*注 今回の番外編は本編にはあまり関係御座いませんので
読み飛ばされても結構です。
おキヌで構成されたギャグパートを読んでくれる方は
楽しんでもらえると幸いです!
願い〜番外編〜 タマモが目覚める前の日常
『 コンコンコン… 』とドアの向こう側に佇んでいる人の性格を
現す様な控え目な音が狭い室内を駆け巡る。
「 んぅ… 」
そのノック音に寝返りを打つ横島の耳に
僅かに時間を置いて小さく人の声が入り込んで来た。
「 横島さん? 」
「 んぅ…んっ? 」『 んー…おキヌちゃん? 』
徐々に思考が闇の淵から掬い上げられる様な感覚を
覚えながら、耳に入り込んできた声の持ち主を考える。
再び 『コンコン… 』と控え目なノック音が響き
それと共に
「 横島さーん? 」
呼び掛ける声が室内に流れ込んでくる。
「 あー、ちょっと待っててっ! 」
ドアの向こう側に居る人物に話しかけると同時に
やや薄い毛布と布団を傍に居るタマモを動かさない様に肌蹴ると
少し寝癖のついた頭を手で抑えながら横島はドアを開けた。
「 こんばんわ。 」
微笑みながら語りかけてくるおキヌに
「 お早う…じゃなくて、こんばんわ 」
挨拶を間違える横島。
「 また寝てたんですか? 」
『 美神さんに休みもらってから
学校にも行かれてないじゃないですか…』
と、最後に付け足し僅かに責める様な口調で語りかけた。
「 堪忍してっ!明日には行くからっ! 」
と、何故かおキヌに許しを請う横島に
『 しょうがないですね… 』と呟いた後『ハッ』とした様に
息を呑むと更に
『 昨日もそんな事言ってましたっ! 』と再び、おキヌは責める。
──が、『ふっ』と表情を変えると
「 タマモさんが目覚めるまで…ですよ? 」
と、横島の休む理由を理解して微笑み語りかけた。
「 ありがとうな、おキヌちゃん! 」
再び、何故か土下座までし始めた横島に苦笑を浮かべるおキヌ。
そんな彼等の遥か上空の電柱に腰を落ち着かせていたカラスが
『 カーァッ 』と、一鳴きした。
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「 まだ、目を覚まされないのですね? 」
横島の家に上がり込んだおキヌはタマモの背を撫でながら
残念そうに呟いた。
「 んー…美神さんが言うには── 」
と、続けると昨夜に令子から聞いた内容をそのまま
横島は口に出した。
──多分、急激に増えた記憶や力の受け継ぎなどで
手間を取っているんじゃないかしら?
霊視して見ても、これといった負傷を起こしている場所なんて
無いし…。──
「 ──だってさ 」
その説明をしていた時の令子の仕草を真似ながら
喋る横島におキヌは『クスクス』と笑い
「 そうなんですかぁ。 」
納得したように頷いた後で
横島宅の勝手知っていると、台所へと足を運んだ。
それに伴う様に『 ガサガサ 』と、音を立てながら
持ち寄った食材の入ったビニールをおキヌが漁る。
「 にんじんさ〜ん♪ぴ〜まんさ〜ん♪」
と、鼻歌を歌いながら『フンフン♪』と楽しそうに食材を
ビニール袋から出していたおキヌは突如として
「 あれぇーっ?! 」
鼻歌を中断して情けない悲鳴を上げた。
室内に木霊したその声に
横島は飛び上がる様におキヌの傍へと移動すると
「 どうしたッ!? 」
俯き肩を震わしているおキヌを心配そうに伺い尋ねる。
その横島の声音に俯いていたおキヌが
顔を上げると
「 塩がーっ!?塩がーーーっ?! 」
某ラ○゜ュタのム○カ大佐を彷彿とさせる叫び声を上げたおキヌに
横島は『ズルッ』とこける様に脱力した。
「 お、おキヌちゃん… 」
床へと崩れ落ち呻く様に呟いた横島の声さえも無視して
未だ
「 塩がーッ!? 」
叫び慌てているおキヌちゃんが
『パタリ』とその動きを止め此方も脱力した様に手を垂らす。
「 フフフ…。 」
「 おキヌちゃん!? 」
俯いたまま、その艶のある黒髪が垂らされた隙間から
黒く微笑むおキヌの口元だけが横島の目に入る。
その光景に『ジリジリ』と後退りしながら
視線を外す事無く唯、眺めることしか出来ない横島は
『 トン 』と背中に伝わる衝撃に身を縮める。
「 ひぃっ?! 」
横島の狭すぎる部屋では、満足におキヌから
距離を開けることは出来ないようだ。
未だ背中を支える壁を感じ取りながらも
無駄に足を滑らす横島におキヌは笑みを止めると
「 どうしたんですか?横島さん 」
不思議そうに語りかけてくる。
そんなおキヌに『イヤ…イヤ…』と首を横に振っていたが
暫し、後退りを繰り返すと冷静さを取り戻し『こほん』と
わざとらしく立てた横島の咳が虚しく室内に響いた。
僅かな時間を経て『えっと…』と横島は呟き、更に続ける。
「 塩が無いんだね…? 」
怪訝そうに呟いた横島におキヌも又、怪訝そうに
『えぇ。』と相槌を打つ。
暫くの間
痛い程の沈黙が部屋を支配すると
突如、横島が縮めていた身を『ビーンッ!』伸ばしながら
「 ハハハ──ソイツハオドロキダァ!? 」
ヤケにロボちっくな声音で叫ぶ。
その叫びにおキヌは天然ぶりを発揮しながら
「 ですよねぇ 」
と、華麗にスルーしてくれる様は一番星の輝きを魅せてくれた。
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「 ──ですので、塩を取りに帰りますから
お腹を空かせて待ってて下さいねっ! 」
あれから、
熱く濃い『塩』議論を熱弁したおキヌは
暫くの間、いかに『塩』が調味料として優れているか…等の
『塩』の重要性を語りきった。
そして、その熱く溢れる料理事情を語った後
満足した表情を浮かべると唐突に玄関の方へと移動しながら
横島へと釘を刺す様に呟いた。
「 へぃっ! 」
何故か語尾に『おやびんっ!』と付きそうなニュアンスで
清々しい返事をする横島に
「 一応、材料も持って帰りますね? 」
と、信用の感情をまったく見せないおキヌ。
そんなおキヌに
『君に嘆いて涙滂沱たり。』
横島は心の漢文を何も無い虚空へと描きながら頷き
暫くして、調子を取り戻すと
「 わざわざ、ごめんね? 」
と、申し訳無さそうに呟いた。
「 私が好きでやってることですから… 」
そんな横島に向かって微笑みながらおキヌは語り掛けると
『 それじゃ、また後で 』と最後に付け足し
言葉の余韻を残してドアの向こう側へと消えた。
暫くそのドアを眺めていた横島は
『ハァ…』と嘆息を漏らすと
「 おキヌちゃんに料理を語らせちゃ…ダメだ…。 」
怖々と呟き
その呟きから僅かに遅れて
何故か風で再び『パタン』と開閉した具合の悪いドアが
横島の虚しさを引き立てていた…。
こうして横島家の日常は流れていく。
後書き
あけましておめでとう御座います!(遅
唐突ですが、すみません!最近シリアス続きだったので
ベタベタなギャグを執筆したくなり
思い切って投稿させてもらいました。
もう一つデムパあったんですが…
『なんで蛍すぐ死ぬん?』といった台詞でw
ですが、流石に禁句すぎたのでやめました!orz
『こういうのはやめておいた方がいいんじゃないの?』
という注意などが有りましたら
レスにて教えてもらえると幸いです!
ちなみに今回の話は第二話と第一話の間の話です。
読まれなくても別に問題は無いと思いますが…。
第二話は暫くシリアス続きになるのかな?
ですので、偶に番外話としてギャグを放出して行きたいと
思います。
『 これで、話の進展が遅くなることは無いかなと
邪笑を浮かべ執筆を続けていますw 』
ではレス返しです。
『 帝様 』
料理大スキおキヌちゃんを描いてみたんですが
どうでしょうかw
あまりにベタベタなギャグっぷりに情けなくて
笑ってもらえたら幸いですw
今後は…本編に天然おキヌを入れるのが難しいので
このような形で稀に出てくるかもしれませんw
『 knt様 』
レスありがとうございます!
プロローグで書いた様にタマモは三人の記憶の片々を
持つように展開させて行こうと思っております。
最近の出来事は完璧に受け継ぎますが、
前世の事は『ぼんやり』としか思い出せないと
いった感じでしょうか。
今後ともヨロシクおねがいしますね!
今回はこれでお終いです。
お二方、レスどうもありがとう御座います!
第二話はもう2/3程度は執筆終わってるんですが
手直しの連続でもう少しかかるみたいです。
では、次回も頑張りますので!
今後とも皆さんよろしくお願い致します。