 つ、辛かったんだな… 」


再び『わかる…俺にはわかるぞッ!』と叫びながら
滂沱の涙を流す横島に縋り寄って涙目の愛子。


そんな二人の咽び泣く姿を視界にいれ
タマモは小さく呟く。


「 バカばっか… 」


と、──背後から、声。


「 おーぃ…  」


その野太い漢の声に咽び泣いていた横島達を含め
タマモは一瞬の間を置いて振り返る。


「 …声聞こえたよな? 」

「 …えぇ。 」 「 青春だわ… 」

「 あ、あの登場とは逆に向いてる角刈りの頭からか? 」

「 あの登場とは逆に向いている角刈りの頭部から、ね… 」


小さく響いた愛子の声に玉の汗を横島達は浮かべると
意図して愛子を無視しながら話を進める。


「 ど、どうする? 」

「 で、出来れば関わりたくないんだけど… 」

「 だよなぁ…。 」


再び『おーぃ…助けてくれぇ…』と野太く低い──が、情けなさを
感じる声音で『その頭部の方向』から声が唯、響いた。


「 ………。 」


暫くの間、横島は思案する様な表情を浮かべ
『 よしッ 』と小さく呟き、続けた。


「 タマモこっちが、机妖怪の愛子だッ!。 」

「 う、うん 」

「 で、愛子ッ!『 えっ何ッ!?』…こっちが、妖孤のタマモだ。」


「「 よろしく… 」」


『おーい』と響く声をバックグラウンドに
自己紹介を始め、会話を続ける。


「 で、机妖怪のくせに何で机に取り込まれてるんだよ? 」


『学校はお前のテリトリーだろ』と呆れた様に呟いた横島に
愛子は一瞬「 ひくり 」と顔を引きつらせると


「 そ、そんな事より── 」

「 あっ私もそれ聞きたい。 」

「 だろ? 」   『 おーぃ… 』


『 あぅ…… 』と唸り、凍りついた愛子に
横島は半眼を作り、再び尋ねた。


「 で、机妖怪の愛子さんは
   何でコ○ヨの学習机の中にいるんですかね? 」


「 は、話したくないかも… 」


と、横島の視線から顔を反らしながら
脂汗を垂らして、小さく愛子は呟いた。


そんな愛子に横島は一度短息を吐くと
『 じゃぁ… 』と呟いて


「 何で、あのコ○ヨ机に俺、御用達って張り紙が
                付いていたのは判るか? 」


「 あっ!それは私が張ったもの… 」 『 おぃ… 』


『 青春だわ。』と小さく付け足すように答えた愛子に
タマモが『ぼそり』と鋭いツッコミを入れる。


「 ──って事は、愛子があの机を教室に入れたのね… 」


『 う゛…… 』と短く呻いた愛子は暫くの間、蹲るように
頭を抱えていたが、横島達の冷たい視線に押されたのか
『 ガバッ! 』と立ち上がると


「 仕方ないのよッ!ゴミ捨て場に捨てられていたあの机が
  横島クンに使ってほしいって訴えかけるんだものッ!

  それに…私だって一度は机の中に入れて教室まで
  運んだんだからっ今この状況はお相子様で

  私が一方的に負けた訳じゃないわッ!           」


意味のわからない勝敗理論を語り
開き直った様に矢継ぎ早に言葉を出す愛子に


「 開き直ったな… 」

「 開き直ったのね… 」


と、呟く二人。


そんな二人に愛子は『たじっ』と少しの距離を
後退りする。


「 だって…横島クンが授業中いつも眠ってるから
  上棚付きのあの机なら先生にも教壇からはバレルことないし
  横島クンと絡み合うキッカケになるだろうと思って
  やった事なのよッ!

  そ、そうよッ!悪いのは授業中いつも寝てる
            ───横島クンよッ! 」


支離滅裂な事を涙目で叫ぶ様に語る愛子に横島は
『 黒板が見えないのに気づいてないのか… 』と頭を傾げると
『 ハッ 』と気づいたように呟く。


「 俺のせいなの…か? 」


『涙目で女性にそう言われると…そんな気がしてきた… 』と
悩み出した横島にタマモは呆れた様な表情で


「 違うんじゃない? 」


と、小さく呟き返した。


その背後で『 シクシク 』と嗚咽を上げ始めた
角刈りの頭部を気にする事無く…。


後書き


シリアスに『学校編 前編 』をお送りいたしました(マテ

今回の話は前後で終わらすので…
無駄に長くするつもりはないので暖かい目で見守ってくれると
幸いです。


さて、突如出てきたオリキャラ コ○ヨの学習机
コイツが問いただしたい質問とは…が次回の見所なんですが…
まぁ…共感してもらえると嬉しいですw


レス返し


『 帝様 』

今までにあるようで無かった新展開を目指して
がんばっていきますw

予想できなかったら展開だったら嬉しいですね!
で、シロの事なんですが
タマモと絡ませたいので二人で美神宅に同居になる予定です。


『 通りす〜がり様 』


初めまして!レスありがとう御座います。
その言葉はとても嬉しいですw

そして、期待に答えれる様に熟考を繰り返して
これからも頑張っていきますので!ヨロシクお願いします。


今回はこれでお終いです。
レスをくれたお二方に感謝の意をッ!

ありがとうございますm(_ _)m
執筆栄養素としていただきましたw


では 次回は『 学校編 後編 』をお送りいたします。
あまり大したオチでもないのですがw頑張りますのでヨロシクです!

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