インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「願い〜第一話〜 後編 (GS)」

水稀 (2005-12-26 13:37/2005-12-28 20:42)
BACK< >NEXT

──現代の呪師は・・・。


華陽は自身が妖孤『白面金毛九尾の狐』であった時では
見ることの無かった戦いの場で展開された喧騒を
眼前に映し込みながら唯、呆気に取られていた。


「 す、すまん・・・待たせたな?── 」


申し訳無さそうに頬を右手で掻きながら
謝罪してくる横島に華陽は『 ハッ 』と我に返って
一度軽く咳払いした後で低く呟く。



「 道化よ・・・戯れるのは終いじゃ─ 」 


「 ──? 」


瞬間


「 ──げふぁ?! 」

華陽の姿が霞む様に消えると
刹那の間で横島の眼前へと現われると同時に
背負い投げの様な格好で地面へと叩き落された。



「 ふんっ。手間取らせおって── 」


自身の体を崩し落とす様に
横島を脳天から地面へと叩き付けた華陽は
今までの雰囲気を一変させ


『 ピクピク 』 と痙攣する横島を一瞥すると
つまらなそうに呟いた。



「 やはり─妾には喜劇は似合わぬ──務まらぬ。
     悲哀憎悔の泥濘にのたうつ人間を観る方が── 」


『 愉快だ─ 』と邪悪に顔を歪ませ、令子達へと視界を移すと
口元に嘲笑を形作った。


          願い 〜第一話〜後編


僅かに思考を巡らせる様に佇んでいた華陽は
再び、横島に視線を戻し語りかけた。


「 道化─そろそろ起きぬか─ 」


未だ邪悪に歪ませた表情のまま
『 ・・・くぅ。 』と聴覚に入ってくる横島の苦痛に満ちた声を
愉快そうに聞きながら続けた。



「 妖怪も人も区別無く扱う、お主の個性は良く解った。
         理解でき─そして感心したと言ってもいい。 」


程なく目覚めたのか、ゆっくりと辺りを窺うように視線を巡らす
横島を気にも留める事無く、華陽は更に続ける。



「 お主と交える時に気づいたのじゃが──
    常に・・今背後にいる人間達を気にしとったな─  」 


その言葉は疑問ですら無く、確信を持って発言したという
響きを伴っていた。


『 な・・・なんだ? 』


横島は気を失う前に見た華陽の姿とはかけ離れた姿に
唯、疑問に頭を巡らせた。


時折聞こえる華陽の言葉は、褒められている様だが・・・
その声色がとてもじゃないが、その感情を伝えて来ないのも
疑問を増加させる要因となっていた。


疑問を抱え、ゆっくりと体を起こした横島を
華陽は目を細めながら見つめる。


「 そして──道化、お主は何故・・・背後にいる人間や
            ──あの名前も無い妖孤を気に留める? 」


今度は疑問系だ。

邪悪に歪ませていた表情を、愉しんでいた声色をも消して
無表情に─そして無感情に尋ねてくる。


その唐突な言葉に横島は少し首を傾げ、答えた。


「 名前は姐妃さんがちゃんと言ってただろ、タマモって 」

「 彼奴が勝手に名付けただけじゃ─ 」


そんな捨てる様に語る華陽の発言を無視して横島は


「 何故、か・・・。唯、手が届く範囲の奴等を傷つけたくないし
     それに、何処か似てるんだよな。タマモは俺と── 」


哀韻を含んだ響きを声色に乗せて呟いた。


暫くの間
僅かに『 しん・・・ 』と静まり返った場。


その場を唐突に切り裂く様に


「 クックック・・・──ハッ─アハハハハハ・・・・  」


華陽の狂笑が響いた。

『 とても愉快な答えを聞いた 』と華陽は唯、嗤っていた。


「 ──何がおかしい? 」

自身の亀裂に触れる内容を嘲笑った華陽に
横島は感情を抑えた様な、酷く冷めた声色で尋ねた。


「 やっと道化の謎が解けたわ── 」

一頻り嗤った後、醜悪に歪めた口元で言葉を紡いだ。


「 ──? 」

華陽の答えに横島は怪訝そうな表情を隠す事無く
視線を細めた。

そんな横島を気にする事無く


「 時折─お主から匂った魔力の気、そして先程の返答。
     ──道化よ・・・貴様はかつて魔族に命を助けられたか
                       ──それも命を奪い─ 」

自身の推測を歪んだままの口で発した。


『 ぴくり 』 と肩が震える様に動いたのは横島だけでは無く
令子とおキヌも例外では無かった。

そんな横島達の反応に気を良くした華陽は
詠う様に言葉を



「 弱い人の身が親しき魔族の命を奪ったか?
      ふむ、弱き己のせいで、奪った──そして── 」 


横島の反応を窺いながら紡ぎ
一区切りで止めると『にやり』と嘲笑を浮かべ


「 ──言うなっ!それ以上 言わないで・・・くれ・・・。 」


横島の苦渋に満ちた表情を嗤うと
止まる事無く残りの言葉を



「 未だ立ち直れぬ後悔を、己の未熟さを
          誤魔化すために道化と成ったか─ 」


躊躇無く語りかけ、更に


”──力無き道化に守れるモノなど何一つとして、ありはしない”

華陽は瞳に──
その暗さに底のない深遠の闇を浮かばせると共に
無感情に言い捨てた。



「 ・・・うる・・い・・・・だ、まれ・・・黙れ黙れっ!」


血を吐く様に叫び、耳を塞きながら蹲った横島の姿に
華陽は


   笑う

         哂う

               嗤う


唯、只管。嬉々に満ちた歪んだ表情で横島を嘲笑った。


「 クッハハハハハハ── 」


『 これぞ悲劇。これぞ至高の感情よ。 』
正に、悲哀憎悔の泥濘にのたうつ姿の横島を嬉々として
嘲笑った華陽は、口元を『 ニィ 』と吊り上げ呟く様に漏らす。


「 道化よ─正気に返った時、主の眼に映るものは──
     ─彼奴等の血と臓物で彩った妾の姿になろうぞ・・・ 」


華陽の愉しげな声が唯、辺りに響いた。


                ・
                ・
                ・


悲痛な叫びを出し崩れ落ちた横島を視界に入れ姐妃は
一度短く舌打ちをした後、華陽に視線を移し


「 随分とセコイ真似してくれるわね 」


静かにだが、強く言い放つ。


そんな姐妃に向かって
華陽は暫く嗤った後で心外そうに顔を歪ませると



「 道化の本性を曝け出しただけじゃ・・・─ 」

『にやり』と哂いながら答えて『 それに─ 』と付け足し



「 姑息さなら、主には勝てぬわ─ 」

姐妃を侮辱するように吐き捨てると静かに対峙した。


僅かな沈黙の後

同質だが、与える印象の違う二つの妖気が音も無く
場を占めようと対峙する姐妃達を支点に徐々に広がり始めた。


暫くし『 びきぃっ 』と比喩では無く
姐妃達のちょうど中間の辺りで空間が軋むような音が響く。


瞬間

動きを繰り出そうとした妖孤達を射竦める程の
怒号が響き渡った。


「 アンタ・・・。
    ──ウチの丁稚に何をしたのッ!? 」


動くたびに僅かに痛む肋骨の痛みを無視して
令子は叫ぶように問い掛けた。


その問いかけに応じる気は無いと華陽が
憮然とした態度を崩すこと無く再び姐妃と静かに対峙する。


暫し、睨み合いの後で、姐妃は突然表情を緩めた。そして


「 ─言霊は判るわね?華陽はその言葉に妖力を込め
          言霊として放っただけだけなんだけど─・・・ 」


令子達を視界に入れ、答えた。

そんな姐妃の答えに釈然としないのか怪訝そうな表情を
隠す事無く、令子は会話を進める。


「 ─それだけ? 」


令子の言葉に姐妃は一度肩を竦めるとそっと呟く。


「 魔力の天昇と呼ばれた華陽の、だけどね── 」


その呟きに返答は無かった。
僅かな時間の経過も無く、沈黙で満たされた空間が
──音の無い責め苦のように、空間だけが重さを増していく。


が──唐突に声が上がる。



「 主等は何も考えずとも良い──
   唯、主等の血液を臓物を肉片を妾を彩る為に── 」


華陽は先程から一歩も動かずに
腕を軽く組んで令子等を視界に入れたままの状態で
残忍に唇を歪ませ



「 ──捧げるが良い 」

語りかけた。


瞬間


重みを唯、増していた空間が膨れ上がり─
溜まっていた沈黙を詰めた風船が破裂したかの様に
突如として、離散する。


次に変化したのは重みのある空間ではなく
殺気でざらついた感じのあるピリピリとした─それだった。


「 ─ヒッ 」


おキヌから短く上がる悲鳴につられる様に
華陽は視線を射抜くように細めた。



「 ──小娘、まずは── 」


『 貴様だ 』と短く吐き捨て
組んでいた腕を解くと同時に瞬時に狐火を纏わせ
薙ぐようにその腕を振りきった。


刹那


─『 サっ 』と突風の様な気配がおキヌに向かって
一直線に掛け抜け


それと同時に


びきぃっ─と再び空間が軋む様な音がした。


更に同時──


パァーンと軽く感じる火薬の破裂音が森の中を響き渡った。


身を小さく竦めたまま瞳を閉じていたおキヌは
未だ降りかかって来ぬ狂気にそっと瞳を開け辺りを窺う。


「 ──・・・? 」


瞬間─眼前に映る結界と『護』の文珠。

一瞬何が起こったのかを理解しかねたが
幾らかの時間の経過─視界に映った銃を構える横島の姿に
未だ微かに震えた声音で


「 横島・・・さん  」


小さく呟いた。


突如響き渡った銃声に
姐妃や華陽─令子達。全ての意思ある存在が
唯、その姿に驚愕していた。


先程まで華陽の言葉により
悲壮な絶叫を上げ蹲ったまま動きの無かった横島が
突如、銃を構え─尚且つそれを華陽へと放ったのだから。


銃声が僅かに余韻を残して
森の密な空気と混ざり合い消え去った時に


「 誰にも─奪わせない・・・ 」


そんな言葉が横島から聞こえてきた様な気がした。 



「  ぐぅッ─  」

暫くして、肩を射抜いた弾丸による苦痛に呻き声を上げながら
華陽は眼前に佇む横島の姿を凄絶な双眸で見つめ


『 言霊による支配に手応えは確かにあった筈・・・ 』

                ・ ・ ・ ・ ・
痛む肩を回復させながら、ありえない筈のその光景に
思考を捕らえられていた。


未だ、呆然と横島の蒼白な表情を眺めている皆の前で
横島は一度ふらつくと肩を抑えながら


「 お前は敵だ─ 」


自身に言い包める様に呻きながら言い放った。
その発言に思考の海へと己を静めていた華陽は


「 敵?今頃になってか─ 」


怪訝そうな表情で答える。


「 今までは・・・人の勝手な思惑に怒っているのかと思っていた
                  ──けど、違うやったみたいやな 」


静かながらに強く言い渡された横島の言葉に
華陽は噴出す様に哂い─喋る。


「 ─クッハハハハ 。だから戯れていたと申すのか?  」

が──何の反応も無く静かに見つめてくる横島に
華陽は怒りを抑え呻くように呟いた。

「 道化が─粋がるでない・・・  」


「 お前は敵だ。 」

言葉に感情を乗せる事無く唯、事実を呟いた様な声音で
横島は無感情に華陽を見つめた。



「 ──っ!!この様な侮辱初めて受けたわっ! 」


そんな横島の態度に華陽は鬼気迫る妖気を吐き出し
叫ぶ様に言い捨てた。


それと同時に腕に狐火を纏わせ
姿が霞む程の速度で横島へと飛び掛る。


ジュゥっ─と腕の周りの空気を蒸発させながら
空間を切り裂く様に振るわれた華陽の腕を横島は
躊躇する事無く具現させた霊波刀で切り落とした。



「 ──なッ!? 」


『 ドサッ 』と僅かに重量を感じさせる音と共に切り取られた
腕から僅かに遅れて真紅の血液が互いの腕から噴出す。


その様子を眉を寄せる仕草だけで見守る横島に
何やら薄ら寒い感情が背筋を駆け巡るのを感じた華陽は
僅かにたじろぎながら腕を抱えると──尋ねた。

『 正気か? 』
と。


「 ──お終いか? 」

地に落ちた己の腕を切断部分に華陽を同じ様に添えると
再び、答える事無く静かに語りかける。


暫く無言の対峙が続き
僅かな距離を開けながら華陽が腕の接合を終える。
その具合を確かめるように握り─開くと


「 塵も残さず消してくれるわっ! 」

先程感じていた感情に押される様に吐き捨てると共に
その両の手に狐火を浮かばせ、一つにし

僅かな間も置く事無く


轟ッ!


轟音を響かせながらうねる様に辺りの水気を蒸発させ
小規模な蜃気楼を作り出しながらその狐火が横島を襲い
それに続くように華陽も横島へ向かって再び飛ぶように
間合いを詰めた。


『 吸収する刹那の間に切り捨ててくれるわ 』

己の思考に満足しながら、これで不可解な感情から
救われると華陽は満足気に顔を歪ませた


「 ──ッ!? 」

が──突如、進行方向を変え自身に舞い戻ってきた
狐火を視界に入れると驚愕しながらも左方へと飛び退く。


『 ぶわっ 』──と、一瞬前まで華陽が居た場所に
破壊する事に長けた己の狐火が禍々しくうねる音を立て
背後の木々に孔穴を撃った。


それを視界の端に入れ己の行ったミスに気がつく瞬間
反対側の視界の隅から黒い影が映り込んだ。


刹那

横島の凶悪なまでに鋭い狐火を纏った蹴りが
『 どごんっ 』と有り得ない程に鈍い音を立て華陽を吹き飛ばし

僅かに遅れて横島も華陽とは反対の向きへと
不可視な衝撃を与えられ吹き飛ばされた。


暫く間を置いて折れた木々に埋まっていた両者が
その木々を吹き飛ばし飛び出すように対峙した。


『 骨がイカれたか 』

横島は油断無く見まがえながら、じっと華陽を見据えた。
呼吸を整えながら待つこと数秒──


侮辱や怒りに歪められていた華陽の顔が
今までにない恐怖に引きつったそれへと変貌している事に
気づき僅かに眉を顰めた。


「 ──妾がこの様か 」

小さく呟かれたその言葉に
横島は手を差し伸べようとして留めた。


そんな横島の仕草を見つめていた華陽は
無理やり引きつった顔面に笑みを浮かべ呟く。


「 道化では無く─狂戦士だったか・・・ 」

自身に返ってくる痛みをものともせずに立ち向かう
横島に確かに恐怖していた。『だが』─と冷静さを僅かに
取り戻した頭で思考を進める。


「 しかし、これで漸く・・・
     ──妾を互角に戦えるという意味にしかならぬわっ! 」

華陽は再び視線を凄絶なものへと変えると
吐き捨てる様に叫んだ。


「 すまんな・・・─ 」


それに答える様に小さく呟く横島の言葉に
華陽は眉を顰めると



「 そうか、主はまだ謝罪するのか・・・ 」


その真意を理解し─呟き


「 だが許せぬ─到底許せぬよ・・・。この妾を屈辱に伏した罪
               ──万死をもって償ってもらおうぞッ!」

叫んだ。


突如──『 ぐにゃり 』と空間が揺らめくように歪み
華陽から発せられる尋常じゃない程の妖気が
辺りを充満させた。



「 ─自身から制御を離れた妖気を妾達は
            ──互いが吸収できるのは理解したな 」


額に脂汗を浮かべながら問う華陽の姿には
既に冷静さを失い狂気しか宿っていない。


「 あぁ・・・。そして、それでもお前には何か考えがある─と
   言ってたが、俺には接近戦以外の選択肢は
                ──読むことはできなかった。 」


只ならぬ妖気、只ならぬ空気に横島は静かに答えた。


「 ──貴様には理解できなかったのだろうよ・・。 」


『妖孤の誇りの高さを─』と小さく呟き付け足し
華陽は両の指に細い狐火を作り出す。


その指の数だけ具現した狐火は華陽が手の平を握ると
二つへと変化し歪な形の細く短い棍の様なものが出来、更に

『 ばきばきッ 』 と音を立て爆ぜている二連炎を
一つに融合させた。


ここまでは横島も『模』した時に流れ込んだ知識で
この技が及ぼす効果を知っていた──知っていたからこそ
華陽の次の動きには驚愕を感じる事になる。


「 ──なっ!? 」


華陽はなんとそうして出来た一つの禍々しい形の狐火の両端に
手を添えると圧縮し始めた。

その無理な行動に暴発が起こる事を知っている横島は
心持ち後退りしながら見据えると華陽が呟く。



「 暴発するまでに練られたこの力を吸収する事は
                  ──叶わぬ事と知れ─ 」


圧縮させる事によって酷似された腕から血液が迸るが
それを気にすること無く更に力を加え横島に静かに語りかけた。


「 受けてみるがいい。妖孤の誇りを─ 」


ピキィン──と甲高い音を立てて
一気に潰された狐火の棍が無数の破片と成り
横島へと襲い掛かる。


『 ──ちぃっ!腕が─ 』


『模』した相手の状態を常にシミュレートする横島には
そのダメージが華陽が無理に暴発させた事によるものと
理解していたが─その傷は


文珠を使うその一瞬に僅かな隙を作る事になった。


迫り来る破片状の狐火の周りで
空間が歪んで跳ねるように狐火の進行方向を
無作為に変化させていく。

予測不能なその軌道に

『 こいつは賭けだっ! 』

手のを上げる事も握ることも出来ない状態のまま
垂れた手に文珠を具現させ『爆』の文字を浮かばせた。


握られ留まる事無く足元に落ちたその文珠が
破片が襲い来るより一瞬早く轟音と共に地面を拭い去り
それと同時に横島を吹き飛ばした。


衝撃に対する苦痛よりも、それによって与えられた
三半規管へのダメージによる激しい嘔吐感を覚えながら
背後にある木々にぶつかる。


そして、刹那の間を置いて『爆』と共に一緒に吹き飛ばされた
破片が横島の肩に巻いていたままのバンダナを切り裂き飛ばす
──と同時に肌に裂傷が走り再び真紅の血液を噴出した。


やがて─華陽の放った狐火の猛攻も『爆』で
大地を揺るがし迸った激しい振動も収まる。


「 ──生き残れた、か? 」


痛みは感じないが─それは華陽の肩を最初に
銃で撃った時に発動した『無/痛』の文珠のせいだ。


未だ収まらぬ嘔吐感を感じ

自身の状態を確認する前に気だるく動こうとしない腕に
文珠を具現させると躊躇無く『癒』の効果を発動させる。


静まり返った大地。
『爆』によって吹き飛ばされた腐葉土や枯葉が
灰燼のような塵を巻き上げる中で

横島は上半身を起こした。


「 ──くぅ 」


妖気の急激な減りを感じて
立ち眩みの様な症状を覚え呻いた。

僅かに引き締められたその双眸に
心配そうな表情で駆け寄る令子達の姿と
華陽の傍に佇み─華陽の顔面を掴むように腕を翳している
姐妃の姿が映り込んだ。


『 妖気を吸い取られてるのか─ 』


自身の体の変化と視界に移りこんだ姐妃の姿に
現状を理解し、安心して令子達へと視線を合わす。


「 心配したじゃないのよっ!このバカはっ!  」

「 横島さん大丈夫ですかっ!? 」


涙目になりながら矢継ぎ早に言い放つ二人に
苦笑しながら語りかけた。


「 迷惑かけたっスね 」


そんな様子の横島に二人は安心した様に
表情に僅かに笑みを作った。


「 あの後どうなったんスか? 」


横島は二人に自身が吹き飛んだ後の出来事を
静かに尋ねた。


「 アンタから貰った文珠で私達の周りに結界を張った後
           姐妃が余った文珠で妖気を増やして── 

  あの傍迷惑な技を放って、足元から崩れ落ちた華陽の元に
                    ──向かって、あのまんまよ。」


と概要を語りながら令子は指で姐妃を指した。


「 そうッスか 」


「 それよりもアンタは大丈夫なの──
    まだ─『模』したまんまじゃないのよ?  」


説明を終えると
再び、令子達は『ハッ』と心配した表情に戻り疑問を口にだした。


そんな二人に


「大丈夫ッス。もうそろそろ効果が切れる時間だと思いますし─」


と、そこで一旦話を区切り微笑むと


「 心配してくれてありがとう御座います。 」


二人に小さくだが、気持ちを込めて感謝の言葉を掛けると同時に
その意識を手放した──薄れいく意識の中で

「 横島くん( さん )? 」

と語りかける二人の声を聞いた様な気がした。


後書き


華陽のイメージは良くも悪くも純粋で子供の様な
といった感じで描いていました。


転生したばかりなので・・・色々なことに
つい興味を惹かれて愉しんでしまうといったようにですか。


最初の戦いは

生前は居なかった自身と互角に戦える存在に
遊びで戦うといった感じで書いていたのですが。

ここまでは横島も本気で立ち向かっては居ませんでした。
考え方は
『 倒してやる。けど 傷つけない程度に 。 』
といった感じでした。


中盤からは


自身の流れに持っていけない横島達の戦い方に飽きて
生前の知識を生かし、別な遊び方(精神面)での戦いに
変化させました。

ここで横島が言わないでくれと叫んだのは
令子達に己の傷を知らせたくない故に と
自身がそれを理解したくなかった為です。


そして終盤の戦いは

華陽が転生した直前。
転生して初めて与えられた恐怖に
怒りという感情で立ち向かわせ


最後に放った技は
生前の知識があるために感じた人間如きに恐怖を感じた
劣等感による意地の張り合いみたいなもんです。


後は・・・原作でも思ったのですが、相手の状態を
シミュレートしているということは

常に相手と同じ状態ってことになると思いまして
今回ではこういう風にさせてもらったのですが・・
いかがだったでしょうか?

楽しんでもらえたなら幸いです。


ちなみに前回でのレスで
色々と意見をいってくださった皆様。

本当にありがとうございました。


この『第一話』は次回でプロローグに書いてあった
妖孤の話にどうリンクしていくかを描いていきたいと
思います。 ですので次回でやっと第一話が終了といった
形になると思います。

ギャグに囚われず、シリアスな場面との使い分けを
肝に銘じて、内容を薄く・・・そしてダラダラと延ばすことないように
気をつけて行きたいと思います。


それでは今回はここでお終いです。
次回も頑張りますので今まで見てくださった方も
今から読んでやるよ って方もよろしくお願いいたします。


最後に何度も言いますが

レスをくれた皆様。本当にありがとうございました。

( ちなみにレス返しは前回のレスで行っておりますm(_ _)m )

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

e[NECir Yahoo yV LINEf[^[z500~`I
z[y[W NWbgJ[h COiq@COsI COze