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「願い〜第一話〜 後編 その二 (GS)」

水稀 (2006-01-05 16:21/2006-01-05 17:16)
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[都市郊外にある森から僅かに離れた道路]


灰色のアスファルトが囲む道路で
乾いた風が髪を泳がせ頬を撫でる様に滑っていくのを
鬱陶しく感じながら美智恵は西条と二人で
森の入り口へと駆け込む横島の姿を眺めていた。


「 …これで良かったのかしら、ね? 」


誰に聞くまでも無い疑問を呟いた美智恵に


「 彼の事ですか? 」


西条が小さく尋ねた。

いつも胸に携えていた愛用の銃が無いのを
気にしているのか──数回『ぽんぽん』と胸を叩く西条に
美智恵は苦笑しながら話を続ける。


「 えぇ。いつも前線にいるでしょ? 彼  」

「 そうですね…。
     ──トラブルに好かれてるんじゃないですか? 」


悪ふざけを思いついた様な表情に浮かべ
西条は楽しそうな声音で喋った。


「 ふふっ。本当に仲良しね? 」

「 止して下さいよ。先生── 」


『 そんな事はありえない 』とわざとらしく腕を抱き
悪寒に震えるような仕草をする西条に美智恵は
にこやかに微笑んだ──が、突如表情を一変させると


「 でも、本当に良かったのかしらね? 」

「 如何されました? 」


急に真剣な表情に戻し、再び心配事を繰り返した美智恵に
西条は怪訝な表情を崩す事無く尋ねた。

そんな西条に向かって『自分でも解らないけど… 』と
戸惑った表情を浮かべ


「 何か嫌な予感がするのよ 」

と、呟いた。


西条は暫く、怪訝そうな色合いを浮かべた視線で
美智恵を見据えるが

珍しくも不安の表情を浮かべる美智恵は
一向に戸惑った表情を収めることが無い。


「 …では、何人か援護を出しますか? 」


逡巡した後で出された西条の意見に
『 そうね 』と小さく呟きながら横島の向かった場所を一瞥すると
美智恵は公園へと体の向きごと視線を向け、再び


「 そうしましょう 」


西条へ語りかけるとその場を後にした。

僅かな間を置き、美智恵の歩み去る背中を眺めながら
携帯電話を片手に仲間へと連絡を入れる西条の声だけが
灰色に囲まれた都市郊外の町並みに響いて消えた。


       願い 〜第一話〜後編 その二


「  何故?  」


美智恵が到着した部下達と合流した後で
己の持ち場へと向かい開口一番に出た言葉は
他愛の無い、そして飾り気の無い疑問の声だった。


眼前に広がるのは何時もは平凡な日常を幼い子供達と描いて
過ぎるどこにでもあるような公園の筈だった。


そのため部隊を派遣して四方がフェンスで囲まれている公園の
二箇所の出入り口

その内の一つ南側の出入り口を封鎖、それに伴い
公園を使用している家族達への退去願いをしようと
Gメンの部下達と共に作戦を伝えながら向かったのだが


今現在、美智恵の視界に移りこむその公園の姿は
はっきりと異変を映し出していた。


無骨なテープが入り口を囲み
幼い子供達やそれに付き添って談話する親達の声も響かず
漠然とそれは寂れた様な雰囲気を出す。


そんな中でそれに混じって微かに感じる緊張の有る空気が
歴戦を生き抜いてきた美智恵の肌を刺激してくる。


『 既に閉鎖されている… 』


作戦には無かったの予定外のその光景に
僅かに響めき出し呆然と佇む部下達を視界の端に入れながら


『 まさか、作戦が漏れているの? 』


そんな不安が美智恵の脳裏を過ぎる。


しかし、作戦が漏れていたとしても行動が早すぎる
と──表情を引き締めなおし公園から背を向けると


「 作戦を練り直すわ 」


言い捨て部下達と共にその場を後にしようとする
───が、突如 行動を遮るように、携帯電話が
その役割を振動を通して伝えてくる。


美智恵は歩みを止めると左手を部下達へと翳して
それに伴い歩みを止める部下達を一瞥すると
携帯電話へと視線を巡らす。


『 西条 輝彦 』


無骨な字で表示された発信者の名前を見て
ふっ──と息を吐いた。


「 どうしたの? 」


短く伝えたその言葉に西条は僅かに慌てた声色で


「 先生っ!横島くんが持ち場を離れているそうですっ! 」


矢継ぎ早に返した。


「 なっ、なんですって? 」

「 で、ですから横島くんが── 」


携帯電話から再び聞こえる西条の声に
美智恵は空いている片方の手で頭を押さえ


『 作戦の初期段階から上手くいってないじゃないのよ 』

そんな不満が口から飛び出るのを抑えて
『 こほん 』と一度わざとらしく咳払いをして気を落ち着ける。


「 先程の場所で合流しましょう。 」


『 此方も予定通りに行かないみたいだし… 』と最後に
付け足すと西条の返事も待たずに美智恵は通話を止める。

同時に


「 アナタ達はあちらの角で待機していて頂戴。 」


公園の南口の直ぐ其処にある角を指差しながら
部下達へ指示を出した。


「「「「 はい 」」」」


迅速に行動する部下達の後姿を満足気に眺めた後、美智恵は
『 ハァ 』と小さく溜息を吐いて目的の場所へと向かった。


暫くして、目的の場所へとたどり着いた美智恵は
作戦行動中にも係わらずに苛立たしそうにタバコを吹かす西条に
僅かに苦笑しながら


「 一応…作戦行動中よ? 」


軽く咎める様に西条へと話しかけた。


「 はぁ…すみません。 」


西条はばつの悪そうな表情を浮かべると手にしたタバコを
名残惜しそうに眺めながら『 ギュッ 』とアスファルトに
擦り付け消火させた。


「 …で?横島クンの所に援護にいった人達は? 」

「 一応その場で待機させてますが… 」


『タバコの吸殻をどうするか』──と
美智恵は目ざとく視線を巡らせながら


「 それでいいわ 」


僅かな間を置く事無く、了承の意を唱えたが
『 それで 』と続けると未だ手に握られたままの吸殻を指差して


「 それ、どうするの? 」

「 え゛っ?   」


自身の手を怪訝そうに一瞥すると再び美知恵と視線を合わせる。


「 だから、そ・れ・。 」


美知恵の指差すソレをダラダラと冷汗を流しながら眺めると
西条は


「 ちゃ、ちゃんとゴミ箱へと捨てますよ… 」


引きつった笑みを浮かべながらポケットへと押し込んだ。
『 …横島クン…覚えてろよ… 』とブランド物のスーツの恨みを
内心で横島に向けながら──。


暫く、そんな西条の奇行を面白そうに眺めていた
美智恵は表情を引き締めると


「 公園内に部隊がいたわ 」


声を僅かに潜めながら西条へと伝えた。


「 …作戦行動がバレたんでしょうか? 」

その声音につられるように真剣な表情に戻った西条が
疑問を投げかけてくる。


「 それはないわね 」


と、即答する美智恵に西条は再び『何故ですか?』と
疑問を投げかけた。


「 行動が早すぎるのよ… 」


そう呟かれた声に西条は頷くと


「 では、どうしますか? 」


美智恵の思考を促すように相槌を打った。
そんな西条に『 えぇ… 』と一度呟くと


「 後手に回るしか無いわね  」


悔しげに伝えた。


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[ 殺生石 跡 ]



「 受けてみるがいい。妖孤の誇りを 」


瞬間


『 狐火で出来た棍 』の破壊応力を超えて
ピキィン──と甲高い音を立てて華陽が具現させた棍は
暴走するように散らばる破片状の狐火へと姿を変えた。


「 ──ッ!? 」


横島に向けられた筈の華陽の狐火の一端が
銃弾の様な速度こそ無いが無差別に令子達へと襲い掛かる。


その狐火は余波に過ぎないが破壊的な威力を持ちながら
無差別に令子達へと襲い掛かったソレを視界に入れると
令子は横島から譲り受けた文殊で『護』の文字を刻み
簡易結界を張る。


一弾指の間も置くことも無く


──カッ!


狐火の様な閃光と共に
大地を轟音が振動に変わり奔った。


「 何考えてんのよっ!? 」


結界で遮られた衝撃の余波に眼を細めながら令子は
刹那の間に映った光景

横島の足元から破壊衝動を奔らせたその技を令子は
正確に把握し身体を『ブルッ』と震わせてながら悪態を吐いた。


華陽を『模』した妖力で作られた文珠は
霊力で作るソレよりも効果が高いことを令子は
眼前で広がる結界を見て感じ取り更に不安を高める。


ギュッ──と令子は無意識の内に握り込んでいた拳を
気に留める事無く

『爆』によって吹き飛ばされた腐葉土や枯葉が
灰燼のような塵を巻き上げる中を射抜くように見つめていた。


暫くして、灰燼が舞い霧海の様に視界を覆う中で
『ドサッ』と枯葉に重い物が落ちる様な音を立て
倒れ込んだ華陽の影が映る。


「 何が起こったの? 」


未だ『ボンヤリ』としか視覚できない空間に僅かに映り込む
姐妃へと令子は疑問の声を小さく投げかけると同時に

『 今しか無いわ 』と無表情に小さく呟いた姐妃が
令子へと向き直り


「 文珠と言ったわね…それをくれない? 」


僅かに焦った様な声音で窺った。


「  何故? 」


先の疑問を遮られたことに不満があるのか
簡潔に答えた令子に姐妃は苦笑すると

僅かな間を置いて


「 華陽を取り込むために 」


静かながらに強く感情を乗せ伝えた。
『 3つぐらいでいいのよ 』と付け足しながら──

そんな姐妃に対して令子は僅かに悩んだ後


「  信用して、いいのね? 」

怪訝そうな表情のまま尋ねた。


その声に姐妃は微笑むと
漸く収まりを見せ始めた霧海で覆われていた光景のある一点
横島が倒れ込んでいる場所へ指差しながら


「 彼に誓うわ 」


『 あの人外キラーが… 』

姐妃のどこか嬉しそうに語る声音に
僅かに痛み出した頭を抑えながら令子は一度短息を吐いて


「 わかったわ 」


お手上げとばかりに軽く両手を上げると
僅かに顔を緩めながら令子は姐妃へと文珠を
投げるようにして渡した。


「 ありがと…「 美神さんっ!横島さんがっ 」…ぅ 」


漸く呆けた気を取り直したおキヌが
姐妃の言葉に被せながら令子に語りかける。


「 早く行きましょうっ! 」


と、不安な表情のまま矢継ぎ早に伝えるおキヌに
つられる様に急ぎ横島の元へと駆け込む令子。


そんな二人の後ろ姿に姐妃は一度苦笑を浮かべると
華陽へと視線を向け、表情を引き締め


「 無様ね… 」


小さく呟いた。


侮辱する言葉とは別に哀韻を含んだ声音で呟かれた先には
華陽が意識を失った様に倒れ込んでいた。


僅かな間


じっと見据えていた姐妃は軽く頭を振ると
受け取った文珠を取り込むように手の平に消し


「 一つに戻りましょう 」


その手を華陽の顔に軽く翳し語りかけた。

『 後はタマモと重なるだけね… 』

翳した手から妖気が流れ込むのを感じながら
姐妃は次の事へと思考を巡せた。


瞬間


「「 横島くん(さん)? 」」


訝しい感情を乗せた二人の声が響き
それにつられる様に姐妃は華陽から横島へと視線を移す。


──と、令子と視線が合い


「 姐妃っ!ちょっと止めてっ!! 」


叫ぶ様に語り掛けてくる。
その内容に姐妃は怪訝な表情を一度作ると


「 まだ横島クンが『模』したままなのよっ! 」


次に叫ばれた言葉で理解し困惑した表情を浮かべ
既に人間の形態を保てずに妖孤の姿に戻った華陽を
視線に入れた。


『 仕方ないわね… 』と、華陽から視線を再び令子へと移し


「 わかったわ 」


小さく呟き令子達と共に『模』の文殊が切れるのを
待つことにした。


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[ 公園前 ]


「 遅いわね… 」


相変わらず進展のない状況に美智恵は
不意に言葉を漏らした。


そんな美智恵の隣で此方も苛々と
腰に携えた霊剣『ジャスティス』の柄を弄りながら


「 …ですね。 」


相槌を打つ西条。


既に銃声が響いたという報告を
森の入り口に待機させた隊員達から受けている。


その報告を受け、直ぐに二名程森の中へと派遣させたが

互いが今直ぐにでも駆け込みたいのを
我慢している状況で冷静であれというのは難しい注文であった。


「 はぁ…。 」


ついぞ漏れてしまった溜息は自身に対するものか
それとも──。


ふと、美智恵へと視線を移した。


西条の視界に映り込んだ美智恵は凄絶な眼差しで
公園内に佇む自衛隊の姿を見据えている。


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[ 殺生石前 ]


意識を失ったまま倒れ込んでいた横島を
窺うような視線が三つ程、肌を刺すように差している。


『 何だ…?起き上がったら殴られそうな気がするッ?! 』

「 う……ぅん 」


その視線の鋭さに横島は僅かに惚けた思考のまま
寝返りを打ち──呻き声を出した。


─[ 心配して見守っているだけなのだが…]─


鈍感ライセンスを所持している横島は見事に勘違いをして
『 ピクッ 』と傍で動く気配と閉ざした目蓋に掛かる影が
揺らめいたのを感じ取り、冷汗を流す。


「「「 ………。 」」」


──ダラダラと溢れ出す冷汗と肌に強くなった視線が差すのを
知覚し、つい『ごくり』と固唾を飲み込んでしまった。


更に強まってくる視線に覚悟を果たした様に
『 よし 』と、小さく咳払いして息を大きく吸い込むと


「 知らない天井だ… 」


呟き、そして役目は果たしたとばかりに
再び目蓋を閉ざそうとする横島に


「 よ、横島くん…? 」

『 天井なんて無いじゃないのよっ!? 』


心に浮かぶ言葉を意識して抑えながら令子は
呆けた声音で語りかけた。


殴られるならつっこみで…と


瞳を閉じてつっこみ待ちをしていた横島は僅かに
不満そうな表情をその顔に湛えると令子へと目線を合わせて
静かに答える。


「 何スか? 」


それは口を僅かに突き出した子供の様なもの言いであったが…。


その様子に何故か隣で『イヤンイヤン』と頭を振りながら
悶絶しているおキヌを意識して無視すると


「 文珠の効果は切れたかしら…? 」


頭を抑えながら呟く令子に


「 切れてるスよ?  」


僅かに眉を顰めて横島は返した。
そんな横島の言葉に訝しく表情を歪め


「 霊気も妖気も感じられないから── 」


と言い掛けた途中で『 ハッ 』と息を呑む令子の
仕草に


『 あぁ…そうか。 』と顰めていた眉を戻し
気遣うように横島は話題を反らした。


「 そんな事より…
     ──アイツ逃げてるッスよ? 」


と、指差しながら語る横島につられる様に
視線を移した三人の瞳に


ふらつぎながらも森から出ようと
駆け出している妖孤状態の華陽の姿が映り


僅かな時間呆けてしまった。


瞬間


ガサッと音をたて現われたGメンの制服に包まれた二人に
呆けたままの視線を移し


「「 追いかけられないのですか? 」」


そんな言葉が耳に入ると同時に令子達は直ぐに気を取り直し
追いかけようと体勢を浮かせた

──が、姐妃がそれを左手を翳し止めると


「 後は、わらわに任せて 」


凄絶な視線で華陽が逃げ出した方向を見つめ呟いた。


その様子に令子達は浮かせた腰を落とし
『 ふぅ 』と一度空気を吐き出すと


「 わかったわ。」


呟き、何かを思い出したかの様に令子は
急いで、ある地点を指差しながら続けた。


「 そこにあるトランシーバーで
     公園に待機している部隊に連絡を取るといいわ  」


その言葉に続くように


「 私のママも其処に居る筈だからッ! 」

「 頑張ってください! 」


と、声を掛けてくる二人に視線を巡らせた後


「 タマモの事はまかせとけッ! 」


何時の間にかタマモの体を膝の上に乗せて語りかけてくる
横島に苦笑しながら


「 えぇ…。まかせたわ♪ 」


と、姐妃は僅かに離れた場所にあったトランシーバーを
携えて『田中』の姿に変化すると


「 ──ひッ?! 」


驚愕に彩られた横島にイタズラな笑みを浮かべた後
姐妃は駆け出していった。


暫くの時間を経て

深い森から出た姐妃は携えていたトランシーバーを
構えると


「 おいっ!そっちに逃げたぞっ! 」


『田中』以上に男らしい声で叫び
森の入り口を簡易結界で封鎖した。


公園の方角へと駆け込む華陽の後ろ姿を一瞥すると


『 手間を掛けさせて…』
「 手間かけさせやがって 」


思考した言葉とは別に男の言葉で出て行った声に
姐妃は


『 演技し始めたら中々抜けないのよねぇ… 』


と、僅かに複雑そうな表情のままで華陽を追いかけていった。


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[ 公園前 ]


『 了解 』

と、公園内から小さく聞こえた自衛隊の声。
それから僅かに遅れて

森の入り口に待機させていた部下から
『目標が出ました』と短く伝えられた。


暫く


その報告に高まり出した緊張感を
部下達に見て取った美智恵は一度頷くと


「 攻撃と同時に突入します。 」


声を抑えながら語りかけた。


『ごくり』 眼前に佇んでいる部下達の固唾を
呑む音がヤケにハッキリと聞こえて
美智恵は不意に微笑んだ。


「 ──さてと 」


呟き、西条へと視線を巡らす。
その視線に西条は『わかってます』と、頷き呟く。


「 私達の隊は妖孤の捕獲。
  西条クンの隊は自衛隊に本作戦の指揮権を
  譲渡してもらえる様に交渉を行ってちょうだい。 」


「 足止め──ですね 」


美智恵の指揮の真意を掴み
イタズラな表情を浮かべ西条が返した。

そんな西条に困ったような笑みを浮かべ
『そうね…』と小さく呟いた。


瞬刻


────パァーンっ!!


四隅をアスファルトで囲まれている公園内に鳴る
乾いた火薬の破裂音が響いた。

その銃声音から遅れる事無く



「 今よっ! 」


今まで抑えていた枷を外す様に
言葉は怒号となって美智恵の唇から放たれた。


突如響いた女性の声に
自衛隊は困惑した様に動きを止め此方へと視線を移してくる。

その様子に美智恵は一度ほくそ笑むと西条に


「 ──頼んだわよ 」


と、小さく言い残し公園内の地面に点々と真紅の彩りを施し
跳躍しながら駆け回る妖孤の姿に眉を細めながら駆け寄った。


暫く


───パァーンっ


再び響いた銃声に思わず舌打ちをする。


僅かな時間を置く事無く『 トサッ 』と音を立てながら
崩れ落ちる妖孤が美智恵の視界に入り


『 急がないと… 』


焦燥感から付随する様に沸いてくる感情に
押され美智恵は叫んだ。



「 西条クンッ! 」


自衛隊と喧騒を起こしている部下の姿を一瞥すると
その声の主へと西条は視線を移した。


それに気づいた美智恵は妖孤の元へと駆け込みながら
その視線を促す様に

公衆トイレの上で喧騒を気に留める事無く
唯、淡々と妖孤へと標準を合わせているスナイパーへと
顎を『 くいっ 』と向けた。


そんな美智恵に一度頷くと西条は喧騒の場を離れ
スナイパーの元へと駆け込んでいった。


「 これで───ッ!? 」


駆け寄った脚に力を込める。
──が、突如自身と妖孤の間に割り込んできた
自衛隊の男性の姿を見て驚愕に脚を止めてしまった。


『 妖気…ッ!? 』


困惑した様に視線を男の後姿に巡らし


「 あっ── 」


眼前に妖孤の姿を遮るように佇んでいる男に声を掛けようと
未だ背を向けている男の肩に腕を差し伸ばした


瞬間

男の片方の手持ち上げられ、それに付随するように


───パァン

三度目の銃声が響いた。


その衝撃に『びくん』と跳ねた妖孤の姿に
思考が纏まらずに美智恵は


「 あ…えぇ…? 」


呆けた様な声音で唯、眼前に背中を向け佇んでいる
男に意味の無い言葉を掛けていた。


後書き


全身筋肉痛になりました水稀です(挨拶


正月の予定などで色々と忙しくて
更新が遅れたことをまず皆様にお詫びします。


どうもすみませんでしたっ!m(_ _)m


今回は二連続投稿となりますので
レス返しは『エピローグ』にて行いたいと思います。

ちなみにプロローグの初めに出てきた男性が
姐妃の変化した姿でした!

この展開はプロローグの時点で思いついていたことですので
驚いて(? もらえると幸いですw


では引き続き『エピローグ』もお楽しみください!

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